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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
223/748

第104話 下が上を倒すとき

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』は、第十回戦第二試合、クローマVSセルティーの戦いは、クローマが優位で進んでいた。それでも、セルティーは、クローマに対抗することができていた。

 セルティーは、大剣を振る。

 だけど、その攻撃は、当たることはなかった。

 クローマは、セルティーの攻撃範囲内からバックジャンプで離脱したのだから―…。

 それも瞬間的な速度で―…。

 セルティーもそれに気づいて、何とか次の攻撃にでようとするが、嫌な予感がするのだった。これ以上、進んではいけないという予感が―…。

 (いけぇ―――――――――――――――――――――――――。)

と、クローマは、心の中で叫ぶのであった。

 そう、クローマは、すでにセルティーへと攻撃を開始していたのである。


 【第104話 下が上を倒すとき】


 (ふう~、危なかったぁ―…。)

と、セルティーは、心の中で言う。

 セルティーとしては、危機一髪でしかなかった。

 そう、クローマは、セルティーの大剣による攻撃を避けた後、すぐに、右手に黒い球体を出現させ、それを突きのように伸ばして攻撃してきたのだ。

 闇が一本棘のように、針のように、一直線に伸ばして―…。

 黒い球体の出現ですぐに、攻撃してくると予想したセルティーは、屈んで避けるのであり、ギリギリセルティーの頭上を越えてセルティーの体に当たることはなく、結局、セルティーの武器である大剣に当たることとなった。

 その結果、セルティーの大剣は、剣の先が上を向いていたのが、後ろの方に倒れるようになった。つまり、それほどまでに伸びるスピードが速く、威力が強かったことであり、かつ、そこまでの長さになったということだ。

 (感づきやがったか―…。そこから避けたのか。反射神経は悪くないということと、勘は鋭いということか。厄介な。)

と、クローマは、心の中で、悪態をつきながら言う。

 クローマにとっては、セルティーの隙というものを完全に突くことができたと確信していた。そのような一撃だったのだ。それを対戦相手であるセルティーに避けられるのだから、悪態の一つもつきたくなるものだ。

 それでも、クローマも悪態ついたままでいることはできない。そのままの状態では、セルティーに隙というものを与えかねない。

 そうしている間に、体勢を整えることに成功したセルティーは、距離を取って、助走をしながら、攻撃をしてくるのであった。

 そのことに関しては、クローマはすぐに気づき、自らの闇を剣の形したのを自らの目の前に構え、セルティーの攻撃から防御する方法を選択するのだった。

 セルティーも単純に自らの武器である大剣で攻撃をし、クローマの闇で造形した剣の形をしたものに衝突するのだった。

 キーン、という音をさせながら―…。

 (大剣での攻撃か、ここに物理攻撃か。他に手はないのか? いや、浮かばないと言った方がいいのかもしれないな!!)

と、クローマは心の中で思うのだった。

 続けて、

 (なら、続けるか。)

と、心の中で言うと、クローマは、攻撃をするのであった。

 それは、クローマが動くというものではなかった。武器ならあるのだ。剣の形になっている闇が―…。剣のあらゆるところから、闇の噴き出しのようなものがどんどん登場し、いくつものそれがセルティーに向かっていくのであった。

 セルティーを飲み込まんとして―…。

 「!!」

と、セルティーは驚き、動揺するのだった。

 そして、セルティーは抵抗することができずに、闇の中にまた飲み込まれてしまうのだった。むしろ、抵抗できずにというよりも、抵抗しなかったという表現が正しいかもしれない。

 セルティーが闇に飲み込まれるのと同時に、クローマはそこから少し距離を取るのだった。それは、これからおこなうことの被害を受けないようにするためであった。

 (これで倒されることを祈るしかないが、避けられているとは思えない。ここで終わらせるか。これ以上長引かせても意味がない。)

と、クローマは、心の中で言うと、発動させるのだった。

 「闇爆」

と、クローマが言うと、セルティーを飲み込んだ闇が爆発音のような音をあげるのだった。

 そう、セルティーを飲み込んだ闇が内側で爆発したのだ。外に飛び散らないように、外に硬い闇を覆って―…。

 そのズドーンという爆発音は、リースの競技場中に響き渡ることとなった。その爆発音は、別のことに集中している観客をも四角いリングへと視線を向けさせるのであった。今、おこなわれているクローマVSセルティーの第十回戦第二試合へと―…。

 そして、爆発音は、すぐに収まり、しだいに、セルティーを覆っていた闇は地面へと流れていくのであった。重力というものに従って、落下していくのだった。

 闇が地面に流れていく中で、闇に飲み込まれていたセルティーの姿が徐々に現われていくのであった。

 そのセルティーの姿を見た者たちは、驚きと同時に、手を口にあてる者も中にはいて、その悲惨な姿にショックを受けるのだった。

 セルティーをそのような姿にしたクローマは、

 (こりゃぁ~、俺の勝ちだな。)

と、自らの第十回戦第二試合の勝利を確信するのであった。

 セルティーは、すでに戦闘不可能というほどのダメージを受けているのだから―…。

 そうなってくると、クローマが自らの勝利を確信するのは、当たり前のことでしかない。その勝利が本当のものなら、どれだけ幸せなことであっただろうか。

 「やっと、勝機を掴みました。」

と、声がしたのだ。

 この声は、もちろんセルティーが言っているのである。

 そう、セルティーはずっと待っていたのだ。クローマがセルティーより実力が強いということを判断して、攻撃の威力も強いということを―…。さらに、セルティーは、クローマの攻撃によってダメージを受けると言うことを―…。

 ゆえに、予測していた。

 「クローマ(あなた)が最初から私の幻にかけられ、優位に私にダメージを与えたということです。まさに、現実か幻か、それは反転するのです。幻想反転。」

と、セルティーは言うのだった。

 そう、セルティーは、自らが受けたダメージを自らの武器に宿っている天成獣から借りられる量を多く使って、クローマに移したのである。

 そして、クローマは、セルティーによって斬りつけられたダメージと、その後の動きを合わせると、すでに立っていることができない状態になっていた。

 クローマは、セルティーから斬られた傷をなぜ深さがなかったのをクローマに気づかせるようなことをしたのか? それに関して、疑問にも思っていなかった。

 これは、セルティーがあえて深く斬ったように幻を見せ、さらに、クローマにそれが実際の傷として浅いということにあえて気づかせるようにしたのだ。それは、クローマの動きを慎重にさせないためであった。

 理由は、実際に傷が深いと、クローマも幻以上に痛みによって、どこかで気づかれる可能性があるし、そのせいで動きというものが鈍くなり、ダメージを大きくさせることもできないし、セルティーの狙い通りにことが運ばれないという可能性も存在した。ゆえに、大事なのは、傷が深くないと相手に気づかせ、動くことを可能にして、セルティーに大ダメージを与えさせ、「幻想反転」を使って、確実にクローマを倒すために―…。

 (クソッ!! 最初から、このためだけにダメージも、傷が深くないことに気づかせていたのか。自らのこれまでの戦い方を利用したというのか…。厄介だぜ、セルティー王女、中身はレグニエド王の方と似てないじゃないか。まあ、これでランシュがチームとして敗北しても少しだけ安心できるか。)

と、クローマは、心の中で言いながら、倒れるのだった。

 そして、その状況が現実であるということが、観客席にいるファーランスは理解できたので、

 「勝者!! セルティー!!!」

と、勝者宣言をおこなうのだった。

 第十回戦、最終回戦、第二試合は、セルティーがクローマを破り、勝者となるのであった。


 クルバト町があった場所の近郊。

 この場所には、あまり人々が近寄られずにいた。

 最近、ここでは、派遣されたリースの騎士が行方不明になるのだ。

 クルバト町近くにある村の人々からは、この事件を神隠しと言って、噂していたのだ。

 さらに、クルバト町は領主のエルゲルダによって滅ぼされ、世間で、クルバト町の人々を洗脳したということになっている町長バトガーがエルゲルダを逆恨みしていて、そのために、リースの騎士を見ると、神隠しをしてしまうのではないかと、思う人たちまでいた。

 結局、根も葉もないものであるけど、不安というものはそれを増幅させるのだ。その増幅は、時に真実よりも真実というものとして扱われるのだ。偽物でしかないはずなのに―…。

 このような噂が立っていて、不安であることから、リースの方では、さらに、騎士を派遣することになるのだ。あくまでも少数だ。

 ランシュは、この件に関して、ただの地震であり、何も心配するようなことはないと言っているのだが、ランシュを引きずり降ろそうとしているリースの中央で権力を掌握している者たちは、ランシュの許可なしに再度、騎士を派遣させるのである。

 彼らは、ランシュを引きずり降ろして、自分たちのためのリースにしようとし、かつ、自分たちに反抗することが永遠に起きないようにするために―…。それこそ、彼らにとっての安寧だと思われる方法だと感じているのだから―…。自らは正しく、他者は間違っていると思っているのだから―…。

 「あ~あ、本当に行方不明になったモーゲル隊長ら三人を探すのですか? 嫌だなぁ~。俺たちもモーゲル隊長らと一緒の運命になるなんて―…。」

と、一人の人物が言う。

 モーゲルら三人が最初に派遣されてから、リースへと帰還せずに、数日の日数が経過していた。行方不明である。

 そうなってくると、モーゲルらは、リースの騎士団を無断で脱走したか、何かクルバト町があった場所の近くで、何かに巻き込まれたのか。そのような二つの選択肢を想定している。

 実際には、モーゲルらは、ベルグの重臣であるベルグによって、すでにこの世から消されてしまったのであるが―…。今、いるこの一人の人物が知っているわけではない。知れば、殺されていることであろう。ある意味で運が良いといえる。

 「そんなこと言っていないで、捜索をするぞ。」

と、もう一人の人物が言う。

 ここでややこしくなってくるので、彼ら二人の名前を紹介しよう。モーゲル隊長のことを言った人物がマルガネルであり、それに反応して捜索に取り掛かろうとしているのがナガンドラである。

 ナガンドラは、マルガネルの愚痴に対して、面倒くさいと思い、自分たちに課されている仕事をおこなうのだった。

 その仕事とは、モーゲル隊長がリースに戻ってこないので、その行方を捜すことと、かつてクルバト町があった場所での不可解に起こる地震についての調査であった。

 結果はわかりきっている。そう、ランシュの言うところの普通の地震でしかなく、地震が続くことによって、クルバト町のあった場所の近郊に住んでいる人々が何かあるのではないかと不安に思って、妄想で何かの陰謀があるのではないかとしているだけでしかない、と。

 現実には、ベルグの陰謀というものがあるのだが―…。

 そして、マルガネルとナガンドラが捜索をおこなっている途中で、地震が起こるのだった。

 「何だ、これは!!!」

と、ナガンドラが叫ぶ。

 ゴオオオオオオオオオオ。

 何十秒、一分を経過、最終的には、二十分ほどの時間の間、ずっと地震は続いたのである。現実世界における日本という国で使われる震度3ほどのものがずっとであった。

 こんな地震は、現実世界でもこの異世界でも有り得るわけがない。二十分ほど続く地震など自然で起こるはずもないのだ。現実に存在しないかというと、否定することはできないだろうが、人の生涯で経験できるものの地震の中であるのかどうかわからないものだ。

 そして、マルガネルは、

 (何、この地震―…、今までに一度も経験したことがない。一体、この地で何が起きているんだ。)

と、心の中で、今、起こった地震に違和感をもつのであった。

 ナガンドラは、動揺しながら言う。

 「これ―…、本当に自然に起こる地震なのか?」

と、疑問に思うのだった。

 まるで、未知に遭遇しているように感じさせられるのだから―…。夢であればどれほど幸せであったことだろうか―…。これは現実だ。ゆえに、答えへといたる道を見つけることができない。

 これは、すでに始まっていたベルグの実験の大きな段階への移行を示すものであった。

 そう、これから、異世界と現実世界を巻き込むための第二幕の始まりを告げる、いや、後の最後の始まりのための一つの兆候でしかなかった。

 まだ、現在においては、瑠璃、李章、礼奈にとって、対処できるはずのないことであった。


 【第104話 Fin】


次回、叫び声にご注意を!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


なんとか、第十回戦第二試合まで終わらせることができました。なかなか執筆スピードが上がりません。とにかく、無理をするのはよくないけど、頑張っていきたいです。

次回の投稿は、2021年9月10日頃の予定となります。

では―…。

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