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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
214/747

第98話-2 最終回戦

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下になります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、ついに最終回戦、第十回戦の日、リースの競技場では観客で満員であった。そして、貴賓席に、リースの中央で権力を掌握している人物たちが現れるのだった。

次回の投稿で、第98話が完成します。

 そこに音はいらなかった。

 誰もがわかってしまうほどの雰囲気があった。

 誰が来るか。この試合が何の試合かということがわかっているのなら、誰でもわかっていることであろう。

 そう、ランシュ率いるチームのメンバーだ。

 彼ら一人一人が、それぞれに自らが強いと周囲の人々に思わせるほどの雰囲気を纏っていた。

 その雰囲気は、観客に息をしているのかという行為自体を忘れてしまっているのではないかと、思わせる。

 「今日が、最終回戦ということだな。お前らの戦いはきちんと見させてもらった。なかなかやるじゃねぇ~か。この最終回戦に相応しい戦いをしてくれることを期待しているぜ。どっちが勝とうが、負けようが、な!!」

と、ランシュは、瑠璃チームに向かって、聞こえるように言う。

 ランシュとしては、心の中で自分達のチームが勝利すると思っていた。それは、適当な根拠のないというものではなく、根拠ならば、しっかりと瑠璃チームのメンバーの天成獣の属性と戦い方をしっかりと観戦するということで、ちゃんと観察することができているのだから―…。

 それを、メンバーの間で情報共有はちゃんとできている。

 ただし、勝負に確実な勝利というものが存在しないということをランシュたちは、知っているので、いくら最善の準備をしていても、勝てない時は勝てないと思っている。

 そして、この回戦は、ランシュにとってもリースの実権を握り続けることができるのか、もしくは、リースの中央で権力を握っている者たちが彼らのためだけで、リースの住民のためのことをしない時代に逆戻りするのか、ということもかかっていた。

 ランシュは、貴賓席の方を見る。

 (アングリアか。とうとう、ボスのお出ましか。あいつらが俺が倒された後に、すぐにリースの権力を掌握して、セルティー王女を担いでレグニエドと同じようにしようとしていることはわかりきっているんだ。そうなってしまえば、俺の育った町のような悲劇を繰り返すことになる。)

と、ランシュは、心の中で貴賓席を睨みつけるように言う。

 ランシュとしては、リースの中央で権力を握っている者たちに、二度と権力を渡す気はなかった。自分と同じ目に会う人々がこれ以上出てはいけないと思い―…。

 そして、すぐにランシュは、瑠璃チームの方へと視線を向けるのだった。

 瑠璃が返事する。

 「そうですね。私たちは私たちの目的のために、あなたがたに勝ちます!!」

と、ランシュに向かって、言うのだった。

 勝利をするのは自分達である、と。

 ランシュは、瑠璃の言葉を聞いて、少しの間、考えて返答するのだった。

 「欲望に忠実か。まあ、それも悪いことではない。お前らの目的は、だいたい予測できる。自分のことであり、かつ、他人のことでも、世界のことでもある。だけど、俺も、お前のように俺のために戦う。自分の目的を叶えたかったら、俺たちに勝つことだな!!」

と。

 「望むところ。」

と、瑠璃は返答する。

 そうすると、観客席から声が聞こえた。

 「では、定刻となりました。これより、第十回戦、最終回戦を開始します。あらかじめ注意しておきますと、今回の回戦では、第一試合から第六試合まで確実におこなわせていただきます。最終回戦での勝利条件は、第一回戦から第九回戦までにおこなったルールの一部を変更させていただきたいと考えています。チームリーダーが倒された場合、倒したチームに今までの勝利した数に五試合分の勝利数が追加されます。異議がある場合は、意見を第一試合が開始する前までに聞きますが、両チームともそれでよろしいでしょうか。」

と、ファーランスが言う。

 この追加ルールに関しては、瑠璃チームは知らされていない。

 一方で、ランシュ率いるチームは、このことをしっかりと知っているのだ。これは、ランシュ側からの提案であった。理由は、もし、四連勝して勝利した場合に、考えられるのは、瑠璃、李章、礼奈の三人組のうち、最大で二人を討伐することができないということだ。実力をつけてきている以上、逃げられるという可能性も存在する。ならば、ゲームという中で戦った方が討伐が可能というためであった。

 初めて聞かされた瑠璃チームでは、話し合いがおこなわれていた。

 「ランシュが、こんな提案してくるなんて―…。受け入れるべきでしょうか。」

と、セルティーが、悩みながら言う。

 セルティーとしては、ランシュとしての意図が掴めないでいた。セルティーからしてみれば、ランシュが自分のチームが圧倒的な実力で勝つことになると考えるだろうから、このような、ルールを追加するということの必要性を感じない。そう、ランシュの思惑をセルティーは、理解できていなかった。

 「こりゃ~、向こうにとって不利な提案でしかないだろ。俺にもランシュの考えていることの意味がわからない。それに、リースを奪うのであれば、こんな追加ルールを受け入れる必要はないはずだ。ここは―…。」

と、アンバイドが言いかけたところで、ランシュが言うのであった。

 「その追加ルール、俺のチームは受け入れる。」

と、ランシュは受け入れたのである。

 その様子は、瑠璃チームにいる側は、驚きを禁じ得なかった。

 (どういう理屈かよ。頭でも狂ったのか。)

と、アンバイドは、心の中で、ランシュの選択に驚くのだった。

 ランシュが選択することとしてあり得ない選択として―…。

 「瑠璃、李章、礼奈の命を狙っているいるのなら、ランシュの選択にはしっかりとした理由があるのじゃろう。」

と、ローは言う。

 ローとしては、最初に、瑠璃、李章、礼奈がこの異世界にやってきた時に、三人を狙っている人物たちがいた。それと関連があるのではないかと考えた。もし、それが事実なら、ランシュが、このルールの追加を受け入れることに納得がいく。そう、ランシュは、瑠璃、李章、礼奈の命を狙っているということ―…。さらに、ギーランが現実世界で、ベルグと交戦に近いことをしていて、現実世界の石化に主犯のベルグとランシュは繋がっていることになる。

 現に、ランシュは、自らに勝利することができたのなら、ベルグの居場所を教えると言っている。そう言っている以上、ランシュとベルグが繋がっているの確実といってもおかしくはない。

 「私の娘の命が―…、ランシュって人、今からやってしまおうか。再起不能レベルで―…。」

と、イルーナが危険なことを言い始める。

 それは、自らの娘である瑠璃の命を守りたいがためであった。

 「やめておけ、イルーナ。」

と、ローが注意し、ミランが、イルーナを捕まえて、動かせないようにするのだった。

 「ミラン、お願い、あの騎士風情をぶっ飛ばさせて―…。」

と、イルーナは叫ぶのであった。

 それを無視するかのように、瑠璃は宣言するのである。

 「追加ルール、受け入れます。」

と。

 「わかりました。両チームとも追加ルールに賛成されたので、承認します。」

と、ファーランスは言うのだった。

 こうして、追加ルールが追加されることになった。最終回戦において―…。

 結果、瑠璃は、アンバイドに怒られるのだった。

 「何、考えずに追加ルールを了承してんだ。」

と。

 瑠璃としては、勘であったが、追加ルールを受け入れたほうがいいと判断したからだ。たぶん、最終回戦はギリギリの勝負となり、勝てばいいという気持ちだけ意思を統一しておけば、心理的に楽にできて、普段の力を発揮できるのではないかと思ったのだ。

 アンバイドにそのことを理解しろというのが無理であろう。アンバイドは、いかに自分たちのチームとして有利に戦うかということが重要なことであった。そうなってくると、簡単に、追加ルールを受け入れることはできなかった。追加ルールを受け入れることに反対というわけではなく、慎重に、メリットとデメリットを理解した上で、判断すべきであると思っていたのだ。

 それを、瑠璃が何も考えずに、すぐに追加ルールを受け入れてしまったのだ。頭にもくる。

 瑠璃が怒られているのを見て、イルーナはアンバイドを倒そうとするが、ミランに止められる。一方のギーランは、

 (まあ、今回のことは、アンバイドが正しいが、判断としては瑠璃と同じ結果になるだけであろう。)

と、心の中で思うのだった。

 たとえ、慎重にメリットとデメリットをあげていったとしても、ランシュたちの実力を考えて、勝つ可能性が一試合、一試合ごとに高いというのは、ほとんどないので、リーダーを倒すことで五試合分の勝ち数が加わるのなら、瑠璃チームにとってプラスにならないことはない。

 ゆえに、アンバイドも最後は、瑠璃の言ったように、追加ルールの承認に動いていたであろう。

 「瑠璃の選択通りになるよね、これは―…。」

と、礼奈は、何となく瑠璃の行動と、チームとしての選択が最終的に一致することになると思わざるをえなかった。

 その礼奈の言っていることに対して、李章は、

 「そうなります。瑠璃さんは、選択を間違えることはありません。」

と、自信をもって言うのだった。

 李章のその言葉に対して、礼奈は、

 (瑠璃だって間違う時はあるのよ。そして、そのような意見を言い始めたら、瑠璃の血の繋がった家族と発想が同じになってしまうよ。まあ、瑠璃のこと好きだから、そのようになってもいいのかな~。うん、そう思うようにしよう。)

と、心の中で呆れるのだった。

 李章がどんどん、瑠璃の血の繋がった両親のような思考になっていることに―…。ああ、こりゃ瑠璃にお似合いだと、心の中で思いながら―…。

 瑠璃という人物は、このような人たちを引き付けるのだと思いながら、礼奈は不憫に思うのだった。


 観客席。

 そこにいるファーランスは、

 (そろそろ試合を始めないといけません。なのに、瑠璃チームの側―…、何か、人の話を聞いてくれそうにない雰囲気になっています。どうしよう。)

と、心の中で思いながら、苦い表情をしながら瑠璃チームの方を見るのであった。

 ファーランスとしては、職務上、試合を開始してもいい時間となっており、かつ、追加ルールの承認も終わったので、早期にでも最終回戦第一試合を開始する必要があった。それに、今日は最低でも六試合分ある以上、四角いリングに何かがあったときに修復する時間を考えると、今すぐにしないと夕方まで終わらないのではないかと思うほどだった。

 さらに、第九回戦から四角いリングから外に対戦している人物の攻撃が漏れないように透明な囲いをしていた。そうしないと、観客席に被害が及んでしまうからだ。

 そして、ファーランスもそろそろ進行させないと日没までに試合が終わらないので、ここは意を決して、進めることにした。

 「これより、第一試合を開始したいと思います。両チームとも代表者を四角いリング(フィールド)の上へ!!」

と、ファーランスは、両チームへと促すのである。


 中央の舞台。

 ランシュ率いるチームがいる側。

 そこでは、すでに誰が何試合目に出場するのかは決まっていた。

 「リーク、初戦は任せたぞ。」

と、ランシュは、第十回戦第一試合に出場するリークに向かって言う。

 リークの方は、ランシュの方を向いて、

 「任されるとかそんなことはどうでもいい。俺は、アンバイドを倒す。それだけだ。」

と、言うのだった。

 素早く移動し、四角いリングの中へ入り、すぐに中央の方へと向かい瑠璃チームの方へと視線を向ける。

 その間にランシュと、ヒルバスは、心の中でこう思った。

 ランシュは、

 (リークの奴。第一試合に出場するからといって、その試合にアンバイドが出てくるとは限らない。まあ、リークが戦うために、第一試合にアンバイドよ―…、出てこいよな。本当に、頼むぜ。)

と。

 ランシュとしては、リークがルーゼル=ロッヘで、アンバイドに勝負したのだが、敗れてしまい、それ以後、アンバイドを倒すことに執着しているのを知っている。そのため、リークの対戦相手がアンバイドでなかったら、リークは試合すら放棄してしまう可能性がある。それに、アンバイドとリークが対戦すれば、ランシュ側にとっても勝率を上げることになる。第六試合が終わるまでに、アンバイドと戦わなくて済むからだ。アンバイドの強さは、瑠璃チームの中で一番強いというほどに分類されるのだから―…。

 ヒルバスは、

 (リークとアンバイドの試合ですか。これはこれは思い。それに、アンバイドが最初に出場してくれるのはこっちとしてもありがたい。)

と。

 ヒルバスも、ランシュと同様に近い考えを抱いていた。

 そして、四角いリングにいたリークは、言うのだった。

 「アンバイド、お前が俺の相手だ。それ以外、受け付けない!!!」

と。

 「はあ~あ?」

と、アンバイドは、呆れるのだった。


第98話-3 最終回戦 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


今日、二本目の投稿となりました。後、もう一本ぐらい投稿するかもしれません。

では―…。

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