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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
208/747

第96話-15 自分の真実を知る時

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』に関しては、瑠璃は自分の生まれた時のこと、どうして現実世界へ来たのかを知る。感動の親子の再会をするのだった。瑠璃にとっては、初めてであるが―…。一方で、医務室の方では―…。

次回で、第96話が完成します。あまりにも長くなってしまいました。反省です。


 昼過ぎ。

 リースの城の中にある医務室。

 そこでは、一人の患者がベットを占領していた。ミランだ。

 第九回戦第四試合で、瑠璃の雷攻撃を受けて気絶し、意識を失ったままここに運ばれてきたのだ。

 昨日は、瑠璃とアンバイドの怪我をみないといけなかったが、アンバイドに関しては、すぐに大丈夫だとわかったので、早急に、アンバイドの部屋に戻させ、瑠璃の方はちゃんと礼奈が青の水晶で治療をしていたことから、医務室で集中的に見る必要がないと判断し、瑠璃が泊っている部屋へと運ばせている。

 一方で、ミランに関しては、ミランがこのリースにある城に来たのは今日であり、すぐに怪我人の部屋を確保することはできないし、会ったことのない人である以上、何の症状が急にでるかわからないので、この医務室で寝かせることにした。

 まあ、実際、エリシアは、ギーランとイルーナからミランに持病がないかを聞いていた。ミランに持病は一切ないという答えであった。

 そして、一晩、エリシアは、この医務室の中で過ごし、ミランの容態に変化がないかを注意してみるのだった。数時間おきに―…。

 エリシアは昼食を食べ終えて戻った後、医務室へと戻り、すぐにミランの様子を確かめる。

 (体調に変化があるというわけではない。むしろ、すやすやと寝ているぐらいだ。あとは、目覚めるだけか。)

と、心の中で、エリシアは言うと、すぐに机の近くにある執務用の椅子に座る。

 今日も、いくつかのカルテの作成をして、整理しないといけない。城の中には兵士がいる以上、その訓練による怪我でこの医務室に来る者も多いのだ。擦り傷や切り傷が多いので、外科的な治療に関しても記し、さらに、体の弱い者、持病を持つ者たちの健康観察とその経過について書かないといけないのだ。

 (もう一人ぐらい、医者と、さらに看護師を二人ほど増やして欲しいものだ。)

と、エリシアは、書類を整理しながら、心の中で思うのだ。

 セルティーからは、増やそうかという意見がでており、ランシュも容認の方向であるはずなのに、なぜか、それが医者と看護師の増員がなされないのだ。

 エリシアもなぜなのかということはある程度予測をつけることができた。それは、リースの中央で権力を握っている者たちが、医者や看護師を増やすお金がもったいないと思っているのだ。彼らは、自ら専用の医者や看護師を抱えており、リースがある半島およびその周辺では、医者や看護師の需要が多く、その供給はまだ足りていないというのが現状だ。

 さらに、権力者たちが、医師や看護師を囲うために、町や村に暮らす人々にかかれる医者や看護師の人数が少ないのだ。

 そして、国の予算で私服を肥やそうとしたいし、自分の利権となる予算が削られることを嫌がるので、リースにある城の医者や看護師を増やすことができないのだ。

 さらに、自分の囲っている医者や看護師に逃げられるのも嫌がっているのだ。医者や看護師には、高い給料の代わりに一生、その主人に仕えて医療に従事することを強制するのである。拒むことは、この地域で医療活動ができないということだ。逮捕、追放などの処分を裏で国や領主に根回しをして―…。

 そういう意味ではエリシアは、運が良かった。リースの城では、高い給料ではあるが、一生、仕える必要はないのだ。リースの城側としては、医者に不利になるような契約を強制しては、いざという時に逃げられる可能性があり、医者も人である以上、信頼関係を築いておく方が、リースの城の中にいる者たちにとって利益になるのではないかと思っていた。

 そのような考えを抱いていたリーンウルネにとって、エリシアは雇われたのである。

 リーンウルネにしても、医者や看護師は一人見つけるだけでも苦労するし、給料も一般の職業よりもかなり高いものとなる。それほどに、数が少なく、かつ、責任のある仕事である以上―…。

 エリシアは続けて、

 (望んでもしょうがないか。私もこの地域の医者の現状は知っているしな。)

と、心の中で、嘆くのだった。

 そう思いながら、職務をしていると、ベッドの方から一人の人物が起きるのであった。

 「!!」

と、エリシアは、ベッドの方へと振り向くのだった。


 リースの城の中庭。

 ここは、修行ができるような広さのある場所。

 アンバイドがいた。

 (イルーナ(あいつ)がいるなんて―…。朝、聞かされたことによると、瑠璃もイルーナ(あいつ)の娘かよ。それも十二年前に連れ去られたとかいう。ミランと同じで怪力ではないのが救いだが―…。まあ、首筋のところに水晶があったのだから、同じ一族だってことぐらいは推測がつく。李章や礼奈、クローナ、あの三人は、()()()()をまだローやギーランらから知らされていないだろうなぁ―…。ミランの奴も知っているだろうし、それにこのことは絶対に言わないとは思うが、必要がなければ―…。クソッ、考えても仕方ないか。今は静かにしているのが一番。)

と、アンバイドは、心の中で言う。

 それは、ロー、ギーラン、イルーナの登場によるからである。アンバイドは、ローたちに会いたくはなかったのだ。いろんな意味で自分のことを瑠璃たちに喋るのではないかと危惧して―…。アンバイドとしては、自分の知られたくないことを知られるのは絶対に嫌なのだ。そう、アンバイドとパートナーであった人間のことを喋られるのが―…。

 アンバイドは、しばらくの間、このように思い悩みながらしていると、瑠璃の部屋に行っていた李章が戻ってくるのであった。

 「李章だけか。まあ、今日に関しては、別にいいんだが―…。イルーナ(あいつ)のせいで、こっちはあまり体を動かしたくないのだから―…。」

と、アンバイドは言う。

 第九回戦終了後に、イルーナの登場によって、蹴られて気絶してしまった記憶を思い出す。その記憶は、アンバイドにとって、イルーナから受けた屈辱の一つだ。思い出すだけで頭にくるやつだ。さらに、嫌な記憶となってしまっており、こびりつくようになってしまい、なかなか記憶の中から離れないのである。

 「そうですか。修行をお願いします。」

と、李章は言う。

 李章にとって、アンバイドがイルーナに蹴られたことは基本的にどうでもよかったし、今は、修行して強くなる方が一番重要であったから―…。瑠璃を守るために―…。

 アンバイドは、李章の気持ちがわかっているので、修行を受けるために立ち上がる。

 「しゃーねぇ。やるとしますか。」

と、アンバイドが言うと、李章の修行が再開されるのだった。


 医務室。

 黒の世界、自らの時間感覚にしてみれば、ほんの一瞬のものでしかなかった。

 そう、現実時間の経過とは、感覚的に異なってしまっているのだ。

 そんな世界にいたであろうミランが、ゆっくりと瞼を開けを目を覚ます。

 (私は―…、あの時―……瑠璃(あの女)と戦って―………、ハッ!!!)

と、ミランは、心の中で、自分の思い出せる過去を振り返り、自分がどうなったのかを考える。

 ミランは、第九回戦第四試合、瑠璃と戦って、瑠璃の雷攻撃によって、気絶し、ローに治療されて後、ここへと運ばれてきたのだ。ミランの意識にあったのは、瑠璃の雷攻撃を受けて、自身が気絶して、倒れるまでの時のみだ。それ以後のことは、ミラン自身知らない。

 ミランは自分がどうなったそれ以後のことを除いて思い出し、さらに、その場所とは違うとわかり、上半身を起こすのであった。

 そこには、ミランが起きたと気づいたエリシアがミランに目を合わせるように体を向けていた。

 「ほぉ~。目が覚めたか。」

と、エリシアは、ミランに向かって言う。

 その言葉を聞いたミランは、ここがどこか理解することができなかった。ミランが思い出せる記憶で辿っても記憶にない場所であったのだ。現に、ミランは、リースの城には一度も来たことも入ったこともない。記憶にないというのが当たり前のことだ。

 「ここはどこ!!」

と、すぐにミランは、警戒しながら言う。

 ミランは、知らない場所で、急に上半身を起こすと、見知らぬ顔の人間が一人そこにいるのだ。警戒しないほうが無理である。

 ミランが警戒することがエリシアにとっては理解できていたし、そうする方が当たり前だから、エリシアの方が警戒を解くような態度になって、言葉を言い始める。

 「警戒しなさんな。私は、ミラン、君に何か危害を加えるためにここいるわけじゃない。私は医者だ。ここは、リース城にある医務室だ。ミラン、お前さんは、昨日の試合で引き分けて、ここに運ばれてきたんだ。お前さんの両親によって―…。」

と、エリシアは、ミランがどうやってこの医務室に運ばれたのか、危害を加えないのかを言う。

 エリシアの言葉に安心したのか、ミランは完全ではないがある程度、警戒を解くのであった。ミランが安心したのは、エリシアが医者であるということを聞いたからだ。その前の言葉で警戒を解いたのではない。

 (完全に―…、とは言えないが、警戒を解いてくれた。まあ、今の現状では、これぐらいできれば良しとするかぁ~。)

と、エリシアは、心の中で、話を次に進めるために、ミランの警戒の解く限度というものに無理矢理納得させる。

 「お母さん、お母さんを悲しませるくそ父が―…。」

と、ミランは、エリシアに尋ねる。

 (お~い、ミランのご両親は大丈夫か。まあ、家庭の事情もあるが、見た雰囲気では、酷い父親のようには見えなかったが―…。)

と、エリシアは、心の中で、ミランのさっきの言葉に対して、思うのだった。

 エリシアは、イルーナとギーランの関係が夫婦だってことはわかっている。だけど、イルーナとギーランの夫婦関係の実態がどうなっているかまでは完全にわかっていない。エリシアがわかっているのは、ギーランとイルーナ双方ともにお互いを愛し合っているし、信頼しているということだ。良い夫婦関係だと思っている。

 だけど、ミランのさっきの言葉は、エリシアのイルーナとギーランの夫婦関係に対して、いろいろと疑問を感じさせるぐらいの言葉になっていた。ミランは、イルーナとギーランの関係を長年見ていることにより、それがわかっているのだとエリシアが思ってしまっていることも災いしている。

 実際、ミランがイメージしたのは、イルーナとギーランの仲でなくて、ギーランが連れ去られた瑠璃を見つけるために、家を空けていて、イルーナはギーランの前では平気な振りをしているが、家ではよく泣いている姿を見ているから、母親の気持ちも分からず、過去に囚われて今ある大切な人を無視しているギーランのことを恨んでいるためにそのような言葉をエリシアに言っているのだ。

 「まあ~、夫婦関係は突っ込むべきではないだろう。無理に―…。で、ミラン、お前さんは、いくつか大きな怪我を負った。だから、一週間ほどは、天成獣を宿った武器を扱っての戦いを含めたすべての禁止、さらに、激しい運動をしないこと、出歩きもほどほどにするように―…。食事に関しては、もう大丈夫だろう。明日、必ずこの医務室へ、私の元へ来ること。ちゃんと、どこか、体に異常がないかを確認させていただく。」

と、エリシアは、医者の顔になり、ミランに向かって言う。

 エリシアとしては、自分の職業である医者には誇りをもっている。そのために、患者の命を優先して考えてしまう。ゆえに、ミランが雷攻撃を受け、倒れたことから、体に相当なダメージがあるのはわかっていた。いくら体が元の状態になっていたとしても、体の中までのダメージがなくなっているとは限らない。

 そのことを考慮に入れると、ミランに無理をさせるのは禁物であるということ。しっかりと釘をさして、注意し、ミランに守らせる必要がある。物理的に釘を刺すわけではないが―…。

 「わかりました。だけど、私の復讐は―…。」

と、ミランは言いかけてやめることにする。

 医者である以上、天成獣の宿っている武器を使う可能性があることをする場合、止めに入るかもしれない。そうなってくると、いろいろと面倒くさいことになるのは目に見えていた。

 「復讐なら、止めた方がいい。復讐など、ただ失うだけだ。今ある大切な関係と、人を―…。」

と、エリシアは、ミランに向かって言う。

 エリシアは、復讐に燃える者を何人か見てきたことがある。その多くが、不幸な出来事によって自らの命を落とすという結果になっている。実際に、復讐に燃える者の知り合いなどの関係者から聞いた話によると、であるが―…。

 復讐を成功させた者は、結局、復讐の過程で別の人物によって、己が復讐対象にされ、殺されるという結末を迎えた者もいる。

 だけど、幸せな人生を送っている者もいた。それは、自分の人生に対して復讐は空しいということを理解するもしくは、復讐を果たしたうえで、そこで満足し、終えることができた者であった。

 エリシアから見れば、ミランのようなタイプは、復讐をしたとしても、復讐の動機となったもの、そう欲したものが手に入れることができずに、かえって人生を狂わしてしまうのではないかと感じた。ミランという子が、他人思いの子であるということが関係しているのだろう。

 それに、今朝、瑠璃とミランが姉妹であることをセルティーから聞かされていた。ゆえに、ミランが誰に復讐しようとしているのか理解していた。

 「そんなものは、医者のあなたに関係はない。私は―…、瑠璃(あいつ)に―…、復讐する。勝負はついていないみたいだし―…。」

と、ミランは、そう言うと、医務室を出て行こうとする。

 それをエリシアがミランの右手を自身の右手で掴むのだった。

 「私が、ミラン、お前の復讐相手の部屋に案内してやるよ。」

と、エリシアは言う。

 これは、エリシアにとっての賭けにすぎない。

 (いてくれよ。瑠璃の両親たち―…。)

と、エリシアは、瑠璃の泊っている部屋にイルーナとギーランがいることを心の中で祈りながら、ミランを瑠璃の部屋に案内するのだった。

 

第96話-16 自分の真実を知る時 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第96話は、当初、予定もしていないことを大量に入れたせいで、あまりにも膨大な量になってしまいました。私自身もいつになれば第96話は完成するのかと思うぐらいでした。第97話が完成すれば、最終回戦となると思います。頑張っていきます。

では―…。

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