第115話-1 五つの円盤
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
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宣伝以上。
前回の『水晶』のあらすじは、李章の中にある別の人格が登場して、ピンチを脱するが、李章によって、元の人格に戻るのだった。
第115話は、分割することになりました。地の文が大量になってしまったためです。
【第115話 五つの円盤】
四角いリング。
そこでは、第十回戦第五試合がおこなわれている。
李章とヒルバスの試合である。
ヒルバスは、
(表情が前のようになった。言葉遣いも丁寧な感じに戻った。何なんですか、李章は―…。二重人格者で―…、もう一つの人格を嫌っている。理解したとしても疑問に思ってしまう。それよりも戦いに集中しないと―…。)
と、心の中で言う。
ヒルバスは、警戒を強める。
今すぐ、攻撃することもできるが、李章の口調の変化、さっさの異様な強さもありヒルバスは迂闊に李章に攻撃することを躊躇ってしまう。
理由としては、攻撃して、ヒルバスが不利な状況になるようであれば、かえって、自らの勝利を失いかねない。この勝利を失うということは、第六試合でランシュが確実に勝利して、チームとしての勝利数を同数にして、再度、ランシュがもう一試合を戦わないといけないということになるからだ。
その可能性がないようにするにこしたことはない。
ゆえに、ヒルバスは、自らの勝利しかないと感じ、そのように行動する。
中央の舞台。
瑠璃チームがいる側。
ここでは、少し前から話し合いがおこなわれるほどだった。
なぜか、というのなら―…。
「李章君が―…、あんな言葉遣いをするなんて―…。イラつくことでもあったのかな~。」
と、瑠璃は言う。
瑠璃としては、自分でもアホなことを言っているという自覚は存在する。李章の様子が変であったことはすぐに気づくことができた。
それでも、何もすることができなかった。いや、してはいけないと思った。折角、アンバイド、セルティー、礼奈、クローナが勝利をしてチームへの勝利を近づけるために貢献してくれたのだから―…。と、同時に、李章がおかしなことになっている理由がわからなかった。
そう、瑠璃は知らないのだ。李章が過去におかした事件に関して―…。
まだ、当時は瑠璃自身も幼く、瑠璃の育ての親である美陽と隆道がこのことに関して瑠璃に話すのは良くないと判断して、一切話さなかったのである。理世も同様に知らないことである。
ゆえに、瑠璃は、李章の口調やいきなり強くなっても、どういうことか理解できない。
だけど、李章(?)から李章へと人格が戻った時、李章が何かさっきまでの人格を嫌がっていることには気づいた。瑠璃は李章のことが好きであるがうえに気づいたのだ。その好きな人のことを知りたいがために―…。
瑠璃は、心配な表情を心の中でする。表情は惚けたようなものをしていた。
「何を惚けたことを言っている。何がどうなってあのような喋り方になったのよ。人格が変わる何かがあるの? 天成獣が特殊、ということ? 全然、わからないんだけど―…。」
と、瑠璃の近くにいるミランが言う。
ミランにとって、李章の喋り方も変わったのであるが、雰囲気も変わったことが理解できた。雰囲気の変化に関しては、口にはしなかったが―…。する必要もないと感じて―…。
李章が見た目ではなく、人格のようなものが変化した理由はミランにもわからない。
謎が解けたようなスッキリとしたものは一切感じない。むしろ、それとは逆のもやもやした感じがずっと心の奥底に残ったまま。これが消えるということはしばらくの間、なさそうであるが―…。
それでも、予測することはできる。
まず第一に考えられるのは、李章の武器に宿っている天成獣が特殊な能力があるかということである。そう、大人しい人を好戦的な性格に変えるような―…。
そうだったとするならば、自らの武器を握ってから性格が豹変するように変わるだろう、とミランは考える。このことは心の中の言葉にはしなかったが、すぐに頭の中で思い浮かぶことだ。
ミランは、天成獣の能力で適合者の人格を豹変させるのは聞いたこともないし、会ったことすらない。この異世界においても、一人ぐらいは存在しているのではないかぐらいには、可能性として思ったりもできる。
現実には、武器を握って、正確が豹変することなどはありえないのだが―…。ミランは聞いたことがないと理解していても、李章の口調や雰囲気の変化を現実に目の当たりにしたのならば、そのような人格を変化させる天成獣がいてもおかしくないと思う。
現時点で、ミランに、李章の口調や雰囲気の変化の答えを結論付けることができない。
そう、ミランの知っている水晶以外のことを知っていないと―…。
李章の口調や雰囲気の変化の答えを知っているのは、魔術師ローのみなのだから―…。
イルーナもローが李章の口調や雰囲気の変化の答えを知っていることに気づいているが、それでも、ローとの関係上、そのことについて話されることはないと結論付けているが、ミランはそのことに気づいていない。
ローが話さないという面ではなく、李章の口調や雰囲気の答えを知っているということがわかっていることに対して―…。
「私にもそれはわからない。でも、大丈夫、李章君なら―…。」
と、瑠璃は、無理矢理に自信をもたせて言う。
瑠璃としても、今の状況でどうなるかはわからない。李章の口調が変わる前に戻ってしまった以上、ヒルバスに対して、また圧倒的に不利になるのではないだろうかと思ってしまう。
それでも、李章に勝ってほしいという気持ちは本物である。
「今の状況をわかって―…、言っていないわけではないね。それでも、勝利を信じて勝つのなら、それは奇跡というもの。答えは勝敗が決した時にそれを目にした人間なのよね。」
と、ミランは言う。
ミランは、最初、「今の状況をわかっていっているの」と言おうとしていた。
それはそうだろう。なぜなら、李章の口調や雰囲気が変化する前の状態では、ヒルバスに圧倒的な実力差を見せつけられて負けそうになっていたのだから―…。明らかに格の違いというものがあり、かつ、勝利なんて奇跡が起きても、可能性としては半々と思わせるほどに―…。いや、その可能性よりも低いかもしれないが―…。
ゆえに、この状況を理解できていない瑠璃に対して、厳しく現実を言おうとした。
しかし、瑠璃の表情には、強い、何か信念のようなもの、李章が圧倒的に不利であることを理解したうえで、それでも李章の勝利を信じているというのをミランに感じさせた。
だからこそ、ミランは言いきってやろうとも感じたが、結局、やめてしまうのだった。
それにかわって、厳しいことであるが、李章が勝利するのは奇跡でしかないという。それに加えて、勝利を知ることができるのは、勝敗が決する、そう、ランシュが企画したゲームの審判であるファーランスの勝者宣言をする時である。
「うん。」
と、瑠璃は頷くのであった。
四角いリング。
第十回戦第五試合がおこなわれている。
「さっきのようなことには驚きました。何がどうなって、ああなったのかに関しては、気になってしまうことですが、それでも、私がやることは決まっています。それは―…、第十回戦第五試合に勝利することです。あと、さっき私の三発の銃弾を受けたのに、まだ立つことができるのですか―…。まあ、立つのがやっと言った方が正しいのかもしれませんが―…。」
と、ヒルバスは言う。
ヒルバスとしては、李章の口調や雰囲気の変化に対しては、気になることではあるが、それが今、どのような試合の結果へと向かうのかはわからない。人である以上、未来を完全にみることなどはできないのだから―…。
ゆえに、李章のあのような変化を気にしていても仕方がない。今の状況でどうやって李章を倒すのか、いや、どうやって討伐するのかが一番重要なものとなる。
ならば、慎重にきす必要があると同時に、攻めないことには意味がない。
すでに、攻撃の準備はしている。ヒルバス自身の武器である銃を李章に向かって構えるのだった。両手に持っている銃、二つとも―…。
二つの銃の銃口から、煙のようなものが出され、二つの銃の間で、球状のものが形成させる。それは、回転しながら、前に向かって少しずつ大きくなるのだった。
「この一撃は決して、李章では避けきれるものではありません。」
と、ヒルバスは言う。
これからヒルバスがしようとしていることは、このリースの競技場に来て、今の第十回戦第五試合を見ている人々であれば、簡単に理解することができよう。
そう、大きな銃から発射される攻撃で李章を丸のみにして、倒そうとしているのだ。
この一撃は、四角いリングを覆っている透明な壁のようなもので覆われているおかげで、可能であり、実際、それがなかったのならば、別の威力の少ないもので効率良く倒さないといけないのだから―…。
李章はヒルバスにとって、討伐対象であり、李章を殺したからと言って罪に問われることはない。ランシュが企画したゲームの勝利条件には、殺してはいけないと書かれておらず、相手を殺すことが勝利条件の一つとして、決められているのだ。瑠璃がそれを飲んでチームとして、参戦し、李章も属している以上、その条件に合意したことになる。
ゆえに、その条件にあっても、自身が受けた責任が成り立つということだ。まあ、再度言うことになろうが、現実世界において、このようなことが成り立つことは国によって違うかもしれないが、瑠璃、李章、礼奈が暮らしている国ではそのランシュの企画したゲームの相手を殺すということがゲームの条件として、法もしくは法律で認められることはない。
異世界においても、すべての国や領主がいる場所において、瑠璃、李章、礼奈の暮らしているような国の法や法律と同様のルールがあるところもあるし、ないところにはない。リースは、ないほうに該当する。そう、ランシュの企画したゲームの勝利の条件における一つとしての、相手を殺すことを条件とし、その条件を飲むことで法律上、認められる。
なぜかという理由に関しては、未だにわからないし、誰かに聞いてもまともな理由が返ってくることはないであろう。慣習としか言いようがない。将来においては、そのようなルールは変わるかもしれないが―…。
(……何か仕掛けてくる気ですか。でも、十分、ああいう攻撃なら、使えます。)
と、李章は、心の中で言った後、自らの武器に宿っている天成獣に話しかけるのだった。
〈いきます、フィルネ。〉
〈わかったわ、李章、刀を抜きなさい。〉
李章の武器である刀に宿っている天成獣のフィルネと念話をし終えると、李章はすぐに刀を引き抜くのだった。
ヒルバスの攻撃を防ぐために―…。
中央の舞台。
ランシュ率いるチームがいる側。
ランシュは、今の四角いリングの戦いを見つめるのであった。ヒルバスと李章を見ながら―…。
(なかなか面白そうな試合になってきたな。あの対戦相手は、人格が変わるようだけど、今のままじゃ、確実にヒルバスの勝ちだ。まあ、面白いものが見られるからいいか。ヒルバスの対戦相手は、とんでもないハズレくじを引いたのだから―…。)
と、ランシュは心の中で言う。
ランシュとしては、ヒルバスが勝つということはほぼ確定事項のようなものだった。それでも、李章の人格の変化、雰囲気の変化を見た後においても、その変化が戻ってしまったのであれば、どうってことはない。その人格を目覚めさせないように、一気に倒してしまえばいい。そういうことでしかない。
ヒルバスは、ランシュがどうなるかわからないから攻めるにしても、慎重になっているが、ランシュが今の同様な状況であれば、果敢に攻めていたことだろう。
ランシュはヒルバスよりも実力があり、かつ、李章の人格を変化させる前に決着をつけることは可能であろう。いや、確実にできていてもおかしくはない。
だけど、ランシュよりも弱いヒルバスである以上、ランシュの思っていることを完璧にやれる可能性は場合によってないと言ってもいいだろう。
結局は、ヒルバスが何とかするであろうとランシュは判断し、四角いリングを見続けるのであった。第十回戦第五試合を―…。
四角いリング。
すでに、ヒルバスが銃口から集められた球状のものは回転しながら、少し大きくなる。
質量の考えなんて、この異世界には存在しないと思わせるほどに―…。
現実は、この世界に質量は存在するし、人によって見つかっていなかったとしても、そこに存在する。現実世界と同じであると思っても大丈夫なぐらいには―…。
そして、ヒルバスは、十分に攻撃をすることが可能なほどぐらいの威力になったので、ヒルバスは双方の手に持っている銃の引き金を引くのであった。
そうすると、球状のものが李章に向かって、光線となり、放たれるのだった。
それは、李章へと向かいながら、光線の大きさは、李章をすべてを飲み込んでしまうほどの大きさになる。
李章は動かない。
李章はわかっている。
これを避けられないことを悟っている。
そして、ヒルバスの放った光線は、李章を飲み込むのであった。
第115話-2 五つの円盤 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成しだい、この部分で報告すると思います。
では―…。
2021年11月12日 次回の投稿分が完成しました。2021年11月13日頃に次回の投稿をおこなう予定です。