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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
210/747

第97話-1 失われた時は取り戻せないが、これからの時間は一緒に過ごすことができるのだから

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、瑠璃の泊っている部屋にミランが入ってくるのだった。瑠璃の復讐を諦めきれずに―…。

第97話も分割することになりました。追加の内容が書いていて、楽しくなり、長くなってしまっている感じです。

 ~ミラン View~


 それは、昔のある日のこと。

 私は、夜に眠れなくて、目を覚ます。

 ちゃんと寝ようとして、瞼を閉じる。

 ………。

 だけど、眠れない。

 そうなってしまうと、周りのことが気になってしまう。

 私は、周囲を見渡す。目の視線を右に左にして―…。

 ふと、別の部屋から泣き声が聞こえる。ママの声だ。

 その部屋は、いつも、私とママが一日の多くの時間を過ごす。

 ご飯食べたり、お絵描きしたり―…。

 私は、少し扉を開ける。ママにバレないように―…。

 「うっ……グスッ………。」

 泣いてる。

 「あなた………。」

 たぶん、お父さんのことを言ってるんだ。

 お父さん、あの日からずっと家に帰らなくなった。ほとんど。

 私の妹が連れ去られて、行方がわからなくなってから―…、ずっと。

 ママー…。

 私も悲しかった。ママを悲しませるなんて―…。


 この光景を見た日。

 私は誓った。

 ぶつけようのない怒り。

 そう、私の母を不幸にしたのは、妹が連れ去られたから―…。

 妹が連れ去られなければこんなことにはならなかった。妹さえいなければ―…。

 だから、私は自分の妹に対する復讐を決意した。

 たとえ、どんなに身勝手な理由だったとしても、私の家族を不幸にしたのは間違いないのだから―…。

 私の母の幸せを奪ったのだから―…。

 その奪った分を払ってもらう、あなたの命で―…。



 ~ミラン View了~



 【第97話 失われた時は取り戻せないが、これからの時間は一緒に過ごすことができるのだから】


 瑠璃が泊っている部屋。

 そこに、エリシアの案内で、エリシアとミランが部屋の中に入ってきた。

 実際は、ミランが瑠璃に対して復讐がしたいため、エリシアはそれを止めるためにあえて瑠璃の泊っている部屋に案内したのだ。

 エリシアは、この時、ミランが復讐をしなくなる可能性の高い方法に見事、当てることになったのだ。

 エリシアが望んだ状況は、そう、瑠璃の泊っている部屋にギーランとイルーナがいるということだ。

 そして、現在、瑠璃の泊っている部屋には、ギーランとイルーナがいる。

 「ミラン。」

と、ギーランは言う。

 瑠璃は、ミランの姿を見て、昨日の第九回戦第四試合を思い出す。すぐに、戦闘態勢をとろうとするが、

 「大丈夫。」

と、イルーナが言って、瑠璃の片手を握るのだった。

 イルーナとしては、瑠璃に戦闘行為をさせる気もないし、瑠璃を殺させる気もなかった。なぜ、ミランが瑠璃と戦っているのかという理由は、ギーランとイルーナにはわかっていない。ミランが瑠璃に復讐しようとしていることを家で見た置き手紙で書かれているのを読んで知っているぐらいだ。

 「クソ父。そこをどいて―…。さらに、お母さん。そいつから離れて、そうしないとちゃんと殺せないから―…。」

と、ミランは言う。

 ミランにとっては、昨日の第九回戦第四試合で瑠璃を倒すことができず、引き分けという結果になってしまった。

 そして、瑠璃は生きているのだ。ミランの復讐対象は、治療され、生き残っているのだ。

 許されるはずはない。

 だけど、ギーランとイルーナは、瑠璃を守ろうとする。自分達の幸せを奪った瑠璃を守ることを―…。

 「ミラン。復讐なんて止めろ。碌な目にあわない。それに―…、やっと家族が揃ったんだ。もういいじゃないか。」

と、ギーランは、ミランを説得しようとする。

 ギーランとしては、ミランに瑠璃への復讐を思いとどまって欲しかった。

 (ミラン、馬鹿な真似をするな。こうなってしまったのは、瑠璃のせいじゃない。俺がちゃんと連れ去られた瑠璃を取り戻せなかったからだ。)

と、心の中でギーランは言う。

 ギーランは、自分がしっかりと連れ去られた瑠璃を取り戻すことができていればよかったことである。瑠璃のせいではない。そのことをギーランは理解していた。

 それはそうだろ。当時、瑠璃はまだ生まれたばかりであり、連れ去られることに対して抵抗することなどできやしない。さらに、ギーランのせいとも言えない。ギーランは、必死になって、瑠璃を連れ去ったミンゼナの私的な組織から取り戻そうとした。相手の方が策として上であり、その策の前に取り戻すことができなかったのだ。

 この事件に誰かのせいと言えば、ミンゼナやその所属していた研究所である。それが正しい認識であろう。

 だけど、ミランがそのことを知っているかと言えば、知らないというのが事実であろう。ミランは、ローによって、瑠璃が連れ去られた事実を知っているわけではない。知る機会が存在していない。ローがそのように瑠璃が生まれて、どうやって現実世界へと来てしまったのかという記憶を共有する時には、ミランは医務室で眠っていたのだ。第九回戦第四試合で雷の攻撃を受けて、気絶している真っ最中なのだから―…。

 このように、ギーランたちと、ミランの間には、瑠璃に関して知っている情報の差が存在するのだ。だから、いくら復讐を止めるように言ったとしても、その記憶を共有していなくては無理でしかない。

 ギーランもそのことには気づいていた。

 「瑠璃がどうして連れ去られたのか、これから話すから、復讐は―…!!」

と、言いかけたところで、ミランがそれを遮るように言い始める。

 「そんなことはどうでもいい。だから、どいて―…。」

と、ミランは、ギーランとイルーナに、瑠璃を守るようなことをするのを止めて欲しいという気持ちを込めて言う。

 ミランは、たとえ、今、ギーランのどんな言葉を聞いても受け入れて、聞こうという気持ちは存在しない。ギーランは、瑠璃が連れ去られて以後、そのことに関して責任を感じて、ローと一緒にいながら、瑠璃がどこに連れ去られたのかという手がかりを探るために、ほとんど家を空けることが多かったのだ。

 そのせいで、ミランは知っているのだ。イルーナが泣いていたことを―…。イルーナも自分に責任を感じて―…。

 ミランは、その光景を見て、自らの血の繋がった妹である瑠璃を殺せば、きっと家族が幸せになると思ってしまっているのだ。長い間―…。ゆえに、この呪縛が解くのには、かなり労力というものを要する。実際、瑠璃を殺したとしても、ギーランとイルーナ、ミランに幸せが訪れるということはありえないことである。なぜなら、ギーランとイルーナは、瑠璃が生きていることを望むし、ミランによって瑠璃が殺されることを望んでいない。

 ミランには、そのギーランとイルーナの気持ちはわからないだろう、現時点で―…。思い込んでしまっているのだから―…。

 「どくわけにはいかない、ミラン。」

と、ギーランが言う。

 それからすぐに、イルーナも、

 「ミラン、あなたが何を思って瑠璃に殺そうとしているのかわからないけど、だけどね、私は、ミランに復讐を望んでいない。だから、瑠璃を襲うことを止めなさい。」

と、真剣な表情で言う。

 どうして、ミランが瑠璃を殺そうとしているのか、ギーランとイルーナはその理由を知らない。知るわけもない。ミランの口から聞いたわけでも、他の人から介して聞いたわけでもない。ミランも一切、そのようなことを言っていないのだから―…。

 ミランには、さっきのイルーナの言葉はショックそのものでしかなかった。ミランは、瑠璃に復讐する理由にイルーナのあの日、泣いていた場面を覗いて、思ったのだから―…。ミランは自分のために行動することもあるが、それでも馬鹿な真似をすることはない。だけど、親しい人が悲しんでいると、その人のために過激な行動をとることもある。その時に、どうすればいいかということを考えるぐらいのことはできる。

 ゆえに、その行動の原因に止めるように言われてしまえば、どうすればいいのかわからなくなってしまうのだ。ぶつけようのない感情を―…。

 その様子を見ていたエリシアは、

 (ミランという娘。他人思いなのだろう。特に、母親大好きという感じだ。それだけに、母親の一言は、彼女の感情を動揺させることに成功した。後は―…、うまく言葉を聞けるようにできれば―…。赤の他人の私がいくらそのようなことを言ったとしても、意味がない。それに、少しでも耳打ちのようなことをしたら、ミランが疑いをもってしまい、最悪、心を閉ざしてしまう。)

と、心の中で考える。

 エリシアでは、どうしようもできないのだ。赤の他人としか認識されないエリシアでは、イルーナ、ギーラン、瑠璃、ミランの家族関係を根本的に解決することはできない。時には、関係のない第三者に任せる時が良い時もある。何でも同じ方法が通じるわけではない。

 エリシアは、現在、さらに悪いことに、イルーナやギーラン、瑠璃にアドバイスというものを送ることはできない。なぜなら、アドバイスを送れば、ミランに怪しまれてしまい、それがきっかけ、最悪の場合、ミランの心を閉ざすことになり、閉ざした心を開くの時間がかかることになってしまうからだ。永遠に開かないということさえあるかもしれないのだ。

 「お母さん。何で、その子の味方をするの? どうして―…、だってその子が連れ去られることさえなければ、お母さんが夜中に泣かずに、悲しまずに済んだのに―…。そんなお母さんに迷惑をかける―…。」

と、ミランが言いかけてところで、ミランは吹っ飛ばされるのだった。

 普段のミランの実力なら、対処することもできていたであろう。今は、普段の状態ではなかった。ミランは母親によって、瑠璃が守られ、さらに、ミランは母親のことを思っての復讐をその母親本人に止めるように言われたのだ。精神の状態が不安定にならない方が無理であろう。

 信じていたものに裏切られたような気分だった。

 その裏切られるような感じがあるはずがない。イルーナが瑠璃に洗脳されているのではないかと、無理矢理にそう思わせながらミランは言うが、結局、その間にイルーナに殴られて飛ばされたのだ。

 イルーナとしては、ミランの復讐の理由を理解することができた。だからこそ、望んでいない復讐を自分のためにしているだというミランに対して、腹が立って殴るのであった。本当は、アンバイドを除く家族に手を上げることはイルーナが最も嫌うことである。

 だけど、話しを聞かせるには、一回ぐらい殴って、壁に頭をぶつけた方がいいのではないかと咄嗟に判断したからだ。ミランが天成獣の宿っている武器を扱っていることを知っているから―…、致命傷になることはないだろうと、判断して―…。

 イルーナの拳は痛かった。それ以上に心が痛かった。暴力という方法でしか自分の娘を抑えることができる方法を思い浮かべることができなかった自分に―…。だからこそ、イルーナは涙が溢れそうになる。だけど、その涙は絶対に出してはいけないものであり、出せば、この行為を正当化することになりかねないのだから―…。

 「ミラン!! 私はあなたに瑠璃への復讐を望まない!!! 家族が離れ離れになって悲しかったよ、それは当たり前のことだし、泣いた日もあった。辛い現実を忘れたいために―…。だけど、やっと会えた。やっと家族が揃ったのだから―…。もう二度と馬鹿なことのせいで家族をなくしたいと思わない。ミランの復讐対象が瑠璃だったとしても!!!!」

と、イルーナは言った後、ミランの近づき、ハグするのである。

 「失った時間は返ってこないし、取り戻すこともできない。だけど、これから家族で過ごす時間だけは守ることができるのだから―…。ミラン、復讐を止めて、お願い。私は、あなたにそのような悲しい道を行くのは嫌だから―…。」

と、イルーナは、言うのだった。

 その様子をミランは、イルーナの弱さというものを感じた。小さく感じた。ゆえに、イルーナの気持ちがミランの心の奥深くに通じたのだった。

 (こんな小さくなっちゃって―…。)

と、ミランは、心の中で思いながら、言葉にする。

 「ごめん。お母さん。」

と、ミランは、謝るのだった。

 (これで、一件落着だな。)

と、エリシアは、もう大丈夫だと思い、瑠璃が泊っている部屋から退出するのだった。

 ミランとイルーナの様子を、瑠璃はただ見ることしかできなかった。

 (ミラン(あの人)が私の血の繋がった姉。第九回戦第四試合()の時に言っていたのは本当だったんだ。どうして、知っていたんだろう。)

と、瑠璃は、心の中でミランがどうして知ったのか疑問に思うのだった。

 それでも、特に気にすべきことではないと心の中の言葉にせずともいたり、考えないようにした。

 瑠璃は、同時に、気になったことを心の中で、言葉にするのだった。

 (部屋の壁にヒビが入ったんだけど、大丈夫かな~。)

と。

 この後、ミランとイルーナが瑠璃の泊っている部屋の壁にヒビが入っているのに気づき、イルーナがマズそうな顔をするが、その後、セルティーが泣く泣く、部屋の壁の修復のための予算を出すのであった。


第97話―2 失われた時は取り戻せないが、これからの時間は一緒に過ごすことができるのだから に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


この部分の中で、イルーナがミランを殴るシーンがありますが、決して暴力は容認されないので、現実に暴力を振るわないようにしてください。絶対に、です。後、ちょっとで、最終回戦に進むことができます。さらに、第97話が完成したら、2021年8月下旬に第98話以後の投稿を再開しようと思います。

次回の投稿に関しては、まだ、次回の投稿分が仕上がっていないので、ほぼ完成したら、この部分で報告すると思います。

では―…。


2021年8月5日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2021年8月6日頃になる予定です。

では―…。

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