第110話-1 風VS鉄
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
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宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、第十回戦第三試合の決着が着くのであった。「二重氷結」によって、礼奈がアガランダを倒すのであった。
第110話は分割することになりました。理由は、内容の追加があったからです。試合と試合の間の内容が追加されてしまったために―…。
第十回戦第三試合の勝者が決まる。
勝者は礼奈であり、敗者はアガランダであった。
勝者宣言を聞いた礼奈は、凍らせていたアガランダの氷を解除するのだった。
「はあ…はあ……はあ………。やってくれるなぁ~。」
と、アガランダは息をあげながら言うのだった。
「残念なお知らせがあります。もう勝者宣言がおこなわれ、私の勝利が確定しました。」
と、礼奈は言う。
それも、自信をもってもいい。
だって、礼奈がこの第十回戦第三試合の勝者であるということを知っているのは、中央の舞台の全員と観客席にいる全員が実際に聞いている以上、彼らは証人となるからだ。
さらに、ランシュ達は、観客たちに自分たちチームの勝利だということを言わせるために買収はしていないので、そのような卑怯なことは一切、なされないであろう。
ランシュとしても買収などの嫌な方法は騎士としてどうかしているのと同時に、リースの中枢で権力を握っている者たちが、自らの欲望だけのためにそのようなことをしているせいか、忌避感すら感じていたのだ。
その分、正々堂々であることから、ランシュがリースの覇権を完全に握ったとしても、リースに住む人々が不満を抱くのは少ないかもしれない。
一部の人間が物凄いことになるが、他はそうでもないということであろう。リースの中枢で権力を握っている者たちであるが―…。
「ファーランス、俺の負けか。」
と、アガランダは、ファーランスに向かって尋ねる。
その声をしっかりと聞いたファーランスは、
「はい。」
と、返事をするのだった。
「そうか。」
と、アガランダは言うと、自分の足で四角いリングから外へと向かうのであった。
その途中、
「お嬢ちゃん。今日は俺の完敗だ。もし、他で戦うことがあった時は、再戦させてもらうぜ。」
と、言うのだった。
アガランダとしては、礼奈と今度、どこかで会うのなら、戦って、今度こそ自分の勝利としたいと心に強く思ったからだ。
その様子を見ていた礼奈は、
(嫌だな~。ああいう人と戦うのは―…。鼓膜が破けそうだし、周りを破壊して、周囲への被害が甚大でなさそうだし。苦情がいっぱいきそう。)
と、心の中で、アガランダとの再戦を嫌うのであった。
理由は簡単だ。周囲への迷惑が甚大で、かつ、戦っている側としては、五月蠅いし、集中するのを妨害されるのだから、いやに決まっている。二度と戦いたくない。
そして、アガランダとは、今後一切、関わりを持たないように決めるのだった。
礼奈も四角いリングの外に出て、自らのチームがいる場所へと戻るのだった。
中央の舞台。
ランシュ率いるチームがいる場所。
「すみませんでしたぁ――――――――――――――――――、負けてしまいまして―…。」
と、大声でアガランダは、ランシュに謝るのであった。
アガランダとしては、ランシュがこの第十回戦における対戦相手である瑠璃チームに対して、勝利して、リースの実権を完全に握りたいという思いに答えられなかったことに対して、申し訳なく思っている。ゆえに、その気持ちを声の大きさで表現して、謝るのだった。
それは、ランシュにとって迷惑でしかなかった。
ランシュは、アガランダが負けたことに関して、勝負事であるので絶対というものは存在しない以上、そこまで責任を問うつもりはなかった。それよりも、アガランダが、謝るのに大きな声を出したことの方が深刻な問題だった。それは、アガランダの声の大きさによって、ランシュの鼓膜が破れそうに感じたのと、ヒルバスが間違って補聴器を渡してしまったがために、叫び声を他の人よりも大きく聞いてしまったので、それがトラウマとなっており、それが抜けきっていなかったからだ。
「五月蠅い。大きな声で謝るな!! アガランダ、お前の言いたいことはわかったから、普通の声の大きさで言ってくれ。声が聞こえなくなってしまうじゃないか。」
と、ランシュは、本音で言うのであった。
ランシュは、本音で言うことの方が多いが、嘘だって人である以上、ついてしまうことがある。そのことで、相手との関係が上手くいくことはある。
それでも、今回のランシュの本音というものは、実際には、アガランダに対して、これ以上、大きな声を出さないでほしいという願望をこえた、今すぐそれを実行しろという意味が込められていた。言葉にしてはいないが―…。
そう、言葉にしていないのだ。アガランダは、第十回戦第三試合が終了して、疲れている以上、叫び声のようなものもあげられるほどの気力は存在しないが、一般の人にとって十分に大声というものにカテゴライズされるものを発することはできる。
そして、試合後であったために、頭の思考はある程度さえているが、ランシュが本当に言いたいことが理解できなかったのだ。このような矛盾がなぜ成り立つのか? それは、アガランダが礼奈との戦いの中で頭を使っていたので、考えるということが面倒くさくなったからだ。
ゆえに、ランシュの言っていることの真意が理解できずに、
「そうか、それはすまない。」
と、大声で言ってしまうのだった。
ランシュは、心の中で、
(……俺、今日、大丈夫か……。)
と、心の中で不安になってしまうのだった。
その様子を見ていたヒルバスは、
(まあ、時にはランシュ様もこういうことがあると運気のバランスもとれて、最悪の展開はなくなるでしょう。)
と、心の中で思いながら、心の底で、耳栓と補聴器を間違って渡してしまったことに対して、謝るのだった。
観客席。
その中でも、このランシュが企画したゲームの審判であるファーランスがいる場所。
「はあ~。」
と、ファーランスは、ため息を吐くのだった。
そりゃそうだろう。
(四角いリングがものの見事に跡形もなくなってしまっている。しかし、透明な壁で囲んでいるので、どこからどこまでが四角いリングであったかはわかるのですが―…。まあ、この競技場には、四角いリングを修復するという機能があります。それで、完全に四角いリングが修復されるのを待つしかありません。どこまでかかるのか。今日中に試合が終わってくれるのだろうか。)
と、ファーランスは、心の中で、不安が増幅するのだった。
そう、今日中に第十回戦が終わるのかどうか、今までのファーランスの経験では、最大の前の試合から次の試合までのインターバルは、二時間ほどであった。その時よりも酷いので、どうなるかファーランスでも予想が付かなくなっていた。
それでも、ファーランスは、ランシュが企画したゲームの審判である以上、言わなければならないことがある。
「四角いリングの修復のために、修復が終えるまで、試合を一時中断することにします。」
と、ファーランスは宣言するのだった。
こうして、午前の残りの時間は、四角いリングの回復のための時間で潰れることになる。
ファーランスの心の不安は、四角いリングが回復するまで、いや、第十回戦が終わるまで増幅し続けるのであった。それでも、捻くれることはないであろう。ファーランスもそのことぐらいは、表情に出さないということができるのだから―…。ガックリとする動作を除いては―…。
中央の舞台。
瑠璃チームがいる側。
礼奈が、この場へと戻ってきた。
そして、あつく迎えられるのであった。瑠璃とクローナに―…。
そして、礼奈は、瑠璃とクローナに抱きつかれるのであった。
「二人とも―…。試合終わったばっかりだから、汗臭いと思うよ。」
と、礼奈は言うのだった。
礼奈としては、今は、アガランダという嫌な相手と戦って、勝利したので、気分としては良いものがあったので、寛容になることがいつも以上にできている。
自分を誇らしいとも思っていることであろう。
まあ、それでも礼奈は、冷静になることができるし、調子に乗るということはない。
「そういうことじゃなくて、勝利の抱きしめ―…。」
と、クローナが言うと、瑠璃も一緒になって、第十回戦第三試合に勝利した礼奈を抱きしめるのだった。
この光景を見ながら、ミランは、
(あの光景よりも、四角いリングがあのような状態になっていると、今日中に試合は再開することができるのだろうか。まあ、明日以降になったとしたら、これまでの試合から相手の傾向と実力を分析する時間はできるが、調整という面では、かなり難しくなってしまいそうかしら。)
と、心の中で冷静に思うのだった。
ミランは、決して、礼奈、クローナ、瑠璃が抱きしめ合っている光景を見て、羨ましいわけではない。決してそういうわけではないのだ。本当の本当に―…。
ミランは、一方で、冷静に四角いリングの状況を見るのであった。さっきの第十回戦第三試合で礼奈の対戦相手であるアガランダの攻撃で壊されてしまったのだ。ただし、四角いリングを囲う透明な壁のようなものは、全然壊れていないので、修復ができないということはないだろうとミランは予測するのだった。
問題は、四角いリングが修復されるまでの時間がどれくらいになるかということだ。
ミランが集めた情報によれば、四角いリングの修復にかかった時間の中で最大の時間を要したのが、二時間ということだ。その損傷具合がどれほどなのかは、忘れていたとしても、その時よりも酷いというぐらいは何となくわかってしまうのだ。
そうなると、四角いリングが完全修復されるのに二時間以上の時間が、このランシュが企画したゲームの第十回戦が長引くことは想定することができる。
それでも、ミランがどうこうすることができるわけではない。この四角いリングにおける修復に関しては、無力でしかないのだから―…。
そして、ローは、
(うむ。最初から景気よくいけているようじゃな。三連勝と。でも、油断はできないの~う。さて、そろそろ昼になる時間じゃろうしの~う。)
と、心の中で思いながら、ローは別の空間から家を展開するのであった。
これは、ローが別の空間に保管していた家をこの異世界のローのいる場所へと展開して、綺麗に設置したのだ。
そして、この家は、風によって吹き飛ぶということはないだろう。なぜなら、この家があった別の空間に土台を固定しているからであり、家そのものも頑丈であるから崩れるということはない。燃やされるとか爆発されるなどの方法で、家を壊すことは可能である。
家のタイプは、ログハウスというものであった。
いきなり家が出現したことに対して、出現させたロー以外の人物は驚くのであった。
「ほんじゃ。儂が展開したこのログハウスの中で食事をとるといい。」
と、ローは言うのだった。
これは、ローの善意であることは十分、誰でもわかることだ。
ローとしても、そのようなものである。これに付け加えるのなら、食事をする姿を見せるわけにもいかないし、控え室もこの中央の舞台からそれなりに距離があるのだ。まあ、ランシュらは、そこへと向かっていくのであるが―…。それ以外に方法はないが―…。
そんなランシュたちのことを気にしても意味はないので、進めていくと、さすがにセルティーの食事シーンを観客に見せるのは―…。まあ、実際、見せても問題はないのだが、場所が悪い。中央の舞台は、食事をするために作られたスペースではない以上、ちゃんとしたスペースを提供する必要がある。
ゆえに、ローは、自らが持っているログハウスを展開するのだった。
そして、ローは自分以外の人物、ここでは瑠璃チーム側にいる中央の舞台の中にいる人たち、に対して家の中で食事をとるように勧めるのだった。
「じゃあ、入ろうか。」
と、ギーランが言う。
ギーランも何度か、このログハウスに入っており、その中がどのようになっているのか知っている。それでも、急にローがログハウスを出す時は、驚くのであるが―…。
ギーランの言葉で理解できたので、ログハウスの中へと入っていくのであった。
ログハウスの中。
瑠璃、李章、礼奈は、ログハウスの中に驚きもするが、現実世界のテレビとかで見た奴と同じなんだと理解することができた。
そう、このログハウスは、電気やガス、水道などを必要とするものがあるということを理解することができた。それは、キッチンに、蛇口、冷蔵庫、電子レンジ、ガスコンロとIHコンロの両方がログハウスの中にあることを確認したからだ。
そして、三人は疑問に思うのだった。
(何、水道にガス、電気も通っているの?)
と、瑠璃は心の中で、驚きながら言う。
(異世界に来てからは、一切、このようなものを見たことがないのに―…、まさか、そういう技術はリースと近辺の地域には普及していないだけで、他の場所ではあるということ?)
と、礼奈が心の中で言うのだった。
(……異世界に来てから初めて見ました。)
と、李章は、心の中で言う。
瑠璃、李章、礼奈の三人は、異世界で来てから初めて、電気、ガス、水道が必要なもの、異世界のこれまでの旅路では一切なかったのであるが、ローの持っていたログハウスの中で見ることになったのだ。
驚くなという方が無理だ。
それでも、三人は、水道、ガス、電気が必要なものに関しては、詳しく言わないようにしようとした。なぜなら、不必要に自分たちの世界のことを言うのはあまり良いことではないと感覚的に思ったからだ。理由を説明しろと言われてもうまく言えることではないからだ。
そして、三人は、ログハウスを見渡すのであった。
第110話-2 風VS鉄 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回の投稿は、2021年10月7日頃を予定しています。
では―…。