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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
258/748

第126話 ラストアタックの後に

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までのあらすじは、第十回戦第六試合、瑠璃VSランシュの試合。双方ともに最後の一撃を放つのだった。勝利はどっち?

 爆風が吹き荒れる。

 これは、瑠璃とランシュの放った攻撃によるものだ。

 そう、「光剣 光雷斬撃」と「五属振撃」が衝突したからだ。

 爆風は、四角いリングを覆いこむ。

 四角いリングの外から眺める者たちに、その状況をまるで教えたくないように―…。


 【第126話 ラストアタックの後に】


 爆風はおさまるが、煙は四角いリングの前面を覆っていた。

 煙や爆風が四角いリングの外に出ることはない。

 四角いリングの周囲を覆っている透明な壁によって―…。

 四角いリングの状況はどうなっているのか、それが気になることであろう。


 中央の舞台。

 瑠璃チームのいる側。

 ギーランは、

 (この狭い四角いリング(フィールド)では、いくら透明な壁があったとしても周囲に漏れると思うのだが―…。それがないということは、どれだけの性能を持っているというのだ。リースの競技場は―…。これが、太古の昔の技術だというのか?)

と、心の中で言う。

 ギーランは、リースの競技場について知っている。

 昔、リースの来る用事があって来た時に、実際に行ったことはないが、競技場について、お店の人が話していたのだ。

 リースの競技場は、はるか昔に作られたものであり、今ではなくなってしまった技術があり、そのために、誰にも壊すことができなくて、かつ、競技場自体も壊れることがないし、修復も競技場の中のある場所から部品が勝手に調達されるのだとか。

 まあ、そのような内容であるし、ギーランは正確にそのお店の人の言葉を一言一句覚えているわけではない。内容さえしっかりと押えておけば、お店の人が言おうとしている意図を理解できてしまうのだから―…。

 その時は、まあ、ふ~ん、と豆知識程度のようなことでしか聞いていなかった。

 瑠璃の「光剣 光雷斬撃」とランシュの「五属振撃」の衝突による爆発のようなものを見て、豆知識程度に思っていたことが、こんなにもすごい防御能力を持っているのかということ目の当たりにして、ギーランは自らの認識が甘かったことに反省する。

 もしも、四角いリングを覆う透明な壁が存在しなければ、このリースの競技場は破壊されていてもおかしくないほどの威力の爆発のようなものであったからだ。この一撃でどれだけの人の生が終わってしまうことになっていたか―…。想像するだけで恐ろしい。

 さらに、ギーランは続けて、

 (それよりも瑠璃の方は―…。)

と、瑠璃の安否と勝敗が気になるようだ。

 ギーランとしては、まず瑠璃が生き残ってくれることだ。それに付け加えて、瑠璃がランシュに勝利しているのであれば、なお良し。

 だけど、そのような高望みをするのは、場違いなのではないだろうかという不安をギーランは抱いている。心の中の言葉にもしないが―…。

 (まだ、見えないか。)

と、心の中で、四角いリングの中がどうなっているのかわからないのをもどかしく思う。

 まだ、白い煙のようなものに覆われており、瑠璃がどうなっているのかわからないから―…。

 一方で、ミランは、

 (わからないわね~。あのような爆発の中、生き残れるのか不安しか感じないじゃないか。折角、お母さんの笑顔が見られるようになったのに、再度悲しませるようなことをしたら、今度こそ地獄の果てまで追いかけて復讐してやる。だから、生き残りなさい、瑠璃。)

と、心の中で言う。

 素直じゃないが、要は、瑠璃に生き残ってほしいという気持ちがあった。

 ミランとしては、瑠璃とミランの母親であるイルーナがやっと、瑠璃に再会できたことで本当の意味で笑顔を見せるようになったのだから―…。

 ミランは、小さいころにイルーナが夜な夜なミランが寝ていると思っている時に泣いているのをこっそりと見てしまったのだ。それを契機として、瑠璃に対して、復讐しようと思いを抱くことになった。

 この爆発で生き残らなかったら、自らの命を失ってまでではないが、ローをフル活用して、あるかもわからないあの世から瑠璃を無理矢理呼び出し、復讐しようと考えていた。例え、それが悪魔の所業と呼ばれるものであったとしても―…。

 その中にあるのは、イルーナを悲しませるな、ということであった。

 そう、ミランは母親大好きっ子であるのだ。

 四角いリングの中で立ち込める白い煙のようなものがまだまだ晴れることはない。

 その中で、さらに、心情はどうなのか。ギーランやミラン以外の―…。

 クローナは、

 (四角いリング(フィールド)のバリアみたいなものは、このような爆発でも壊れないなんて―…。そんなことよりも、瑠璃は!! 大丈夫かな。最悪の場合、赤の水晶を使って、別の空間に逃げれているだろうか?)

と、心の中で心配する。

 クローナとしては、四角いリングを覆っている囲いのようなものがランシュと瑠璃の最大攻撃による爆発にも耐えうるということに対して、驚きも感じているが、それでも、忘れてはならないことも理解している。

 それは、その爆発によって、分からなくなった瑠璃の安否である。

 クローナもまた、瑠璃の無事を祈るのであった。

 人の死という概念が現実世界の日本よりも身近だと思ってもいいのかもしれないこの異世界においても、身近な人の死というものは、辛いものでしかないし、悲しいものでしかない。

 この悲しみは、ぽっかりと何かが抉り抜かれたように感じ、そこから虚脱感というものが現れ、その抉り抜かれた部分を涙が埋めようとするのだ。中身が違うので、埋まるはずもないのに―…。

 だから、本当に悲しい時には涙は溢れることもない。

 涙は、大切な思い出の入った記憶入れ。

 涙が溢れるということは、その記憶は外へと抜け落ちていくのである。

 軽くはなるが、辛くなくなる。

 生きやすいが、人としては―…。

 だけど、進まないといけない以上、仕方のないことかもしれない。

 その辛くて、悲しい作業をしないためにも―…。

 クローナはそのことに意識的に気づいているわけではないが、無意識のうちに自らの面で理解していないが、それが自動的におこなわれることを恐れて、瑠璃の無事を祈る。

 生きていることはわかるが、生を終えた後のことは本当の意味で誰にもわからないのだから―…。意識的に始まりという自己の主観的映像と音を見ることができないように―…。自分以外の他者という自己の入らないフィルターを最低でも一つ以上通して―…。

 クローナは心配しながらも四角いリングの方を見続ける。

 セルティーは、

 (あのような爆発、生き残っている可能性はかなり低い―…。それでも、信じるしかありません。瑠璃さんが生き残っていることを―…。ランシュも―…。)

と、心の中で祈る。

 それは、リースとその近辺で信仰されている神に向かって―…。

 その神は、神が定めしルールを逸脱し、罪を犯す王に対して、王とその周りの命もしくは災いによって、その犯した罪を償わせる。

 その教えをセルティーは信じている。心の底から―…。

 いや、生まれて、物心ついた頃から、この神を信仰するように説く者の最初の人物が作った歴史というか世界というものがまるで、過去において事実であるように教えられている。一種の宗教と言っていい。

 宗教は世界というものを有限という認識で、無限という概念がないということを定め、いや、無ということを有という存在に変換して、全部の存在がまるでわかりきっているようにしているのだ。神という存在を用いて―…。

 その世界観を幼い頃から教えられ、生きているセルティーにとって、リースとその近郊で信仰されている神の教えというものがセルティーの経験と認識の基準を構成していると言っていい。ただし、その神を信仰するように教えた最初の人と完全に同じになることはできない。ある程度を共通にすることはできたとしても―…。人、いやこの世界が共通性と相違性という二つを兼ね備えている以上―…。

 その神はまた、別の教えに―…、善人には神の加護が与えられるというものがある。

 現実にそうなのかと言われると証明ができないことである以上、完全に否定することはできない。

 これは、人は自ら以外の他者の人生を完全に把握できないし、善悪というのが主観的なものによって判断されている以上、勝手に自分の都合の良い判断を下すことが可能であるからだ。

 瑠璃が仮に、この自らの攻撃とランシュの攻撃の衝突による爆発の中、生き残らなくても瑠璃が悪いことをしたのだから神の加護はないと言っても完全にその言葉を否定することはできないし、かつ、瑠璃が生き残ったとすればそれは神の加護、瑠璃が善人であるからだと言ってしまえばいいのだから―…。

 だけど、セルティーはそのような世界観を与えられ、形成されてきている以上、祈らないという選択肢はないし、セルティーにとって瑠璃は大事なチームメイトであり、セルティーがランシュへ復讐をしようとしていることを知っている者なのであるから―…。

 そのセルティーの思いは、強いということが当たり前のことなのである。

 イルーナは、四角いリングを見ながらも、悲しい表情をしなかった。

 できるはずもない。

 信じるということは、自らの望まない結果を考えず、記憶の片隅から完全に消してしまうということなのだから―…。

 ある未来の時点での結果、自らの望まない結果で、最悪のものであったとしても―…。

 (結果がわかるのは、後、数分ってところ―…。)

と、イルーナは、心の中で言う。

 今は、冷静に、静かに、落ち着きながら瑠璃は生き残っているのを信じて、待つのであった。あの十二年間に比べれば、数分など取るに足らないものなのだから―…。

 礼奈は、

 (生きて、瑠璃!!!)

と、必死に手を合わせて、祈りのポーズをするのだった。

 礼奈としても、不安がないと言えば嘘になるし、現に不安で一杯なのだ。

 瑠璃が生きていて欲しいという気持ちは強いし、礼奈が生まれ育った世界の石化を共に止めて、元に戻して、平穏な日常を生きたいと、そう強く願っているのだから―…。そこに瑠璃という存在も必要なのだから―…。

 最後に李章は、

 (瑠璃さん―…。瑠璃さんならきっと、生き残っているはずです。)

と、心の中で、瑠璃が爆発の中でも生き残っていることを信じるのだった。

 この信じるというものがイルーナのようなものと少しだけ違い、生き残っていないということをわずかでも頭の中でよぎってしまえば、李章の心の安定を欠き、李章が忌み嫌うあの存在をまた表に出してしまうからだ。そのようなことを望まないし、大好きな瑠璃とともに生きたいのだから―…。そう、強く思うのだ。

 ゆえに、李章にとって、瑠璃が生き残るということは絶対でなければならない。

 それぞれの思いもありながら、しだいに白い煙のようなものは、晴れていき始める。


 四角いリングの上。

 白い煙が晴れていく。

 そろそろ結果がわかるのだ。

 生き残っているのか、そうでないのか。

 四角いリングの上で戦っている瑠璃とランシュが―…。

 そして、晴れていき、最初に姿を見せたのは―…。

 中央の舞台で、驚愕の表情をするが、その中で、ランシュ率いるチームは、心の中で喜び、瑠璃チームから絶望の表情となってしまう者が登場する。

 そう、最初に姿を見せたのはランシュである。

 ……………………。

 ランシュは言葉を発することはなく、次第に―…。

 ランシュの行動にランシュ率いるチームの表情が崩れていく。あり得ないことが起こっているのだ。

 そう、ランシュは倒れていっているのである。

 ランシュの意識はわずかばかりかある。

 だけど、それも風前の灯火程度であり、しだいになくなっていき、ある場面を映像のように流れるのだ。


 ―クルバト町―


 ランシュが、レグニエドにしか聞こえない声で言う。

 ランシュは、この映像では、レグニエドの心臓付近を自らの長剣で刺している。引き抜けば、レグニエドは、この異世界におけるリースの技術は助からないほどだ。

 そして、レグニエドはその言葉を聞き、あることを思い出す。自らの過去にしたことを―…。主導的な立場ではなくても―…。


 ―まさか、ランシュお前は、その生き残りか!!!―


 ゆえに、レグニエドは自らの人生の最後において動揺する。


 そう、これは、二年前に実際に起こった出来事の一部だ。

 その出来事を思い出しながら、ランシュは―…、

 (どうして、今、これなんだ―…。)

と、心の中で言うと、意識は黒になるのだった。


 一方で、ランシュの対戦相手である人物は、白い煙が晴れていくごとに姿を現し―…。

 (はあ、はあ、はあ、はあ。)

と、息を荒げながら、何とか意識を保っているのだった。

 (私は―…、石化したみんなを―…、石化を解くんだ。)

と、心の中で、強く意志を持ち続ける。

 そう、瑠璃は、それだけを思いながら、必死に立ち続けているのだ。

 まるで、それは、常人とかけ離れた命の火を擦り減らしているのではないかと思われるほどの精神力で―…。

 この倒れたランシュと瑠璃の立っている姿を見ていたファーランスは、一瞬、気持ちとしては言葉を失うぐらいに長く感じられるほどに見てしまっていた。

 それに気づき、すぐに状況を確認し、勝者を宣言するのだった。

 「勝者!! 松長瑠璃!!! 勝利チーム、瑠璃チーム!!!!!」

 こうして、第十回戦は終わり、最終回戦も終了することになり、ランシュが企画したゲームに勝利するのだった。


 【第126話 Fin】


 

次回、ランシュの視点から過去を!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


たぶん、これが今年最後の投稿となります。

何とか、第十回戦を終わらせることができました。リースの章を終わらせるという当初の目標の達成には失敗してしまいました。反省です。

原因としては、思った以上に内容を付け加えたいという気持ちが大きかったことと、書き始めるとゆっくりと文章を追加して書こうとする気持ちが強すぎたことなどが自身で考えられると思っています。そことの折り合いが必要なのを認識しましたが―…。

後、予定通りにいかないということもあり、いくつかの想定を組み立てておく必要を感じました。来年は少しぐらいではいいなぁ~とは思います。

反省はここまでぐらいにして、『水晶』の今後の予定としては、まず、何よりもリースの章を終わらせて、次の章にいくということです。次の章に関して、少しだけ物語の中でも触れているし、後々かかわってくる人物も登場させています。次の大きな部分での過去とかに―…。

そして、ネームの方としては、2022年1月3日ぐらいまでには、第265話ぐらいは書き始めたいとは思っています。第1編の最終章ですが―…。

次回の投稿は、この部分と活動報告の方で報告すると思います。

来年も良き一年を―…。

では―…。

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