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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
24/745

第17話-2 悪夢は終わるもの

前回までで、文字数が10万字を突破しました。

あらすじは、瑠璃、李章、礼奈、アンバイドはナンゼルらの襲撃者の集団を撃破することに成功する。一方で、魔術師ローはクローナという少女に会う―…。

 ~ view クローナ~


 私は一年ほど前、暮らしていた村はある集団によって滅ぼされました。

 そのとき、私は連れ去られ、透明な筒状のものにずっと液体で満たされた物の中にいました。

 その中での意識はほとんどありませんでした。

 ああ、私…この人たちの実験によって殺されてしまうのかな。

 だって、私以外のほかの子は苦しみながら死んでいったのだから。

 それを見たこの人たちは、

 「なんだ、死んだのか。さっさと処理してしまえ。……これでもダメなのか。これだから、女は―…。」

と、よく言っていました。

 女をバカにするのは頭にくるし、このような人を人として扱わない人に対しては、もし私に力があるのなら、懲らしめてやりたいです。

 そんなことを考えても、恐怖のほうが大きかったのは事実…。

 私は、実験で死んだ子たちと同じように実験を繰り返されていた。腕は注射痕がいっぱいできていました。

 (辛い、誰か助けて)

と、日々そんなことばかり思っていました。

 そして、今の自分の現状が実験されている側で、その現実から逃げるように、頭の中では幸せだった日々をほんの少し思い出として浸りました。

 (あ~、あの幸せの日々が~…、いや、今のこんな状況が夢なんだ。きっと、朝になって目が覚めれば…。)

なんて思ってみたことも何度もありました。


 私が実験されるようになって半年ぐらいが過ぎた頃、奇跡が起きました。

 奇跡など起こるはずないと思わずにはいられなかったのだから。

 その人はおばあちゃんでした。

 おばあちゃん、いや、ローさんかな。ローさんは、杖で魔法みたいなのを使って、実験を壊していったの。

 その時は、実験施設の崩壊による犠牲になるのではないかということよりも、助かるということの現実性が見えたことに対する嬉しさでいっぱいでした。

 当時、私は、

 (そんな私を実験台にするような奴らなんてやっちゃえ~。)

なんて、思っていました。後からすると、助かりたいという一心な思いが優っていたのだと思います。

 そして、筒状の物に液体を満たされ、その中に強制的に閉じ込められていた私は、ローさんによって助けられました。

 私の目の前に丸い空間の裂け目みたいなのが見え、そこから手が伸びてきました。その手を私は握りました。その手が私にとっての不幸な入り口であったとしても、今いる地獄よりもきっと幸せがあるのような気がする。だから、私は―…、その手を私の弱りきった腕や手の筋力を最大に振り絞ってつかんだ。

 空間の裂け目を抜けると、そこにはローさんがいたのである。

 「大丈夫かのう~。意識が―…。」

と、ローさんが言うときには、私は安心したのか気を失ってしまいました。これできっと私のこんな不幸は終わるのだと思って―。


 「!!」

と、私は目を覚ます。

 辺りを見回すと、家と思われる場所にいるのだとわかりました。台所、玄関、そして私がいるベットがあった。そして、

 「ここは…」

と、弱々しい声で私は言う。

 その声が聞こえたのか一人のおばあちゃんが、

 「気が付いたかのう~。お主、三日も寝たままじゃったぞ。よほど、あそこの環境は悲惨なものじゃったのだな。」

と、ローさんは私に言う。その目はとても優しさに満ちていました。やっと、ここで、私の実験され、殺されていく日々から解放されたのだと感じることができました。

 「……ッ!!」

と、私は思いが頭の中、いや、心の中から溢れ出してきました。涙をともないながら―…。

 この日、私は泣き続けました。あの実験され続け、殺される日々を涙によってすべて流してしまいたくて、そして、もしそこだけの部分の記憶をなくすことができたのなら、どれだけ幸せなことなのかを実感しながら―。


 翌日、私の悲しみは止みませんでした。ローさんによって両親の死や村の多くの人たちが殺されたことを知りました。

 このときばかりは、ローさんを恨みました。

 (なんで両親や村の人たちを助けてくれなかったの?)

と、半分八つ当たりみたいなのものを思い、そして実際にぶつけたりもしました。

 怒りは長くは続きませんでした。あまりに疲労していたのか、4日間何も食べていなかったのか、反抗することもほとんどできませんでした。

 お腹が空いていたことを知ったローさんは、私に暖かい食事、特に、胃をビックリさせない料理をだしてくれました。私はそれを夢中になって食べました。お腹の空き具合がよほどだったのでしょう。そのときの料理の味は全然覚えていません。たぶん、自分の手で食事をするのは半年ぶりだったからかもしれません。

 食事を終えた私は、たぶん寝たのだと思います。あの実験の日々が、私をボ~とさせ、記憶させることをほとんどさせなかったでしょう。


 そして、私は、しばらくローが家にいて、食事と体力回復のための魔法か何かによって徐々に日常生活を一人で送れるようになりました。

 私の後見人は、ローさんが引き受けてくれることになりました。

 ローさんは、私を救出してから5ヵ月後に、

 「これからしばらく、儂はここには帰ってこない。ちょっと、この世界を脅かそうとする奴らがいるんじゃ。そやつらを退治してくる。儂が帰ってくるまでの間の当面のクローナ、お主の生活費はここに置いておく。それでは。」

と言うと、1ヵ月の間帰ってきませんでした。

 このとき、私はどうしてそうするのかという理由を尋ねませんでした。たぶん、ローさんは、私のような悲惨な目にあっている人たちを救おうとしているのではないかと私は思いました。だから、待てます。ローさんがその人たちを必ず救って帰ってくることを―…。

 ローさんは私を救ってくれたヒーローだから――…。


 ローさんが家から旅立って1ヵ月が過ぎました。

 そして、そんなある日の夜、コンコンと玄関をノックする音がしました。

 私は玄関へと向かい、玄関の扉を開けました。

 そこにはローさんがいました。帰ってきたのでしょう。私のように悲惨な目にあった人たちを救って―。

 「久しぶりじゃのうー。」

と、ローさんは私に向かって言ってきました。

 「お久しぶりです、ローさん。」

と、私は返事を返しました。そのとき、私には少し照れがあったのかもしれません。たぶん、私の頬は少し赤かったかもしれません。私はそのときに鏡を見ていないのでわかりませんが…。

 私の元気そうな姿を見たのか、ローさんは、

 「元気そうで何よりじゃ、クローナ。さっそくだが、本題に移らせていただく。クローナ、お主に頼みたいことがある―。」

と、ローさんは頼み事しようとしていました。

 「何でしょうか。」

と、私は尋ねて、ローさんを家の中へと入れました。

 そして、ローさんは私に頼み事を話すのでした。

 

 ローさんの頼み事は、異世界から来た三人の少年少女たちと合流して、彼女たちと一緒にベルグという人から異世界の石化を解く方法を聞きだす手伝いして欲しいというものでした。

 私はローさんといる5カ月の間に、少しずつではあるが、天成獣といわれる力が宿った武器の扱い方を覚えました。

 あの日の中、私を実験台にしていたあの人たちような人から他の子たちを救いたいと思っていたから。そう、私のような不幸な人を出さないようにしたいと思ったから。

 だから、天成獣の力を扱い方を必死に覚えていくことができたのかもしれません。私の武器は、大鎌の刃物の部分のみの武器で、刃先の尖っている部分が鎌の外側にあるもので、二刀流です。う~ん、私の武器って絵にすると簡単だけど、言葉での説明は難しいなぁ~。

 結局、私は、ローさんの頼み事を受けることにしました。

 私は、ただ、自分のような悲惨な目にあう人をださないようにしたいという私の願望が理由です。

 そして、ローさんとともに旅立ちました。

 これからは、天成獣の力を得て、あの時みたいに無力を感じることはもうないのだから―……。

 私は行くよ。悲惨な目にあっている人たちを救うために――…………。


 ~ view クローナ 了~


 ナンゼルらの集団による襲撃を何とか乗り切れた翌日の朝。

 瑠璃、李章、礼奈、アンバイドがいる場所では、

 「逃げられてしまったな。ナンゼル(あいつ)らに…。」

と、アンバイドは言う。

 「あんなに素早く逃げられました。あの光によってですが…。」

と、李章が言う。そう、ナンゼルらの襲撃者の集団は、ナンゼルが倒された後に、すぐに彼らのいる場所ですべてで強い光が発生したのだ。その後、光がおさまると、そこにナンゼルらの襲撃者は影、形すら残っていなかったのだ。つまり、彼らは倒されていることから自力で逃げられるわけでなく、何か装置を用いたか、近くにいた集団の仲間が素早く回収して逃げたのだと李章、礼奈、アンバイドは考えた。

 そして、どこへ逃げていったのかを考えるのは、戦いの後であり、夜であったことから、瑠璃、李章、礼奈、アンバイドはとりあえずあまり動くことが得策でないと判断し、テントに戻って朝まで寝たのである。

 「まあ、ナンゼル(あいつ)らの襲撃のことにいくら考えても答えはでやしない。ならば、今はリースへと目指すのが良い。それに、瑠璃、李章、礼奈(お前ら)の目的を達成するにしたとしても…だ。」

と、アンバイドは言う。アンバイドは、いくらナンゼルらの襲撃者がどこからやってきたのかを考えても無駄だということに気づいていた。ゆえに、リースへと目指していったほうがいいし、リースならば多くの情報が集まり、ナンゼルらの襲撃者やベルグの情報が手に入る可能性が高いと考えたからだ。

 「うん、そうですね。そうしたほうが良いと思います。」

と、礼奈は瑠璃、李章の意見を汲んだうえで、アンバイドの考えに賛成する。

 そして、瑠璃、李章、礼奈、アンバイドはリースへと向かっていくのであった。


 瑠璃たちがナンゼルらの襲撃を受けた翌日の朝。

 魔術師ローとクローナもまた、襲撃されていた。

 襲撃者は一人。その襲撃者は以前、瑠璃、李章、礼奈、ローを襲撃したゴーレという人物であった。

 ローは杖でゴーレの自身の武器による攻撃を防ぐ。

 「楽しんでいこうぜぇ~、魔術師さん。」

と、ゴーレはこの戦いを楽しんでいる顔で言う。ゴーレは一回、襲撃した後、ランシュに報告した。その後、ランシュからの命令を無視して、魔術師ローか瑠璃、李章、礼奈を追っていたのである。そして、魔術師ローとクローナの遭遇した。魔術師ローがいたため、前回のリベンジみたいなものとしてゴーレは、ローを襲撃したのである。

 「嫌なことを言ってくれるのう~。」

と、ローは嫌な顔をほとんどみせないで言う。ローの心の中は結構ゴーレのさっきの言葉は嫌だった。戦いを楽しむというのは、ローにとってあまり良い言葉に聴こえない。人を殺すということに関連付けられるがゆえに―…。

 ローとゴーレは、ぶつけていた武器を話し、少し後ろへと後退する。

 「楽しもうぜぇ~、楽しもうぜぇ~、な。」

と、ゴーレは言う。その顔は、ローもこの戦いを楽しんで欲しいというゴーレ自身の願望によるものであった。決して、ローの意思を汲んだものではない。

 「フン!! お主のような戦闘狂でないのでのう~、儂は…。あと、それともうある程度は手を打っておきたかったのがのう~。少しだけ―………、お主のボスという奴の作戦とやらに乗ってやるのもいいじゃろう~。」

と、ローは言う。それは、ゴーレだけでなく、ランシュやベルグに向けたものでもあった。

 それをゴーレは理解しているはずもなく、

 「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ。」

と、薄気味悪い声と笑みを浮かべる。

 「これが俺の力だあ―――――――――――――――――――――。」

と、ゴーレは叫ぶ。叫びながら、ゴーレは武器を横に振るう。

 そうすると、ローやクローナのいる位置に向かって、無数の風が放たれる。その風は、何もかもを切ってしまいかねない威力であった。それがローやクローナのいるところへものすごい速さで向かってきていたのだ。

 「白の水晶」

と、クローナが言う。そうすると、クローナとローのいる場所に大きなバリアがドーム状に展開された。

 そして、ゴーレの放った無数の風とクローナの展開したバリアが衝突した。

 ドゴーンと、ものすごい大きな音、衝撃音がなる。ゴーレの風も音が大きかったが、衝撃音のほうがさらにでかいものとなって、ゴーレの風の音をも消してしまったのである。


 ゴーレの放った無数の風が止む。

 クローナの白の水晶の能力によって展開されたドーム状のバリアは残ったままであった。

 (防がれた。)

と、ゴーレは心の中で言う。

 そして、ドーム状のバリアが消えていく。その中にいたクローナはすでに攻撃準備を終えていた。それに、ゴーレが気づく。

 クローナは自らの武器の片方を横に振るう。そうすると、大きな風がゴーレに向かって放たれる。それは竜巻のように渦を巻いた風である。

 ゴーレにクローナの攻撃を防ぐための時間はなかった。

 ゆえに、ゴーレはクローナの攻撃を受ける。それは、ゴーレにとって自らが気絶するほどの痛み、衝撃となった。そして、ゴーレは遠くへと吹き飛ばされたのである。

 それを見たローは、

 「弱いのう~。儂の考えた手を打つことはなかったか…。儂も舐められたもんだ。じゃが、クローナの成長ぶりが見れたのが嬉しいのう~。」

と、ローは言う。特にクローナの成長には、親が子の成長に驚くような感情をローに抱かせた。

 「クローナ、少しスピード上げて行こうかのう~。」

と、ローは言う。そして、

 「はい。」

と、クローナは返事した。


 【第17話 悪夢は終わるもの Fin】


次回、新章開始です。ルーゼル=ロッヘへと入ると思います。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していきたいと思います。


注意:クローナの視点の中で、女性を見下すような人のセリフがありますが、作者は、女性差別に関しては擁護いたしません。男女および性的少数者がそれぞれの個性(一人の人および多くの人の個性が社会に悪影響を及ぼさない程度に)が尊重され、かつ、尊重している社会を望んでいます。

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