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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
219/747

第101話-2 闇夜の世界

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』は、第十回戦第一試合、アンバイドが勝利し、第二試合がおこなわれる前となっていた。

 中央の舞台。

 ランシュ率いるチームがいる側。

 そこでは、ファーランスの言葉が聞こえたのか、ランシュが言うのだった。

 「次は、お前じゃないか、クローマ。」

と。

 そのランシュの言葉を聞いたクローマは、

 「そうだな。弟子の仇は師匠がとるものだしな。」

と、言う。

 クローマとしては、心の奥底では、弟子であるリークの仇などとろうとは思っていなかった。戦いである以上、その気持ちを抱くことで勝つことができるものもいるが、そうでないものもいる。

 そう、クローマは、後者の方だ。

 理由としては、クローマは何となくだけど、人の思いなんて背負って戦ったとしても、強くなれるとは思えなかったのだ。その人の思いというものが、かえって、自らを苦しめものになってしまう場合があり、それは、自らの実力の足枷にしかならないからだ。

 まあ、リークのことがどうだっていいと思っているわけではない。師匠として、自らの弟子の負けに、もう少しよく実力をあげることができたのではないかと思っている。それでも、限度というものが存在している以上、そして、人が過去へと戻れないという以上、悔いる暇があるなら、どこが駄目だったのかを考えて、未来において、うまくやればいい。

 それが、完全に出来るかどうかは別にして―…。

 「クローマ。お前らしくないな。というか、お前、いつも自分のことを中心にして動くじゃないか。」

と、ランシュは言う。

 ランシュが、クローマの考えを知らないというわけではない。ヒルバスよりは短い付き合いであるが、ある程度は理解できるというものだ。クローマがこのように、他者を思う言葉を戦いの前に言わないことを―…。

 「少しだけ、情というものが湧いたのかもしれないな。」

と、クローマは言うと、四角いリングの方へと向かって行くのだった。

 (ランシュには、バレるものか。まあ、俺の心の中にも変化があったのか。いや、そんなことはないか。リークの敗北の仇など心の奥底でも思っていないのだから―…。)

と、クローマは、心の中で思うのだった。

 実際に、心境の変化はあるが、心の奥底でリークの仇とは、前にも述べたが思っていない。そして、自身のために、戦いの場に行くのだった。

 一方で、クローマが四角いリングへと向かっていたランシュは、

 (いつも通りにいかないか…。ルール変更を別の意味でしておくことになるとは―…。本当に、思い通りにならないものだ―…。)

と、心の中で思うのだった。

 ランシュとしては、リースの中央で権力を掌握している奴らを自らのチームの勝利して、追い出したかったが―…、何となくクローマに感じた微妙な違和感が自分たちのチームとしての勝利がなくなるのではないかと感じさせるものだった。

 その僅かな勘というものが、後々、大きな結果を招くということもある。ランシュにとっては、悲しきことであるが―…。


 一方の瑠璃チームの側では―…。

 「第二試合は、セルティー王女で決まっていたな。」

と、アンバイドは言う。

 これで、アンバイドは自分が戦うことは、第六試合が終わって、相手チームと同じ勝利数にならないと起こることはないので、気分的にも少しだけ余裕が出ているのだった。

 だけど、ランシュ率いるチームに勝利が確定的というわけではないので、まだ、気を引き締めている。

 (追加ルールのせいで、瑠璃は、確実に勝利しないといけない。相手側も実力者だ。何とか、瑠璃以外のすべてで勝利すれば、確実に負けるということはなくなる。後は、戦ってみないとわからないということか。)

と、アンバイドは、心の中で思うのだった。

 「ローさん、まずは、一勝することができました。だけど、相手も猛者たちばかりです。うまく勝つことができるでしょうか。」

と、ギーランは、ローの近くに来て、質問するのだった。

 ギーランとしては、心配、不安、という要素が確かに存在している。理由は簡単だ。瑠璃チームの中で一番強いのがアンバイドであり、アンバイドを第一試合に出場させたことで、ここから瑠璃チームはアンバイドよりも弱いメンバーを出場させないといけなくなる。

 これは、瑠璃チームにとっては、不利なことでしかないし、ランシュ率いるチームにとっては、有利なことでしかない。

 だが、それでも、第十回戦第一試合にアンバイドを出場させたのだ。ギーランもイルーナも、いや、全員が賛成したのだ。

 理由は、観客からの要請もあるが、最初に勝利をしておく必要があったからだ。チームの勢いをつけるために―…。このことが吉と出るか凶と出るかは、あとは未来の結果でしかない。

 「大丈夫じゃ。アンバイド以外の瑠璃(この)チームのメンバーは、アンバイドよりも弱い。だけどの~う、戦いというのは、強者と言われている者が確実に勝ち続けることができるわけではない。そう、天成獣の属性の相性で優位は逆転することもある。それに、選択次第では、優位なんぞ簡単に変わってしまう。この世に完全な強者など、永続には存在し続けることはできないのだからの~う。生まれることと死ぬことを性質にもっている限りの~う。」

と、ローは言う。

 ローとしては、そんなことはわかりきっている。だけど、常に強者と言われる者たちが勝ち続けるわけではない。勝ち続けるのだって大変なことだ。相手側は強者の弱点を確実に探ってくるだろうし、その強者もまた、日々の調子に左右されるだろう。ゆえに、永久に勝ち続けることはできない。さらに、強者と言われる人の認識というのは、人であり、生を受け、生を終えるということが運命的に決定づけられている以上、強者であり続けることができない。生を終えてしまえば、何も強者であることが証明できなくなってしまう。

 さらに、人は未来を知ることができないがうえに、わからないのだ。

 だから、強者が確実に勝つということはできないし、弱者が強者に勝つこともできるのだ。ただ、確率にしてしまえば、強者が勝つ方が高いのであるが―…。

 「そうですか。わかりました。」

と、ギーランは、ローの言っていることは何となくわかるのであるが、それでも、完全にローの言っている意味を理解することはできなかった。

 完全というのは無理であろう。だけど、何となくわかれば、後は、はっきりと自分の中での理解に落とし込めるだけだ。そのためのきっかけさえあれば、ギーランとしてのローのさっきの言葉の意味を解釈することができるであろう。

 一方で、セルティーは、

 「では、皆さん、行ってきます。」

と、言いながら、四角いリングへと向かう。

 ここにいる瑠璃チームの全員が、セルティーの勝利を望んでいる。当たり前のことだ。本当の意味での味方であり、セルティーが間違ったことをしているわけではないのだから―…。


 四角いリングの上。

 セルティーとクローマは向かい合う。

 「ふ~ん、なるほど。俺はクローマ。一応、ランシュの側近で十二の騎士に属している。その中でもかなりレベルだがな!! ()()()()()―…。」

と、クローマは、セルティーに向かって挨拶をし、自己紹介するのだった。

 だけど、クローマは、一つだけ嘘を付いている。

 (あの人は―……。)

 「第四回戦で別名でていましたよね。私を倒したネリワッセとして―…。」

と、セルティーは、クローマの嘘に気づく。

 そう、クローマは、前にも触れたかもしれないが、第四回戦にネリワッセと名前を偽って出場し、セルティーを倒しているのである。

 ちなみに、ぬいぐるみを持っていたことに関しては、そっちの方が変人として自身の正体を悟られないと思ったからである。それに加えて、眠れないときにぬいぐるみを抱いて寝るとぐっすりと寝られるのである。

 (……。カマをかけてきているわけではないな。)

と、クローマは、心の中で思うのだった。

 クローマは、セルティーが何も根拠なく言ってきているわけではないと感じた。理由としては、根拠にかけるが目が、嘘を付いているという感じではなく、クローマの目を見るように、すえているのだ。

 実際に、セルティーは、何となく雰囲気であるが、前に戦ったことのある人であり、それがネリワッセのものだとすぐに理解することができた。さらに、セルティーは、自らはネリワッセ、いや、第四回戦でクローマに敗北していたので、印象に強く残っているのだ。勝ったことよりも負けたことの方がセルティーの印象に残りやすいようだ。そのために、自らの実力を強くすることをより具体的にわかりやすく、抱くことができたのだから―…。

 (これは、正直に言っておく方がよいな。)

と、クローマは続けて、心の中で判断し、言い始めるのだった。

 「そうだな。俺が、第四回戦でセルティー王女と戦ったネリワッセだ。まあ、それは、仮の名前で、本名はクローマって言うんだ。後、追加しておくけど、第九回戦に出ていた王女側にいるミラン(そこのお嬢ちゃん)よりも強いけどな!!」

と。

 正直に自らがネリワッセで、第四回戦に出場したことを白状して、さらに、ミランより強いというのだった。

 クローマも気づいていた。瑠璃チームのいる側に、ミランがいるのを―…。そう、第九回戦終了後、ギーランに運ばれていくミランを知っているのだから―…。

 そして、今、瑠璃チームの側にいるのだから、ランシュ率いるチームに注目されないわけがない。だけど、あくまでも、注目する程度であり、このゲームにもう参加できるわけではない。第九回戦第四試合で瑠璃と戦い、引き分け、かつ、第九回戦でミランの属していたチームが負けているので―…。

 「セルティー王女。あのような人として(おご)っている奴なんて、さっさとやっつけて、目にもの見せてやるのよ!!!」

と、ミランが叫ぶのだった。

 ミランとしては、クローマのさっきの一言で、ミランの怒りを爆発させてしまったのだから―…。クローマが、自身はミランよりも強いということを言ってきたので―…。さらに、その言い方が、明らかにミランを舐めたような言い方であったがために―…。

 ミランが攻撃をするのではないかと思ったギーランが、後ろからミランを掴み、

 「ミラン、落ち着け。挑発に乗るな!!」

と、落ち着かせるのだった。

 だけど、クローマにとっては、ミランより自身が強いのは事実でしかない。実際に、強いのだから―…。天成獣から借りられる力の量ではそう大差というものはない。だけど、戦闘経験において、圧倒的ではないにせよ、クローマの方が上だ。それは、天成獣の宿った武器で戦うということの経験の年数、回数において、クローマが圧倒的に上回っているからだ。その経験がそれなり濃いものであり、クローマの実力の中へと溶け込んで、染み込んでいる以上、ミランより強いのは当たり前のことだ。

 ギーランは、ミランのさっきの言葉は、明らかに頭にきているので、止めておいたほうがいい。さらに、ギーランは、クローマがミランよりも実力が上であることはわかっている。雰囲気でそう感じるのだ。

 だけど、ギーランは、クローマは事実を述べていることに過ぎないと理解しているが、ミランにそのことを言うと、余計に頭にきて、何をしだすかわからないと判断して、挑発に乗るなと言って、落ち着かせようとしたのだ。

 結果、ミランは、気持ちを落ち着かせ、クローマに向かって言うのだった。

 「後々、後悔すればいい。その一言を言ったがゆえに、ねぇ~。」

と。

 (挑発返しか。まあ、対戦するのは、ミランではなく、セルティー王女なので、そこはどうでもいいことだけどな。)

と、クローマは、心の中で気にしないのだった。

 クローマは、ミランがさっき言ったことを挑発返しだと思ったのだ。それは、クローマがミランにさっき言った事実を、ミランが挑発と捉えたことを理解することができたからだ。

 それでも、クローマにとっては、どうでもいいことだった。さっきのクローマがミランより実力で上と言ったのは、セルティーに対して、自分の実力がどれだけのものかを簡単に理解させるためでもあった。そうすれば、セルティーに少しだけの動揺を誘うことができるのではないかと思ったからだ。クローマにしても、弱いと分かっている者をボコボコにして、倒したいという気持ちにはなれなかった。

 だけど、これは試合でそうすることがチームにとって重要であるので、しっかり、本気でセルティーに対して、戦おうとするのであった。

 ゆえに、ミランの挑発返しに興味はないし、ミランが対戦相手ではないので、どうでもよいことであった。

 クローマはここで、見落としていたことに気づく。

 クローマは歩き出す。リークの元へと―…。

 そして、意識を失ったいると思われるリークを、自らが属するランシュのいる側に運ぶのであった。引きずりながら―…。

 (よく頑張ったな。アンバイドを超えるのなら、これからだろうな。)

と、クローマは、心の中で言いながら、リークを四角いリングの近くにいたヒルバスに渡し、再度、セルティーの元へと向かうのであった。


第101話-3 闇夜の世界 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿に関しては、2021年8月30日頃を予定しています。ストックが一本しかなくなりましたので―…。

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