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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第100話 本気を出す者の実力

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは、以下となっています。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138

宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、アンバイドが本気になった。

 【第100話 本気を出す者の実力】


 アンバイドは、メインの武器である剣を構える。

 そう、アンバイドは、本気で勝負をするのだ。

 そうしないと、アンバイド自身がこの第十回戦第一試合に負けるという可能性がでてくるからだ。

 勝負ごとなので、アンバイドも負けたいとは思わない。勝利するほうが好きなのだから―…。

 「よく、成長したよ。ルーゼル=ロッヘからここまでということは、相当良い師に恵まれたということと、ハードな修行をうまくこなしたということか。よく頑張ったよ、三下としては―…。」

と、アンバイドは、リークに向かって言う。

 アンバイドとしては、これはリークに対する称賛の言葉であった。だけど、同時に、アンバイドには到底及ぶものではなかった。

 そりゃそうだろう。アンバイドが天成獣の宿った武器を扱ってきた年数と場数は、リークの修行期間の成長よりもかなり上回っているのだから―…。

 「くっ、舐めやがって!!」

と、リークは強気な言葉を言う。

 だけど、動くことはできなかった。

 それは、アンバイドの実力を理解してしまっているのだから―…。

 リークの実力は、アンバイドにはるかに及ばないということを―…。

 それでも、嘘であって欲しい。嘘でなければ、ここで降参してしまいかねないのだから―…。

 そんなことをするためにここに立っているのではない。そう、アンバイドにルーゼル=ロッヘで敗北し、アンバイドに勝利するために修行し、この場にいるのだから―…。

 リークは、勝利を欲している。一度負けた相手なのだから―…。

 (本気がなんだって言うんだ。そんなものは、こえればいいんだ。俺が、アンバイドの本気を―…。)

と、リークは、心の中で無理矢理にでも、勇気を奮い立たせるのだった。

 「さあ、本気でいくとしますか。」

と、アンバイドは言い、威圧を強めるのだった。

 リークに怯えを与えるほどの―…。


 中央の舞台。

 瑠璃チームがいる側。

 (あれが、アンバイドさんの本気。)

と、瑠璃は心の中で言うのだった。

 瑠璃だけでなく、李章、礼奈、クローナ、セルティーは、アンバイドが本気になったことに対して、その強さに驚愕するのだった。

 (アンバイドさんの強さは、僕たちよりもはるかに上ということですか。)

と、李章は、アンバイドの実力を理解してしまうのだった。

 そう、アンバイドは、この中央の舞台と四角いリングの中では、ギーランと互角で、ローとイルーナより弱いという順位になるだろう。

 まだ、成長の途中であるリークがとても倒せるような相手ではないのだ。

 「まあ、私よりも弱いけどね。まあ、あのリーク(少年)が、あと十年、かなりの修行をこなせば、互角になるだろうけど、戦闘経験が足りないから、そこで負けるだろうし―…、それに、戦いの経験を多く積んでおく必要があるけどね。それでも、普通の戦いの中では、あのリーク(少年)も十分強いよ。」

と、イルーナが言う。

 イルーナが言っていることは、本当にそのようになるという見立てだ。その見立てでは、リークがかなりの修行をこなすことが十年ほどできれば、実力を上昇させることができるが、戦闘経験がなければ、戦いにおいて、力を十分に発揮させることはできないし、かつ、相手の策に嵌まってしまう可能性が高かめてしまうことになる。

 ゆえに、今、リークの実力は実力者といわれるほどに近づいたとしても、アンバイドはその上をいっているから、勝つことは現時点においては、確実に不可能なことであり、どうしようもないことなのだ。


 四角いリングの上。

 (勝てない―…。恐い………、俺は…強い……はず……なんだ。)

と、リークは、アンバイドを恐れる。

 すでに、表情にも現れていた。

 黒いフードを被っているから完璧にわかるというわけではないが、その震えおよび雰囲気は完全に、周りに伝わってしまうほどだった。

 (勝てない―…。こいつには、勝てやしないんだ。)

と、さらに、心の中で続ける。

 それでも、リークは負けるわけにはいかないと思う。

 ここに立つ理由を必死に思い出す。

 思い出さなければ、降参してしまうからだ。

 そんなことは嫌なのだ。

 (いや、俺は勝てる!! 勝てる!!! 勝てるはずなんだ!!!!)

と、リークは、さらに、さらに、心の中で続け、自らの勝利へと突き進もうとする。

 これは、願望でしかない。

 もう、願望を抱くことしかリークには、できることがなかった。

 願望を抱いて、自分の都合の良いことを並べ、アンバイドに負ける要素を排除し続けることでしか精神の安定を保つことはできない状態になっていた。

 リークは、弓の形を黒い球体であったものを再度、形を変更させる。

 今度は、剣だ。

 細長めに感じるほどの剣だ。

 リークは、黒い剣になるのを確認すると、アンバイドへと向かって、一直線に移動を開始するのであった。

 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」

と、声にもならないような叫び声を上げるのだった。

 もう、リークは、声を上げないと、アンバイドに負けるという恐怖でおかしくなってしまいそうであった。

 その光景を見た、アンバイドは、呆れるしかなかった。

 そして、リークは、アンバイドに攻撃できる範囲まで移動し、黒い剣を自らの左側に構え、横に振るうのだった。

 その時、スゥン、という風の音させながら―…。

 リークは、驚く。

 アンバイドに、その攻撃は当たらなかったのだ。

 アンバイドは遠くへと避けなかった。

 リークと黒い色をした剣のリーチの長さのギリギリの辺りまで、後退しただけだった。

 そのことに、リークは気づかない。恐怖と焦りと、願望がそのようなことに気づかせないように、頭の中でイメージさせないようにする。

 気づけば、戦意がポッキリと折れて、失ってしまうのだ。

 でも、現実というのは、残酷なもので、一本の大きく威力がある強い槍のように、現実を見たくない者に現実を突き刺し、見させようとするのだ。強制的に―…。

 ゆえに、リークは叫ぶしかない。

 「どうして、斬れていないんだ!!!!」

と。

 その言葉は、無残なものだ。

 周りの観客も圧倒的なアンバイドとリークの実力差のために、リークを一部は可哀想な目で見ている者さえいる。だけど、アンバイドの実力を知っている者たちは、このような結果なっても仕方がない。実力が違いすぎるのだから―…。

 リークに同情する者がいれば、こう言うだろう。


 ―また、一から出直して、強くなるんだ―


 と。

 そして、弱さを認めることも強くなるための一歩であるということも付け加えて―…。

 「残念だが、第十回戦第一(この)試合はそろそろ終わりへと近づいたようだ。俺とお前には力の差がありすぎた。」

と、アンバイドは、落ち着いて、ゆっくりと言う。

 激昂し、感情が乱れ、叫ぶリークとは対照的に、落ち着き、冷静に、事態を把握し、相手の実力を理解するのであった、アンバイドは―…。

 そして、ピキッ、ピキィ、と音がし始める。

 この音は、観客に伝わるほどの大きさではないが、リークには理解できることであった。

 その音は、リークにとって、絶望の音でしかなかった。

 絶望へのカウントダウンを奏でるかのように―…。

 零となる音がした。

 パリ―ン、と。

 これは、リークの持っている黒い色をした球体から形を変えた剣が砕け散る音である。

 アンバイドは、リークの攻撃を避けた後に、リークに見えない速さで剣を振るい、リークの剣にのみ攻撃していたのだ。

 アンバイドは剣の攻撃で、リークの剣を斬るのであった。

 自らの実力が圧倒的に上であることを示すために、そして、アンバイドを本気にさせた礼に…、だ。

 (俺の…剣…が…。)

と、リークは心の中でほぼ放心状態になる。

 「じゃあ、これで、俺の勝ちだ。」

と、アンバイドは、剣を振るい、飛ぶ斬撃を放つのだった。

 生の属性を纏った。

 それは、リークに当たり、リークは飛ばされることなく、倒れていく。

 これは、アンバイドが手加減をしたためだ。気絶するだけで終わるぐらいの威力にして―…。

 (俺は―…負けた。)

と、心の中でリークは思いながら、しだいに意識を失っていくのだった。

 バタン。

 リークは、四角いリングの上に倒れるのだった。

 「お前の数か月の修行に負けるほど、俺の人生は(やわ)じゃない。」

と、アンバイドは捨て台詞を残す。

 この光景を観客席から見ていたファーランスは、

 (これは、完全に決着がついていますね。)

と、心の中で結論付けると、

 「勝者!! アンバイド!!!」

と、第十回戦、最終回戦、第一試合の勝者を宣言するのであった。

 観客は歓声にあげる。

 この時アンバイドは、

 「こんなものか。」

と、自らのこの第十回戦第一試合の戦い方を自己評価するのだった。


 【第100話 Fin】


次回、四角いリングは黒い闇に覆われる!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の第101話は分割することになりました。仕上げていかないと―…。

では―…。

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