第105話-3 氷VS地
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、第十回戦第三試合に出場する選手が四角いリングの中に入場するのであるが、礼奈の対戦相手である人物が叫んでしまい、ファーランスがしばらくの間、行動不能になって、試合に支障をきたすのであった。その叫んだ人物も、試合を早く始めようとする気持ちがあるのに―…。
今回で、第105話完成します。
しばらくの時間が経過する。
クローマを軽く担いだ人物がどうして試合が始まらないのかわからないという表情をする。
礼奈は、しっかりと試合が開始されない理由を理解することができた。
「試合が再開されないのは、あなたが大きな声を発するからだと思います。リースの競技場は、大声を出さなくても、しっかりと観客席の人には聞こえます。」
と、イライラしながら礼奈は答えるのだった。
礼奈としては、試合に関して、早く開始してほしいが、それでも、この目の前にいる人物がそれを阻止するのだ。本人は、早く試合が開始されるのを望んでいると言いながら―…。
そう、言っていることと、やっていることがまったくおかしく、逆効果になっているのだ。ゆえに、頭にくるのだ。何もしないでほしいと思いながら―…。
「そうか。すまんな。本当、ランシュが全然、そのことに対して説明をしてくれなかったからな。まあ、教えてくれてありがとう。お嬢ちゃん。対戦相手となってしまったことは残念だが、お嬢ちゃんだからと言って、手を抜く気はないから、そこのところ、理解してもらうぜ。」
と、ファーランスに向かって、大声で叫んだ人物が言う。
この人物にとって、礼奈は、お嬢ちゃんと呼ばれるほどに子どもでしかなく、自らが本気を出せば、簡単に殺してしまいかねないほどであった。
だが、それでも、ランシュの企画したゲームのルールでの勝利方法に相手を殺すこともありだとされていることから、礼奈を殺すことに対して、罪悪感がないといえば嘘になる。しかし、ルールで可能である以上、最悪の場合、その選択を行使することもあり得るということだ。
まあ、実際に、子どもを殺したいとは思っていない。なるべく、避けるにこしたことはない。ゆえに、この人物は、同意を得るのだった。礼奈は、この人物によって殺されてもいいのかということを―…。
礼奈も、自らの対戦相手が、自分を殺してくる可能性があることは理解していた。第七回戦第六試合における瑠璃とレラグとの対戦を見ていれば、嫌でも理解できるというものであった。
ゆえに、礼奈は、自らの対戦相手を挑発するのであった。
「逆に、返り討ちにしてあげる。他者に配慮できずに、大声で叫ぶような人には―…。」
と。
礼奈としては、大声を出され、耳を塞ぎ、鼓膜が破壊されるのではないかというほどの音量を浴びてしまったということに対する恨みと、お嬢ちゃんと言われ、実力を馬鹿にされたことに対する悔しさを意図として込めて―…。
礼奈も気づいている。相手の方が実力としては上であることを―…。同時に、どうやって戦っていくかを慎重に考えていくのであった。声が天成獣を使った武器としての戦い方と関係しているのかということを含めて、考えながら―…。
そのように考えていると、観客席にいたファーランスは、周囲の声が聞こえるようになったみたいで、大声で叫び声をあげた人物に対して、注意するのだった。
「すみませんが、大声で叫ばないでください。あなたのせいで、試合の進行を遅滞させてしまうことになりました。以後、そのようなことをしないでください。」
と。
その言葉を聞いたファーランスに大声で叫んだ人物は、礼奈からの注意も理解した上で、大きな声にならないように言うのだった。
「すまんな。俺のせいで試合の進行を邪魔したのは悪かった。後で、飯でも奢るから許してくれや。ちなみに、これは買収じゃないからな。試合のジャッジは、公平に頼むぜ。」
と。
「試合のジャッジに関しては、あなたに言われなくても公平にいたします。そして、飯を奢ってもらうことは忘れないでください。」
と、ファーランスは言うのだった。
ファーランスとしては、試合の審判を公平におこなうことは当たり前だと思っていた。そうしないと、不公平ジャッジがバレた時に、酷い目にあう可能性があり、自らの人生の破綻になりかねない。それでも、バレなければいいと考えてしまいそうだが、ファーランスは知っている。身近な人物で、そのような不公平なことをやっていたのがバレて、行方不明になった奴のことを―…。そいつは、人として最低であったが、人間らしさというものを感じることができる奴だった。
まあ、そんなファーランスの思い出話しをあげたとしても、ここでは意味をなさない。
そして、ファーランスは、瑠璃チームの試合出場者、ランシュが率いるチームの試合出場者がいることを確認する。
「試合を開始してもよろしいでしょうか。」
と、ファーランスは言う。
その言葉を聞いたクローマを軽く担いだ人物は、
「いちいち、聞かなくても、俺は先に、試合をさっさと開始してもいいと言った。さっさと試合を開始してくれ。」
と、何度も言わせるなよという雰囲気で言うのだった。
ファーランスにとっては、確認事項であり、試合をする両者に確認せずに試合を開始してしまったがために、不公平を訴えられるのは、審判なのであり、自らの責任によるマイナスの出来事が発生させないようにしているにすぎない。
そのことを心の中でも言葉にしないが、こちらにもこちらの都合がある、と思うのである。
「試合を開始しても構いません。」
と、礼奈が試合を開始することに同意するのであった。
礼奈の言葉を聞いたファーランスは、安心するのであった。それは、クローマを軽く担いだ人物の空気の読まなさに呆れていたせいもあるが、礼奈がまともであり、礼奈の対戦相手に文句をこれ以上言われないと感じることができたからである。
ファーランスは、右腕を真上に上げる。
「これより、第十回戦、最終回戦、第三試合―…、開始!!!」
と、「開始」というところで、あげた右腕を下に向かって、振り下ろすのだった。
こうして、第十回戦、最終回戦、第三試合が始まるのだった。
少しだけ、沈黙が流れる。
礼奈は、
(どうくる?)
と、心の中で思いながら、目の前にいる対戦相手を見るのであった。
そうすると、礼奈は呆気とにとられたような表情になるのだった。
そう、目の前にいる自らの対戦相手である人物が、息を大きく吸い始めたのである。
その行動が、礼奈にはわからなかった。というか、なぜ、今、息を大きく吸う必要があるのか。
それでも、礼奈の目の前にいる対戦相手である人物にとっては、意味のあることだった。たぶん、説明しても礼奈が理解できることではないが―…。
そして、息を吸い終えたのか、その人物は、
「いくぜぇ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。」
と、再度叫び出すのだった。
そう、礼奈の目の前にいる対戦相手である人物にとっては、気合を入れるために必要なことであった。気合というものは、声に出して初めて、入れることが可能であると思っているのだ。周囲にとってははた迷惑なことでしかない。
実際に、今のリースの競技場にいる者たちにとって、迷惑で、止めてほしいというレベルの切実な願いであった。そこに、大人や子どものような区別は存在しない。意識のある者たちの全員が耳を塞ぐということをするのであった。ある意味で危機によって一致団結するような感じで―…。
ランシュにおいても、補聴器を外したうえで、耳を塞ぐのであった。
礼奈もすぐに気づいて、耳を強く塞ぐのであった。心の中では、
(五月蠅い!!)
と、思うのだった。
このイライラを攻撃でぶつけてやろうとも思うのだった。
叫び終えたこの人物は、礼奈を見ながら言うのだった。
「五月蠅くして済まないなぁ~。だけど、これが俺の気合の入れ方なのだ。それに―…、そのまま、耳を塞いでいていいのか? すでに、試合は開始されているんだぜ。」
と。
この言葉は、クローナにも聞こえた。ゆえに、理解したのだ。
「!!!」
と、驚きながら―…。
ビリ、ビリ、ビリ、と音がする。
中央の舞台。
瑠璃チームがいる側。
(何? あの五月蠅い音の後に聞こえる、この音は―…。まるで、四角いリングが揺れている音?)
と、ミランがある音に気づくのだった。
ミランとしては、さらに、嫌な予感を感じさせる音に思えた。今、対戦している礼奈にとって、危機に陥れるためにならされている前兆であるかのように―…。
さらに、この音には瑠璃チームの全員が気づいていたが、それが完全に何かということを当てられる者はいなかった。それでも、正解に近い答えを出す者は何人かいたのであるが―…。
イルーナは、
(あの四角いリングね。音からすると、何かを砕く音? どうして? いや、ずれている?)
と、心の中で疑問に思いながら、四角いリングを見るのである。
イルーナとしては、礼奈が戦っている対戦相手が礼奈より強いということはすぐにわかった。一つ一つの言葉の言い方というものが自信で満ちあふれているのだ。そうだと考えると、礼奈が勝利する確率は低い。それでも、礼奈が勝てないということが完全な確率で絶対の運命というほどであるかというとそうではない。圧倒的な差ではなく、礼奈の修行を見ている感じだと、かなり相手の心理を理解する力がかなり高いと思われるし、頭の回転は速い方であり、戦い方も普通の人が何年もかけて作り上げていくものを、数か月の期間でそれをしてしまうと感じた。
イルーナは、礼奈の成長はまだまだ続くと感じた。この第十回戦第三試合の中においても―…。
一方で、瑠璃は、心配しながら見るのであった。
(大丈夫かな~、礼奈。礼奈の対戦相手の方が強そうだし―…。でも、大丈夫なはず。礼奈は強いから―…。)
と、心の中で思うのだった。
礼奈の強さは、異世界に来て、天成獣が宿っている武器を扱っている時から知っているので、簡単に礼奈が負けるということはないであろうし、絶対に勝ってくれると信じることができる。
ゆえに、瑠璃は、四角いリングで今戦っている礼奈の方を見るのであった。
そして、時間が進んでいくことで、ギーランは気づくのだ。
(この音は!!! そうか!!!!! 対戦相手の天成獣の属性は―…、地。)
と、心の中で、ギーランは確信を持って言うのだった。
口に出しはしなかったが―…。
四角いリング。
その上では、礼奈が対戦相手に視線を向けるのだった。
そして、礼奈の対戦相手である人物は、その周囲に、石とは違うが、土の塊をいくつも浮かせていた。そう、それは、四角いリングからビリっと、割れることになって形成されたものだ。
この人物は、叫ぶことでそのようにしたのだ。気合を入れると同時に、攻撃の準備を完璧にこなしていたのだ。
その土の塊を見て、礼奈は
(四角いリングの地面を破壊するなんて!!)
と、心の中で言いながら、動揺を見せる。
そして、土の塊は、向きを礼奈の方へとくるりとかえる。
「いけぇ。」
と、大きい叫び声ではなく、大人しめの声で言うのだった。
この人物の大きい叫び声をあげるという印象とは、まったく反対のことを抱かせるのだった。
土の塊は、礼奈の方へと向かって、この人物のさっきの言葉が発せられるとともに、放たれるのだった。
そのことには、礼奈もすぐに気づくのであった。
(割れた地面を操っているの!!!)
と、礼奈は言いながら、すぐに対策するのだった。
礼奈は、自らの手を前に出し、すぐに氷を展開するのだった。
「氷の植物。」
と、礼奈が言うと、礼奈の周囲に展開された氷が、礼奈の対戦相手が放った四角いリングをもとにして放たれた土の塊の向かっていくのだ。土の塊と同じ数だけ―…。
そして、土の塊を飲み込んで凍らせるのだった。
まるで、氷という名の茎が石を飲み込んで、葉となった植物のように―…。植物を思わせる形をしていたのだった。
四角いリングを声で割った形成したいくつかの土の塊の全部が、礼奈の展開した氷に飲み込まれるということになった。
「俺の攻撃を凍らせるとは―…。お嬢ちゃんの天成獣の属性が水だということがわかる。だが、それだけで俺を攻略したなんて思われたくない。俺の力の一部を見せてやる!!」
と、礼奈の対戦相手である人物がこう言うと、すぐに右手で四角いリングの地面にパンチをするのだった。
礼奈には理解できなかった。それでもヤバいことであることはすぐに理解することができた。
「!!!」
と、動揺する。
それから、少し時間が経過して、四角いリングにドォーンという大きな衝撃音がなるのだった。土煙を周囲にまき散らすほどの―…。
そして、時間が数分ほど経過した。
その間、四角いリング全体には、土煙が立ち込めていて、視界を確保することすらできない状態になっている。
そんななか、その土煙をあげた人物は、平然とした顔でそこに立っており、土煙が消えていく間もずっと最初からいた場所にずっと立っているのだから―…。
そして、この人物は気づくのだった。
(こりゃ~、四角いリングを滅茶苦茶にしてしまったなぁ~。しょうがない。気にしていても意味がないことだし―…。)
と、申し訳ないと思いながらも、戦いである以上、手を抜くわけにはいかないので、四角いリングが壊れても戦うことさえできていれば、十分だと思えたのだ。
そう思えば、気にすることでもないと感じるのであった。
四角いリングは、試合が終了すれば、自動で修復されることができるのだから―…。
そう思っている間に、土煙が晴れてくると、この人物の目の前には、氷の丸い形をした盾のようなものが出現する。
それは、礼奈によって展開されたものだ。礼奈は、クローマを軽く担ぐほどの人物の四角いリングへのパンチ攻撃で、粉塵が飛んでくるのを警戒して、すぐに、「氷の盾」を展開し、さらに、四角いリングの中にも氷を展開して、自らの足場を確保したのである。
それでも、四角いリングのほとんどが破壊され、地面がむきだしになっており、礼奈がこれから移動して戦うのも難しくなっているほどだった。
そして、礼奈は、
「倒す!!!」
と、言って、「氷の盾」から、叫び声を出していた人物に向かって、三つほどの氷の破片を作り出して、「氷の盾」から放つのであった。
そして、礼奈の行動に礼奈の対戦相手は驚くのだった。
【第105話 Fin】
次回、もう無茶苦茶!!!
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
今年中にリースの章が終わりそうにないと感じています。今年の目標にしていたのに、すみません。原因は、予想よりも文章量が増加したことと、執筆ペースがなかなか落ちてきていることです。体力回復をせねば―…。
最低限、第132話までは、仕上げたいと思っています。分割する回数は減少してきていると思いますが、分割しない範囲での一話分の文字数が増えているような気がします。次回の第106話がそんな感じです。
目標達成できない理由をつらつらと述べてしまい申し訳ないのですが、これからも『水晶』のことはよろしくお願いいたします。
次回の投稿は、2021年9月19日頃になると思います。理由は、2021年9月17日に投稿できるかどうかがわからないからです。だから、なるべく余裕を持たせて、2021年9月19日頃にしました。そのころには、少しはストックが溜められていれば、いいなという希望的観測を抱いていたりします。
では―…。