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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
240/748

第113話-1 予想通りの対戦相手

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』は、ついに第十回戦、最終回戦、第四試合の決着がつこうとしていた。クローナの風の攻撃が天成獣の宿っている武器を扱う者が最終的に習得することができる陣によって形成された鉄壁を斬るのであった。

第113話は分割することになりました。

 【第113話 予想通りの対戦相手】


 巨大鉄壁は真っ二つにされる。

 そのことに驚かない者たちがいるはずもない。

 それを成したのが生の属性であれば、驚きとすごさで終わるのであろう。

 だが、これをしたのは生の属性の天成獣の宿っている武器を扱っている者ではない。

 風の属性の天成獣の宿っている武器を扱っているクローナなのだから―…。

 驚きとすごさに加えて、ありえないというものが混じってくるのである。

 陣というものが、完全に強いというわけではないが、それでも、簡単にやぶることもできないし、防御であっても、攻撃の技であっても、強力なことに間違いはないのだから―…。

 そして、その光景にメルフェルドは驚くしかなかった。

 それと同時に、ほんの数秒思考を停止してしまい、クローナの風の攻撃を受けてしまうのだった。

 メルフェルドは、対処ができずに、四角いリングの外へと飛ばされてしまうのだった。

 四角いリングの外に飛ばされたメルフェルドをヒルバスが見事にキャッチするのだった。

 その時、鉄壁は見事にゴーンと音をさせながら、再度鉄壁の形になったのである。ただし、斬れた部分がなくなったわけではなく、斬れた部分の鉄壁の上の部分が下の部分にズレもなく重なったということだ。

 このような鉄壁の光景とメルフェルドが四角いリングの外に飛ばされたことにより、ランシュの企画したゲームの審判であるファーランスは勝者を宣言するのだった。

 「勝者、クローナ!!」

と。

 観客は歓声をあげるのだった。

 こうして、第十回戦第四試合は、クローナの勝利という結果になるのだった。


 中央の舞台。

 ランシュ率いるチームがいる側。

 「メルフェルド、大丈夫ですか。」

と、ヒルバスは、キャッチしたメルフェルドに話をかけるのだった。

 「申し訳ございません。ヒルバス様、ランシュ様。鉄陣が斬られてしまったことに驚いて簡単に負けてしまいました。」

と、メルフェルドは俯きながら謝るのであった。

 メルフェルドとしては、悔しさしかなかった。天成獣の宿っている武器での戦いで陣の技を習得するということは、実力があるということ一つの重要な証拠であった。

 陣をいくら使えるとしても、戦闘では勝てない時もある。だけど、陣の強さがあるのは、戦闘の経験を積んでいるものであれば、事実なのだから―…。

 それでも、メルフェルドに甘さがあったとは言えないが、戦闘や戦いにおいて絶対の勝利が存在しないということが未来へと向ける明らかであり、過去においては勝者と敗者、もしくは引き分けという結果しかないのだ。

 「メルフェルド、あなたに対して怒る気もありません。後は、私たちに任せてください。」

と、ヒルバスは言う。

 ヒルバスとしても、メルフェルドが負けることは予想外の出来事でしかない。確実だとはいえないまでも、クローナに勝利することは誰もが予想しているぐらいに可能性の高いことであった。

 (この世に、未来において絶対は存在しない、ということですか。)

と、ヒルバスは心の中で言うのだった。

 「ヒルバス様、私はすでにちゃんと立てます。」

と、メルフェルドが言うと、

 「そうですか。わかりました。」

と、ヒルバスは答え、メルフェルドを離すのであった。

 メルフェルドは、ヒルバスに一礼すると、四角いリングの近辺まで進む。

 クローナは、その様子に警戒をするのであるが、メルフェルドは両手を上げて、襲う気はないと示すのであった。

 「クローナさん、私は四角いリング(フィールド)の外に出されてしまいましたので、私の負けです。」

と、メルフェルドは、そう言いながら―…。

 クローナは、メルフェルドの態度と言葉を危機、表向きは警戒を緩める。それでも、心の奥底では警戒する姿勢を崩さないようにする。

 メルフェルドは、これ以上、クローナが警戒を解くことはないと判断したので、ゆっくりと話始めるのだった。

 「クローナさん、あなたと対戦することができてよかったです。もし、今度、リースの城で一緒にする機会があれば、今度こそ負けません。」

と、メルフェルドは言う。

 メルフェルドとしては、久しぶりに真剣に戦うことができたということもあるが、今度は殺し合いという側面なしで、純粋で勝負という形で戦いたいと思うのだった。だから、その時には、クローナが戦ってくれるのかということを期待するのだった。

 「ええ、いいですよ。」

と、クローナは返事をするのだった。

 メルフェルドは、確かに、クローナを殺しにくるようなことをしたが、それでも、恨むことはできなかった。クローナ自身も、ランシュが企画したゲームのルールをしっかりと理解した上で参加しているので、恨むことはできなかった。

 だが、そのような条項なんてなければいいと思うことは多々あったし、その条項を恨みたいと思うこともあった。

 それでも、気にしていて、どうなるかはわからないので、対戦相手に勝てばいいと思い、その思いや瑠璃、李章、礼奈が育った世界を救う手掛かりを得るためにローから協力するように言われて、了承している以上、ランシュが企画したゲームで生きて勝利することが重要だと判断したのだ。

 だから、メルフェルドがランシュ率いるチームである以上は、恨みたいけど、本人の性格もあったのか、ゲームのルールをしっかりと聞いて参加している以上、そうできなかった。

 それでも、メルフェルドとは、個人としては、仲良くなれそうだとクローナは思うのだった。

 そして、メルフェルドとクローナ、両者の言うべきことが終わったのか、クローナは自らのチームのメンバーがいる場所へと向かい、メルフェルドはランシュのいるところへと向かうのだった。

 「ランシュ様、申し訳ございませんでした。」

と、メルフェルドはランシュに対して、頭を下げ、謝るのだった。

 「そうか、わかった。処罰自体はないし、メルフェルド自身を責任を追及する気はない。後はゆっくりと試合を観戦していてくれ。」

と、ランシュは言う。

 ランシュとしては、自身のチームの他のメンバーも敗れている以上、メルフェルドだけに処罰を下しても意味がないことは理解しているし、それに、そもそも敗北したからと言って処罰を下す気はない。あくまでもゲームであるし、ルール違反をして、セコいことをして勝とうとしているわけではない。

 さらに、リースの住民に過剰に危害を加えているわけではない。アガランダは例外であるが、彼自身もリースの住民に迷惑をかけたいとは思っていないことをランシュは知っている。

 ランシュは一つだけ息を吐いて、切りかえるのだった。

 「わかりました。」

と、メルフェルドは返事をして、第十回戦の残りの試合を観戦するのであった。

 メルフェルドがランシュから離れると同時に、ヒルバスがランシュの近くへとやってくるのであった。

 「ヒルバス、次は任せたぞ。」

と、ランシュが言うと、

 「はい、ランシュ様。」

と、ヒルバスは答え、四角いリングへと向かおうとする。

 しかし、四角いリングはさっきの第十回戦第四試合で少しだけ傷ついていたので、修復を開始していたので、四角いリングの中へ入ることができなかった。

 (少し待ち時間ができますか。)

と、ヒルバスは、心の中で言うのだった。


 観客席の中の貴賓席。

 アングリアには、満面の笑みを浮かべる。

 「今日は、本当に良い日だ。私にとっての望みが叶えようとしているようだ。今まで、二年間、私が受けた苦行のような日々を送ったために、天が与えてくれたのであろうな。」

と、アングリアは言う。

 アングリアは、ランシュ率いるチームが負けて、瑠璃チームが勝利することを望む。

 なぜなら、アングリア自身が再度リースの中央での権力を掌握して、今度は完全に握って、リースの永久不変に自分が裏で支配することが可能になるのだから―…。セルティーのような存在を操り人形にするのは簡単だし、セルティーがリースの住む人々の姿を見たくても見えないようにするのも、都合の良いように言うのも難しいことではない。

 アングリアたちにとって都合の良いことがセルティーにとって聞けるリースの情勢だということにしておけばいいのだから―…。セルティーをリースの城から出さない。面会は、アングリアたちが指定した人物のみ。容易なことだ。

 「アングリア様。少しだけお耳に挟んで欲しいことがあります。」

と、アングリアの筆頭執事であるメルギエンダが囁きながら言う。

 「何だ。」

と、アングリアは言う。

 アングリアの気持ちとしては、

 (ここで茶々を入れるな。折角、俺の気分が良いのだからよぉ~。)

と、心の中で思うのだった。

 それでも、メルギエンダは忠実な部下であると思っている。なぜなら、アングリアにとって、メルギエンダは何でも言うことを聞いてくれ、実行してくれるのだから―…。

 「今、ハルギア様の使者から連絡があったのですが、なぜか、一部の我々の兵士たちが行方不明となっているのです。」

と、メルギエンダは言う。

 「そうかよ。ハルギアの野郎。折角、あいつをランシュを倒した後で、宰相へとしてやろうとしているのに、何、自分の兵士の一部を行方不明とかいう、馬鹿な事をやっているんだ。アホか。で、メルギエンダから見てこの状況はどう思うんだ。」

と、アングリアは、ハルギアに対して悪態をつきながらも、メルギエンダに尋ねるのであった。

 アングリアは、メルギエンダの言うことは、いつでもアングリアの危機から救ってくれるのだ。その実績が多いために信頼しているのだ。依存するほどに―…。

 「そうですね。何者かが我々の今日の動きを察知しているのかもしれません。それで、アングリア様のことを恨んでいる誰かさんが我々の行動を阻止するために動いているのだと思います。ランシュ側の協力者かもしれません。」

と、メルギエンダは、自らの推測を言うのであった。

 「そうか、わかった。でも、そのような動きは微々たるものでしかないだろう。だから、今は、俺らの壮大な計画のためにそんな些細な事を無視しろとハルギアに伝えろ。」

と、アングリアは、メルギエンダに伝え、ハルギアの使者に伝えるように命令するのだった。

 「かしこまりました。」

と、メルギエンダは言うと、すぐに、ハルギアの使者がいる場所へと向かうのだった。

 (アングリア様。あなたはやっぱり稀代の愚か者です。)

と、メルギエンダは心の中で思いながら―…。

 メルギエンダの心の本音というものを今は語る必要はない。


 中央の舞台。

 瑠璃チームのいる側。

 瑠璃とクローナは抱き合いながら、クローナの勝利を喜んでいた。

 ギーランは、クローナに向かって言う。

 「よく、相性の悪い相手に対して勝利をすることができたな。前に倒した経験でもあるのか。」

と。

 クローナは、過去のことを思い出しながら、

 「う~ん、前に鉄の属性を操る人と戦ったことはあります。その時に白の水晶(すいしょう)で透明の刃を作ったことがあるので、その刃を作って、それを風で飛ばして、鉄を斬り、斬ったと同時に白の水晶(すいしょう)で作った透明の刃を消滅させて、最後は、メルフェルド(対戦相手)に風の攻撃によるダメージを与えたということ―…。本当、この攻撃は、とっておきだから、一回やってしまうと…ね。」

と、言うと、体勢が崩れるのであった。

 近くにいた瑠璃が支えることで、クローナが倒れることはなかった。

 「ありがとう、瑠璃。」

 「どういたしまして。」

と、クローナが体を支えてくれたお礼を言うと、瑠璃は返事をするのであった。

 「クローナちゃんは、しばらく休んでいた方がいい。」

と、ギーランが言うと、瑠璃がクローナを中央の舞台の安全なミランの近くへと運ぶのであった。

 ミランは、その様子を見て、どういうことかを理解できたので、何も言わなかった。言う必要もないと感じたのだ。

 そして、一方で、アンバイドは、

 (この回戦は、今のところ俺たちチームの全勝といったところか。だが、これから登場するのは、俺でも本気で最初から戦わないと、勝つことができないような者たちだ。そして、こちらの出場するのは、李章と瑠璃の二人だ。俺らが第六試合で負けにならないためには、李章、お前の勝利が重要となる。)

と、心の中で言う。

 試合に出場する順番を決めた時、瑠璃が第六試合となっていたので、李章が第五試合に出場することになる。自動的に―…。

 そして、アンバイドは続けて、

 (第五試合に出場してくるのは、ランシュの腹心であろうさっき、チームの一人をキャッチした男か。強いのはわかるが、情報がない以上、李章の方が不利なのは間違いない。)

と、心の中で不安になるのだった。

 ヒルバスの情報は、瑠璃チームの誰もが持っていないし、セルティーもヒルバスが戦っているところを見たことがないのでわからない。そうなってくると、李章の戦いを何度も見ているであろうヒルバスが有利になるのは必然のことであった。

 そして、

 「第十回戦第五試合に出場するそれぞれのチームの選手は、四角いリング(フィールド)に入場してください。」

と、ファーランスの言葉が聞こえるのであった。


第113話-2 予想通りの対戦相手 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿は、2021年10月29日頃を予定しています。


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