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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
211/747

第97話-2 失われた時は取り戻せないが、これからの時間は一緒に過ごせばいいのだから

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方、せび読んでみてください。

アドレスは以下となっています。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』は、ついに、ミランによる瑠璃への復讐関係は終わるのだった。

次回の投稿で、第97話は完成すると思います。第98話以降は2021年8月下旬頃に再開を予定しております。

 翌日。

 瑠璃は修行することはできなかった。

 それでも、歩くことは可能になっていたし、エシリアによれば、明後日には、修行を開始しても良いという診断を受けることができた。

 そのため、今日は、中庭で李章たちの修行を眺めていた。

 この修行を教える人になぜか、ミランが加わっていた。

 ミランは特に、礼奈やクローナについて見ていた。

 女の子同士の方が、良いという理由だろう。アンバイドも修業しずらかったらしい。

 「礼奈、戦い方は上手ね。だけど、凍らせることに拘り過ぎている。水をうまく使いなさい。そうすれば、事は優位に運ぶのに!! それに、クローナは、攻撃が単調すぎる。次の攻撃を考えながら、一撃一撃の配分を工夫しなさい。」

と、ミランは、礼奈とクローナに注意する。

 ミランから見れば、礼奈の戦いに対するセンスが高いものであるというのは感じられた。そのセンスには嫉妬してしまいそうだった。それでも、経験の差というものがあり、ミランの優位で修行を進めることができている。実戦を近い形式での修行である以上―…。礼奈とクローナがミランに攻撃をするというような―…。

 一方で、クローナに関しては、まだ日が浅いせいか戦いが単調に感じられた。風の威力の調整はできるが、それだけで、相手の状態に合わせて、どうやって倒していくのかという戦略面での攻撃がまだまだ未熟であった。

 (最終回戦で本当にこいつらで勝てるのだろうか。最終回戦に出場してくるのはフルで六人。ランシュは確実で、あのヒルバス、クローマー、リークとかいう未熟者だ。後の二人に関しては、顔も知らないからわからない。この瑠璃チームで勝てるのは、アンバイドぐらいか、確実なのは―…。相手にもよるが勝率は、瑠璃、礼奈が五分、クローナ、セルティーが十回やって一回勝てればいい、李章はほぼ確実に難しいな。本当に、よくこの実力で勝ってこれたよ。何らかの作用でもはたらいているのか?)

と、ミランは、心の中で思うのだった。

 ミランの見立ては、アンバイドほど正確なものではないが、ほぼ瑠璃チームの戦力をはっきりと把握していた。ゆえに、どうして勝ち上がってこれたのか不思議なぐらいだ。何かの因果関係というものを疑いたくなるほどに―…。

 (本番に強いということにしておこう。)

と、ミランは、心の中で無理矢理に納得させるのだった。

 

 「じゃ、ここで一旦、休憩にしましょう。」

と、ミランが言う。

 「ミランさん。瑠璃のお姉さん、強すぎますよ。」

と、礼奈が、ミランと戦って、その強さに驚くのだった。

 (瑠璃、よく引き分けにできたよね。戦闘狂になってしまったから―…。)

と、礼奈は、心の中で親友が第九回戦第四試合を良く引き分けに持ち込むことができたことに感心するのだった。

 「まあ、天成獣の宿っている武器を扱ってきた年数が圧倒的に違うからね。これぐらいの差はあって当然。それに、厳しく言っているが、普通、そこまで、天成獣の宿っている武器を扱いこなすのは難しいこと。むしろ、よくやっている方だわ。」

と、ミランは、礼奈に向かって言うのだった。

 ミランとしては、これ以上、成長すれば、いずれ自分も追い抜いてしまうのではないかと思うほどだ。

 「ありがとうございます。」

と、礼奈はミランに感謝するのだった。

 「感謝されることでもないわ。」

と、ミランは、そのように返事するのだった。

 一方で、それを見ていた瑠璃は、隣にいたギーランとイルーナと会話をするのだった。

 「お姉ちゃん。本当に、すごい。よく私、引き分けにすることができたなぁ~って―…。」

と、瑠璃は、ミランのさっきの戦い方を見て、そう思うのだった。

 「あとそこ、お姉ちゃん言うな!!」

と、ミランが瑠璃に向かって、大声をあげる。

 ミランは、瑠璃がミランに向かって「お姉ちゃん」と呼ぶことを一度足りとも許していなかった。昨日、それを呼んで物凄い形相で怒られたことを瑠璃は思い出す。それでも、実の姉なので、言いたくもなるのだ。折角、生みの親と再会することができたのだから―…。

 一方で、ミランは、瑠璃から「お姉ちゃん」と言われるのはあまり好きではなかった。連れ去られ家族としての十二年間という時間を壊したことと、それでも再会できたことに対する気持ちがぐちゃぐちゃに混じり合って、複雑な状態となっていた。その複雑さが、「お姉ちゃん」と瑠璃から呼ばれるのを拒むのであった。ミランは、理由を深く考えることはできていなかった。

 「確かにな。ミランは、小さい頃から天成獣の宿った武器を手にすることができて、それをうまく扱っていくための訓練を受けている以上、経験という面では一日の長というものがでるもんだ。それはどうしようもなく埋められる差ではないが、他の視点から見れば埋めることは可能だ。戦いというのは、強者と言われるものが勝つとは限らない。勝った者が強者なのだ。まあ、勝ち方にもよるがな。」

と、ギーランは、瑠璃に向かって言う。

 「ふ~ん。」

と、瑠璃は何となく理解したような気になる。

 (まあ、すぐにそのことを理解しろって言っても無理だな。経験していけば、わかっていくことだろう。成長というのは、急激ばかりなのではない。停滞期の時もまた、重要な時期なのだ。そこから得られる経験が再度の大きな成長へと繋がることがあるのだから―…。)

と、ギーランは、心の中で思うのだった。

 ギーランとしては、今言っていることを瑠璃がすぐに理解できるとは思っていなかった。それでも良かった。人の言っていることのすべてを理解できるわけではない。大事なのは、重要なところを理解し、自分なりに解釈することだ。その時、ちゃんと言っている人の意図というものをしっかりと把握し、結局何であるかということを自分の体の中にしみ込ませないといけない。それができるかどうかが人の意図を理解するうえで大切なことなのだから―…。

 ギーランは、瑠璃にこれからの経験を通して、しっかりと理解して欲しいと思うのだった。経験は理解を促すことがある。それは、ギーラン自身も経験してきたことなのだから―…。

 「それに瑠璃は、俺とイルーナの娘なのだ。強いはずだ。連れ去られても生き残っているのだから運もいい。明後日には、修行を再開してもいいみたいだから、最後の調整ということになるだろう。天成獣の属性が俺と同じ光なのだから、戦い方に関してはある程度教えられるだろう。」

と、ギーランは言う。

 ギーランは、瑠璃が連れ去られて生き残り、再度、再会することができたのだから、運が良いのは頷けるものであろう。だけど、巻き込まれるという面では、運が良いとは言えないだろうが―…。まあ、無事なんだから運が良いという部類になるだろう。

 そして、ギーランの武器に宿っている天成獣の属性は光であり、瑠璃も同様なので、ある程度戦い方というものも教えられる。さらに、ギーランは大剣で、瑠璃は仕込み杖で剣である以上、教えられることは大きい。だけど、スピードを重視するか、パワーを重視するかという面でかなりの差がでてしまうかもしれないが―…。

 「うん、教えて、パパ。」

と、瑠璃は言うのだった。

 お父さんは、現実世界にいる実の父に呼んでいるので、区別するという意味で、昔、隆道に呼んでいたパパという言い方で、ギーランを呼ぶことにした。同様に、イルーナのことも、ママ呼ぶことにした。

 パパ、ママと呼ばれるギーランとイルーナは、それはもうとても嬉しそうにしていた。おねだりをするぐらいに―…。その場面を見たローは、呆れてしまっていたけど―…。

 その後、昼食の時間まで、修行を見ることになったのだ。


 昼食の時間。

 瑠璃たちは、食堂にいた。

 その席の配置は、なぜか瑠璃、ミラン、イルーナ、ギーラン以外は、その反対側にいた。

 (瑠璃さん―…。)

と、李章は、表情を引きつらせるのであった。

 李章としては、いつものポーカーフェイスのような表情でいたかったのだが、自らの反対側にある状況に普段できていることが一切できなくなるほどの衝撃を受け、引きつらせてしまっていたのだ。

 また、他にも、礼奈とローが呆れかえっており、セルティーがしょうがないことだと思い諦めて食事をしており、アンバイドは完全に引いていた。

 (いつか、それを弱みとして使ってやる~。)

と、アンバイドは、イルーナへの仕返しを考えるのである。

 結局、その仕返しは、アンバイドがイルーナの反撃にあって、失敗することにしかならないのだが―…。

 クローナは、瑠璃の困っている表情には気づいているが、のんびりと自分の食事を続けるのだった。介入することは不可能だということを悟って―…。

 (うん、今日のお昼もおいしい~。)

と、心の中で思いながら―…。

 クローナにとって、リースの城での食事は、普段、自分が作って食べるものよりも、美味しく感じるのだ。クローナも瑠璃たちと旅する前の半年の間、ローと一緒に暮らしていた時に、料理をすることはあったが、リースの城でコックが作る料理より美味しいものを作ることはできなかった。

 それはそうだろう。リースの城にいるコックは、料理のプロであり、味付け、食材の扱い方、その料理に関する知識および技術は、クローナよりはるかに上なのは事実でしかない。そのような料理を毎日食べていると、クローナは、リースの城を出たら、美味しい食事にありつくことができるだろうか、時々、心配になるのだ。ちゃんと、美味しく外の料理を食べられるか。

 こうやって、現在、クローナは、今起こっている出来事から目を逸らしてもいた。

 「瑠璃~、はい、あ~ん。」

と、イルーナが甘い声で言う。

 「ママ、私は一人で食べられるよ。」

と、瑠璃は、困りながら言う。

 「う~ん。私はミランにやれたことを、瑠璃にはやれなかったから―…。パパにもちゃんとやったことだから―…。食べさせてあげるのを―…。だから、あ~ん。」

と、イルーナは、瑠璃にあ~んとさせるのであった。

 瑠璃は、一人で食事もできるし、食べさせられるという経験はある。あくまでも、無理矢理というのではなく、あくまでも友達同士がやるような食べさせあいっこのようなものであるが―…。

 でも、人の目がある以上、どうしても恥ずかしい、揶揄いのネタされるのが嫌なので、したくはなかった。

 一方で、イルーナは、小さい時にできなかった子どもに「あ~ん」とさせて、食べさせることを瑠璃に今しているのだ。思い立ったら吉日といったように、さっそく行動を起こしているのだ。ギーランは、関わりがありませんという感じで食事する。

 「お姉ちゃん、どうにか―…。」

と、瑠璃が言いかけたところで、ミランは呆れて言う。

 「お姉ちゃん言うな。それに、こうなったら、お母さんは意地でもやってくるから、観念して素直に受けることだね。」

と。

 ミランは、イルーナと長く暮らしているから、その性格をしっかりと理解している。イルーナがこのように完全に我を通し始めたら、誰が何を言っても止まらない。止められる者がいない。ゆえに、その行為を受けるしか終えさせることができないのだ。

 「えっ。」

と、瑠璃が言うと、

 「そう。だから、素直に受けなさい。」

と、イルーナが言う。

 瑠璃は、観念したのか、受け入れてしまい、恥ずかしい昼食ということになってしまうのだった。

 一方で、イルーナは、満面な笑みを浮かべて幸せそうにすることとなった。


 夜。

 全員でアンバイドの部屋に集合していた。

 「なぜ、いつもの数より多くなっているんだぁ~。」

と、アンバイドは怒りの形相で言う。

 だけど、その追加された人物を追い返すことができない。その中にいる一人が確実に、アンバイドを戦闘不能にさせるほどの反撃を食わせてくることがわかりきっているのだ。そう、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティーに加えて、ギーラン、ロー、イルーナ、ミランまでいるのだから―…。

 「瑠璃をこんな危険な勝負をさせるなんて、アンバイド。人としてどうかと思うぞ。」

と、ギーランが、アンバイドに対して注意するように言う。

 いや、注意でしかない。理由は、娘である瑠璃をこんな殺される可能性のある戦いに巻き込むのは、絶対に良くないと思っているからだ。大事な大事な娘なのだから―…。

 「そうよ。アンバイドが全試合戦えばいいのに―…。」

と、イルーナが、ギーランが言っていることに対して、味方するのだった。

 (この夫婦。本当に好き勝手言ってくれやがるなぁ~。)

と、アンバイドは、心の中で怒りを爆発させかけていた。

 「あのなぁ~、この戦いに参加すると意思表示したのも、瑠璃の方だからな!!」

と、アンバイドは事実を述べる。

 本当に、そうなのだ。瑠璃は、ランシュの企画したゲームに参加することを自分の意思で表明したのだから―…。

 「瑠璃。アンバイドに脅されたからじゃないのか。」

と、ギーランが言う。

 ギーランとしては、瑠璃がそんなこと言うわけがないとは思わないが、アンバイドが脅して瑠璃に言わせたという可能性も存在すると、思ったのだ。

 このギーランの言葉は、アンバイドの怒りを暴発させてしまうのだった。

 「本当に、お前ら夫婦は~…。」

と、アンバイドが言いかけると、イルーナがアンバイドの目の前に来て、

 「ぶっ飛ばすぞ。」

と、語尾の方に星マークがつきそう感じで、イルーナがが言う。

 イルーナの表情は、ニコニコしているが、これ以上、ギーランとイルーナに対する暴言を吐くのなら、どうなるか覚えているよね、という圧力をかけるのだった。

 アンバイドは知っている。過去、それで、どれだけイルーナにぶっ飛ばされ、気絶させられたのかを―…。

 「はい、すいませんでした。」

と、アンバイドの方が謝ってしまうのだった。

 「アンバイドさんって―…。イルーナさんに弱いですね。」

と、セルティーが礼奈やクローナととも会話をし始める。

 「そうだね。」

 「そうみたい。」

と、礼奈、クローナの順で反応するのだった。

 その会話を聞いていた、ミランが説明を始める。

 「ああ、あれね―…。私のお母さんとアンバイドが兄妹で、昔からお母さんに伯父さんが良く、やられていたのよ。その記憶があるために、お母さんには弱いのよ。」

と。

 (((ああ~、なるほど。)))

と、セルティー、礼奈、クローナは、何となく理解してしまうのだ。

 「それよりも、次の第十回戦の出場の順番を決めないといけないの~う。アンバイド、イルーナ、そのことの方が重要じゃろう。」

と、ローが、ここに集まった理由と、その目的を遂行するように言うのだった。

 そして、第十回戦、最終回戦の出場順の話し合いが始まった。


第97話-3 失われた時は取り戻せないが、これからの時間は一緒に過ごせばいいのだから に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第98話以降はついに、第十回戦、最終回戦です。長かった。つい、内容をかなり追加してしまいました。書いていると想定以上に追加してしまいます。反省が必要だと思います。自分が―…。

第十回戦は、話数がかなりあるが、分割することは少なくなると思いますので、一気に話数が進んでいくと思います。

では―…。

そろそろストックをためないと―…。


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