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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
249/748

第118話-2 友の敗北に感情を露にする者

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、ランシュが倒されたヒルバスを見て叫び出すのだった。一方で、アングリアは自らの権力が戻ってくる可能性が高くなっていることを感じるのだった。

今回で、第118話は完成します。

 中央の舞台。

 瑠璃チームがいる側。

 ランシュの咆哮のような叫びに、ピリッと緊張感を漂わせる。

 威圧されていて、もし、戦いの場であったのなら、ランシュの前に体がすくんでしまって、動けなくなってしまうだろう。

 その間に倒されても、それに抗うことはできない。

 (どんだけ感情的になっているんだ。分からないことはないけど―…。こりゃヤバいな、瑠璃は最悪の状態での次の試合となるのか。)

と、アンバイドは、心の中で言う。

 アンバイドとしては、ランシュは、ヒルバスがやられたとしても、あまり感情的になるような人物だとは思えなかったから―…。

 心の中ではそれなりの葛藤はあるだろうけど、表情に出すことはないだろう、と。

 (そうでもないか。だけど、瑠璃が勝てるという可能性はなくはない。だけど、確率はかなり低いものでしかない。どうする。)

と、続けてアンバイドは心の中で言い続ける。

 アンバイドは、ランシュの感情の爆発で、ランシュがこれまで以上に目的に対して、強い感情を発揮して、普段以上の力を出すのではないかと思うのだった。

 なぜなら、咆哮のような叫びが威圧としてアンバイド自身も感じてしまったのだ。動きを鈍くさせるぐらいの―…。

 こういう人間がかなりヤバいのは、アンバイドも経験済みだった。特に、ヒルバスを倒した李章に対してであろうが、ここでは瑠璃に対してそれが向けられることになる。そうなると、ランシュが瑠璃の実力を測って戦うことがなく、最初から本気で攻めてくるからだ。

 その結果は―……、瑠璃の圧倒的な不利しか存在しないことになる。これだけは、ほぼ確実に訪れるであろうという確定的な未来でしかないことを―…。

 アンバイドの不安は、降り積もっていく。

 一方で、イルーナは、冷静にこの状況を見ていた。

 (瑠璃では、なかなか難しいけど、あの子ならやってくれるわね。実力というよりも成長速度は礼奈ちゃんよりも遅いけど、いざという時の運はかなりあるみたいね。別の世界に飛ばされても、良い人たちに育てられたのだから、ここでも発揮してくれるでしょう。後は―…。)

と、イルーナは心の中で思いながら、瑠璃へと向かって行くのだった。

 「大丈夫だよ、瑠璃。相手は強いけど、ビビっていては勝てる可能性をも無駄にしてしまうだけよ。強い相手には、その胸を借りるつもりでいくといいのよ。こういう場合は、素直に相手の実力を受け入れ、自分にできることをやればいい。そうすれば、勝てるかもよ。」

と、イルーナは瑠璃に諭すように優しい口調で言うのだった。

 それを見たアンバイドは、若干、引いていた。なぜなら、アンバイドはイルーナによって散々な目にしかあっていないのだから―…。

 イルーナは、瑠璃に対して、緊張を解くために優しく言いながら、なるべく命令口調にならないように注意して言う。こういう場合は、背中を押すということの方が重要だからである。やる気にさせるともいう。

 そうすれば、パフォーマンスが良くなるのを経験的に知っているからだ。アンバイドに対しては、散々な目に遭わせてもへこたれないことを知っているので、厳しいことを言うが―…。

 自分の娘である瑠璃はそうであるとまだわかっていない。瑠璃は生まれた時に連れ去られ、現実世界へと送られ、その世界が石化して、ギーランが瑠璃、李章、礼奈の三人を異世界に送るまで会うことはなかったのだ。

 まあ、それも、偶然のことであり、さらに、瑠璃が実の娘であることをギーランも気づいていないのだから―…。イルーナにいたっては、第九回戦で瑠璃を見た時が連れ去られて以後、始めて自らの娘に会うことであり、確実な証拠を得たのは、第九回戦以後のことであり、ローがいなければその証拠すら掴めなかったのだから―…。

 「はい、ママ。」

と、瑠璃は言うと、四角いリングへと向かうのだった。

 その時、さっきの第十回戦第五試合でヒルバスと戦って勝利した李章が瑠璃の方へと向かってきて、声をかける。

 「瑠璃さん。本当は戦って欲しくはないですが、止めても無理矢理にでも行くと思いますので、止めません。ただ、一言言わせてください。無事に試合を終えて生き残ってください。」

と、李章は言う。

 李章は、ヒルバスとの戦いが最悪、李章の命が奪われるという可能性が存在した以上、ランシュと戦う瑠璃にも命の危険があるのは予想できることであった。

 ゆえに、瑠璃のことを心配しながら言うのであるが、瑠璃がこのランシュとの戦いを放棄することはあり得ないし、李章が止めたとしても確実に実力行使で向かうのはわかりきっていた。さらに、李章はヒルバスとの戦いで、もう今日は戦うことができる状態ではなかった。

 日常生活を送る程度に動かすことは可能である。健常者と同じぐらいには―…。

 「わかった。」

と、瑠璃は言うと、四角いリングへと上がり、その後、李章は四角いリングを下りるのだった。

 一方で、ギーランは、

 (これで、第六試合までの瑠璃チームの負けはなくなったということですか。ランシュの方が強いとなると瑠璃には身が重いのに変わりはありません。降参なんて選択肢を娘の瑠璃がとるとは思えない。後は天にでも祈りながら、瑠璃の勝利を待つしかない。いや、無事を祈るしかないのか。)

と、心の中で瑠璃が無事であることを祈るのだった。

 ギーランのこのような気持ちは、親としての心配である。すべての親がこのような性格のわけではないが、それでも子どもを同様の状況なら心配をするのが多いかもしれない。ギーランもその例に漏れないということだ。ギーランは悔しさもあるが、同時に、娘の成長も感じている。

 子どもは独立するかどうかわからないが、親が亡くなる時に生きているのであれば、自分で考えて生きていかないといけない。そうなると、自分で考えて判断するために、親は少しずつであるが子どもの判断すべきことに介入することを減らし、自由な裁量を徐々に与えなければならない。

 それには、時に失敗もあるが、その失敗が大事にいたらなければ、重要な経験ともなるし、生死にかかわらなければ、そのように経験ということで、次、気を付けるということへとしていくことも可能である。それでも、経験にできないような人物もいるのだが―…。良い方向に、であることを忘れてはならない。

 魔術師ローは、じっくりと四角いリングの方向と同時に、ランシュの方を見ながら、瑠璃とランシュの試合がどうなるのかを推察していた。

 (実力は、圧倒的にランシュとかいう奴の方が上というわけか。そして、どうして、いろんなものの、動きが活発のようじゃの~う。リースは―…。勘でしかないが、このランシュと瑠璃の試合後に何かあるのかの~う。内乱だけは勘弁してくれるかの~う。戦争というものは嫌いなものでしかないからの~う。争いというのは、生きている限り避けることはできぬ。ホント、生きるということは辛いことであり、幸せに感じることもあるようなものかの~う。)

と、ローは心の中で思う。

 ローは、今日の、この競技場に来るまでになぜか慌ただしいものを感じて、リース中に人には見えない包囲網をかけている。抜けられるものであるし、人の動きがわかるものだ。

 それを用いて、いくつかの場所で変な動きがあるのを理解する。それが偶然二つに分類できるのだ。会話まではわからないので、最悪の想定をすれば、クーデター、内乱ということになるだろうとローは予測したのだ。

 これが杞憂に終わってもらうのがローにとって最上のことだと思った。ローとしては、内乱のように人が戦争するのを嫌う。それでも、しょうがなく戦わないといけないことがあり、その時には折り合いをつけるようにしている。

 ロー自身は、戦争というものに悪い思い出の方が強くあって、その印象が未だに残っているのだ。戦争では誰かの命が亡くなることがあるのだ。味方も敵も同様に―…。過去に大事な人を亡くしているために、戦争を望みはしない。できれば、勃発しない方がいい。あのような出来事など―…。

 戦争を煽る人間の中には、夢のような言葉を語ったりして素晴らしい、または勇敢な行動であり、相手が仕掛けようとしていると根拠を偽造して言う者がいるが、そんなものは一部の人のための妄想でしかなく、戦争には相手がいる以上、相手の考えを理解しないといういけない面があり、妄想で戦争など本当にできないのだ。それに、現実問題として、戦争はするだけで金がかかるし、労働力を戦争の動員のためにとられてしまう可能性も存在し、人手不足や生活物資である日常必需品の生産に影響するかもしれない。軍隊に食料を優先的にしないといけないために人々に渡らない可能性もあるのだ。現実世界における総力戦というものは、負けている国ほど、庶民の生活が悲惨なものになり、食べられる野草のようなもののように、食料事情が確実に悪くなった例もある。戦勝国でも戦争中にそうなる可能性はあったかもしれない。付け加えるのならば、資源の量の問題で一日放つことができる弾薬の数自体も制限される場合が存在する。

 戦争で儲かるのは一部であり、勝っていても、常時戦闘状態が長引けば、人々の心は疲弊し、最悪の場合、革命の発生ということもありうるからだ。その革命によって、戦争が終わりへと向かうこともあったので、革命を悪いというのは一概に言いにくい。まあ、その革命の結果、悪くなる場合も存在するかもしれない。要は人々はずっと、戦争で戦うことに心の底から肯定的になることなどできやしないのだ。自分と親しい人の被害にあってしまえば、よりそう思うし、ショックを受けるものだ。

 勝とうが負けようが何かしらの良くないダメージを受けるのが戦争だ。

 戦争に巻き込まれた兵士が一人死のうが異常がないとされることがあるのだ。負ければ、最悪の場合、負けている国側の女性は、兵士たちによって酷い目に合わされることもある。場合によってはだが―…。

 戦争の現実はこんなものだ。さらに、戦後どういう状況になるかをしっかりと冷静に、客観性を高くもって、相手国側の情勢を鑑みなければならない。それをちゃんとして、根拠のある方法や証拠をもってしなければ、最悪の事態に陥ってしまうことがある。

 そのようなことをローがすべて知っているかはわからないが、悲惨であることを理解している以上、彼女は夢想に浸って、自分の理想を語って、現実を無視して、戦争を煽る人間よりもマシなのは事実であろう。

 ローは、瑠璃とランシュの試合後、いや、第十回戦終了後に関して、警戒を続けるのだった。生死の問題が発生した時に、生き残るために―…、周りの人間が―…、自分の知り合いが―…。


 中央の舞台。

 ランシュのいる場所。

 ランシュはすぐに、高速移動して、ヒルバスを自分が率いるチームの場所に運ぶ。

 そして、そっと、綺麗に地面に寝かせ、四角いリングへと向かうのだった。

 その時、一切、ランシュは言葉を出さなかったのだ。

 その様子は、誰もがランシュへとくぎ付けになってしまうのだ。

 好きになるのではない。

 その迫力に蹴落とされてしまうのだ。

 一瞬でも目を逸らせば、殺されてしまうのではないかと思うほどの迫力だ。

 周りを怯えさせるほどだ。

 だけど、ランシュに観客を殺す気持ちもないし、暴力を振るう気持ちもない。

 ただ、意志を持って歩いているだけだし、リースの住民は、自らが勝利した後に支配する。ならば、なぜ彼らに危害を加えようか。

 リースの住民の働きがなければ、リースは成り立たない。完全に善意になることはできないが、それでもリースの住民が暮らしやすく、働きやすければ、リースが発展することは可能なのだから―…。そう簡単なことではないが―…。

 それでも、ランシュは信じる。人々が幸せを感じなければ、国も社会も発展することはないだろうし、そうすることで、リースの住民のように人々は良く働かないし、創造性も発揮されない。そこに向ける心の余裕ができるのだから―…。

 一歩、一歩、歩く。

 ランシュの動きに、瑠璃は体が強張ってしまうほどだ。

 それだけ、ランシュの威圧がすごいということだ。本気だ。

 瑠璃にとっては、いや、このリースの競技場にいる誰もが、ランシュという人物がランシュの本当の意味での大きさよりも大きく感じるのだ。そう感じるがゆえに、恐怖を感じる。ランシュ以外の人物がまるで弱者であることを認識させられているように―…。

 それでも、一部の人間は、それに普通に耐えることができる。それだけの経験と実力を兼ね備えているからであろう。そこに、ロー、ギーラン、イルーナ、アンバイドが含まれるのは当たり前のことだ―…。

 そして、瑠璃は、

 (ランシュ(この人)と戦わなければいけない。避けられない。私がこのゲームを引き受けた以上―…。それに、私よりも強いのは最初からわかっていたことだ。怯えないわけがない。(ひる)まないわけがない。一歩だけでも進む勇気を持つべきだ。私なら―…できるかもしれない。やるしかない。私にはやらなければならないことがあるんだから―…。覚悟を決めて一歩、強く。)

と、心の中で言い聞かせる。

 今の瑠璃は、ランシュほどではないが、威圧のようなことをやっていた。それは、気持ちという面の強さがそうさせるのだ。今の瑠璃には、ランシュに対する恐怖はあるが、それでもやるべきことであるという気持ちで何とか向かって行くことができる状態だ。一歩、ランシュに優位な要素で崩れるかもしれないほどだが―…。

 「よく、ここまでこれたものだ。俺が倒してやる。」

と、ランシュは言う。

 その言葉は、強い言い方であったが、低い声であった。

 その双方が、かえってある一点、相手に対する威圧の面で一致していたのか、恐怖を与えるような感じになっていた。

 それでも、瑠璃は怯まないようにする。怯むわけにはいかない。

 「私が倒して、ベルグという人の居場所を教えてもらいます。」

と、瑠璃も反抗する。

 瑠璃も強がっているし、今にも逃げ出したい気持ちがないわけではない。それでも、やるべきことがちゃんと瑠璃を目の前の倒すべき敵へと向かわせる糧となっている。

 現実世界を石化したと思われるベルグの居場所を聞いて、その現実世界の石化を解くために―…。

 「そうだったな。だから、戦って、どっちが強いか決めようじゃないか。」

 「ええ。」

と、ランシュ、瑠璃の順に言う。

 これは、戦って決めるしかない。

 叶えられるのは勝者のみ。

 一人の欲望のために起こしたものは、一つの大きな悲劇を生み、悲劇が悲劇を生み、最後は欲望をも叶えずに終わるのだ。周りを巻き込んで、被害者と恨みを作って―…、疲れさせて―…。


 【第118話 Fin】


次回、ランシュの姿に注目!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿は、完成しだい、この部分で報告すると思います。

では―…。


2021年11月28日 次回の投稿分ができました。次回の投稿は、2021年11月29日頃を予定しております。第119話は分割することになりそうです。

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