第105話-2 氷VS地
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
ぜひ、興味のある方は、読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、第十回戦、最終回戦、第二試合は、セルティーが勝利するのだった。一方で、クルバト町の近郊で地下に研究所を使って研究をしてベルグは、その研究所および実験装置を地上へと出現させるのであった。
観客席。
四角いリングが見えやすく、かつ、両チームの戦いが公平に見られる位置にファーランスはいる。
ファーランスは、次の試合である第十回戦第三試合を始めるために必要なことを始める。
「次の試合に出場する両チームのそれぞれ一人は、四角いリングへ上がってください。」
と、ファーランスは言う。
中央の舞台。
ランシュが率いるチームがいる場所。
そこで一人の大柄の人間が四角いリングへと歩み出す。
その動きは、まるで巨人が歩いているようだった。地響きというものはないが、そのように感じさせる。
ドスン、ドスン、という音がしていてもおかしくない。
そして、一人の大柄の人物が四角いリングへと上がる。四角いリングの中央へとその後に向かうのだった。
その人物は、息を大きく吸うのだった。
その動きに、ランシュたちは気づくのであった。
ゆえに、ヒルバスは素早く、あるものを自らの属しているチームの全員に渡すのであった。
そして、それを全員が耳につけるのであった。外の音が聞こえないようにするかにして―…。
ここまでくれば、何が起こるのかわかるであろう。
ただし、なぜかヒルバスは一人だけ間違って、別のものを渡してしまうのだった。ランシュはそれを装着するのだった。
「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。」
と、大声で叫び出すのであった。
その叫び声を大声というのは、間違っているかもしれない。なぜなら、その声は、すでに、人が聞くことができる音波の域を超えていたのだから―…。大声ではなく、人の耳を音が聞こえないように破壊する声という意味で破耳声と言ったほうがいいかもしれない。
この声は、観客席にも響き渡り、観客席にいる人たちは、耳をすぐに塞いで、とにかくその破耳声が聞こえないようにした。
中央の舞台にいる瑠璃チームのメンバーもそうであった。四角いリングに今、立っている人物の声の大きさに観客席以上に大きく聞こえるために、耳を塞いだとしても、何とか、耳の中にある鼓膜が破けないようにするのが精いっぱいであった。
そして、しばらくすると、収まるのであった。
「ふう、気合いが入った。」
と、その叫び声をあげた人物は言うのだった。
この人物にとって、このような叫びは、特に気合いを入れるには十分であった。ちなみに、この人物の耳の鼓膜は頑丈なのか、さっきの叫び声でも破壊されることはなかった。
(さて、まずは、クローマの奴を四角いリングから下ろさないと、な。)
と、心の中で思い出し、倒れているクローマのところへと向かい、クローマを軽く担いで、中央の舞台へと運ぶのだった。
クローマを運び終えた後、また、四角いリングの中央へと向かうのだった。
ちなみに、クローマを受け取ったのは、ヒルバスであり、ヒルバスにはクローマを運んだ人物の声は聞こえなかったが、動作で気づき、受け取りに向かったのだ。
受け取った後は、まだ気絶しているリークの近くへと運ぶのであった。引きずりながら―…。抱っこさせて運ぶことをヒルバスは、したいとは思わなかったのだ。
その後、四角いリングの上の中央に戻ったクローマを軽く担いだ人物は、
「俺と対決したいのはどいつだぁ~。」
と、獲物を狙うような目で言うのだった。
一方で、ランシュは、ヒルバスに渡されたものが耳栓ではなく、補聴器だったのだ。そのせいでランシュは、クローマを軽く担いだ人物の叫び声を人よりも良く聞いてしまったがために、鼓膜に相当のダメージを受けてしまったのだ。ヒルバスはそのことに気づいていなかった。クローマを引きずって運ぶことに集中していたせいで―…。
ランシュは、
(クソ~、これ耳栓じゃなくて、補聴器じゃねぇ~か。どうして、ヒルバスは補聴器なんか持ってるんだよ。こんな超高級品を―…。)
と、心の中で言うのだった。
ランシュの気持ちは、ヒルバスに対する怒りしかなかった。それでも、ヒルバスは、今日の回戦に参加している一人であり、自分のチームのメンバーである以上、怒りをぶつけて、ヒルバスを倒すのは愚策でしかない。そのことを理解しているので、感情のやり場がなくて、イライラという感情をためていくしかなかった。
ちなみに、ヒルバスがなぜ補聴器を持っていたのか。それは、あくまでも貰い物でしかなかった。今から半年ほど前に、リースで商売をしている有名な商人である知り合いのニドリアとの世間話で、偶然、サンバリア方面で安く売られていたのでニドリアが二つほど買ったのだが、耳が良いニドリアには意味がないものであったために、ヒルバスにただで贈ったというわけだ。
ヒルバスもそのことの説明を受けており、ヒルバスも珍しい物程度に貰って、使うことは考えていなかった。ゆえに、忘れてしまっていたのだ。この補聴器、やけに耳栓に似ているので、耳栓と間違えて入れてしまっていたのだ。今日に限って―…。
それをランシュに無意識の間に耳栓として渡してしまい、ランシュから怒りを買うことになった。ヒルバス本人は、そのことを今は知らない状態だった。
さらに、異世界におけるこの時代の補聴器に関しては、一部の地域では普及しているが、超高級品であることは間違いない。なぜなら、普及している一部の地域でしか使われておらず、その普及している一部の地域以外に専門の人がいないということもある。普及している地域の一つをあげれば、サンバリアとその周辺ということになろう。
補聴器を作る技術がかなり精密さを要求することと、補聴器の音の大きさを調整することができるのは専門的な技術を持っている人しかできないので、技術的に未発達な地域ではそもそも普及することができない。ゆえに、そのような地域では、超高級品ということになり、上流階級のおもちゃ程度のものにしかならないのだ。音の調整によって始めて、便利な道具になるのだから―…。
ランシュは、ここから数分ぐらいは、自らの聴覚がおかしくなっているのであった。そう、数分後にランシュは、聴力を回復させることに成功したということである。
中央の舞台
瑠璃チームがいる側。
耳を塞ぐということをやめる。
それは、クローマを軽く担いだ人物が、叫び声をあげることをやめたので、する必要がなくなったのだ。
そして、その後に、「俺と対決したいのはどいつだぁ~」という言葉が聞こえた。
その言葉が、叫び声とともに、瑠璃チームのメンバーの怒りというものを増幅させる結果となるのであった。
アンバイドは、
(あいつは何なんだ。あいつのせいで、鼓膜が破けそうになった。本当に、周りのことを考えろ!! 礼奈、あいつをぶっ飛ばしやがれ!!!)
と、心の中で言うのだった。
アンバイドは、本当に、クローマを軽く担いだ人物に対して、かなり腹を立てているのだ。それは、叫び声のせいで、アンバイドの鼓膜が壊されそうになったこともあるし、その後に挑発的なものを言ってきたからだ。
それは他のメンバーも同様であった。
そして、第十回戦、最終回戦、第三試合に出場する者は、アンバイド以上の怒りを感じていた。
「うるさい!!」
と、言いながら、四角いリングへと向かって行くのであった。
その様子を他の仲間が見るのであった。
「礼奈があんなに怒るなんて―…、よっぽどだね。」
と、クローマは言う。
そう、第十回戦第三試合に出場するのは、礼奈であった。これはすでに決められていたことだ。
クローナは、礼奈の怒りの姿を見て、怖いと思っているのであった。礼奈はあまり怒ることはないが、いったん怒ってしまうとあまりにも怖くなるのだ。表情は、綺麗なままなのであるが、そこに纏われている雰囲気というのが―…。
「あはははははは、そうだね。」
と、瑠璃が苦笑いしながら、クローナのさっきの言葉に頷くのであった。
首を縦に振るということではなく―…。瑠璃も礼奈の怒っている姿を見て、心の奥底では怖がっているのだ。表情が変化しない、いっけん笑顔に感じるのに、なぜか、恐怖を感じさせる雰囲気を纏っていて、その雰囲気が笑顔をも恐怖に感じさせるようにするのだ。瑠璃はそのように感じた。
ゆえに、クローナを含めて瑠璃は、礼奈を怒らせないようにしようと思うのであった。何度でも、何度でも、そのことを未来に渡って確認するのだろうと思いながら―…。
一方で、ミランは、礼奈の表情を見て、
(本当、恐怖を感じるわ。その雰囲気だけで、伝説級の化け物も泣きそうなほどね。)
と、心の中で言うのだった。
ミランも礼奈の表情に対して、恐怖というものを感じるが、それでも、礼奈と戦って、その実力を現在においてどうなっているのかを知っているのだから、何とか精神的にも耐えられる。しかし、その礼奈の実力を知らなければ、恐怖を感じて、本来の力を発揮することはできないと思ってしまう。
そして、ミランは、礼奈は四角いリングへと到着し、対戦相手と対峙するのを見るのだった。
四角いリング。
そこでは、礼奈とその対戦相手が対峙していた。
そして、礼奈の対戦相手はファーランスに向かって言うのだった。
「ファーランス、さっさと試合を開始しろ。」
と、ファーランスに地声で聞こえるように言うのだった。
この人物にとって叫び声のような大声を出すことは、相手にはっきりと自分の言葉を伝えるためであり、そして、それを一回で確実になしたいがためである。
そのせいで、近くにいた礼奈は、再度、耳を塞ぐのであった。
(ふざけるな!! こいつだけはぶっ飛ばす!!)
と、心の中で激しく怒るのだった。
この競技場は、四角いリングでの会話は、競技場の仕組みにより、観客席にも伝わるのであった。ゆえに、数々の四角いリングの言葉を、その時来ていた観客には知られているのである。
そのことを礼奈は、ちゃんと知っているために、普通に話せばいいと感じるし、そうしろと今すぐにでも言ってやりたい気持ちであった。
礼奈の対戦相手は、リースの競技場に来るということに関しては何度もであるが、このような声に関する仕組みを知っているわけではない。ちなみに、ランシュによって説明があったわけではない。ゆえに、この人物が知らなくてもおかしくはない。
観客席。
その中で、両チームの戦いが見える場所にいる一人の人物がいる。
その人物は、このランシュが企画したゲームの審判を務めているファーランスである。
ファーランスは、何とか耳を塞ぐことによって、クローマを軽く運んだ人物の叫び声による耳の鼓膜の破壊を免れたのであるが、それでも、しばらくの間、周りの声が聞こえないほどであった。
ファーランスは、
(うるさいなぁ~。これじゃ、試合を進行させていくことすらできなくなってしまうではないか。本当に迷惑な人物です。とにかく、周りの声が聞こえるようにならないと。)
と、心の中で言うのだった。
ファーランスにとっては、クローマを軽く担ぎ、叫び声をあげる人物に対して、不快感しか抱くことができなかった。それは、急に叫び声をあげるという、観客にも他の人々にも迷惑になるようなことをして、反省の顔すら見せないのだから―…。人としてどうかと思ってしまう。
それでも、この叫び声をあげる人物は、騎士としての仕事以外のある仕事での評判はかなりいい。力持ちであり、仕事のスピードが速く、かつ、ノリの良さがうけていたりする。それでも叫び声をあげるのだけは、その仕事でもマイナスの評価になっているのであるが―…。
まあ、それを初対面の人に理解しろと言ったとしても、無理な話だ。最初に、叫び声をあげられ、耳の鼓膜を破られるほどのことをされては―…。ゆえに、騎士としての仕事以外のある仕事では、最初のうち、仲間というものができなかったが、そこの仕事のブラック上司を暴力的に倒して以後、なぜか周りから慕われるようになって、仕事も教えられるようになったという。
ブラック上司のその後については、それ以後行方不明となったのである。このブラック上司、実は、アングリアの部下で、港湾の仕事で違法薬物の売買のための倉庫を提供しており、そこからマージンを受けていて、リースの騎士たちによって逮捕され、収監されたという。収監したのも、この大声で叫んだ人物であるが―…。まあ、ブラック上司がいなくなっても、今まで酷使してきたので、行方不明になってもどうでもよく、新たに派遣された上司が有能で、労働環境が改善したので、その存在すら忘れられてしまったようである。
そして、ファーランスは、周りの音が聞こえるようになった時、また、あの声を聞いてしまうのであった。
「ファーランス、さっさと試合を開始しろ。」
と、いう言葉を聞いてしまい、しばらくの間、試合進行に支障をきたすのであった。
第105話-3 氷VS地 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回で何とか、第105話は完成すると思います。
次回の投稿に関しては、2021年9月14日頃を予定しています。
では―…。