第111話 上から落ちてくる鉄
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは、以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、第十回戦、最終回戦、第四試合、クローナVSメルフェルドは、メルフェルド優勢で進み、クローナは不利な状態になっていた。一体、これからどうなるのか?
無駄だった。
そう、この攻撃は無駄だった。
無駄ということでしか表現することができない。
クローナは、真面目に相手のメルフェルドに対して、ダメージを与えることができると思った。
しかし、そのようなことはこれまでの状況で現時点では叶うことがなかった。
クローナのメルフェルドに向けて、横に放たれた竜巻の攻撃は、メルフェルドが展開した鉄壁で防がれてしまったのだ。無惨にも―…。
(まったく、ダメ…。どんだけ硬いのあの鉄の壁。)
と、クローナは、心の中で言い、表情では驚きの表情が表に出ていた。
クローナは、少しの時間だけ、心の中に絶望というものを経験するのであった。
こんなのどうやってもダメだと思ってしまう気持ちが―…。
一方で、メルフェルドは、
(斬られたり、貫かれていないということは、ちゃんと、私の鉄壁が防御したということです。しかし、この鉄壁は、守るだけのためのものではありません。守るだけでなく、攻撃にも使えるということです。)
と、心の中で言う。
メルフェルドは、鉄壁を展開する時から、次の攻撃をどうするかというための準備をしっかりと考えていたのだ。普通ならば、鉄壁で守って、後は、何か鉄壁を使わずに攻撃する方法に選択するであろう。だけど、それでは、鉄壁の防御の利点というものだけで考え、一回の使い捨てにしかなっておらず、効率的ではないし、何度も天成獣の力を借りていたら、力の量が尽きてしまう。
そのようになってしまえば戦いでは、最悪の場合、自らの命を失うという結末をたどることになってしまう。そのことは、味方にとって、良いことではないし、生きてこそ次のチャンスをもらうことができる。ならば、鉄壁を防御以外の方法でも活用すればいい。
例えば、攻撃と防御に使用できるのであれば、攻撃しながらも防御できて、相手に隙を与えないことになり、かつ、天成獣の力を借りる量も少なく済み、長時間戦闘をおこなうことができる。
このことを天成獣の宿っている武器での戦いで、メルフェルドは、追及してきたのである。
その成果が、今、ここで発揮されることになる。
鉄壁からいくつか、いや、多数と言ったほうがよく、突起状のものが形成され始める。突起状の先は、尖っておらず、四角い面になっていた。
それがまるで、生まれるかのように感じさせるほどだ。成長という感じで、伸び始めるのであった。そう、クローナに向かって―…。
クローナは、気づく。
(とにかく、かわさないと―…。)
と、クローナは心の中で言う。
一方で、メルフェルドは、
(さて、どうするのかな、私の対戦相手であるクローナさんは―…。)
と、心の中で、楽しそうに言うのだった。
これは、メルフェルドにとっては、クローナの実力を確かめるためのものにすぎなかった。
【第111話 上から落ちてくる鉄】
伸びてくる鉄。
縮んだり、伸びたり―…。
それでも、スピードは速く、クローナも攻撃を避けるの苦戦した。
突起部分のそれぞれがランダムに動くのだ。なので、避けるのも大変だ。
ランダムなせいかクローナが気づかずに、迫ってくる一つの突起部分も存在した。
そこにクローナは、風を一つ放つ。左手に持っている武器を横に振って―…。
それでも、その風の攻撃は全然ダメであったが、ここで、クローナは仕方ないと判断し、白の水晶で防御テントを展開するのだった。
「白の水晶。」
と、言いながら―…。
テント型をしたバリアが出現し、それで、防ぐのであった。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン。
鉄壁の突起部分の伸び縮みと防御テントの衝突する音をさせながら―…。
それが何十秒もの時間、いや、それ以上に、二分ほどの時間をも消費させることになったのだろう。だいたいの体の時間感覚でしかないが―…。
そして、鉄壁の攻撃が止むのだった。
鉄壁はその後、形を球状に変えていき、収縮して、メルフェルドの武器にコーティングされるのだった。今度は、武器自体が剣ではなくなるようにしながら―…。
そう、剣とは別の何かの武器に変わっていくのだった。剣が鉈へと変化していった。
この光景にクローナは、目を丸くして驚くしかなかった。
そして、メルフェルドは、消えるかのように移動を開始する。
そのメルフェルドの行動にクローナは、驚くのだった。焦りというものも含めながら―…。
クローナは警戒する。焦りというものがあるのは事実だとクローナ自身も理解しているので、冷静になることは可能である。
メルフェルドは、すぐに移動をクローナの目の前に出現し、鉈を振るうのであった。鉈を振るえば、確実にクローナを斬ることができる位置にまで近づいていた。
(目の前!!! さっきのお返しってこと!!!)
と、クローナは、心の中で、さっきの自分の攻撃を思い出すのだった。
それでも、思い出したからと言って、メルフェルドの鉈の攻撃に対処できるわけではないので、今、クローナの頭の中に浮かぶことのなかで、最も良いとクローナ自身が思っていることを実行するのであった。そう、メルフェルドの攻撃をかわすということを―…。
クローナも高速で移動を開始するのだった。
そのおかげで、クローナはメルフェルドの鉈の攻撃を避けることに成功するのだった。
(避けられた。)
と、メルフェルドは、心の中で言う。
それでも、メルフェルドに動揺はなく、冷静そのものであった。
クローナがどこへ向かっているのかを考える。いや、考えながら、辺りを見回しながら探すのであった。クローナを見落とさないようにしながら―…。
クローナをメルフェルドは見つける。
そして、メルフェルドは、クローナへと向かって行く。
クローナに鉈でダメージを与えることができる範囲へと到達すると、メルフェルドは、さっきの攻撃で振って止まった位置から反対に返すように鉈を振るのであった。
クローナもそれに気づいて避けるのであった。
メルフェルドも攻撃を止める。
クローナも避けて、メルフェルドから距離を取った場所で考え始めるのだった。
(鉄の属性であったとしても、こんなに速く動けるなんて―…。はやくしないとこっちの方が不利なるのだけは間違いない。本当に、強いし、相性が悪いし―…。)
と、クローナは、心の中で言う。
クローナとしては、メルフェルドとの戦いは、クローナの武器に宿っている天成獣の属性は風で、メルフェルドのそれは鉄である以上、かなり不利であることは事実だ。そうなってくると、戦いを長引かせるのは良くないと思わざるにはいられない。
クローナとメルフェルドでは、メルフェルドの方が実力が上であり、かつ、属性の相性もメルフェルドの方が良いのだ。これは圧倒的とも言ってもいいかもしれない差に近い。それをどうにかしていくというのは、かなり難しいことであり、クローナがメルフェルドに勝利をするということは奇跡と言っても過言ではない。奇跡が起こるかどうかは両者の選択と周りの要素の影響次第だ。要は、どうなるのかは誰も知りはしないということだけがわかる。
一方で、メルフェルドは、
(う~ん、クローナさんは素早い動きをするようです。天成獣の属性が風である以上、それは想定内のことです。しかし、ランシュ様へと、勝利を届ける必要があります。ここで、私が負けることは許されないということになります。ここで、ちまちまと戦っている暇はないので、できることをしていくしかないです。)
と、心の中で言う。
メルフェルドとしては、今日のこの第十回戦において、アガランダが四角いリングをかなり破壊して、試合の中断が長くなった以上、試合を長引かせるわけにもいかないし、ランシュに対して、チームで勝利を一勝ももたらされていないので、申し訳なく感じるし、今日中にランシュに試合をさせて、勝利を確実にさせる必要があったのだ。
ヒルバスがもしということはありえないが、確実という保障がない以上、ヒルバスの敗北が存在しないというわけではない。なので、メルフェルドは、クローナとの対決で有利であることから勝利しておく必要がある。
「二つ目の変化です。」
と、メルフェルドが言うと、鉈であった武器が変化を始めるのであった。
徐々に形を変化させていって、剣と切っ先と反対側の部分が長くなっており、その先には、鏃のようなものが装着されている。それをメルフェルドの左腕からグルグルさせて鏃から少し離れた場所を左手で握るのであった。剣の長さも少しだけ短くなっていた。
中央の舞台。
瑠璃チームのいる場所。
「これは、かなり不利になったなぁ~、クローナは―…。状況は、完全に近いほどに相手側の騎士に有利になってしまっている。ここから、形勢を逆転させるのはかなり難しいだろう。」
と、ギーランは言う。
ギーランとしても、娘である瑠璃と同じチームのメンバーが勝利してくれる方がいいのは事実だ。それでも、現実は、このような自身の願望さえ、まるで無意味かと言わんばかりのことが起こるのだ。意図も簡単に自分の応援していた味方が敗れてしまうということが―…。
望みがすべて叶うのならば、自分がこれまで失敗したことなど存在するはずもないし、死んでほしくない人が死ぬなんてこともありえない。これがあり得るのだから自身の望まない結末も存在してしまうのだ。願望と現実は決して、同じような結果なるとは限らないということに―…。
そして、ギーランの近くにいたミランは、父であるギーランの言葉を聞いて、首を縦に振るのだった。
「そうね。クローナが明らかに不利なのは事実。あの女騎士、騎士としての実力は相当上というもの―…。戦い方に隙というものが感じられなかった。鎮圧戦では無類の強さを発揮すると思う。だけど、人の命をかける可能性のある戦闘では、少しだけ通用しないかしら。相手を無力化することに重点を置きすぎて―…。」
と、ミランは言う。
ミランとしても、メルフェルドの騎士としての実力が本物であるということに異論もないし、クローナが不利なのも事実だ。それと、メルフェルドがクローナに対して、力を行使しても無意味だということをこの第十回戦第四試合で示そうとしているのだ。動きや戦い方が、相手を殺そうとか、倒そうとかしているよりも、自分は相手をより上で、戦っても意味がないと、思わせようとしているようにしか見えないのだ。
ミランは、その理由がどうしてかはわからなかった。
それはそうだろう。メルフェルドの経歴を知らないのだから―…。
ならば、そのような結論になってもおかしくはない。
ミランの言葉を近くで聞いていた瑠璃は、
「えっ、それってどういうこと―…、パパ、お姉ちゃ―…。」
と、言いかけたところで、怒気を感じる。
それは、これ以上言ってはいけないというのを本能で感じさせるほどであり、口に出して言うことをまるでダメと思わせる。
(お姉ちゃんって言ったら、確実にここで殺される~。)
と、瑠璃は、心の中で怯えるのだった。
この時、ミランの周りからはオーラのようなものが現実には存在しないのであるが、漂っているような感じになっており、ゴオオオオオオオオオオという音がたっているのではないかと感じさせてしまうほどだ。
このオーラのようなものに対処するのは、よっぽどの心の強い人間か、鈍感な者でしか無理であろう。いや、この二者の人物でさえ、その後の結末を悲惨なものとなるであろう。言葉にするだけで恐ろしい。
結局は、大人しく「お姉ちゃん」と言わないのが、一番の対処方法なのである。瑠璃が察知して、「お姉ちゃん」と言うことを途中で止めたように―…。
さて、なぜ瑠璃がギーランやミランに話かけようとしたのかに話を戻す。瑠璃は、ギーランとミランの話の中で、気になったことが二点ある。
第一に、天成獣の属性である鉄が風に対して有利であることはわかる。硬い鉄を風で斬るのは難しいことだからだ。それでも、斬るということが不可能でない以上、今の形勢がひっくり返すことができないわけではない。そうなると、逆転するためにどうすればいいのか。
第二に、メルフェルドの戦い方が鎮圧戦に向いていて、戦闘での違いがどうして発揮しているのか。
この二点について瑠璃は疑問に思い、ギーランとミランにどうしてかと答えて欲しかったのだ。
ミランは、怒りかけているので、解答がしばらく無理だと判断したギーランが瑠璃に答えようとするが、ミランが先に解答を始めるのだった。
「まあ、簡単に言うと、鉄の属性をもつ天成獣、この天成獣の宿っている武器を扱っている者たちは、鉄だけでなく、金属類を扱うことができるわけ。厳密にいえば、この世界に存在する金属類と天成獣の力を借りて、それを鉄にした分を操って戦うというわけ。どうして、天成獣の力を借りて鉄を形成することができるのか解明されていない。まあ、それは、火にしても、風にしても、水にしても、地にしても、光にしても、闇にしてもわからないことでしかない。そして、鉄の属性の特徴は、攻撃力に見られがちだが、防御力は、天成獣の属性の中で一番と言ってもいい。まあ、火には弱いので、すべてではないけど―…。それでも、鉄の属性の防御力が高いのは事実。そして、次に、鉄という属性は、武器にも使われている金属類を扱う以上、そう、生と同じで、一般原則ではそこまで強いと思われない属性だと認識されている。それに、天成獣でわかっているもので、生と鉄は数が多いのだから―…。まあ、その中でも一部は、かなりの実力を有することになるから、一般原則に則って戦うのだけはやめた方がいい。クローナが不利になっているのは、瑠璃も分かっていると思うが、風というの攻撃力は単純に強いわけではないが、防御している以外場所にダメージを与えることができ、スピードもあるので、その点で優勢をもっているわけ。でも、鉄は使い方次第で、風の攻撃を全体で防ぐことができるの。地であれば、風によって削られるので、短期間であれば効果があるが、長時間守れるわけではない。そう、鉄は、風を長時間守ることができるというの。そのせいで、クローナは戦っている相手に不利である。さらに、対戦相手は騎士として超一流の動きをしているの。隙をつくらないようにしてるし、天成獣から借りる力の量をうまく少ない量で最大の効果になるように戦っているの。天成獣の宿っている武器を用いての戦いで、上級の戦い方をしている。さらに、防御の仕方、攻撃の仕方も良い。このような相手に勝つには奇跡でも起きないと無理というのが事実。だけど―…。」
と、ミランは、言い続けて、少しだけ息を整える。
長く喋っているので、少し休憩をはさむのである。喉を整えるために―…。
数秒で、整え、続けるのであった。
「対戦相手の戦い方は、あくまでも鎮圧戦の戦い方、相手を捕縛させるような戦い方。リース近辺では、鎮圧戦と言っても、相手の命を奪うのは、命を奪う方法以外にやり方が存在しないとされる場合だけ。この慣習に違反してしまうと、周りから文句を言われることもあるし、批判を受けてしまう。あまり、人の命が奪われるのを極力さけたいという感情があるし、リースのような都市でそのようなことが起こると、商人が逃げてしまい、そこから得られる収入や利益、税金が減少してしまい、それを再建するのに時間がかかってしまうからだ。ならば、そのような事態にしないようにするために、なるべく鎮圧戦や捕縛の時に命を奪わないようにしている。そして、対戦相手は、クローナに対して、自身が強く、倒せないということを思わせるような戦い方をしている。例えば、鉄の壁とかを展開しているが、それを応用しての攻撃はあくまでもランダムだが、クローナの実力に合わせて、クローナがもし攻撃が当たった場合、四角いリングの外にそれも私たちがキャッチできるようになるほどの威力にしている感じだった。本当に、戦闘をするような人間であれば、確実に突起部分のようなところを尖った形状にするし、私たちがキャッチできるようなほどの威力にもしないし、気絶もしくは、今回の場合はクローナを殺してもおかしくないほどの威力にするはず。そうしてもいいのだから―…。つまり、クローナの対戦相手は、戦闘経験がないのか、ほとんどしたことがないと推測することができるわけ。そうなってくると、攻撃の威力というものは本来のものよりも強いものとはならない。相手の命を奪わないようにしないといけない普段の行動が如実に出てくるから―…。」
と、ミランは、ここで言い終えるのだった。
ミランとしては、十分に説明しきっており、これ以上ないぐらいに丁寧にわかりやすく、簡潔に説明したと思っていた。そんなことを思っているのは、この場ではミランだけであろうが―…。
「…………………………………………。」
と、瑠璃は、頭の中ですぎるのだった。
瑠璃は、ミランの説明があまりにも長すぎて、どういうことかを一切、理解できなくなってしまっていたのだ。混乱という形になって―…。
瑠璃はそこで、何とか言葉にするのだった。
「何を言っているのか、わかりません。」
と、正直に言うのだった。
瑠璃としては、これは最大限の譲歩であり、悩んだ末による答えなのだ。必死の―…。
しかし、そのようなことを知らないミランに通じるはずもなかった。
ミランは、瑠璃の服の襟の部分を手で掴み、
「瑠璃!! 私が最大限に丁寧に簡潔に説明したと思っているのよ!!!」
と、怒気を含めながら言う。
その声に、瑠璃は完全にミランに対して、ビビッてしまっていた。
それでも、瑠璃がミランの今に対して不満がないわけではない。しっかりと存在しているのだ。
「でも、説明が長い。」
と、小声になりながら瑠璃は言う。
瑠璃としては、今のミランの表情が怖すぎて、どうしようもできないということを悟って、声を大きくすることができなかった。それでも、抵抗している意思を示すために声にするけれども―…。
その瑠璃の小声の言葉がミランに聞こえたのだろうか、
「関係あるかぁ~、とにかくちゃんと聞け―――――――――――――――――――――!!!」
と、ミランは、返事するかのように、文句を言わせないような感じで、威圧的に言うのだった。
瑠璃は、完全に今の自らの姉であるミランに何を言っても無駄だと感じるのだった。とにかく、嵐が過ぎるのを待つかようにやり過ごすしかなかった。
その様子を見ていたギーランは、
(いや、それは言い過ぎだろ、ミラン。ミランの説明は明らかに長すぎだろ。)
と、心の中で、そう思うのだった。
ギーランとしても、ミランの瑠璃へのさっきの説明が長すぎるのは理解することができた。
ギーランは、ミランの言っていることの要点をまとめて、瑠璃とミランのいる場所へと向かうのだった。
そう思ったのだが、すでにそこには李章がいたのだ。
「瑠璃さん。」
と、李章は瑠璃を呼ぶのであった。
ミランもその言葉を聞いて、掴んでいた襟から手を離す。
瑠璃は、その後、李章のところへと向かって行くのだった。
「李章君。」
と、瑠璃は言う。
瑠璃としては、やっと助けが来て安心するのであった、ミランの表情とか、言葉の威圧が物凄いすぎて―…。
李章は、瑠璃に耳打ちしながら言うのであった。
「瑠璃さん、ミランさんが言いたいのは、鉄という属性は防御力が強いし、ある範囲で防御することができれば、風の属性の範囲攻撃も受けないということです。そのことによって、クローナさんは、対戦相手にダメージを与えることができないということです。それに、クローナさんの対戦相手は、相手の命を奪わずに制圧することに長けていて、そのような戦い方をしていることです。その戦い方にクローナさんの勝利できる可能性が存在しているということです。」
と、簡単にミランの言っていることを纏めて、自分なり解釈したことを言うのだった。
これでも、言葉としては、長い方になってしまったが、それでも、瑠璃にとってはわかるものであった。
「うん、なるほど。」
と、瑠璃は本当に理解するのだった。
そして、ミランは、少しだけ、李章の言葉で理解したことに頭にくるのであった。それぐらいできると思いながら―…。
四角いリングの上。
クローナとメルフェルドの戦いは続いている。
「いってください。」
と、メルフェルドが言うと、メルフェルドは、剣の後ろについている鏃のようなものをクローナに目掛けて、投げるのであった。
クローナは避けようと判断するが、クローナが見た感じでは、鏃のようなものは、クローナに届かないのではないかと思うのだった。そう、剣から鏃へと向かう金属の部分の長さがメルフェルドとクローナの間の距離には足りないものとなっていたのだ。
だけど、メルフェルドが何も考えずに攻撃してくるとは思えない。クローナもそのように感じてしまったが、届かないと思ったという時間のせいで、返って対応に遅れてしまうのであった。
そして、鏃のようなものは、クローナの右足に巻き付くのであった。
「!!!」
(伸びるの。変化したのは―…。)
と、クローナは、心の中で驚きながら、言うのだった。
クローナは、それを、うまく右手に纏っている風で鏃のようなものから伸びている鉄の線へと向かって攻撃するのだった。
斬れるようにして―…。
その風の攻撃は成功し、鏃のようなものとメルフェルドの持っている剣を切り離すことに成功し、すぐに距離をとるのであった。
そして、すぐに、鏃のようなものが巻かれているのを取り、遠くへと投げるのだった。
メルフェルドは、この時、クローナを縛って動きを封じることもできたがそれをしなかった。なぜなら、これからなそうとしている大きな攻撃のために、少しだけ準備をしていたのである。結果的に、クローナがメルフェルドに向かって攻撃をしてこなかったので、準備をしっかりと終えることができたのだ。
四角いリングの上空に魔法陣が出現する。
この魔法陣は、太陽の光によって、真下の四角いリングに魔法陣と同じ形をした影ができるのであった。その影によって、上空が何か起こっているのではないかと、クローナは気づくのだった。
クローナは上を見上げ、魔法陣を見るのだった。
「そろそろ出てきてください。」
と、メルフェルドが言うと、魔法陣から鉄がクローナに向かってゆっくりと落下してくるのであった。
その落下スピードは、まるで、何かの要因によってコントロールされているかのように―…。
その落下も、クローナにちょうど衝突するようにして―…。
【第111話 Fin】
次回、陣登場!!
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回の投稿は、2021年10月23日頃を予定しています。
では―…。