第98話-1 最終回戦
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。第3部は、2021年8月26日頃、開始です。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』は、ミランの瑠璃に対する復讐問題も解決し、さらに、最終回戦へと準備を進めていくのであった。そして、その最終回戦の当日になるのだった。
第98話は分割することになりました。内容が多くなってしまいました。詰め込みが完全な原因です。
リース郊外のランシュのいる館。
今日は、第十回戦がおこなわれる日。
そう、ランシュ自らが出場する最終回戦の日であった。
ランシュのいる場所には、ランシュを含めて六人がその場にいた。
ヒルバス、リーク、クローマ、それ以外の二人もいた。
「今日が俺たちのチームの戦う日だ。相手は分かっている。三人組のいるチームだ。勝利するのは、もちろん俺らだ。いくぞ!!!」
と、ランシュが気合を入れるように、最後に言う。
そう言うと、誰も反応しなかった。
………………。
「反応しろよ!!!!」
と、ランシュが耐えられなくなり、ツッコミを入れるのだった。
「ランシュ様。気合を入れなくても、皆様わかっております。三人組とか関係なく、倒すべき相手に全力で挑み、勝利する。そういうことです。」
と、ヒルバスが落ち着いて言うのだった。
だけど、表情は若干ではあるが、にやけていた。
ヒルバスは、ランシュのさっきの気合入れに対して、シーンと静まりかえったのを思い出し笑いしていたのだ。体育会系のノリが通用せずに、ランシュ一人だけが恥ずかしい思いをしているのを見て―…。
「俺がリースの騎士団に入って、先輩から教えられたこの気合の入れ方が―…。」
と、ランシュは動揺するように答える。
ランシュとしては、カッコ良く言って、士気を上げて、リースの中央にある競技場に乗り込もうとしたのだ。
だけど、結果はシーンとしたものでしかなかった。ランシュが昔、騎士団に入った頃に、先輩からなぜかこのように、気合を入れることで誰もが、大きな声で返事をして士気があるのだ、と教えてもらったのだ。
その光景を何となく思い出したヒルバスは、
(ああ~、あの先輩ですか。無茶苦茶暑苦しい人の―…。ランシュ様も半分、あの人の影響を受けて、変に熱い人になりかけていましたから―…。あの先輩は、実家を継がないといけなくなって、四年ほど前にやめてしまいましたが―…。お元気にしているでしょうか。)
と、心の中で、ランシュに気合の入れ方を教えた先輩についての記憶を鮮明に探り、元気にしているか心配するのだった。
それでも、ヒルバスは心の中でも言葉にはしなかったが、元気にしているという確信だけはもてていた。その先輩の実家は、リースでも有名な運送屋で、内陸交易ではこの地域一番と言っていいほどの実力を有しているのだ。先輩は、実家を継ぐ前に綺麗で、頭の賢い女性と結婚したのだった。その女性と先輩が双方ともに、会った瞬間に意気投合してしまったという。
ヒルバスは、その先輩ががランシュを面白くしてくれたことには感謝している。ランシュいじりのバリエーションが増えて―…。
「時々、馬鹿なことをやる。そんなことよりも競技場に行き、準備する方が重要じゃないのか。」
と、クローマに言われるのだった。
ランシュは、クローマの言っていることが当然のことで、かつ、今、ランシュたちがやっておく必要のあることだ、とわかっているために、言葉に出すことができなくなる。別に、卑怯なことをするわけではなく、瑠璃チームの能力をしっかりと把握し、戦い方に変更点がないかを確認し、変更する必要があるのなら、それをどうするかという考えをしたり、その準備をしたりすることである。
ランシュは、無理矢理に言葉にする。
「そんなことぐらい知っている。では、行くぞ。」
と。
(うむ、今日も良い日だ。まあ、こんなことを思っても相手は強敵です。しっかりと準備はしておきました。アンバイドを中心に考えていれば、倒すことは可能でしょう。)
と、ヒルバスは、心の中で思うのだった。
ヒルバスは、瑠璃チームのすべてのメンバーの実力もしっかりと把握している。ゆえに、一番危険な人物も理解している。その人物は、アンバイドである。アンバイドのこれまでの戦功というのは、この地域においてはかなり有名であり、実力で言えばランシュよりも上というのが妥当であろう。ランシュとヒルバスの特殊性を鑑みれば、その点でアンバイドに対抗するしかない。
ゆえに、ヒルバスは、アンバイドに自らの属性というものを誤解させておく必要がある。ヒルバスが攻撃する選択肢において―…。
一方で、ランシュは、今日のこと、そして、このリース王国がおこなってきたすべての悪に決着をつけるために―…。
(今日で終わりだ。瑠璃チームがなしてきた快進撃も、希望もここで終わりだ。リース王国がおこなってきたことは、神に対する罪だ。ゆえに、その者の命と災いによって償わなければならない。そう、リースを牛耳るアホども。セルティーがいるチームに勝ち、実力を示し、確実に支配することを確定させれば、牛耳る者たちの粛清など取るに足らん。リーンウルネに泣きついても、あの女は絶対に手を貸すことはない。あの女もまた、お前ら、牛耳ってきて、甘い蜜を吸ってきた者たちを嫌っているのだから、な。さあ、行こうか、この国新たな時代へ、と―…。)
と、ランシュは、心の中で言うのだった。
ランシュの目的は、当初復讐であった。自らの生まれ、育った町であるクルバト町は、昔、エルゲルダという領主と揉めて、エルゲルダの身勝手な擦り付けのせいで、ランシュ以外は全員殺された。ランシュの妹も母親も―…。
ゆえに、四年前ぐらいに、隣の国のトップとなっていたエルゲルダを国ごと滅亡させ、殺した。そして、協力者でエルゲルダのことを何も疑わずにただ協力してしまったリース王国国王でセルティーの父のレグニエドを二年前に殺した。
そして、当時のリースの宰相とその部下一人を殺し、騎士を圧倒して、権力を握ることに成功した。そのことで目標は達成することになった。
だけど、そのおこなったことに対する責任も同時に発生した。権力を掌握せざるをえなくなった。リースを中央で牛耳る勢力は、メタグニキアを殺したぐらいでは勢力を衰えることはなかった。それほどに、権力および勢力が強固であったのだ。ランシュにとっては、関係のないことだとも思えたが、そいつらは、確実にランシュとそれに味方した人間の命を狙い始めたのだ。自ら動くのではなく、暗殺者を雇って―…。その暗殺者は、ランシュやヒルバスらによって、倒されることとなるが、それでも、他が狙われることも考えられたので、権力を握って、対抗関係に立つ必要があった。
リースにおいては、表向きはランシュが権力を握り、いくつかの過去の悪法を止めさせて、住民を味方につけることにした。そうすれば、迂闊に、行動を起こすことはなくなるであろうと推測して―…。
しかし、彼らは、それでもランシュの命もしくは失脚を狙って行動を起こそうとしてきた。そのトップに担ぎ上げようとした人物を見て、させるわけにもいかないために、何とかその人物を失脚というだけで終わらせようとしたのだ。その人物の命を守るために―…。
これ以上、悲しみを起こさせないようにするために―…。
ランシュは、人に対して罪を犯した、愚か者たちにその罪を償わせるために―…。
【第98話 最終回戦】
リースの中央にある競技場。
そこには、多くの観客が来ていた。
今日が、最後の回戦であるということを理解していた。
ここまで、ランシュ側のチームに九回もチームとして勝利を続けてきた瑠璃チームがどこまで戦うのかを―…。
一方で、ランシュ率いるチーム。このチームは、ランシュが直接自らの側に加えたチームであることから、ここに来ている多くの者が強いチームであることは簡単に理解することができた。
それすらわからないのは、モグリと思われてしまうからだ。
そして、観客席の中で、四角いリングの中が全体にわたって見渡せ、かつ、四角いリングの横の距離が中間になり、両チームの中間に位置する場所に、今日も審判をつとめるファーランスがいた。
(今日で、ラストですか。ラストはラストで、最後までやる気ですか。本当に、勝敗ついても勝負か。まあ、これで、私の顔が売れてくれれば―…。)
と、ファーランスは、心の中で、これから仕事が入ってくるのではないかという期待に胸躍るのだった。
そんななかでも、審判するのに慣れてきたのか、審判の楽しさを最近噛みしめるようになった。
そして、ファーランスは、これから来るであろう両チームの到着を待つのだった。
一方、観客席の中の貴賓席。
今日、この席には誰も来る予定などなかった。
前までの回戦なら、ランシュやヒルバスなどがいることもあった。
だけど、今日は、双方ともに試合に出場するので、貴賓席にいるはずもない。
それでも、いるのだ。別の人間が―…。
「やっと、ランシュが潰れてくれる時が来た。二年間、俺らをよくも抑えつけてくれようとしてくれた。本当に、目障りな奴だ。俺らのためには、やってくれそうにない。力が強すぎてダメだったが、瑠璃チームがやってくれれば、排除は可能だ。これで、再度、リースは我々のためのリースになる。セルティーのような外を知らない馬鹿は、コントロールがしやすいからなぁ~。」
と、一人の人物が言う。
「フフフフフ。そうですね、アングリア様。ハルギア様も数日前にリースへと密かに到着されて、準備の方を整えています。そして、さっき準備が完了したという知らせを受けました。」
と、一人の人物であるアングリアとは、違う、付き従う人物が言う。
「フン。さあ、瑠璃チームよ、我のために頑張ってくれ!!!」
と、アングリアは言う。
このアングリアは、かつて宰相メタグニキアを動かすほどの力を事実上持っていた人間であり、リースの中央を握る権力者のリーダーであり、トップである。この人物は、リースにおける大貿易業の会頭であり、この地域だけでなく、サンバリアや他の周辺地域にも商売網を広げている人物であり、その一族の長である。
リースの発展のために、実際に貢献しているのは、反主流派のニドリアというアングリアの腹違いの弟であるが―…。アングリアとニドリアは昔から当主の地位をめぐって対立しており、アングリアは、リースの中央を握っており、中央の権力者の中で代々トップの権力を発揮してきたのだ。アングリアの一族は、ここ百年ほど―…。
一方のニドリアは、腹違いであり、アングリアのように正妻の子ではなく、アングリアの父が無理矢理ライバルの貿易業の商人の長の娘を襲って、産ませた子どもなのだ。ゆえに、ニドリアの祖父のランドリアは、アングリアの一族に対して復讐の念を抱いていた。それは、今も変わらないが、それでも、今は別の方法でアングリアたちを後悔させてやろうとしていたのだ。
まあ、そのことは追々わかってくることだろう。すでに、協力者も得ているし、リースの経営についても話し合っている。協力者は重要人物だ。
中央の舞台。
そこに、足音し始める。
その足音はしだいに大きな音へとなっていく。
最初に、登場したのは、瑠璃チームのメンバーである。
それとは別に、ロー、ギーラン、イルーナ、ミランがいた。
観客は盛り上がっているので、他の四人は、第九回戦の時に一人は敵側に、もう三人は、試合終了後にどこかからミランを狙ってきた矢を弾いた人と、アンバイドをぶっ飛ばした人、ミランを治療していた人だという認識が第九回戦にも来ていた時の観客から指摘されるのだった。
それでも、瑠璃チームの登場に盛り上がり、そのような声は噂話のようなという形でしか広まらなかった。
「今日も、観客がこんなにか~。本当に、興業とかしてねぇ~か、これ。ランシュとかいう奴、絶対に人を集める才能でもあるんじゃないか。興行師にでもなったらいいのに―…。」
と、アンバイドがそのような感想を漏らす。
アンバイドとしては、リースの命運をかける戦いがどうして、ここまで、興行のようなものみたいになっているのか。
(本当に大丈夫なのか、この国。)
と、アンバイドは、心の中でリースという国が心配になるのだった。
アンバイドがどう考えても悩んだりしても、意味はないだろう。人という数が流れというものを大きく、抗えないようなものにするのだから―…。まあ、それを扇動して、自らの望む方向にしてしまう扇動者というのもいるが―…。
「最終決戦。今日まで、何とかうまくやってこれました。ランシュに勝てば―…。」
と、セルティーは、心の中に希望を抱きながら言う。
(どうして、リースを奪おうとしているのか、聞かせてもらいます。)
と、心の中でもそう、言葉にする。
瑠璃は、心の中で、
(今日が、最終決戦、これに勝利すれば、私たちの世界を石化させたと思われるベルグという人の居場所を聞き出すことができる。)
と。
瑠璃は、たとえ、生まれがこの異世界であったとしても、自分としては育った現実世界における石化をどうにかしたいと思っていた。それに関係しているとされるベルグという人物に実際に会って、聞く必要があるのだ。そのために、ランシュという人に勝利しないといけない。勝利がベルグの居場所を聞くための条件なのだから―…。
そして、中央の舞台の一方の側からは―…。
瑠璃チームのメンバー全員およびロー、ギーラン、イルーナ、ミランが気づく。
そこから足音が聞こえ、しだいに大きくなってくるのを―…、いや、音ではなく、異様な雰囲気なのを感じて―…。
数秒後、瑠璃チームのいる四角いリングをはさんで、反対側にランシュが率いるチームが現れるのであった。
第98話-2 最終回戦 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
たぶん、まだ、わからないのですが、今日中にもう一回ぐらい投稿するかもしれません。一応、予定ということで、確定ではありません。
では―…。