第128話-1 復讐のための準備
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは、以下となります。
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前回までの『水晶』のあらすじは、第十回戦第六試合は瑠璃の勝利に終わり、ランシュは意識を失っていく中で、自らの過去を見るのだった。
そう、ランシュとベルグが出会ったあの惨劇の日を―…。
第128話は分割することになりました。理由は、文章量が当初の想定かはわかりませんが、多くなりそうなので―…。視点に関しては、ランシュの視点で話は進んでいきます。数話ぐらい?
【第128話 復讐のための準備】
俺は、その後、ベルグに抱えられ、クルバト町を脱出した。
ベルグはまた、あのような高速移動で移動をするのだった。
俺は、気持ち悪い気分になってしまう。
体の中の奥から何かを出してしまいそうな―…、そんな感じの―…。
そして、ある場所に辿り着くと、ベルグは動きをとめる。
「アババ君、君はこんなところにいていいのかな?」
ベルグが話しかけた人の名は、アババという。
何か変な名前だ。
こんな名前で、人としてグレたりしないのだろうか?
まあ、他人の過去なんて、興味はないけど―…。
「ベルグ様。私が仕えていたろくでもない領主のことなんかどうでもいいんです。私としてもあのような者を領主としてしまったことの方が嫌というぐらいですよ。燃えている町の方は可哀想だが―…。」
アババが言っている。
その言葉を俺は、幼いながらも頭を回転させながら、必死に理解しようとして、わかった。
こいつは領主との関係者だ。
だから、こいつが憎いし、ベルグもその仲間なのかもしれない。ならば、逃げ―…。
「勘違いしないで欲しいなぁ~、ランシュ。私たちは確かに、クルバト町のあのような惨劇の関係者かもしれない。だけど、クルバト町があのようになって欲しいと心の底から思っているわけではない。」
苦ッ、言葉が出ない。
頭の中にベルグの言葉が―…、染みてくる。
「むしろ、クルバト町の惨劇を止められなかったことを悲しんでいるほどだ。」
そうすると、ベルグが涙を流しているのだ。
それも、本人は、一切、気づいていないような感じで―…。
「私は、リース王国の宰相であるが、そこまで強いというものではない。私としては、このクルバト町のことに関して、王の命令であったし、そこには、リース王であるレグニエドとそれを裏から操っているリース王国の中央で実際に権力を握っている国際商業の関係者のラーンドル一派の勢力の脅威も考えて、彼らの言う通りにしないといけなかったんだ。」
結局、こいつも力の強い奴に媚びを売る奴か。
なら、隙を見て―…。
「だけどね、今の俺には彼らを倒すことができる力がない。別に倒す必要はないのだけど、ランシュ、君という存在のおかげで、倒そうかなと思ったのだよ。」
はあ?
やっぱりこいつ、おかしい。
何で、俺の存在が、国際商業ほにゃららの一派を倒すことに繋がるのか。
「だって、彼らはねぇ~、俺のやりたい実験の進行を邪魔してきたんだよ。俺としては、リース王国の中で、適度に仕事をして、ゆっくりと研究のための資金と人脈を作り上げればよかった。俺の好奇心は常に揺り動くものだし、彼らと常に一致しているわけじゃないのだから―…。」
それじゃあ、人脈も資金も集められないだろ!!
子どもでもわかるわ!!!
「そして、俺も実験の内容を話してしまったんだよ。その一派の一人に―…。その一人がねぇ~、別の研究所と繋がっており、似たような研究をやっており、俺がその研究で成果をあげると困るみたいでね~。だから、刺客を放って殺せないのなら、忙しくしてしまえという形で宰相にしたんだよ。俺もリース王国で成果を着実にあげていたから―…。で、今回のクルバト町の惨劇で、その責任をとらされるわけだ。俺に実験のための人脈と資金が渡ることはないと確信したから―…。不名誉って、長く残るからねぇ~。さらに、圧力もかけ終わったというわけだ。」
長いなぁ~、ベルグの説明。
要は、ベルグの研究が邪魔だから、いろんな手を使って、ベルグを蹴落とそうする勢力がいるということか。
どうでもいいな、そんなこと―…。
それよりも―…。
「このままだと俺も困ったことになるんだよ。それに、俺の目的とランシュ、君の目的は近いところにあり、協力も可能というわけだ。それに、俺らは強いよぉ~。だって、刺客を放っても殺されることはない。俺には特別な方が憑いているのだからなぁ~。まあ、その方は、ある方にご執心のようだけど―…。まっ、そういうわけで、俺とランシュは協力することができる。君の復讐の相手は、一筋縄じゃいかないからねぇ~。君自身も実力をつける必要もある。」
………。
考えるが、ベルグについていくしか復讐を遂げる方法はないだろう。
それがわかっているけど、逃げたいという気持ちもある。
だけど、逃げることはヒーナや母さんを殺した奴らに復讐できなくなるかもしれない。
……………。
考える。
結果は、わかりきっていた。
この復讐の感情は果たすことでしか途切れることはない。俺のような人間を出さないために―…。
「ああ、本格的に協力する。それでいいだろ。」
俺は声を目一杯に大きく言う。
周りに聞こえるのもお構いなしに―…。
感情がそうさせるのだから―…。
「わかった。」
と、ベルグは頷くのだった。
「後、彼のことをしっかりと紹介しておかないと、ランシュ、君が勘違いしそうだからねぇ~。アババ君。実は、最初から俺の部下であり、俺の実験のための人脈と資金の確保のために協力していたのだよ。そして、俺が実験していることに関して、気づかれないようにするために―…、ってところかな。だから安心して欲しい。エルゲルダの命令よりも俺の命令の方を優先するし、もう、エルゲルダのところからはアババ君は離れるようだし―…。」
はあ、だけど、油断は―…。
「はっ、畏まりました、ベルグ様。」
うん、こいつは裏切らないわ。目が完全にベルグを心から尊敬しきってる。
「では、アババ君は、他のトラガルたちと合流していて欲しい、リース王国での仕事を終えたら、俺は君たちの方へと向かうよ。実験のための当面の資金は溜まったからね。宰相の給料でね。やっぱり過去に馬鹿が宰相になって、多く貰えるようになっていたから、思ったよりも早く溜まったよ。じゃあ、アババ君、また今度。」
「はい。」
そのやりとりの後、アババとかいう奴はどこかへと消えていくのだった。
それにしても、姿を消すのが早すぎたりしないか。早っ!!
「では、ランシュ、行こうか。」
俺はベルグから降ろされ、一緒に歩いて行くのだった。
夜なので、辺りを気を付けながら、ベルグの歩くスピードに必死についていくのだった。
「ベルグ様!!」
とある場所に辿り着くと、ベルグを呼ぶ声が聞こえる。
「アルミナ君か。」
女の騎士か。
女で騎士ということは珍しいのか?
良くわからんが―…。
「ベルグ様。勝手にどこかへと行かれてしまい、私たちは―…。」
「心配かけたね。だけど、俺はこの通り生きている。アルデルダ領の兵士やリースの騎士に負けるほど俺は弱くないよ。天成獣の宿った武器を扱えるのだからねぇ~。」
ベルグが、アルミナという騎士に向かって、平然と騎士より強いという。
騎士より強い宰相っているのか?
目の前にいる。こいつの実力は、俺を抱えていたとしても、服の汚い奴らをあっさりと倒すほどなのだから―…。
まあ、光景としては、俺が見ていいものではなかったが―…。
「そうですが!!! まだ、ベルグ様はリース王国の宰相である以上―…。」
アルミナという女騎士は、宰相であるベルグを注意するが、それを聞き流す―…。
申し訳ない表情すらしてない。
こいつ、やっぱりおかしい。
「まあ、戻ってきたから良しとしましょう。もうそろそろしたら遠征も終わると思いますから―…。で、クルバト町には、俺の影響下になく、リース王国の中央の馬鹿どもと懇意にしている騎士たちが向かったのかい、アルミナ君。」
ベルグが女騎士に尋ねる。
「ええ、彼らは、私たちの上司の命令に対して、言うことを聞かずに、勝手に行動をしてしまい、クルバト町へと―…。」
大丈夫か、リース王国は―…。
「まあ、彼らの行動も私を宰相の地位から引きずり下して、リース王国の中央で権力を握っているあのグループの方々で、リース王国の中央の要職を独り占めにしようというわけか。リーンウルネ様が、セルティー様に付きっ切りの間に―…。頭は少しだけあるようだけど、やることも目的も馬鹿だね。」
ベルグはどうでも良さそうにしてる。
宰相の地位には、興味ないとか言っていたし―…。
まさに、自分の事ではあるが、他人事―…。
やっぱり、ベルグは、頭がおかしいのではないか?
「そうですね。奴らは、自分たちの利権しか考えていないようですし―…。というか、誰です、その子どもは―…。」
と、やっとアルミナという女騎士は気づいたのか、俺の方へと視線を向ける。
遅すぎだろ!!
心の中でツッコミを入れることにする。
俺自身、まだ、ベルグの周りの人物に対する警戒を緩めることはできないのだから―…。
俺は、睨みつけるまでにはいかないが、目を細めて、アルミナの方を見る。
「ああ、彼ね。そこら辺の森で出会ったんだ。迷子で、話を聞くと、孤児のようだし―…。それに、俺が見る限り、優秀な人物になりそうだし―…。」
ベルグは俺のことを説明する。
これは、俺がこれから使用する設定だということはわかる。
俺は、孤児で、そのショックでこの森へと彷徨ったしまっている所を、ベルグに助けられたということにするのだろうし、孤児として、心を開いていないという設定を少しだけ加えることにしよう。
警戒してアルミナという人物を見ているのだから、有効に決まってる。
「何―…、訳も分からない、どこの出身かわからない子どもを拾っているんですか。」
と、アルミナは呆れた表情をする。
何か、わかる。
「確かに今は、そうかもしれないねぇ~。だけど、ランシュ君が、リース王国にとって貢献すると思うんだけどなぁ~。こういう孤児の子が成長して、リースの騎士として活躍してくれれば、孤児で優秀な子が集まってくると思うんだよねぇ~。だって、そうだろ。孤児の職と食を保障しなければ、リースの治安悪化の原因になるし―…。それに―…、別に、今、真面目に税金を払っている世帯の子どもや大人の職を奪わないようにしながらになるけど―…。」
ベルグは何か、俺をリースの騎士とやらにするために、アルミナという女騎士を説得している。
って、リースの騎士!!!
「おっ、おい、ベ…。」
と、俺は言うところで、ベルグに口を押さえつけられるのだった。
ベルグは、アルミナとかいう女騎士に聞こえないように俺に言うのだった。
「ランシュ君、リースの騎士として、戦闘技術を磨けば―…、復讐もしやすくなるし、君の復讐対象は、強いリースの騎士の護衛によって守られているんだ。だから、リースの騎士としての信頼を獲得すれば、レグニエドに近づくチャンスはあるはずだよ。」
………………。
少しだけ考えた結果、ベルグの言っていることが理にかなっていると勘で理解して、これ以上、言わないようにする。
それを理解したのかベルグは、俺の口を塞ぐのをやめるのだった。
「何をしているんですか?」
アルミナがこっちを見ていたので、誤魔化すことにした。
「ううん、こっちの話で、大したことはないよ。」
怪しまれるじゃねぇ~か!!
アルミナという女騎士の目がジト~、してるじゃねぇ~か!!!
くっ!! どう誤魔化すか。
「まあ、仕方ないですね。この子も孤児なら帰る場所もないだろうし―…、リース王国の騎士として育てれば―…。後、若くして、リース王国の騎士の選抜に合格した子も、この子みたいに背格好と年齢だし―…、ちょうどいいわね。最初は、騎士見習いから―…。」
何か、女騎士の方からの追及は止んだようだ。
よかったぁ~。
これで、レグニエドへと近づくための一歩ができたんだ。
だけど、信頼はこれから―…、俺はまだ怪しまれているのだと思って―…。
「ありがとうございます。」
俺は、アルミナという女騎士にお礼を言う。
心の底から、感謝を伝える必要があると、家族以外で初めて思ったのだ。自分の意志から―…。
別に、クルバト町に感謝の気持ちがないわけではない。
それでも、自分の意思というよりも、そうあるべきだと自然に思っていたことが自分の気持ちにあったからだ。
よくわかんねぇ~けど―…。
「感謝するよ、アルミナ君。」
「別に―…、私の一存では判断のできないことですから―…。」
「そうだね。」
その後、俺は、ベルグに着いていった。
その近くには、アルミナという女騎士も一緒であったが―…。
「どうだい、ニナエルマ君。」
ベルグは、近くにいた若い騎士に話しかけるのだった。
アルミナという女騎士も一緒にいる。
「ふう、今、やっと、アルデルダ領の兵士が来て、クルバト町を完全に燃やした―…、と。」
俺は、このニナエルマの言葉を聞き、反抗したい気持ちになった。
だけど、わかっている。
今、反抗しても意味がない。
歩きながら、ベルグの言葉、これから復讐するために俺がしないといけないことを考えることができるほどに、冷静になれた。
命がどうとかはどうでもいいかもしれない、確実に復讐を遂げたい。
なら、慎重をきすことに損はない。
だから、感情を抑えるのだった。目の方は睨みつけそうになりかける。
我慢、我慢、耐えるんだ。
「そうか、後、ニナエルマ君、今度、騎士見習いとして、ランシュ君を入れることにしたいんだけど、いい。リース王国の騎士団の団長には、俺から話を通しておくから―…。」
「はあ~、まあ、ランシュ君と同じくらいの年齢と思われる子が合格しているので、その話し相手ぐらいにはいいでしょ。それに―…、素性は―…。」
ニナエルマという若い騎士は、俺の素性を気にしてる。
そりゃそうか。
「うん、今日会ったばっかりだから―…。まあ、大丈夫だと思うよ。俺は、ランシュ君がきっとリース王国に貢献してくれるよ。そう、確信している。」
理由が適当つ~か、アルミナの時みたいにまともな理由を言って、誤魔化せよ。
「わかった。」
いいのかよ。
今日、本当に心が揺れ動きすぎる。
俺は、絶対に復讐を果たす。
見ててくれ、ヒーナ、母さん。
その後、俺は、ベルグらとともにリース王国へと行くのだった。
第128話-2 復讐のための準備 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正すると思います。
次回の投稿に関しては、完成しだい、この部分で報告すると思います。
では―…。
2022年1月11日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年1月12日頃になる予定です。