第97話-3 失われた時は取り戻せないが、これからの時間は一緒に過ごせばいいのだから
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは、以下となります。
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前回までの『水晶』は、第十回戦の試合の出る順番を決めようとしているところだった。
今回で、第97話は完成します。
アンバイドは言う。
「まず、最初に、最後に出場するのは、瑠璃ということにする。」
と。
アンバイドとしては、最後にしておけば、相手側のチームが六人の場合、ランシュが最後に出場してくることは確実だからだ。六人以下の場合でも、変更することが当日できるからだ。
「ふん、ミランから聞いていたことを勘案すれば、瑠璃が一番危険な所での戦いとなる可能性は、相手チームが六人の場合ということになるのか。アンバイドにしては、まともな意見だ。」
と、ギーランがアンバイドの意見に賛成するのだった。
「そうね。ランシュとかいう人物のところには、アンバイドを当てて、瑠璃には、簡単な倒しやすい相手のところにしておけばいいのだから―…。事前に伝えるってわけでもないから―…。」
と、イルーナも賛成するのだった。
イルーナとしては、ランシュとか一番強い人物は、アンバイドに相手させて、自分の娘である瑠璃に危害がおよばないようにしようとしたいと思っているからだ。娘に危険がおよぶことは、つまり、家族として折角再会したのに、一緒に過ごすことができなくなるかもしれないからだ。
そんなことをイルーナは望まないし、夫であるギーランも同様だ。
(この夫婦、自分の子どもに甘めぇ~な、おい。)
と、アンバイドは、心の中で悪態をつくのだった。
アンバイドとしては、今、第十回戦の順番を決めたいのだ。それは、アンバイドがアンバイドの都合のためというわけではなく、あくまでも、ランシュ率いるチームに勝つ可能性が高いと思われる順番を決めておく必要があるのだ。
そのようなアンバイドの考えも、ギーランとイルーナの介入によって、大変なことになるかもしれない。そう、アンバイドは、この間のギーランとイルーナの二人の言葉から思うのだった。そう、この二人の介入によって、アンバイドが考えているランシュ率いるチームに勝利する確率の高い順番が崩されるのではないかと危惧している。
(このバカ夫婦のせいで、ランシュ率いるチームに負けちまえば、ベルグへの居場所が聞けねぇ~じゃねぇか。)
と、アンバイドは、心の中で悟られないように、怒るのであった。
それでも、アンバイドは、話しを進めていくのである。
「じゃあ、瑠璃は最後の方に決定で、第一試合から第五試合までをどうするか、だな。俺が第四試合ということになるんだろうが―…。」
と、アンバイドが言いかけたところで、ミランが手をあげる。
そのことにアンバイドは気づく。
「ミラン、何だ。」
と、アンバイドは、ミランに尋ねる。
「簡単に言えば、相手の天成獣の属性がわかっていればいいということだよね。なら、ランシュやヒルバス以外の人物に関しては、他のチームの話している時に聞いた情報でわかっていることもあるから、それで決めてもいいんじゃないか。聞いたのは私だけど―…。」
と、ミランは言う。
「ふん、それで、敵のチームにいたミランならわかるということなのか。」
と、アンバイドがミランの言っていることに、知っているのか返す。
ミランとしては、興味はないとしても、情報がどれほど重要かということぐらいはわかっている。十二の騎士が一堂に会している時に、彼らの話しというものを聞いて、覚えていたりする。ミランは、記憶力は良い方だし、他者に対する思いやりもあるために、日頃の癖というものが発揮されたのだ。
「一応ね。さっきも言ったけど、ランシュとヒルバスに関してはわからない。ヒルバスは実力でいえば、十二の騎士と言われるランシュの側近の中で一番の実力で、天成獣の宿った武器での戦いをあまりしないから見たこともない。だけど、二人以外なら分かっている。二人ほどは天成獣の属性が闇で、一人はリーク、もう一人はクローマと呼ばれる人物。クローマに関しては、別の人物に成りすまして、以前の回戦に出場していたようね。他の二人に関しては、地と鉄ね。鉄に関しては、クローナは完全に不利になるから絶対に戦っては駄目。そうなると、ランシュ、ヒルバスに一番強い二人を当てるという手もあり得るが、勝利数を競うということになれば、強い二人をランシュとヒルバス以外に当てて、二勝を取りやすいようにするというのも一つ。後は、好きに決めた方がいい。」
と、ミランは、自分の言うことは終えたと感じて、言うのを止め、考え事をしだすのだった。
アンバイドは、ミランの話を聞いて、重要な情報がいくつかあったことに気づく。
(ランシュとヒルバスとかいう奴以外の相手の持っていると思われる武器に宿っている天成獣の属性がわかったのはでかい。瑠璃は光、李章は生、礼奈は水、クローナは風、セルティーは幻、俺は李章と同様に生ということになると、ミランが言ったように、クローナと鉄の奴を当てるの絶対にダメだな。風は鉄などにかなり不利だから―…。後は全体的に誰を当てても勝負自体は成り立つのか―…。なら―…。)
と、アンバイドは、心の中でミランの情報を整理し、第十回戦の出場順ではなく、どういう相手に挑むべきかが決めるのだった。
その後、アンバイドの意見が一部修正されて、第十回戦の出場順ではなく、誰がどの人物の相手をするのかが決まった。
瑠璃が修行を再開することがエリシアから許可された日。
瑠璃はさっそく、ギーランに修行を頼むのであった。
それは、瑠璃の持っている仕込み杖に宿っている天成獣の属性と、ギーランの持っている大剣に宿っている天成獣の属性が同じなのである。
ゆえに、参考に出来たり、実際の経験からの対処法が近いので教えやすいのだ。
「瑠璃、まずは実戦をやりながら、どう戦うのかを見せて欲しい。」
と、ギーランは言う。
ギーランとしては、瑠璃が雷の攻撃、さらに、周りから聞いた情報で天成獣の属性が光だということであり、戦いを見ながら、瑠璃に合った戦い方を模索する方がいい。修行できる日はかなり短いので、大きな変化ではなく、今の戦い方に応用できるものに絞るつもりであった。
「はい。」
と、瑠璃が言うと、ギーランと瑠璃は、実戦形式の修行をするのだった。
双方ともに手加減をおこなっての戦いとなった。
五分後。
「ここまでだな。」
と、ギーランが言うと、双方ともに戦いを止めるのだった。
「はあ…はあ…はあ…。速すぎる。」
と、瑠璃は、息を整えながら、ギーランの実戦形式の修行の感想を漏らすのだった。
実際、瑠璃の攻撃は、ギーランによってすべてかわされるのであった。仕込み杖に仕込んである剣で戦って、スピードがある攻撃をしたのだが、それさえもあっさりとかわして、後ろを取られることもあり、デコピンを合計十回も喰らってしまったのだ。
その痛みを感じたのか、剣を片手で持ち、片手を自分のおでこに当てるのだった。ヒリヒリするのだ。
「光の属性についての知識はあまりないようだな。光を扱えるようになったのは最近なのか。遠距離攻撃はそれなりだが、中・近距離攻撃は全然ということか。剣術は素人よりできるようになっているが―…。」
と、ギーランは、瑠璃とのさっきの修行を思い出しながら、そのような感想を言う。
ギーランとしては、瑠璃の実力に関しては、天成獣のいない、その宿っている武器すらない世界から来た人間としては、成長の速度は過剰と言っていいほどに速く、驚いてはいるが、実力者と戦う上では、そのような誉め言葉は意味ないと考え、あえて口にせず、純粋な実力の感想を述べるのであった。
そして、瑠璃は話すのだった。これまでのことを―…。
「そういうことか。ランシュの企画したゲームの間は、途中から仕込み杖にある剣を扱いこなすために、セルティー王女から剣術を教えてもらっていたのか。それに―…、光の属性が扱えるようになったのが、数週間ほど前ということか―…。それ以前からは雷で、遠距離攻撃か―…。なるほど―…。なら、短い時間でできることは、光を纏うことだな。」
と、ギーランは、瑠璃の話、さっきの戦い方を見て、どのようなことをすれば強く見せられるのかがわかったので、話し始める。
そう、光を纏うということであった。
「光を纏う?」
と、瑠璃にとって疑問だった。
(光を纏うことができれば―…、相手を眩しさによって、視界を奪うことができる。便利かなぁ~…。でも、相手側に対策をとられたら―…。)
と、瑠璃は心の中で、光を纏うことについて考えるのだった。
瑠璃の心の中では、相手への目晦ましが主にできることなのではないかと考えていた。それ以外に思い浮かばなかったのだ。この場では―…。
「さっきの実戦での修行でも見せていたんだが、光を纏うことによって、高速移動を容易にすることが可能になる。そして、攻撃のスピードも飛躍的にアップする。鍛えれば、思考判断さえも速くすることができる。まあ、思考判断に関しては、第十回戦までに完成させることは不可能だが、高速移動や高速攻撃および防御はある程度可能になるだろう。じゃ、早速、やってみようか。」
と、ギーランは、これから第十回戦までに瑠璃が身につけるといい、光を纏っての戦闘方法を教え、さっそく練習へと移行しようとするのだった。
一方で、瑠璃は、ギーランの言っていることを理解しているが、それでもあることが途轍もなく気になっているので、ギーランに聞いてみるのだった。
「あのパパ、光を使って目晦ましはできないの?」
と、瑠璃は言う。
ギーランはその瑠璃の疑問に、
(確かにできるなぁ~。)
と、心の中で思ったので、
「それもありなのではないか。」
と、答えるのだった。
ギーランとしては、まったく予想にしていない方法の使い方であった。普通に考えれば、少し頭を捻れば思い浮かびそうなことである。光を纏えば、相手の視界を奪うことが光によってできるのだ。闇でも同じようなものだが―…。
それでも、頭の中に浮かばないということはある。ギーランがたまたまそういうパターンに嵌まっただけのことである。
「じゃあ、始めるぞ。」
と、ギーランは、続けて言う。
こうして、瑠璃は、光を纏うという修行を開始するのだった。
そして、第十回戦の行われる日となる。
リースにある城の入り口近くに、人が何人かいた。
「瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー王女はいるな。寝坊していたり、体調を崩しているわけではないな。だが―…。」
と、アンバイドは言いかけて、瑠璃チームのメンバー以外を見るのだった。
そう、
「何で、お前らがついてくるんだよ。」
と、アンバイドは、苦々しそうに言うのだった。
そう、ロー、ギーラン、イルーナ、ミランがそこにいたのだ。
「アンバイド。何をおかしなことを言っている。俺らが付いてくるのは当たり前のことではないか。実の娘の晴れの姿を見に行くのに―…。」
と、ギーランは、さも自分が付いてくるのが当然のように言う。
ギーランとしては、瑠璃が倒されないかという不安と、さらに、瑠璃の成長ぶりを見て見たかったからだ。さらに、家族として瑠璃と過ごしている時間が再会してからしかないので、連れ去れてからの十二年分の失った時間を埋めようと必死なのだ。
イルーナも同様な感じであった。
(あ~、本当に疲れる~。この夫婦の相手は―…。)
と、アンバイドは、心の中で呆れかえるのであった。
「わかった。」
と、アンバイドは、もうこれ以上、会話していると、余計に疲れると判断して、一緒に来ることを黙認するのだった。
こうして、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイド、ロー、ギーラン、イルーナ、ミランが、リースの中央にある競技場へと向かうのであった。
【第97話 Fin】
次回、最終回戦へ!!
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回の投稿は、2021年8月下旬頃を予定しています。投稿再開のお知らせについては、活動報告のところでする予定となっています。
では―…。