第115話-2 五つの円盤
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』は、ヒルバスの銃撃により、李章はその攻撃に巻き込まれてしまうのだった。
今回で第115話は完成します。
しばらく、四角いリングには光線の光が輝くのだった。
その輝きは、一つの生命の終わりを象徴する。
本当にそうなるのか、未来においてわかるかわからないかという不明なところでしかないが―…。
そして、光線は、ちゃんと四角いリングの外にでることはなかった。
四角いリングを覆っている透明な壁がちゃんとヒルバスのさっきの攻撃を見事に四角いリングの外に漏れるのを防いでくれた。
ただし、四角いリングの中にいる者を守るわけではない。
だって、四角いリングの中にいる者は、戦っているのだから、守る必要など存在しない。
ゆえに、このヒルバスの攻撃をまともに受ければ、受けた者の命は、受けた時点でこの世にあるわけがない。よっぽどの実力者でなければ―…。
そして、光線が消えると、そこには煙のようなものが発生する。
その煙は光線の軌道を中心として、発せられていた。
ヒルバスが見ようとしても、李章がどうなったかは見えないであろう。
いや、ヒルバスは、見えなくても構わないとさえ思っていた。この光線をまともに喰らってしまったのなら、その姿は塵一つ残ることさえないのだから―…。
残れば奇跡といっても差し支えない。生き残れば、想定外のことでしかない。いや、神に愛されたという表現をしてもいいのかもしれない。
煙のようなものは、ここから数分の間続くのだった。
中央の舞台。
瑠璃チームのいる側。
「………。」
と、瑠璃は、不安そうに見つめる。
李章がまともにさっきのヒルバスの攻撃を避けようとしなかったからである。
それでも、李章が刀を握っていたことから何か、対策をしていたのかもしれない。
それを信じるしかない。不安は消えない。消えることはない。安全というものは、一歩先の未来においては、完全に保障されることなどありはしない。人が未来について、すべてを理解できない以上―…。
まあ、未来を完全に知れば、考えることをやめるかは時と場合になるが、絶望はするだろう。知らないからこそ夢見ることができるというものを無意味にさせるのだから―…。
(李章君―…。)
と、瑠璃は、心の中でやっと、自らの言葉を出し、李章の無事を祈る。
瑠璃にできることは、信じることだし、祈ることだ。
礼奈が近づいてきて、瑠璃を見る。
(瑠璃―…。)
と、礼奈は、瑠璃の方を心配しながら見る。
礼奈としては、瑠璃が李章のことを好きだということは知っている。それに、李章が瑠璃を好きだということも知っている。
ゆえに、さらに、付け加えて、心の中で言うのだ。言葉にするのは、あまり良くないと思い―…。
(李章―…、瑠璃のためにも勝ちなさい。君が好きな人に似合うのは涙でなく、幸せを感じさせる笑顔なのだから―…。)
と。
四角いリング。
次第に、煙のようなものが晴れていく。
その様子をヒルバスは警戒しながら見る。
勝利というものは、確実にファーランスが宣言しない限り、このランシュが企画したゲームにおいては、存在しないのと同じであり、いつ対戦相手が狙ってきて、自分が敗者の側になるのかということが可能性として残っているのだから―…。
「!!!」
と、ヒルバスは気づく。
自らの予想していたものとは、あまりにも違う結果。神に愛されたという表現でもいいのではないかと思ってしまってもおかしくないという結果に―…。
そう、李章は生きていたのだ。
それも、さっきのヒルバスの攻撃でダメージを受けることなく―…。ありえないだろ。と、思わせるほどに―…。
李章は、刀を片手で持っていた。
それは、自らの天成獣が宿っている李章の武器である。
「李章君!!」
と、中央の舞台の瑠璃チームのいる側から瑠璃が、李章が生きていたので安心したのか、嬉しそうに大きな声を出す。
その溌溂とした声は、中央の舞台にも、観客席にも響いた。まあ、それは、このリースの競技場の持っている仕組みによってであるが―…。
この瑠璃の声は、李章にも聞こえた。それに返事をすることはできない。その時間さえも、今戦っているヒルバスに隙を与えるという結果にしかならないのだから―…。
それでも、李章にとっては嬉しいものでしかない。最高の至福だ。今回はそれに溺れることすら許されないけれど―…。
李章は、ヒルバスに視線を合わせる。
(何とか防げました。だけど、フィルネに聞いた話では、攻撃を受けて、それを回復し、修復するために、かなりの力を使ってしまっています。全快の半分もない状態です。いくつかの攻撃で消費をしている以上、節約しながら、短期間で決着をつけないといけません。)
と、李章は、心の中で言う。
李章としては、自分の弱さゆえに、ヒルバスの銃撃を三回、体に受けてしまい、当たった場所が足を曲げたり、腕を曲げたりするために重要な場所であったために、大幅に動きを封じられてしまって、身動きがしにくかったのである。そのために、ピンチとなってしまったのであるが―…。
李章(?)の人格が、勝手にリスクのある方法で自己修復をしたのだから、天成獣から借りられる力の量の多くを消費してしまったのだ。
それでも、そのようなことをしていなければ、李章は自らの生の終わりに直面することになっていただろう。その時に、瑠璃の悲しみはどれほどのものなのか。
そう思えば、李章(?)の行動は、李章にとって、自らがしてしまった失敗を挽回することに貢献しているのだ。李章はそのことを絶対に認めないであろうが―…。
一方でヒルバスは、
(あの刀で防いだということですか、さっきの攻撃を―…。)
と、心の中で言う。
ヒルバスとしては、動揺というものが存在したのは事実であるが、警戒を解くということはしなかった。できるはずもない。
そうしながらも、李章がどうやってさっきの攻撃を防いだのか理解することは、いや、推測することはできる。
さっきは持っていなかった刀を李章は持っているのだから―…。
実際、李章は、さっきのヒルバスの攻撃を刀でガードしながら、斬ることで防いだのだから―…。
その刀には、自らの天成獣から力を纏わせて、であるが―…。
〈李章、ヒルバスが攻撃の準備をしてる!!!〉
と、フィルネが李章に念話する。
フィルネも李章と同じ視線で見ているのだ。ただし、李章とフィルネは別人格であるため、着目する点は李章とフィルネでは異なるのであるが―…。
〈わかりました。〉
と、李章は、フィルネに念話を送ると、すぐに高速で移動を開始する。
李章は、ヒルバスの攻撃が素早い実弾の攻撃と、溜めるのに時間のかかる攻撃があるということに気づいている。
ゆえに、どっちになってもいいように、素早く移動して、避けるのではなく、ヒルバスが攻撃する前に攻撃を当てるようにしているのだ。
一秒という時間をかけずに、李章はヒルバスの目の前に現れ、刀を振れば、ヒルバスを斬ることができる距離にいた。
そして、李章は刀を振るのである。ちょうど、ヒルバスが死ぬことなく、戦闘不能にできる距離で―…。
李章は、刀をすぐに上に上げ、下に向かって振る。
ヒルバスもすぐにそれに気づくが、銃撃攻撃をしても、李章の斬撃を受けてしまうのは確実だと判断し、拳銃の片方で李章の刀の攻撃を受け止めることにし、実際に、受け止める。
キーン。
金属音がなる。
(……………。)
(……………。)
と、ヒルバスと李章の間に、しばらくの間、沈黙が訪れる。
それが伝染したかのように、観客席や中央の舞台にいる誰もが言葉を失うのだった。
完全に失ったと表現すると間違いになってしまうので、そのように表現することも言葉で述べることもできない。
わずかばかりの音が、このリースの競技場を包み込む音へとなり、目立つというほどであった。それでも、誰もが、今の戦いに息をのむのであった。
だけど、ずっと、このままの状態が四角いリングにおける李章とヒルバスの戦いで続くことはない。彫刻でこのシーンを彫刻にすれば、彫刻作品が永遠となって、この状態を表現してくれるであろう。
現実にそのようなものをしている人はおらず、李章とヒルバスはどちらとも自らが出場する第十回戦第五試合に勝利することが一番に重要なことであるのだから―…。
ヒルバスが勝って、ランシュが勝つことによるチームの勝利にするか、李章が勝って、瑠璃が負けても引き分けに持ち込んでアンバイドを使うか、ということを―…。
そして、ヒルバス、李章、双方に相手から距離をとるのであった。
(そろそろ、あれを出すか。長期戦をする気はありません。ここで、私が負けるわけにもいきません。私は、ランシュ様を守護する守護者です!!!)
と、ヒルバスは、心の中で言いながら、攻撃と防御の準備をする。
一方で、李章は、
(ヒルバスの雰囲気が変わった。人格が変わるとかそういうのじゃない―…。本気になっていること、大きな仕掛けをしてくるということですか。気を付けないといけません。出し惜しみはなるべくしないようにしないといけません。)
と、心の中で、ヒルバスを警戒するのだった。
李章は、ヒルバスがどういうことをしようかということを完全に理解することはできない。理解していれば、まだマシな対応をすることが可能であろう。体の動きとかの条件によっては意味のないことになってしまうであろうが―…。
李章が一番感じたのは、ヒルバスがこれから李章に対して、大きな攻撃を仕掛けてくることと、決着をつけるために実力を完全に見せてくることであろう。
今まで、ヒルバスが第十回戦第五試合が始まって、李章に対して、手を抜いてきたわけではなく、李章の状況をある程度理解して、攻撃をしてきたにすぎない。そうだと考えるならば、これからの攻撃は李章との長期決戦を望んでおらず、素早く実力差を見せつけて、決着をつけようとしていることだ。ヒルバスの最大の力で―…。
それは、大きな攻撃をすることだけでないということは、李章は気づいていないのかもしれないが―…。
ヒルバスは右手に持っている銃を李章に向けて構える。
今度は、すぐに銃から自らの天成獣で借りた力で作った弾丸を発射するのだった。
これから、ヒルバスが想定していることは、李章を敗北へと追い詰めることだ。そのように李章に感じさせるように追い詰め、絶望を与えて、勝利させるのだ。その切り札を展開することも視野に入れて―…。
中央の舞台。
瑠璃チームのいる側。
ギーランが今のヒルバスの動きを見て、何かを理解する。
(今回の銃撃はただの銃撃ではないな。今までのは、李章の隙を突いたり、威力だけだったが、それに何かを加えるつもりか。)
と、ギーランは心の中で言う。
ギーランは、別にそこまで、確定的な根拠があって理解したわけではない。
ヒルバスが、第十回戦第五試合を開始してから銃撃した時の動作が今までの違う部分が存在していたからだ。
ヒルバスが銃撃する場合、素早く撃つのは、実弾で、時間をかけて撃つのが天成獣の力を借りたものを球状のかたちにして撃っていた。
その時、銃口から煙のようなものが出ていたが、それが見当たらないのだ。実弾と、予想していたが、そのような感じがしない。
実弾が発射されるよりもわずかばかり遅かったのだ。
そう、ギーランは、中で何かを形成して、銃弾として放ったのだ、と―…。
四角いリング。
李章は、ヒルバスの持っている銃が発射されたのが李章に向かってきたので、避ける動作をする。
李章は、その銃弾を普通に余裕をもって避けることに成功する。
(あの銃弾、そこまで避けるのは難しくなかった。何か―…ッ!!!)
と、李章は、心の中で急に緑の水晶が警告してくるのだった。
そう、李章は、さっきヒルバスが発射した銃弾による攻撃はまだ終わっていないということになる。いや、ヒルバスがまだ銃撃をしてくるのではないか、ということもありえよう。
現実は、前者の方であるが―…。
「追跡。」
と、ヒルバスは李章に聞こえないように言うと、銃弾にインプットさせていた李章に向かって行くようにしていたのだ。
最初から―…。
ゆえに、銃弾は、ぐるりと周回するようにして、李章へと再度、向かってくるのであった。
「緑の水晶。」
と、小声で言いながら、緑の水晶に解決方法を求めるのだった。
そう、今の李章では、どこから危機がくるのか確定させることができなかった。
そして、緑の水晶は、解決策を提示して、李章に送るのだった。
李章は、すぐにそれを実行に移すのであった。
李章は、ヒルバスに背を向けるように回転しながら、刀を両手で持つながら、回転切りのようなことをするのだった。
それは、タイミングよく、さっきヒルバスが放った銃弾を見事に斬ることに成功する。
その銃弾は真っ二つになり、地面に落下していくのだった。
「斬られた!!」
と、ヒルバスは驚くのであるが、すぐに銃弾を構えて、攻撃をしようとする。
だけど、李章はすぐにその場から消えるのだった。
実際に、李章は消滅したわけではない。高速で移動しただけだ。ゆえに、消えたようにヒルバスの目から見えたのである。
そして、李章が移動した場所は―…、ヒルバスの真後ろだった。
李章は、そこに姿を現した時には、すでに刀を上に向けて、構えており、すぐにでもヒルバスを斬ることができる位置にした。
李章は迷わず、ヒルバスを斬るのだった―………が―…。
「!!!」
と、李章は驚くのだった。
驚かずにはいられなかった。
「久々という感じです。私の奥手を使わないといけなくなったのは―…。五つの円盤。これで、李章の攻撃は、私には通じません。」
と、ヒルバスは言う。
そう、五つの円盤の一つが李章のさっきの攻撃を防いでしまったのだ。
【第115話 Fin】
次回、決着まではいかないが―…!!
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成してからこの部分で報告すると思います。いつ頃になるだろうか?
では―…。
2021年11月16日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2021年11月17日頃に投稿する予定です。