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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
234/748

第110話-3 風VS鉄

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となっています。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、ログハウスの中に蛇口、ガスコンロ、冷蔵庫があって、そこで少しはしゃぎ過ぎたせいで、現実世界のことを説明する羽目になった瑠璃、李章、礼奈であった。

 貴賓室近くにある一つの部屋。

 そこには、豪華な飾りがなされている。

 そこを見た者たちは、貴族や金持ち、王様の部屋なのではないかと思うほどだ。

 元々、この部屋はこのような豪華な飾りがつけられていたわけではない。

 むしろ、質素であり、豪華なものなど一切ないのだ。

 豪華なものを飾ったとしても、入る特別客などほとんどいるわけではないし、こういう特別なことがなければないのだから―…。

 それでも、自分自身がいる部屋が質素で、何もないということが許されないのだ。自らの威光と権威というものを示すために―…。誰もが無条件で自らにひれ伏すように―…。

 そう、この部屋にいるのは、アングリアであり、リースの中央で実権を握っている今代の親玉である。

 アングリアは、質素という言葉を望まない。商人として儲けている以上、必要以上に質素というのもどうかと思うが、アングリアのように奢侈になりすぎるのも良いとは言えない。

 ただし、アングリアは奢侈に関しては自分のところにお金が集まるなら良いことだと認識している。そう、自らへとリースの利益のすべてを集まるようにしているのだ。集まらないということが許されないことなのだから―…。

 そして、集まったものはほとんど手放したくないと思うのが、アングリアなのだから―…。金・地位・名誉の三つは―…。

 「何もないつまらない部屋が、私のような者にこそ相応しい部屋へと変わった。」

と、アングリアは、自賛するかのように言う。

 実際に、このような豪華な部屋に改装したのは、アングリアに仕える下っ端と言ってもいいぐらいの末端の者たちである。

 アングリアが第十回戦が開始される前に、この貴賓室近くにある一つの部屋の中に入った時、このような質素な部屋を見て、吐き気を催したほどだ。なので、アングリアを満足させるために、部屋を豪華にしていたというわけだ。

 「アングリア様。今のご気分は―…。」

と、アングリアの側近の一人が尋ねる。

 この側近としては、アングリアがご機嫌である方がいい。そうすれば、自分にアングリアが得たであろう利益の一部が、自分たちに恵んでもらえるであろうと思うし、それが現実に経験から知っていることから、すぐにご機嫌取りをすることができるのだ。

 自分が報われるために、欲を満たすために、さらに、他者がどんなことになってもいい、最悪、自分にさえ利益があればいい。ゆえに、アングリアがダメになった時には、逃げだすことぐらいは最低限でも考えている。いつ、どこで、何が起こるのかわからないのだから―…。

 「ああ、最高だ。ランシュの野郎は、これで三連敗しているのだからなぁ~。あの瑠璃チームが勝てば、リースは再度、俺たちの手に戻ってくる。リースを支配することを運命づけられた俺へと―…。その前祝だ。豪華な食事を用意しているのだろうなぁ~、メルギエンダよ。」

と、アングリアは、自らの気分を尋ねてきた人物とは別の、執事服を着た人物に向かって言うのだった。

 アングリアは、瑠璃チームが勝利すると見ている。いや、勝利してもらわないと困るのだ。ランシュが率いるチームに勝利されてしまえば、次、いつ、自らがリースを実質上支配することができるのかわからないのだ。最悪の場合、ランシュによって消されてしまうのではないかと思ってもいた。

 まあ、ランシュとしても、アングリアは邪魔者であり、レグニエドをも動かすほどの商家のトップなのだから、リースを握れば、リースが最悪になるということはわかりきっていたのだ。

 アングリアは、ランシュが考えるリースが最悪になるということがどういうことか理解することはできていない。これからもできるわけがないであろう。なぜなら、その当事者であり、他者の痛みというものを理解することを人生でこれまで一度もしたことがないのだから―…。考えたことがないのだから、その機会すら存在しなかったのだ。

 自分の痛みに関しては、過剰なまでに敏感ではあるが―…。

 「はい、今日も、豪華な食事をご用意させていただいております。豪華な食事は、アングリア様のためにあるのですから―…。では―…。」

と、メルギエンダが言うと、手を上げ、顔のメルギエンダから見て右側で、一回パーンと手を叩く。

 これは、誰かを呼び出すための合図である。

 もちろん、呼ぶのは、メルギエンダの部下である執事を呼び出し、

 「アングリア様の昼食は?」

と、メルギエンダは尋ねる。

 「はい、ご用意できています。」

と、執事が答え、

 「なら、食事を中に入れなさい。」

と、メルギエンダは言うのだった。

 「かしこまりました。」

と、メルギエンダの部下が言った後、その部下は、この貴賓室近くにある部屋の一つから出ていくのだった。

 昼食をこの部屋に入れるように給仕係に指示するために―…。

 その後、アングリアの昼食が持ち込まれ、その豪勢な昼食にアングリアに引っ付いている者たちは、驚くのであった。自らが普段食すことのできない料理が大量に並べられていたからだ。

 アングリアは、この昼食を見て、さらに、その昼食を見たアングリアから利益を得ようとしている者たちが羨ましがっている表情を見ることができて、満面の笑みを浮かべるのであった。自らの優位性を示すことができて―…。

 その後、アングリアから利益を得ようとする者たちにも、昼食が振舞われるのであった。その昼食も十分に豪華であったが、アングリアの昼食を比較すれば、貧相なものでしかなかったが―…。


 観客席。

 昼食のパンにレタスと焼いた細切れの肉をはさんだものを食べていた。

 その人物は、このランシュが企画したゲームの審判であるファーランスであった。

 ファーランスは、この場から第十回戦が終わるまで離れることができない。

 いつ、四角いリングが完全に回復するかわからないからだ。

 (本当によくここまで壊してくれたものだ。アガランダ。空気読めよ。何とか聴力は回復したが、後の試合ができるか不安になってしまう。でも、修復する力は、今回に関しては、速くなっている。何かあるのか?)

と、ファーランスは心の中で思うのだ。

 そう、今回の四角いリングの回復は、今までよりも何となく速いと感じられるものであった。

 どうして、そのようになっているのかをファーランスは理解することができない。

 答えを言うのであれば、修復力の発揮させ方を自動に判断することができるようになっているからだ。例えば、四角いリングに一センチメートルほどの傷ならば、弱めにして、ものの数秒で回復し、四角いリングが全壊であれば、三時間ほどで回復するようになっている。

 つまり、四角いリングの損害が多ければ多いほど、回復力が高くなる。それでも、修復が進んでいくうちに、回復力も弱まっていくので、時間は小さな傷よりも時間がかかることになるというもう一つの性質がある。

 ファーランスは、そのことに気づくことなく、これからの試合の進行のことを考えながら、食事を終えるのだった。

 実際、今日食べた昼食は、美味しいと言われても普通と返事をしてしまうほどであったが、それでも、慣れ親しんだ味といえるほどだった。たぶん、ファーランスは、こういう昼食をゆっくりととれない時は、このような食べ物、現実世界におけるファストフードに近いものを食べていくのだろう。

 そして、食べ終えた後、水筒に入れた水を少しだけ飲み、四角いリングの回復を見守り続けるのだった。

 (今日中に第十回戦(しあい)を終えたい。)

と、心の中の願望を抱きながら―…。


 中央の舞台。

 そこへ入るための通路の中に一つの部屋がある。

 そこの中では、ランシュたちが昼食をとっていた。

 ランシュ、ヒルバスは、胸やけしていた。

 がつがつと音をたてながら、アガランダが昼食を食べていたのだ。それも、山盛りの量で―…。

 (アガランダ(こいつ)の胃は、どういう仕組みをしているんだ?)

と、ランシュは、心の中で思うのだった。

 アガランダとしては、これぐらいの食事量はいつもより多めであった。それほどに、礼奈との試合で、かなりの力を使ったのであろう。アガランダは、食事量自体、平均から比べるとかなり多い方である。それは、体を動かすことと、声を叫ぶぐらいに出すことに起因している。そう、とにかくカロリーを一日でかなり消費しているのだから―…。

 「ランシュ様―…。そんなに小食でいいのか。食べないと力でないだろうに―…。」

と、アガランダは、ランシュの昼食を見て、大丈夫かと思ったので、聞いてみることにした。

 「大丈夫だ。アガランダ、お前が異常なだけで―…。それに、試合とか戦うことがなければ、これよりも多くの食事をしている。戦いの前に食べ過ぎてしまえば、戦闘にマイナスの要因が出てしまう。そうなってしまうと、簡単に相手に倒されてしまうからな。お前ぐらいだよ、大量に食べても普通に戦えるのは―…。」

と、ランシュは言う。

 ランシュとしては、アガランダがどうして大量に食べ物を食べたとしてもすぐに戦いを最大限に力を発揮させてできるのか疑問にしか感じない。胃が膨れて動きずらくなるのだから、普通の人は―…。

 「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、そんなものは気合があればできる。」

と、アガランダは、笑いながら言うのだった。

 「そうか。」

と、ランシュは言いながら、心の中では、

 (アガランダ(こいつ)は、異常だな。存在そのものが―…。これぐらいを食べられるほどに稼いでいるのだから―…。)

と、思うのだった。

 ランシュは、アガランダがどのように金銭を稼いでいるのか知っている。アガランダは、リースの騎士としての給料だけでなく、港湾などにおける力仕事で大量の荷物の運びや修繕で稼いでいるのだ。アガランダの働いている場所は、アングリアがトップをつとめる商会であるが、今はニドリアの部下が直属の上司となっている。ゆえに、アングリアやその周辺にいる腰巾着たちから回される仕事は、かなりのオーバーワークになるものが多かった。ニドリアによって、上手く祖父のランドリアの商会へと仕事を回しながら、現場の負担を減らしているのだ。ちなみに、このことはアングリアたちにバレないようにしていた。その荷物を渡し役をしているのがアガランダというわけだ。

 その給料は、アガランダが毎日のように、大量に食べることができることが可能な量であった。ニドリアとしては、これから起こることであろう一つの出来事で自らの存在は、生か死かという二者択一しかないと思われる未来に委ねるのだった。

 ニドリアは、リースでどういう動きがあるのかを自らの情報網で、しっかりと把握しているのである。異母兄であるアングリアとその周辺が今日、ランシュが企画したゲームの第十回戦後に何をしようとしているのか。それがリースにとって危険なことであり、リースの衰退を意味するかもしれないことを―…。

 さて、話を戻す。

 ランシュは、呆れながら、アガランダの食べる姿を見続けていると、食欲がさらに落ちてきそうに感じたので、それを見ないようにするのだった。

 リークもクローマもすでに目を覚ましており、食事をとっていた。

 「マジか!! 俺とリークとアガランダが負けて、まだ一勝もしていないのか!!!」

と、クローマは、驚きながら言う。

 クローマとしては、自分とリークが負けたので、申し訳ない気持ちであるが、アガランダが負けたことに関しては、驚きを禁じ得なかった。アガランダの性格から考えて、試合中に動揺している人物が確実に、アガランダに勝つことはあり得ないのだ。なぜなら、叫び声を発するし、空気読まない攻撃をしてくるせいで、大抵の人はすぐに動揺して、普段の力を発揮することができないのだから―…。

 「はい、そうです。」

と、クローマにランシュ率いるチームが一勝もできていないということを伝えたヒルバスは、そう返事するのだった。

 「マジかよ。で、アガランダを倒したのは誰だ。」

と、クローマはさらに、質問するのだった。

 クローマとしては、単純にアガランダを倒した相手が気になってしまうのだった。あくまでも、どうやって倒したのかを聞いてみたかったのだ。本人に直接聞くことは憚られるし、本人が無意識の間、何も思考せずに倒している場合もあるので、客観的に見ていたであろうヒルバスに聞いてみるのだった。

 「あの、黒髪の女の子で、相手を凍らせて勝利している―…。」

と、ヒルバスは、アガランダに勝利した礼奈の特徴を思い出しながら言う。

 そのヒルバスの言葉に対して、クローマはすぐに理解することができ、

 「ああ、あいつか。」

と、礼奈であると理解するのだった。

 「そう、アガランダも自身を何度も凍らされても、その氷を壊して、素手で相手の氷の攻撃を壊して、対抗していたが、相手の方が上手だったのです。凍らされて負けましたよ。アガランダは―…。」

と、ヒルバスは簡単に、第十回戦第三試合の様子を語るのだった。

 ヒルバスの説明に関してクローマは、大まかな内容を掴むことができたが、疑問に残る面も存在するのだった。それを無理矢理に納得させる。

 「そう。これで、ヒルバスとあいつのどちらかが勝てば、俺らのチームにも勝利の可能性が残るということだな。」

と、クローマは言う。

 クローマの言っていることは、ある前提において成り立っていた。

 一つは特別ルールによる。それは、各チームのリーダーを倒した場合、倒したチームは五勝分の勝利数が追加されるということだ。

 もう一つは、ランシュが確実に瑠璃チームで戦う相手を倒すということだ。

 つまり、ランシュと一人が勝てば、ランシュ率いるチームは勝利するということだ。

 だけど、決して、これがすべての条件で成り立つわけではない。ここにもう一つ大事な条件を加えないといけないということだ。瑠璃チームのリーダーが誰であるかということだ。ランシュ率いるチームの誰もがリーダーが誰であるかは予想できている。

 クローマは続けて言う。

 「瑠璃(相手)チームのリーダー、いや、大将は、間違いなく、雷で戦ってた小娘の方だろ。」

と。

 そう、瑠璃が瑠璃チームでの大将ということになり、瑠璃に勝利したランシュ率いるチームの者は、五勝分の勝利数を付け加えることができるのだ。瑠璃はまだ、第十回戦の試合に出場することは確実であり、まだ出てきていないことから、ヒルバス、もう一人、ランシュの誰かと対戦するのは当然の確定された未来であった。

 「そうですね。ランシュ様の企画したゲームに参加することを表明したのも、その子でしたから―…。」

と、ヒルバスが言う。

 ヒルバスとしても感心するほどだった。ランシュに向かって、面と試合に参加すると言った時には―…。リースで暗躍して、自らの地位に築く弱い中枢の権力者たちに比べると、よっぽど人としての器があるのではないかと思ったほどだ。

 まあ、それでもヒルバスは、瑠璃という人間のある一面でしかないとも思っていた。人というものは、変わる事もできるが、変わらない事もできるのだから―…。これから歩んでいく人生の中でどうなっていくのか楽しみではあったが―…。

 「はあ~、なかなかの強者だな。天成獣の宿っている武器での戦い方よりも精神的な部分で―…。」

と、クローマは言う。

 クローマは、瑠璃という人間を、精神的には強い人物なのではないかと思うのだった。それでも、今まで見た試合では、ランシュよりも強いとは思えなかったが、将来的には脅威になる可能性を秘めているとは感じた。特に、瑠璃に負けたレラグから聞いた話の感想において、その印象は強くなったともいえる。

 その後、他愛のない会話が続き、四角いリングの回復まで食事、食事の後は、会話を続けるのだった。

第110話-4 風VS鉄 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿に関しては、2021年10月11日頃を予定しています。二日連続で何とか投稿することができました。

では―…。

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