第96話-16 自分の真実を知る時
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、瑠璃が自分が異世界生まれであり、とある実験に巻き込まれて、現実世界にやってきたということを知るのであった。そして、血の繋がった両親と再会するのだった。一方で―…、医務室では―…。
今回で、第96話は完成します。長すぎました。追加要素が多すぎました。書いていたら―…、長くなってしまいました。反省します。
とある場所。
ここは、ベルグが実験のために使っている施設。
建物はすべて、地下に存在する。
地上では、森で覆われているようにしか見えないだろう。
そんな施設のある場所。ベルグがいる場所。
「戻りました。ベルグ様。」
と、部屋の中に入ってきた、アババが礼をしながら言う。
「そうか、ご苦労さん、アババ君。本当、君は仕事をテキパキこなすし、任務にも忠実だ。」
と、ベルグは、アババを褒めるように言う。
そのベルグの言葉に、アババは表面上は喜んでいる顔を見せないが、心の中で照れている。アババは、感情をあまり表に出すことができないのではなく、基本的に感情を表に出すことをしていない。それでも、アババは、相手にとって欲しい感情を演じることもできる。それだけ、相手の感情を読むのが得意なのだ。
「感謝いたします。だけど、私よりも、ベルグ様に忠実な側近は、一人いるでしょ。ベルグ様のこの建物への侵入を防ぐ最大の盾のような人物が―…。」
と、アババはある人物の姿を思い浮かべる。
アババも、ベルグへの忠誠というものがかなり高い方である。マッドサイエンティストのじいさんのような自分本位の好奇心人間、その孫で顔面偏差値がかなり高い奴、策謀するが勝手な行動が多いナンバー二らのように、忠誠心が時々あるのかわからないベルグの側近に比べれば、確実にあるといえる。
アババが言っていた、最大の盾のような人物は、決して体格が大きくがっしりしているわけではなく、背は高く、中肉であるほどの人物だ。正直見た目から強いとは思えない。それでも、アババは、あの忠誠心に関しては、一目置いてしまうほどである。
「ああ、彼ね。俺の実験で強化しているよ。それに―…、彼は、精神面では俺の側近の誰よりも一番強い。馬鹿な奴らには失敗作でいいが、彼だけは成功したものを与えないと―…。ちゃんと、元に戻ることも可能な…ね。」
と、ベルグは言う。
ベルグは、その人物で一番気に入っていたのは、その精神力の強さであった。どんな優れた体格を持っていたとしても、心が弱ければ意味がない。そう、自分の弱さに向き合うことができないで、強いんだ威張っている心の弱い奴らのように―…。
だから、ベルグは体はそこまで強くないが、精神力の強さに関心を抱き、その人物に力を与えたのだ。天成獣の宿っている武器とは違う力を―…。
力を手に入れれば、弱かった時のことを忘れようとするのであったが、弱い時代の自分にも感謝し、かつ、力をうまく扱いこなしているのだ。むしろ、ベルグが想定したよりも進化しているのだ。だけど、ベルグは、その進化について知ることができていなかった。
ベルグは続けて、
「でも、アババ君の俺に対する忠誠心も負けてはいない。だから、任務に忠実と言っているのだよ。」
と、アババに向かって言うのだった。
ベルグとしては、アババも同様に忠誠心が高いといえた。そして、実力は十分にあり、ベルグの側近として足りるほどのものであった。ベルグの重要な側近の中で一番弱いというわけではなく、中頃の実力を有しており、ナンバー二の人物と同様に、隠密活動などがうまく、頼りにしているほどだ。
「はい。」
と、アババは、簡単な返事になってしまうのだった。
他に言葉というものが見つからずに―…。
「アババ君に頼む仕事は、しばらくの間、緊急なことがなければ何もないから、ゆっくりと休んでいて欲しい。」
と、ベルグは、アババに向かって言う。
現時点で、アババにしてほしいという仕事はなかった。緊急の用事も今は存在しない。ベルグにとっては、実験を進めていくことが一番優先されることであり、ランシュの報告によると、ローは今はリースにいるようで、ベルグのことを探っていたとしても、ベルグのいる場所まではわかっていないようだ。
ベルグは、アババにしばらく見張りなどの仕事を多くさせすぎたので、休ませて、実験の最後の段階でローの勢力による介入があるかもしれないので、その時に戦力として十分に力を発揮してほしいと思ってもいる。ただし、緊急でアババの力が必要となった時は、例外となってしまうが―…。
「はい、わかりました。ベルグ様。」
と、アババは言うと、ベルグのいる場所から離れていったのである。
ベルグは、その後、自らの実験を進めていくのだった。己の好奇心を満たすために―…。
リースの城。
そこの廊下を二人の人物が歩く。
エリシアとミランだった。
ミランは、エリシアによって、瑠璃が泊っている部屋へと案内されている。
ミランにとって、復讐対象を殺すことができなかった。そう、第九回戦第四試合は引き分けに終わってしまったのだ。
(今度こそ―…。今度こそ達成してやる。)
と、ミランは心の中で思いながら歩みを進めていくのであった。
リースの城の屋根の上。
そこには、ローがいた。
ローは、クローナと話した後に、分かれて、ここまで瞬間移動してやってきた。短い距離ならそれほど力を消費することはない。
そして、ローは半年前のことを思い出すのだった。
半年前。
とある研究所の入り口。
「やっと辿りついたの~う。ギーラン。」
と、ローは、一緒にいるギーランに確認をとる。
この場所は、ギーランの第二子を連れ去ったと思われる有力的な研究所である。その場所に、やっと思いで情報を集め、ここに辿り着いたのだ。
この場所を教えてくれたのは、研究所の元所長であるミンゼナだ。ミンゼナはすでにここの所長を引退しており、ずっと隠居として、研究所近くの森の中で暮らしていた。だけど、悔しさの念があったのかわからないが、たまたま用事で行った町で、酒を買って飲み、酔ってしまって声に出してしまったようだ。過去の失敗した別の世界への実験のことを―…。
どうして、ミンゼナがそうしてしまったのかわからない。ずっと、秘密にしていなければならないということに耐えられなくなったのか、誰か秘密を共有してもらう人が欲しかったのか、それとも、ただ単に寂しくなってしまったのか。
結局、ミンゼナの心の中の言葉にできない、いや、ミンゼナ自身も気づいていない気持ちがそうさせたのかもしれない。
それを偶然、この町によっていたローが聞いていて、ギーランとともにミンゼナの家へと向かい、少しだけバトル騒ぎとなったが、圧倒的な力で倒し、ミンゼナから研究所の居場所を吐かせることに成功したのだった。
その後、ギーランとローは、ミンゼナを殺すのではなく、ミンゼナから別の世界に関する記憶を取り上げ、一部記憶喪失にするのみにとどめた。ギーランにしてみれば、気絶するほどの怪我を負わせたとしてもまだ足りないと思えるほどの気持ちであったが―…。それでも、弱っている老人を殺すほどまで、酷いことをするわけにはいかなかった。ミンゼナを倒す時に負ったミンゼナの怪我はローによって回復させ、ベッドに寝かせ、ギーランとローは消えるのだった。
ミンゼナの家を出て、すぐに、イルーナとギーランの第二子を連れ去った研究所へとやってきたのだった。
「ええ、これで―…。」
と、ギーランは言う。
だけど、ローもギーランもこの時、大事なことを見逃していた。第二子はすでに実験に使われて別の世界にいるということを―…。それをミンゼナから聞くのを忘れてしまっていたのだ。そのことにローもギーランも気づいていなかった。
「そうか。じゃあ、いくぞ―…。」
と、ローが言うと、研究所を襲撃し、壊滅させるのだった。
その結果は、イルーナとギーランの第二子の情報を手に入れることには失敗したが、そこで実験に使われていて、唯一の生き残りであったクローナを救出することができた。
そして、クローナはローのもとでしばらくの間、育てられるのであり、そのため、ギーランとはしばらく別々で行動するのだった。
時を戻し、ローのいる場所。
(これで、一つの悲しみが終わった。一生叶わぬかもしれない再会が実現されたのじゃから―…。奇跡と言わずして何と言おう。)
と、イルーナとギーランが自分たちの第二子である瑠璃に再会したことに対して、再度心の中から祝福するのだった。
ローは、城の屋根からリースという都市を眺め、その白さと近くにある空よりも青い海を見つめる。ローにとっては、大切な人はもうこの世にはいないだろう。愛する夫―…、そして―…。
リースにある城の中庭。
アンバイドは、李章の蹴り攻撃に対処する。
李章は、本気で蹴っている。だけど、アンバイドを倒したり、殺したりするものではない。
あくまでもこれは、修行の一環である。
李章は、本気を出したとしても、アンバイドにかなうほどの実力を有しているわけではない。アンバイドも、李章の本気ぐらいは少しだけ実力を発揮させるだけで倒すことができる。
それでも、アンバイドは感じていた。
(刀を使っての戦いをするようになってから、確実に成長速度が速くなっている。近いうちに、俺が確実に本気を出さないと倒せなくなるだろうし、将来的には―…。まあ、そんなことを考えたからといって、簡単にどうにかなるわけじゃない。)
と、心の中でアンバイドは言いながら、李章に勝利するための拳を李章の目の前まで伸ばすのである。
「参りました。」
と、李章は、アンバイドに降参するように言う。
李章の気持ちとしては、悔しい気持ちである。アンバイドに一度も参ったと言わせていないのだから―…。実力差があるのだから、仕方ないことであろうが、李章としては、一日でも早く強くなりたかったので、そういう風に仕方ないと言って割り切ることはできなかった。
「李章、刀を使って戦うようになってから、蹴りでの攻撃の威力もスピードも十分に強くなっている。だけど、焦ることは返って間違った成長をしてしまうことになりかねない。時には寄り道というものも必要だ。意外な戦い方というものを発見することができる。」
と、アンバイドは、李章が強くなっていることを言い、焦るなとアドバイスを送るのであった。
これは、アンバイドの素直に思っている感想である。李章は、誰かを守るために只管強くなろうとしている。それは、瑠璃のためであるということはアンバイドにも何となくであるが、そうではないかと予測することはできる。
ゆえに、李章は焦らなくても確実に成長しているので、少しの寄り道ぐらいした方がいい。寄り道をするのはいけないというが、現実上、寄り道によって、真っすぐ一直線で成長していく過程では掴むことのできないことを発見し、真っすぐで進んだよりも強かったりすることもある。
アンバイドは、自分のように焦るのではなく、いろんなことを知ったうえで、成長して欲しいと思ったのだ。
「はい。」
と、李章は返事をするが、アンバイドの焦るなというアドバイスをどこまで真剣に聞いたかは怪しい。
李章は、アンバイドの言おうとしていることは理解できないわけではない。だけど、李章には目標があり、それをいち早く達成したいと思っている。そうしないと、瑠璃を守ることができないと感じているからだ。
(まあ、まだ、俺の言葉は聞いていないようだな。)
と、アンバイドは、心の中で、さっきのアドバイスを李章が聞いていないことを理解し、呆れるのであった。
リースの城の中にある廊下。
エリシアとミランが歩く。
「そろそろ、瑠璃の泊っている部屋だ。だけど、妙な真似だけはするなよ。瑠璃を殺すような真似を―…。」
と、エリシアは、忠告するように言う。
エリシアとしては、瑠璃が殺されていいような人物でもないし、エリシア自身が医者である以上、人の死というものがどんなものか嫌というほど理解している。ゆえに、それを本当の意味で理解していないミランという人物に対して、悲しみというものを感じている。
(部屋の中にいて欲しい。ミランの両親が―…。そうすれば、この愚か者を止めることができるかもしれない。)
と、エリシアは、心の中で言い、むしろ、ミランの両親であるイルーナとギーランが瑠璃の泊っている部屋にいることを願うのだった。
そうすると、エリシアとミランは、瑠璃が泊っている部屋に到着するのだった。
「ここだ。」
と、エリシアは言う。
この時、ミランの行動を警戒するのだった。瑠璃を殺させないために、ミランがそのような行動をとらないために―…。
一方でミランは、
(この医者、私が復讐対象を殺させないように見張るつもりね。だけど、天成獣の宿っている武器を扱っていない人間が私を止めることはできない。部屋に入ってしまえば―…、私はすぐにこの医者を振り切って行動に移せばいい。)
と、心の中で、そう考える。
理由は、天成獣の宿っている武器を扱っている者とそうでないものでは、動きに差がでるので、止めることはできないからだ。ミランはそう理解している。エリシアもそのことは想定済みだ。
エリシアはノックして、瑠璃の泊っている部屋に入るのだった。ミランとともに―…。
エリシアは、心の中でガッツポーズをするのだった。
そこには、瑠璃とギーラン、イルーナがいるからだ。
そう、瑠璃とミランの両親が―…。
ミランは、両親がいることに驚くのだった。少しの間、言葉にできないほどに―…。
【第96話 Fin】
次回、一人の少女の復讐が終わる!!
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
第97話が終わると、第十回戦、最終回戦となります。最終回戦になる予定では、分割するということは減るとは思います。
次回の投稿分に関しては、まだ完成していません。とある人の心情を描くのがなかなか難しいためです。悩みもしています。次回の投稿分がほぼ完成した場合、この部分で報告すると思います。
では―…。
2021年8月3日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2021年8月4日頃を予定しております。
では―…。