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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
222/747

第103話 上手の策

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは、以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、最終回戦、第十回戦、第二試合、クローマVSセルティーは、クローマが優位に試合を展開するが、セルティーは何とかクローマの攻撃に対抗していくのであった。

 四角いリング。

 「闇夜の世界」の中。

 そこでは、クローマとセルティーの戦いがおこなわれている。

 クローマは、闇を拡大させる攻撃をセルティーに当てることに成功するのだった。

 そして、クローマは、

 (これほどの攻撃だ。避けた様子はない。こうなると、完全に倒せたのは確実だな。)

と、心の中で言うのだった。

 クローマとしては、第四回戦の時も、この一撃で倒すことに成功しているのだから―…。一度目は失敗したものであるが、さすがに二度目というものは、効いているだろうというのを確信するのであった。そう、セルティーは、防御の態勢をとっていなかったからだ。闇の拡大させる攻撃を受ける寸前に、クローマが見たセルティーの状態では―…。

 クローマは続けて、

 (これ以上、「闇夜の世界」を展開していても、意味はないな。)

と、心の中で言い、「闇夜の世界」を解除するのであった。

 理由は、「闇夜の世界」では、クローマも視界を確保するのは難しいという一面もある。セルティーよりも視界が確保することはできるが、それでも、暗くて辺りが見えずらいのには変わらない。

 そして、「闇夜の世界」が解除されると、しだいに、四角いリングを覆っていた「闇夜の世界」がしだいに、ドーム状の一番上からゆっくりと、四角いリングの隅に向かって、そう、「闇夜の世界」の四角いリングと接している面へと降下していくのだった。

 それは、リースの競技場にいる者たちにも、すぐにわかったのだ。結果がどうなったのかということを知りたいという興味を刺激しながら―…。


 中央の舞台。

 瑠璃チームのいる側。

 そこでは、「闇夜の世界」がしだいに消えていくのがわかった。

 (闇が消えていく。)

と、礼奈が心の中で言う。

 礼奈は、実力ではセルティーよりもクローマの方が強いということがわかっているので、決着として、どうなったのか心配だったのだ。セルティーが無事でいるのかを―…。それでも、セルティーの勝利を信じている気持ちの方がより強い。それは、仲間である以上、仲間の勝利を祈るのが当たり前であるからだ。

 それぐらいでいいだろう。礼奈は、セルティーの無事と、勝利を思いながら―…。

 李章は、

 (相手の闇が消えるということは、セルティー王女の勝利でしょうか。決定的に―…、そうでなければ、わざわざ解除は―…? いや、しますか。勝利して、もう闇で四角いリング(フィールド)を覆う必要がなくなったとして、ですか…。)

と、心の中で考えるのだった。

 李章は、最初、「闇夜の世界」が消えていくのを見て、セルティーがクローマを倒したのだと思ったが、少し冷静になって考えてみると、クローマがセルティーを倒したから「闇夜の世界」を解除するということも十分にあり得るということに考えが至ったのだ。

 そうなってくると、瑠璃は確実に勝利しないといけなくなるので、李章にとっても瑠璃に重要な責任をより増やすのは良くないと思ったがゆえに、セルティーのことを心配するのであった。

 クローナは、

 (う~ん、判断が難しいなぁ~。とにかく、セルティー王女が無事だといいんだけど―…。)

と、心の中で思うのだった。

 そこに、ある声が聞こえるのだった。

 「残念だったねぇ―…。瑠璃チームの諸君。」

と。

 そう、セルティーが倒されたのではないかということが、「闇夜の世界」が完全に消滅するなかで、わかってくるのだった。


 【第103話 上手の策】


 四角いリングの上。

 そこには、クローマがいた。

 クローマのみと言った方が正しいのだろうか。

 クローマが一人、四角いリングの上に立ち続けていたのだ。

 「セルティー王女は、私の攻撃で倒しました。生きているかどうかはわかりませんというわけにはいかないでしょう。だけど、私の闇の攻撃を受けた後にいなくなったのです。逃げたのかどうかは知りませんが、ここにいないということは、逃げたのでしょうか。残念です。」

と、クローマは言う。

 セルティーが逃げてくれるのであれば、それでも構わないと思う。瑠璃チームがチームとして勝利をしたとしても、リースの中枢で権力を握っている奴らによって、都合の良いように使われるのは、当たり前のことであろう。その方がよっぽど不幸の方に分類されるかもしれない。セルティーの父親であるレグニエド王のように―…。

 そうならば、逃げて、恥になったとしても、生き残っていた方が汚名返上、名誉挽回のチャンスが来るかもしれない。なら、そっちの方にかけたほうがいい。

 これは、クローマによる身勝手なものにしかすぎないが―…。人としての優しさというものは、リースの中枢で権力を握る者たちよりも、確かに存在した。


 中央の舞台。

 瑠璃チームの側。

 アンバイドは、

 (……。)

と、心の中で言葉にしなかった。

 アンバイドとしては、セルティーの逃亡が事実であろうとなかろうと、そこまで強く気にするようなことではない。それに、セルティーが逃亡したとは思えないのだ。セルティーの持っている武器である大剣に宿っている天成獣の属性は、幻であり、それは、相手に対して幻を見せて、精神的に倒すことが特徴なのだから―…。そう、幻は、相手の精神を攻撃で追い詰めるのだ。幻を発動させて、周囲にセルティーの姿が見えないようにしているのではないかと、アンバイドは結論付けているのだ。

 それでも、逃げたという可能性は、若干ではあるが残っている。それも、頭の片隅程度であるが―…。

 一方で、ギーランは、

 (一体、何がおこなわれたのか今のところ知ることはできないだろう。まあ、実力差というものがあればこんなものであろう。セルティー王女はよく頑張ったほうだ。)

と、心の中で思うのだった。

 ギーランは、クローマとセルティーの実力差が圧倒的でないということであるだろうが、それでも差は差なのだ。勝つ確率は明らかにクローマの方が高い。そうなってくると、セルティーは奇策をとる必要もあり、相手の僅かな隙というものを確実についていかないといけないのだ。

 それができるか、できないかが勝敗の分かれ目になっても不思議ではない。

 ギーランとしても、自らの娘である瑠璃側のチームであるセルティーに勝利して欲しいという気持ちは十分にあるし、そうなって欲しいと思っている。

 それでも、ここまで戦うことができれば、負けたとしてもセルティーは、十分に頑張ったといえる。それは、実力として差のある人物に上手く対抗することができたと思えるからだ。それに、逃げることも時には重要なことであるのだから―…。たとえ、他人から馬鹿にされようとも―…。生きているこそが次の場面へと繋がっていくのだから―…。

 瑠璃は、

 (セルティーさん―…。)

と、心配をするのだった。

 瑠璃は、セルティーが負けてもそのことについて責めるつもりはない。とにかく、セルティーが無事に試合を終えてくれることの方がいい。それに加えて、勝利を手にしてくれるのなら、なおさら、良いのであるが―…。

 それでも、最低限、セルティーさんが無事であることの方が何者にもかえられないのだ。

 ミランは、

 (セルティー王女じゃダメだったのね。本当に、クローマ(あいつ)はムカつく―…。実力差があっても、倒してくれたらなぁ~。)

と、心の中で言う。

 ミランとしては、第十回戦第二試合の前に、クローマより自身が弱いとクローマに言われ、腹が立っていたのだ。ゆえに、クローマと対戦するセルティーには、どうしても勝って欲しかった。クローマの鼻を明かすしてやれば、きっと、自らの心もすっきりとすると思って―…。そう、この頭にくるのも少しだけ治まると思って―…。

 イルーナは、ただ、じっと四角いリングの方を眺めるのだった。

 (……ふ~ん、なるほど。)

と、心の中で言うのだった。

 たぶん、ローとイルーナ以外は、気づいていないのだろう。そう、クローマさえ気づいていないのだから―…。今の状況がどうなっているのか。いや、どういう状態なのかを―…。


 四角いリングの上。

 そこには、クローマがいた。

 多くの者たちは、クローマだけが四角いリングの上にいると思っている。

 クローマは、辺りをゆっくりと見回し、セルティーがいないのを確認する。

 「これで第十回戦第二試合(しあい)に勝利したのは確実でしょう。審―……ッ!!!」

と、クローマは、言いかけたところで気づくのだ。

 何か嫌な予感がするのに―…。

 クローマは、戦闘経験をしっかりと持っているほどであり、勘もそれなり優れている。そのことをしっかりとクローマ自身もしっかりと理解している。ゆえに、自らの勘に従い、嫌な予感がする後ろへと視線を向けるのだった。

 だけど、それは、遅すぎたと言っても過言ではない。

 そう、すでに、クローマが向いた方法に、セルティーがいるのだから―…。誰にでも見えるようになって―…。

 そして、セルティーの大剣が上から下へと向かう軌道で、クローマは斬られるのであった。

 そう、クローマは、斬られた部分である左肩から右腹部の線上に刀傷を受け、血が吹き上げるのであった。現実は、そこまで深い傷になっているようではなかった。

 (クッ!! 隙を突かれた!!! 俺や他の観客から自らを見えないように幻をかけていたのか!!!! セルティー王女を認識することができないように!!!!! やるな―…、本当。)

と、クローマは、セルティーのことを称賛するが、同時に、あることに気づく。

 (こんな斬られたのに言葉が続けられるし、痛みもはるか昔に受けたことがある攻撃よりも深くはない。ということは、これも幻か!!! わかってしまえば、そう思わなければいい。)

と、クローマは続けて、心の中で言う。

 そう、クローマは、過去に、斬られたことがあり、それで重傷を負ったことがある。それは、騎士による真剣での試合であり、相手側がクローマのことを才能があるからといって気に食わない奴と結託して、勝負がなされた時のことだった。

 この試合では、真剣と言っても、相手を傷つけないように当てることができるのは鎧に軽くであったが、それを無視されて、見事に斬られたのである。その時の痛みは、セルティーに斬られた時の痛みの比ではなかった。痛いという表現すら、この時の状態に当てはまるというものではなかった。痛いというよりもはるかに超えるものであった。

 その時は、何とかランシュと、万が一のためにそこにいたエリシアによって、一命をとりとめることができた。

 ゆえに、その時を知っているからこそ、セルティーの斬るという攻撃は、明らかに幻によってなされていることがわかったのだ。

 だけど、さっき、セルティーによって斬られたという痛みはしっかりと残っているので、動くスピードは普段より少しだけ遅くなるのであった。

 セルティーは、

 「油断したのはあなたです。」

と、言うのだった。

 セルティーは、クローマの闇を拡大させる攻撃に対して、守るのように見せず、実は、リースの競技場の全体に認識を阻害させる幻をかけていたのだ。それは、そこまで強力なものではなく、しばらくすれば、気づく程度のものでしかなかった。今は、天成獣から借りられる力を大量に消費をしたくなかったからだ。

 認識を阻害させた後、闇の拡大する攻撃を素早く移動して、避けることに成功する。すぐに、クローマの後ろへと回って―…。認識を阻害している以上、クローマにセルティーの存在が気づかれることは、認識阻害をしてから時間が経過していないほど、効力を発揮し、それがないので、すぐに行動して、クローマの真後ろのすぐ近くの距離に向かうのだった。音をたてずに―…。

 そして、今にいたるわけであるが―…。

 「……、だが、いくら俺を一回斬ったところで、俺の勝利に揺るぎなど生じない。」

と、クローマは言うと、クローマとセルティーの間に、闇が急に発生するのである。

 そう、闇の壁のようなものが―…。

 「!!!」

と、セルティーは、驚くのだった。

 「覆え。」

と、クローマが命令すると、闇がセルティーを飲み込むのであった。

 この闇は、「闇夜の世界」で使ったもので、今回は、セルティーの攻撃における壁という役割だけでなく、セルティーを倒すために再度、展開したものである。これぐらいの量ならば、一日に何回か展開することができる。回数に限度があるので、どこで展開するかは、試合の状況、戦いの戦局によって見極めないといけないのであるが―…。

 そして、セルティーを飲み込んだ、闇はドーム状になるのだった。

 (すぐに手をうってよかったぁ~…。本当に、どんだけ成長しているのだ。危うく、倒されるところだったぜ。王女だとしても、第四回戦で一回勝ったとはいえ、油断するのは良くない。していないつもりでもしていたところが怖かった。もう、油断はしない。やることをやって勝利をするだけだ。)

と、クローマは、心の中で思うのだった。

 クローマは、セルティーに対して、油断しているという気持ちはなかった。そう、心の奥底で無意識に油断していたとしても、自らの表の面の気持ちでそうであったわけではない。なぜなら、自分の気持ちを自分自身で完全にわかるということはない。それでも、セルティーに対して、手を抜いて戦っているわけではない。

 セルティーの実力に対して、クローマの力をどこまで発揮させればよいかということに慎重をきすほどであった。セルティーを殺すことはあまりにもプラスになることはないが、戦闘である以上、ある程度は仕方ないと思っていた。

 このランシュの企画したゲームのルールである以上―…。ランシュもそのことに関しては、文句を言うことはないだろう。それは、同意した上で参加しているのだから―…。

 そして、ドーム状になった闇は、浮きはじめ、しだいに、四角いリングの床面を完全に離れ、球体の形へとなるのであった。


 中央の舞台。

 ランシュ率いるチームがいる場所。

 ランシュは、

 (なかなか大きな闇の球体だな。まあ―…、戦いの中でセルティーが殺されるのなら、俺は邪魔をしたりしない。それぐらいセルティーが覚悟してのことだ。それを無下にするのは、騎士として反する。悲しくはあるのだが―…な。まあ、この中から脱出することができれば、実力はかなりのものであることが証明されることであろう。見せてもらうか。クローマは、強いせぇ―…。最初の第十回戦第一試合で戦ったリークよりもはるかになぁ―…。)

と、心の中で言うのだった。

 ランシュとしては、セルティーが無事であることに越したことではないが、それでも、自らが定めてルールである以上、セルティーが殺されるのを止めに行くのは、公平性に問題があるというものである。追加ルールやら、などと提案している時点で公平性というものがあるのかは、疑問であるが―…。

 ランシュは、再度、四角いリングの方を見るのであった。第十回戦第二試合、クローマ対セルティーの試合がどうなるのかを見ながら―…。


 四角いリングの上。

 クローマの目の前には闇の球体があった。

 これは、クローマが展開したものであり、セルティーを飲み込んだものである。

 さらに、この球体の大きさは、クローマの身長に一メートルを加えたものの長さがあった。

 クローマは、すでにやることは決まっていた。

 四角いリングの周囲には、透明なもので、人や武器などのようなものは通り抜けることができるが、天成獣の力を借りて展開したものは、通り抜けることができないものがある。

 ゆえに、安心してクローマは、あることをすることができるのだ。

 「砕け散れ。」

と、クローマは言う。

 それを言うと、闇の球体は、爆発するように四散していったのだ。そう、中で、セルティーごと巻き込んで爆発したかのように飛び散り始めたのである。

 そして、爆発の中央には、一切の形というものがなかった。

 四角いリングを覆っている透明なものには、飛び散った闇が何個も何個もへばりつくようにくっつくのであった。

 「四角いリング(フィールド)を覆ってもらえなかったら、観客席は大被害だったらろうなぁ~。」

と、クローマは、呑気に言う。

 その声が、ランシュに聞こえたのか、

 「俺らにも大被害だ!!!」

と、怒りながら言う。

 そのことに対して、クローマは、ランシュぐらいの実力者なら簡単に避けることができると判断して、無視することにした。どうでもいいので―…。


 中央の舞台。

 瑠璃チームのいる場所。

 ギーランは、

 (とんでもない攻撃をしてくるのか。クローマ(相手)がここまでの実力となると、完全にセルティー王女は―…。)

と、心の中で言う。

 その表情には、悲しみというものがあった。あくまでも、セルティーが無事であるかという心配であり、瑠璃チームのメンバー全員がそうであった。


 四角いリングの上。

 クローマは、飛び散った闇を消滅させる。

 そして、闇をある程度、消滅させると、ある気配に気づく。

 (さっきのでもダメだったか。)

と。

 そう、クローマは気づいた。さっき、闇の中にセルティーを飲み込んだとしても生き残っていることを―…。ゆえに、防御の準備をするのだった。後ろを向きながら―…。

 つまり、セルティーは、クローマの真後ろにいたのだ。

 そこにいたセルティーは、すでに自らの武器である大剣を構え、左から右への軌道になるように、斬撃をするのだった。振れば、確実にクローマに当たるほどの距離で―…。


 【第103話 Fin】


次回、決着と揺れ!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿は、2021年9月7日頃を予定しています。

では―…。

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