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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
229/747

第107話-2 土の大砲

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは、以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、アガランダの土の隆起させる攻撃で、動かされ続ける礼奈は、アガランダを倒すために攻撃に転じるのであった。

今回で、第107話が完成します。

 中央の舞台。

 瑠璃チームがいる側。

 そこでは、セルティーが礼奈の試合を見ながら、

 (礼奈さんは、何かするつもりですね。しかし、これから何をするつもりでしょうか。礼奈さんの対戦相手は、明らかに礼奈さんの体力の消耗と、天成獣の宿っている武器から借りられる力の量を零にしようとしています。………馬鹿そうな感じのことをしているが、決してそうではない。外れてもいるが、重要なところでは、正確に勘を当てている。厄介としか言いようがない。)

と、心の中で、そう思うのだった。

 セルティーとしては、礼奈の勝利を願うからこそ、今の礼奈の行動を理解することができなかった。アガランダが礼奈の体力と、同時に天成獣から借りることができる力の量がなくなることを狙っているのがわかる。

 その前でも倒せるのならばラッキーという風にも思っていそうだ。

 つまり、二重に礼奈を倒す方法をとっているのだ。そのことにセルティーは気づいていた。

 ゆえに、どちらに転ぼうと礼奈が不利であることに変わりないし、有利になるという要素がセルティーからは見えてこなかったのだ。まあ、セルティーの天成獣の属性は幻で、礼奈のそれは水である以上、セルティーが礼奈の立場になったらということをより正確に予測することも、状況を見通すこともできるわけではない。

 それでも、完全に予測できなかったり、状況を見通せないわけではない。そう、この世における完全や完璧ということが本当の意味でそうであることがないように―…。人が思っている完全や完璧というものに、何かしらのそれとは反対の要素が含まれているのだから―…。わずかばかりにも―…。

 そして、セルティーがアガランダに対して厄介だと思っていたのは、アガランダの勘の当たり方であった。試合の中で重要なところで、そう、礼奈が倒されていないということをなぜか理解しているのではないかと思わせるほどに、油断というものをしていない。

 ただし、この面に関しては、セルティーに予測や考えは外れていると言っていい。なぜなら、アガランダは、そういうことをあまり考えておらず、力任せに氷を破壊したりしているだけだからだ。それでも、自らの攻撃による影響がどの範囲まで及ぶか、ということに対しては、しっかりと正確に予想することはできているのだ。そういう意味では、アガランダはセルティーが思っている馬鹿そうな感じのことをしているが、決してそうではないということが、当て嵌まるかもしれない。

 セルティーは、礼奈とアガランダの試合である第十回戦第三試合の方へと視線を向け続けるのであった。


 四角いリングの上。

 もうすでに、その残骸と言っていいかもしれない。

 四角いリングの表面にあった白色のものはなく、その中の土が礼奈とアガランダの上にあるだけだった。

 そして、その土を用いてアガランダは、礼奈に攻撃するのであったが、ここで、礼奈が攻撃をしてくるのだった。槍を横に振るって―…。

 (攻撃へと転じてきたか。そうしないと、勝てないもんなぁ~。)

と、アガランダは、心の中で言うのだった。

 アガランダには、土の針山のように隆起させる攻撃がどのような結果で、礼奈の行動がどうなり、どういう可能性が存在するかを理解することができていた。

 まず、土の隆起する攻撃を礼奈に向けてすることで、礼奈は避けないといけないし、そのような攻撃を続けていけば、礼奈は同様にその攻撃に対して、避け続けないといけなくなる。そうすることが天成獣から借りる力の量を少なくするのには、ちょうどいいからだ。

 アガランダは、守護者の化け物の爆発攻撃の後、礼奈がドーム状の氷の壁を作っていたことから、その技が礼奈にとって、天成獣からの借りられる力の量を多く消費させていることは、推測することができる。さらに、攻撃へと転じようとしているのだから、体力をかなり消費したということも、体力の消費がまずいということを理解してのことであろうと推測することができる。

 そして、礼奈は、どこからか攻撃へと転じなければ、この第十回戦第三試合に勝利することができないのだから―…。アガランダの思いもしない方法で対抗するのであれば、勝利の可能性はかなり上昇するのであるが―…。

 礼奈の槍を横に振るっての攻撃は、氷の破片を三つを出すという、この試合の中で一回、同様の攻撃をおこなっている。要は、その攻撃は、アガランダも前に見たことがある攻撃であり、記憶にも新しい攻撃であることを認識することがすぐに可能であるということだ。

 ただし、氷の破片は、塊と言ってもいいぐらいに、前よりも大きくなっているのであるが―…。

 「また、そのような攻撃かぁ――――――――――――!!」

と、アガランダは言いながら、三つの氷の破片と同じ数だけの土の塊を氷の破片の通り道を塞ぐように展開させるのだった。

 氷の破片は三つとも、土の塊に衝突するのだった。そして、その中の二つは、土の塊によって、衝突して、割れて、破片となったが、一つだけ、氷の破片を大きくというよりも、そのスピードを加速できるようにしていたのだ。そのため、土の塊を破壊することに成功する。

 なぜなら、土の塊は大体同じ大きさと厚さの三つを展開したのだから―…。

 土の塊が貫かれたことに対して、アガランダは驚くのだった。

 (ほお~、やってくれるじゃないか。でも、意味はない。)

と、アガランダは、心の中で言うと、すぐに、右手を後ろへ引き、攻撃態勢をとるのだった。

 アガランダは、礼奈の氷の破片に対しては、どのように対処すればよいのかということは、すでにわかっていた。

 「これで砕かれろ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。」

と、アガランダは言いながら、後ろに引いた右手で攻撃を開始するのだった。

 さらに、アガランダは続けて、

 「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」

と、叫ぶように言うのだった。

 礼奈は、アガランダの叫び声が危険であることはわかっているので、耳を塞ぐのであった。

 観客も瑠璃チームのメンバーも、ランシュ率いるチームのメンバーも耳栓もしくは耳を塞ぐのだった。ある意味で、競技場には一体感というものが存在していた。

 アガランダの攻撃は、途轍もなく強く感じさせるほどの動きであった。まだ、氷の破片に衝突していないのに―…。

 ドォーン。

 音がなる。

 その音は、衝撃音だ。

 そして、アガランダのパンチの形をした右手と、礼奈の放った氷の破片というか塊と言った方がいいかもしれないものが衝突した。

 「うっ!!」

と、アガランダは、ダメージを受けたような声を漏らす。

 アガランダは、想定していたよりも、礼奈の放った氷の破片の威力が強く、押されそうになったので、自然と声をあげてしまうのだった。

 それでも、アガランダがこれぐらいの威力の氷の破片で、破られるようなパンチの攻撃などすることはありえないのだから―…。

 さらに、自らに気合を入れるために叫び出すのだった。

 「ぐゥ―……………、うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」

と。

 その叫びによって、アガランダは、自らの力を振り絞り、自らのパンチ攻撃による威力を上昇させるのだった。火事場の馬鹿力と言ってもいいほどである。

 そして、アガランダは、礼奈の放った氷の破片にヒビを入れ、見事に粉々にするのだった。

 パリーン、という音をさせて―…。

 「本当に、応用力、ありすぎだろ!!」

と、アガランダは、さっきの礼奈の攻撃に感想を言うのだった。

 アガランダとしては、マジかよという気持ちが存在した。礼奈という存在が、アガランダにとって、自らが想定していた実力を数回ほど裏切るほどに上だったのだ。嬉しいことでもあるが、恐れというものを抱かせるのだった。底なしの成長を思わせるほどに―…。

 アガランダは、さらに、あることに気づくのだった。

 (まだ、攻撃が終わっていないのか!!)

と、心の中で、アガランダは言うのだった。

 そう、礼奈は、アガランダが礼奈の放った氷の破片の攻撃を防いでいる間に、次の攻撃をすでに放っていたのだ。さっき放った氷の破片の真後ろにもう一個、針状になっている氷を放っていたのである。アガランダに刺さるようにして―…。

 「!!!」

と、アガランダは、さらに、何かに気づき、急いで、土を展開する。二つほど―…。

 一つは、パンチ攻撃によって、防ごうとしたのだ。そう、さっき使った右手ではなく、左手のパンチ攻撃で―…。

 「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」

と、アガランダは叫びながら、パンチ攻撃をして、針の形をした氷を破壊するのだった。

 ヒビ割れ、パリーンと割れる音をならしながら―…。

 それでも、礼奈に動揺するような状態にはなかった。そうなるはずもない。

 もう一段階、アガランダへの攻撃をしっかりと準備して、すでに実行しているのだから―…。

 だけど、その攻撃さえもアガランダは察知していたようだ。いや、気づくことになったというのが正しい言い方であろう。そう、針の形をした氷の破片にアガランダが気づいてすぐに―…、である。

 そして、礼奈が放った二つの氷の蔦のような形をしてアガランダに向かっておくのは、アガランダに到達する前にパリーンと割れてしまうのだった。

 「氷が砕けた!!!」

と、礼奈は、動揺するのだった。

 礼奈としては、その攻撃で、アガランダにダメージを与え、凍らせる予定であったのだ。それに、二つの氷の蔦のような形をしたものがなぜ破壊されたのかがわからなかったのだ。ほんの一、二秒という時間であったが―…。

 そして、礼奈は、アガランダの近くに穴がアガランダをはさんで二つあることに気づく。

 (穴?)

と、礼奈は心の中で不思議に思う。

 そりゃそうだろう。なぜ、穴が二つあるのか疑問にも思うのが当たり前なのだから―…。この第十回戦第三試合でこのような穴を礼奈に見えるような位置に置くわけがない。置いたとしても、見えないようにされている方がいい。穴の位置がわかるということは、そこが罠ですと教えているものだ。

 アガランダもただ単に、穴をカモフラージュしなかったわけではない。だって、これは、礼奈を穴の中に落とすためのものではないし、礼奈の体の大きさよりも小さいのであり、片足を穴の中に落とし、礼奈のバランスを崩すことができるだけである。まあ、それも重要な意味をもつのであるが―…。そのことがアガランダの狙いではなく、アガランダの本当の狙いは―…。

 「創型 土の大砲。」

と、アガランダが言うと、二つの穴は大砲の先端の筒の部分のように、土から上昇するということで姿を現わし、礼奈の方へと角度を直角に変えるのだった。

 そう、アガランダをはさんで左右にあった二つの穴は、礼奈の二つの氷の蔦のような形をしたものを破壊するために土の砲弾を出すための穴であったのだ。ゆえに、罠という意味で隠すのではなく、攻撃のために見せておいたものである。

 礼奈も、アガランダのさっきの言葉によって、理解するのだった。

 (あの穴、大砲としての役割のものだったの。そして、あの大砲で攻撃するということ―…。わかったのなら対処は可能。あともう少しであの準備も完了するし―…。これがダメなら、最終手段に近いことをしないといけなくなる。水を攻撃のために使うしかない。)

と、礼奈は、心の中で思う。

 礼奈としては、凍らせることで勝利を得ようとしたが、この技が失敗した時は、氷ではなく、水を使っての勝負をすることを決めるのだった。天成獣の属性に氷というものはなく、水しかないのだから―…。基本的な属性という意味では―…。それに、天成獣に関しては、まだわかっていないこともあり、基本的な属性以外にも存在するのではないかともいわれている。それでも、礼奈の持っている武器に宿っている天成獣の属性は、水なのだ。水を出すことは、氷を展開するよりも楽なのだから―…。

 そして、礼奈は、凍らせるだけで勝てるほど、アガランダは甘くない相手であることを認識しているのだ。この第十回戦第三試合が始まった当初も、そうは思っていたが、どこまでかという読みよりも礼奈にとっては嫌な方で予想外であったことから、戦い方をどうするのかという意味で考えることが多くなってしまっていたのだ。


 中央の舞台。

 瑠璃チームのいる側では、ミランが、

 (土の大砲―…。大胆なことをするのね。さて、どうなる。)

と、心の中で思うのだった。

 ミランとしては、礼奈の勝利を信じているが、対戦相手であるアガランダは馬鹿そうにしか見えないが、戦い方自体は馬鹿に見えてもちゃんと対処されているのだ。恐ろしいぐらいに―…。

 四角いリングの第十回戦第三試合の方へと注視し続けるのだった。


 四角いリング。

 「見せてやれ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――、発射!!!!」

と、アガランダが叫びながら、土の大砲に対して、発射するように命じるのであった。

 そして、アガランダをはさんで左右にあり、礼奈のいる方向にいる二つの大砲から球状の形をした土の塊が発射されるのだった。

 ドォーン、という大きな音をさせて―…。

 一方で、礼奈は、アガランダの叫び声により耳を塞いでいたが、視線はアガランダとその左右にある大砲に視線を向けていたので、大砲の発射に気づくのだった。

 礼奈は、すぐにアガランダの叫び声がやんだので、すぐに耳を塞ぐのをやめて、自らの武器である槍を持って構え、土の塊の二つが触れられるところで、斬ろうとするためにタイミングを見計っているのだった。

 二つの土の塊は、ほぼ同時に発射されたのだから―…。

 礼奈は、自らの武器である槍に氷で覆い、刃物と同じくらいの切れ味にするのだった。

 そして、礼奈がちょうど槍を一振りすれば、土の塊の二つが斬れる部分までにそれが到達する。

 礼奈は、そこを理解し、迷いなく、槍を振るのであった。

 ズン。

 静かな音がした。

 この音は周りには、ほとんど聞こえないどころか、見逃されてしまうであろう。槍を振った礼奈でさえその音は聞こえていないのだから―…。

 そして、土の大砲から発射された二つの土の塊は、礼奈のところに到達する前に、槍によって真っ二つにされ、さらに、凍らされた上で、そのまま、落下してしまうのだった。礼奈に目の前で―…。

 アガランダは、

 (本当に厄介だ。厄介以外の言葉が見つからない。それでも!!!)

と、心の中で言っている途中で、何かに気づくのだった。

 そう、アガランダには、見えたのだ。氷の蔦のようなもの二つがアガランダに向かってくるのを―…。今回は素早く気づくことができたので、すぐに、土の大砲を放って、対処するのだった。

 ドォーン。

 という、音も付け加えて―…。

 そして、二つの氷の蔦のような形をしたものは、破壊されるのだった。

 「お嬢ちゃん!! 本当に戦えてよかったぜ!!! これで終わらせてもらおうか!!!!」

と、アガランダは五月蠅くならないように、礼奈に向かって言うのだった。

 アガランダとしては、すでに次の攻撃の準備はほとんど完了していた。礼奈の方へと移動して、パンチ攻撃するだけで確実に勝利ができると確信していた。これが本当に決まれば、であるが―…。

 しかし、その最初の一歩目で失敗するのことになる。

 アガランダが一歩を踏み出そうとするが、体を動かすことができなかった。

 「!!!」

と、アガランダは、足の方を見て、気づくのだった。

 礼奈の狙いというものを―…。そう、アガランダを凍らせるために二つの氷の蔦のような形をしたものを発したのだから―…。

 「氷の世界(アイスワールド)。」

と、礼奈が言うと、四角いリングは一瞬にして氷漬けられるのであった。

 アガランダをも巻き込んで―…。


 【第107話 Fin】


次回、右腕が土で覆われて大きくなっているんだけど!!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿は、2021年9月28日頃を予定しています。

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