第114話-1 やっと表に出ることができた
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレス以下となります。
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宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、第十回戦、最終回戦、第五試合が始まる。李章とヒルバスの試合は、ヒルバスの攻撃が李章のところへと―…。
第114話は分割することにしました。理由は、何となくだけど、文章量が増えそうな予感がしたからです。
李章がいた場所。
いる場所かもしれない。
そこには、煙のような、白いブワブワと上空へと上がっていっているのではないかというものが存在する。
その存在のせいで、李章のいる場所を見ることができなくなっている。
ヒルバスも観客席にいる者も、中央の舞台にいる者もそんな状態であった。
その煙のようなものは、数分の間、李章のいる場所の視界を見えなくしてしまうのだった。
【第114話 やっと表に出ることができた】
ヒルバスは銃の構えを解くことはしない。
できるはずもない。
してしまい、もし、李章が生きているのであれば、隙を与えることになる。
隙イコール敗北という結果しかもたらさない。
厳密に言えば、隙イコール敗北ではなく、ニアイコールというのが正しいのであろう。隙があったとしても相手の攻撃が当たる前に対処すれば、ちゃんと防げる場合も存在するのだから―…。
そして、ヒルバスは、完全に李章を倒せたかということを確かめることはできておらず、生き残っている可能性も捨てきれない。
そうすれば、次の攻撃と李章を倒すための手段を講じないといけない。
(私は、ランシュ様の守護者なのですから―…)
と、ヒルバスは心の中で言う。
このランシュ様の守護者とヒルバスが自認するのは、決して、ランシュの腰巾着になりたいからそう思っているのではない。ヒルバスとしては、ランシュに対して、信頼というか付き従うべき主君であると思っているのだ。
ランシュは、天成獣の宿っている武器での戦いでは強く、かつ、特殊な部類になっており、さらに、人としての正義感が強い。それでも、決して完璧という人物ではなく、時々、馬鹿なことをやらかしてしまうほどのおっちょこちょいである。
その方が人としては信頼できるし、本当の意味で信頼関係を築くことができるのであろうが―…。そう、何かもが完璧すぎて、かえって周りから避けられるような人よりもいいのかもしれない。弱点があった方が、親しくはなりやすいものであるから―…。
そういう弱点があり、人として真面かはわからないが、なぜか信念を持っている以上、支えないといけないとヒルバスは思ったのであろうし、それが長年の友人と言える関係であり、気が合いそうだと思ったのだから―…。
まあ、悪い意味ではなく、面白い人材であり、そのおっちょこちょいがいい具合にヒルバスのおもちゃとしても楽しそうに感じるのだ。
ヒルバスは、心の中で言いながらも、李章に対する警戒は一切、怠っていない。
「!!」
と、ヒルバスは気づく。
わずかであるが、音がしたのだ。
その音は不自然なのだ。自然の、風の音、人が騒ぐ音ではなく。風を切る音。
そう、何かが物凄い勢いでヒルバスに近づいていた。
ヒルバスの勘では、危険なものと判定された。
ゆえに、その予感がするヒルバスから見て右側を見るのであった。
そう、そこには李章がいて、すでに蹴りの攻撃をし始めていたのだ。蹴りは左足でしている。
(仕掛けてきましたか!!)
と、ヒルバスは、心の中で言う。
ヒルバスは、それでも、コンマ一秒もかからない時間に対策を浮かべ、それも感覚的なものであり、直感的なものであるが、すぐに実行する。迷っている時間も、長く考えている時間も存在しないのだから―…。
そう、頼れるものにでも縋りついて、今の自分にとって良くない状況に対処して、自分にとって良い状況にもっていかないといけない。それが、自分に課した使命なのだから―…。
ヒルバスは、李章が見えている目の前で消えるのであった。
(消えた!! 一体、どこへ移動したのですか!!!)
と、李章は一瞬、動揺し、冷静さを欠いてしまうが、すぐに、自らが何をすべきかということを思考できるぐらいになる。
実際、ヒルバスは消えたのだ。
いや、そのように見えたというのが正しいであろう。
この世界からヒルバスという存在が消えたのではないのだから―…。
要は、ヒルバスが李章の目にも負えない速さで移動したからだ。
なぜ、ヒルバスがそのようにしたのか理由は誰もが推測のつくことでしかない。ただし、どのような方法で、どういう位置で、どの瞬間なのかというのを完全に当てることはできない。それは、人が完璧に他者とシンクロしてその心の中を理解できないからだ。いつも同じ時間、同じ視点で過ごしていないことを例にあげれば、理解できるかもしれないであろう。
李章は、
「緑の水晶。」
と、小声で言う。
すぐに、緑の水晶の効果が発揮される。
緑の水晶の能力は、危機察知だ。
緑の水晶としても、今、危機を李章に知らせようとしていたからだ。実際に、緑の水晶が意思というものを持っているのではなく、危機というものを察知して、持ち主に知らせるようにプログラミングされている方が正しい表現となる。
その緑の水晶の危機察知からによる自らの最悪を回避する最もベストな答えが頭の中に送られ、そのように実行するのであった。その判断の過程で疑うということは禁物でしかなかった。そう、一瞬でも疑えば、自分に待っているの死という最悪の結末でさえ存在するのだから―…。
緑の水晶の言う通りに動いて失敗するのか、何もせずに失敗するのか、緑の水晶の言うことを聞かずに動いて失敗するのなら、生き残る可能性が高い方にするべきであろう。
そう、緑の水晶の言う通りに動く方が生き残る可能性が高いのだ。迷いすら抱かずに―…。後は勘というものに頼って―…。
李章は、蹴りの動作をすぐにやめて、足を地面につかせ、体を自分から見て右側に動かすのだった。
そうしながらも、左手を離すように左側へと動かす。
そうすると、李章の脇腹の横をちょうど銃弾が通過していくのであった。
もし、李章が緑の水晶の言う通りに動かなければ、李章は銃弾を受けてしまっていたのかもしれない。
そして、李章に向かって放たれた銃弾は、四角いリングの外へ通過していく過程で、透明な壁に衝突し、すり抜けることができたが、威力は零となり、その真下へと落下していくのであった。
その時、李章は見てしまうのだった。
(実弾!!)
と、心の中で驚いてしまうのである。
動揺もしている。確実に、だ。
李章のいた世界にとって、銃というものが恐ろしい武器であることは知られているし、知らないものはほとんどいないであろう。
この異世界でも銃は普通に流通している地域がある。それでも、製造に関しては一部の地域と限定的である。それでも普及範囲ということに関しては、広くなっている。
製造地である国以外の銃に関しては、多くの兵士に装備させることができないために、希少性をもっており、弾薬の数の関係もあり、あまり多く動員もできないし、そうそう銃を放つということはできない。ゆえに、銃が勝敗を分けるのではなく、相手の動揺を誘うために使われることが専らなのだ。
そして、ヒルバスの武器が銃であり、それは既成品であれば、実弾のみということになろうが、ヒルバスも天成獣の宿っている武器を扱うことができる以上、その武器を用いるのが妥当であろう。
要は、ヒルバスの二丁の拳銃は、天成獣が宿っているのだ。
天成獣の宿っている武器の中で、銃というのはそれほど珍しいものでもなく、形状に関してはさまざまというのが正しいであろうが、銃の素人から見て、どれもほぼ同じものでしかないと感じる。銃の形がかなり異なればそれが違う形状であると判断することはできるであろうが―…。
一方で、銃を武器として、その中に天成獣の宿っているものに関して、その強さというものは、それぞれであり、実力も扱う人によって強かったりも弱かったりもする。
ならば、ヒルバスがどちらに入るのか?
答えは至極明確なことである。
ヒルバスは、強い方に分類される。
ゆえに、李章はヒルバスに攻撃を当てられていないのだから―…。
まあ、第十回戦第五試合が始まったばかりなので、ありえるということであろうが―…。
(前のは、光線のような感じでしたが、今のは、実弾を使っていました。一般の銃としても、天成獣の宿っている武器としても使えるということですか。)
と、李章は、苦虫を噛みしめるかのように心の中で思う。
李章としては、実弾と天成獣から借りておこなわれる銃撃の双方のどちらかおよび両方ともを選択されるそれを判断するのはかなり難しいということは予想することができる。
なぜなら、ヒルバスの銃撃のスピードは速く、対処するための判断に与えられる時間がほとんど存在しないのだ。迷うという時間に関しては、ないと言った方が正しいのかもしれない。
ヒルバスの腕が優れているということの証拠なのであろう。
また、李章は、ヒルバスの攻撃に対して、警戒を一切解くということができない。緊迫した状況は第十回戦第五試合が開幕した時点からすでにそのような状態になってしまっているのだ。
ヒルバスにおいてもそうであろう。
李章は、すぐに構えて攻撃にでようとする。
一方で、ヒルバスは、
(そこで、少しだけ止まっている時間すら、私は李章に与える気などはありません。姿があり、動きを止めているのであれば、私は、迷わず攻撃を仕掛けさせてもらいますよ。)
と、心の中で言うと、すぐに攻撃をするのであった。
すでに、攻撃を完了させている。音をほとんどさせずに銃撃を二発おこなったのだから―…。
銃弾は、すでに李章へと到達しようとしていた。
緑の水晶もそれが迫って、動くべきを知らせようとする。
しかし、それを知らせるという時間によって生じるラグが、李章の判断を結果的に遅らせるという結果となる。
(!!)
と、李章は、緑の水晶による危機察知に気づく。
が、同時に、李章は両腕に感じたことのない痛みを感じるのだった。
李章は気づいていないようであったが、李章の両腕の腕を曲げる部分に銃弾が貫通したのである。それも骨の中にある曲げる部分を破壊するかのようにして―…。
これで、李章は自らの武器である刀を持つことができなくなったのだから―…。
そして、ほんの数秒で気づくのであった。
自分が撃たれたということに―…。痛みと言っていいのか、それとも、それ超える叫ばざるを得ない何かであるのかというものに―…。
「李章君!!!」
と、瑠璃は叫ぶ。
瑠璃としては、李章に死んでほしくない。
ヒルバスの武器を見た時点から、李章が死んでしまう可能性があると気づいていた。
気づかないはずがない。瑠璃だけではない。瑠璃チームの誰もが銃ということを認識することができたのだ。どういう武器かは、実際に、試合を見て理解することになるのが何名かいたが―…。
この地域では、銃という武器自体がかなり珍しいという部類に入るのだから―…。
瑠璃は、不安で叫んでしまう。
その言葉は、李章の名前を呼ぶだけの言葉だけかもしれないが、それでも、気持ちというものが強いということはわかる。わからないはずがない。
それでも、李章の降参させようとはしなかった。
瑠璃は思い出しているのだ。自身が第七回戦第六試合のレラグ戦で、殺されそうになる戦いをしたことを―…。
ヒルバスがランシュの部下の中でかなり重要な位置を占めている以上、李章が助かるためには、ヒルバスに勝利するしかないという可能性に―…。
ゆえに、瑠璃は、李章の名前以上に声を出すことはできないし、しても意味がない。
(実弾!!!)
と、李章は、心の中で言う。
李章は手を上げようとするが、手を上げることはできない。
それでも、時間が経過すればそれをすることは可能であろう。
生の属性で、無理矢理自己再生力を上昇させれば―…。
しばらくは、刀を使っての戦いはできない。
それだけが今、李章にとってわかる事実なのだから―…。
「これで、あなたの武器である刀を握ることはできない。降参という選択肢も認めさせる気はありません。さて、あなたはどうするのですか。何もできないとは思いますが―…。」
と、ヒルバスは言う。
ヒルバスとしては、李章がうまく実力を発揮させて戦うことができないと思っている。腕を動かせないようにしたのだから―…。
蹴りの攻撃だって威力が下がる可能性が存在した。腕を動かすことによって、蹴りの攻撃に威力を加えることができるからだ。
それでも、ヒルバスは李章が降参するとは思えなかった。それだけは確信に近いものを持つことができた。
李章は立ち上がりながら、心の中で考える。
(私が負けるわけにはいきません。それに、私の対戦相手は、私を殺すと言っていたのです。降参なんて認められないのは当たり前のことです。意地でも勝利しないといけません。)
と。
そして、李章は再度衝撃に襲われるのだった。
その場所は、左足であった。
(足が撃たれた!!!)
と、李章は心の中で言うのだった。
第114話-2 やっと表に出ることができた に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回の投稿の関しては、次回分が完成しだい、この部分で報告すると思います。
では―…。
2021年11月6日 次回の投稿分が完成したので、2021年11月7日頃に次回の投稿をしたいと思います。