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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
207/747

第96話-14 自分の真実を知る時

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、瑠璃がついに、自分の出生の真実を知るのであった。


 「えっ。」

と、一人の少女は、自分の真実を知る。

 誰から生まれ、両親、姉、その後、自身が連れ去られ、現実世界へと飛ばされたことを―…。

 瑠璃は、自分の真実が本当なのか疑いたくなるほどに―…。

 すぐに、受け入れられるほどの真実ではなかった。

 (私は―…、ギーランさんと抱き着かれた人の娘で、昨日の第九回戦第四試合(しあい)で戦った人がお姉ちゃん。……………うん、一回寝よう。これは、夢だ。)

と、瑠璃は心の中で、受け入れることができずに寝ようとするのだった。

 その行動にギーランとイルーナは、驚くしかなかった。ローにいたっては、当たり前だろう。そして同時に、瑠璃が現実を受け入れられず寝て夢だと思う突拍子もない行動に、ローはギーランとイルーナの娘なのだと確信するのである。

 いくら科学的根拠を示されても、納得できない時はある。そのような時、親子が似ている行動をしているのを見ると、なぜかそうかと思ってしまうものだ。それが一番の納得する証拠になったりする。


 それから、数分の時間が経過した。

 何とか、瑠璃は、ギーランとイルーナの娘であることを理解した。

 この時、ミトコンドリアDNAなどの用語がローの口から出たが、そのことは理解できるはずもないが、無理矢理納得させた。

 一番の衝撃だったのが、ローが使った魔法によって見せられた自分の過去がはっきりとしていたため、そのことで嫌でも納得させられるというものだ。時間をかけないと、冷静にそれが事実であるということを受け止めることができない。情報量の多さもそうさせてしまっている。

 (……冷静になれたぁ~。だけど、やっと私―…。会えたんだ。本当の両親に―…。)

と、瑠璃は、心の中で思う。

 今すぐ、両親に抱き着いて、その感動の再会のテンプレをしてみようとも―…。

 (でも、さっき、分からず、拒否してしまったぁ~。数分前の私の馬鹿!!)

と、数分前の自分という存在に、どうしてイルーナの抱き着きを拒否してしまったのかと、後悔するのだった。

 実際、瑠璃は、イルーナが実の母親であることを知らなかったのだから、抱き着くのを拒否するのは無理もない。過去の瑠璃のあの行動を誰も攻めることなどできやない。瑠璃自身であったとしても―…。

 それでも、瑠璃の後悔という気持ちを前の言葉のようなことを言ったとしても、意味はないことであろう。

 「瑠璃、やっと会えた。」

と、ギーランは言いながら、瑠璃に抱き着こうとする。

 「瑠璃~。拒否されたけど、抱き着きます。」

と、イルーナは言うと、瑠璃に許可なく抱き着くのであった。

 瑠璃としても、もうすでに、ギーランとイルーナが血の繋がった両親であることがわかったので、抱き着かれることに抵抗感というものはない。ただし、すべての場面および時という面において、そうなるわけではない。

 そして、瑠璃、ギーラン、イルーナは、三人とも抱き合っていたのだ。それは、もう二度と会うことのないかもしれないと思った家族に再会することができた。それがどれほどの幸運であろう。これは、大きな不幸にあったからこそ、得ることができたものなのかもしれない。

 いや、この再会が感動的なものになるための不幸であり、今、ここに大きな幸せがあるのだろう。実際は、家族が離れ離れになるのはあまり良くないものであろう。例外というものは存在するのであるが―…。その例外が存在する場合、家族は話した方がいい。親が自らの子を虐待するなどのような場合には―…。

 取り戻すことができないものはある。この十二年という月日で送るはずだった、家族としての時間だ。

 だが、そんな時間について考えたとしても、今さら、意味などない。未来には勝手に向かっていくが、現在に留まれず、過去には戻れないのだ。だから、瑠璃、ギーラン、イルーナは、これからの時において、失ったものとは違うが、幸せと感じられる瞬間を増やしていかないといけないということになる。そこには、ミランも加わるかもしれない。今は、まだわからないが―…。

 「よかったね、瑠璃。」

と、礼奈は言う。

 この言葉には、第九回戦の時、李章から瑠璃が実は松長家の血の繋がった子どもではないということを知り、驚いていたし、瑠璃が瑠璃自身の両親に会いたいと思っているのではないかと礼奈は思っていて、その瑠璃の両親に瑠璃が再会することができてよかったという気持ちが込められていた。

 「そうだね、礼奈。」

と、クローナは言う。

 クローナは、瑠璃との再会に感動していた。あくまでも、それは一緒に旅をしている友としての喜びであり、物語にあるような親子の再会物語を見た後のような感動であった。

 そして、しばらくした後、李章、礼奈、クローナ、ローは、部屋から出て行くのだった。

 それは、やっと会えた家族の再会というものを邪魔したくないという気持ちがあったからだ。

 瑠璃の泊っている部屋は、瑠璃、ギーラン、イルーナのみとなるのだった。

 しばらくの間、親子としての会話をするのだった。


 一方、外を出た李章、礼奈、クローナ、ローは、李章は自分の部屋へ戻り、礼奈は外の景色を眺めるために、別れることになる。

 そして、クローナとローがゆっくりと歩くのだった。

 「瑠璃が巻き込まれた研究所って、私が捕まった研究所、なの?」

と、クローナは、唐突にローにそのようなことを言うのだった。

 さすがのローも驚くのだった。ローは、クローナがある意味で事実をついていることに―…。そう、瑠璃が別の世界への実験に巻き込まれた研究所と、クローナが捕まって実験材料にされた研究所は同じ研究所であった。ただし、場所が違うのであるが―…。

 「そうじゃの。それは事実じゃ。儂らは、瑠璃の居場所を探すために、連れ去った者たちが何者かを調べていたのだ。その過程で、ある研究所の情報が入ってな。道徳的および倫理的に絶対に受け入れられないような実験をおこなう施設があるという情報があった。数年前から、その情報が少しずつこちらにも入るようになっていた。だけど、どこにあるかはわからなかった。それでも、あの研究所は、日に日に目立った行動をするようになっていたのだろう。一年前ぐらいに襲われた村の情報を半年前に知って、その研究所の場所がわかり、襲撃したというわけだ。人道に反した実験をしていたのでの~う。」

と、ローは言う。

 ローとしても、その研究所を襲撃した時は、胸くそ悪く思うものでしかなかった。人を人として扱っていないどころか、実験のためなら何でもしていいのではないかという考えの奴らが多すぎたのだ。

 ローとともに襲撃したギーランも同様の気持ちになっていた。

 「一年前ぐらいに襲われた村って、私が生まれ育った村のこと。」

と、クローナは、ローに向かって言う。

 クローナとしては、話しを聞きながら、自分の村が襲撃された時期と研究所から救出された時期が一致するからだ。

 「そうじゃ。」

と、ローは、あっさりとした感じで答える。

 ローとしても、ここで嘘を付いても意味がないと思っていたので、正直に答えるのだった。

 そのローの言葉を聞いたクローナは、

 「そうか。わかった。」

と、感謝の念を抱きながら言う。

 たとえ、おまけで助けられたとしても、助けられたことに関しては、事実である以上、感謝を感じないということはなく、感謝の念がクローナの今の感情の中で多く占められているのだ。

 そして、クローナは、続けて、

 「ありがとう。」

と、涙を流しながら言うのだった。

 辛かったあの半年を忘れて、幸せに生きられることにも感謝して―…。自分を救ってくれて―…。

 ローは、クローナを傍に寄り添いながら、泣き終わるの待つのだった。

 (ああいうところに半年もいて、よく生きた。唯一の生き残りじゃったからの~う。そして、あの日、儂は、情報を手に入れることができなかった。別の世界へ行く方法に関しては、頭の中に完全に記憶することができ、儂なりの修正で可能としたが、その実験に瑠璃が巻き込まれていたとは、儂もあの時知ることができなかった。もう、解決したことだから良いことであるが―…。)

と、ローは心の中で考えるのだった。

 続けて、ローは、

 (これからのことじゃ。ベルグ、その奥にいるあ奴を倒すことだ。儂が定めた人間を使って―…。)

と。

 ローは、()()()、自らの代わりに戦う者を選び、送ろうとするのだった。


 場所は、瑠璃の部屋。

 李章、礼奈、クローナ、ローなどが部屋から出ていった。

 ゆえに、残っているのは、瑠璃、ギーラン、イルーナである。

 ここには、家族が揃っている。だけど、一方で、まだ眠っているミランがいないので、家族が完全には揃っていないのだけれど―…。

 「改めて、向こうの世界では、良い両親に恵まれたということだな。」

と、ギーランは、照れながら言う。

 瑠璃が生まれる時、および生まれた後のような(はしゃ)ぎようは一切なかった。なぜなら、連れ去られた後、再会すらできないと思っていた娘が、異なる世界で実際に再会していたのだ。それも、ローが警戒している人物が現実世界で起こした事件の中で―…。

 人の人生は、時に不思議な動きをするというものだ。それは時として、二度と会えないもの、会うことのないものに巡り会わせるのだった。

 今の瑠璃、ギーラン、イルーナのように―…。

 ゆえに、奇跡が起こって、その奇跡というものを実感することができずに、かえって、ギーランという人間の部分をうまく発揮させていなかったのだ。それが、ある意味、印象の良さには繋がっていた。

 もし、あのような性格を見せていたら、今頃、瑠璃もイルーナもかなりドン引きをしていたことであろう。

 「うん、一応?」

と、瑠璃は、疑問に思いながら返事をするのだった。

 瑠璃としては、結構厳しいことも言われていたり、瑠璃にとって嫌なことも言われていたりするので、ギーランの言う、良い両親に恵まれたということに関しては、それに頷いていいのか、よくないのか判断をすることは難しいものでしかなかった。

 「なぜ、そこで疑問形になるのかはわからないが、記憶を見た感じでは、実の子と同じように育てられていたようだが―…。」

と、ギーランは、ローによって、見た瑠璃の過去についてのことを踏まえて言う。

 それは、自分の血の繋がっていない子が実の子と同じように育てられるのはほとんどないとギーランが感じているからだ。ゆえに、このような奇跡があったこと自体、そこに当たり、ちゃんと育てられたと思えば、恵まれているとさえ感じたのだ。

 瑠璃には、まだそのような気持ちというのはわかりずらいものでしかないが―…。

 「瑠璃!! 時間ができたのなら、育ててもらった両親に会いに行って、挨拶をしておかない、と―…。」

と、イルーナが言い始める。

 イルーナとしては、自分のお腹を痛めて生んだ子であり、連れ去られて会うことのできなかった娘をちゃんと育ててくれたのだから、ちゃんと挨拶してお礼をしないといけない。そうしないと、自分たちの方が失礼になるし、瑠璃を大切にしてくれたことに感謝しないといけない。

 だけど、イルーナはこの時、大事なことが抜け落ちてしまっていた。仮に、時間ができたとしても、瑠璃が育てられたのは別の世界であり、そこへ行く方法は、ローの力を借りなければ意味のないことだ。

 それでも、ローは、イルーナの願いに対しては、力を貸してくれることであろう。

 現在、現実世界は、石化というベルグがおこなっている実験のために、行くべき時ではないが―…。

 「いや、今は―…。」

と、瑠璃は、困り顔をする。

 (異世界があることは知られていないから、急に、行くと変なことにしかなりかねないし、私の恥ずかしいところも勢いで話されてしまうかも―…。それは嫌だ。)

と、瑠璃は、心の中で思う。

 それは、現実世界ではこの瑠璃が生まれた異世界のことは知られていないのである。現時点で、現実世界に人類が存在しているのは地球という星だけでしかない。ゆえに、別の世界が存在し、発見されたとなったら、どれだけ世間が大騒ぎするのか、想像もつかない。だけど、とんでもないことになるのは事実だ。

 そのような自分が関わっているとなると、世間の注目を集めてしまい、必要以上に目立ってしまうものになる。瑠璃としては、別の世界が発見されて有名になることに関しては、嬉しいことかもしれないが、そのためのリスクと嫌な予感を感じると、決して嬉しいばかりのことではないと思えてしまうのだ。

 さらに、瑠璃にとってこれが一番嫌なことであった。もし、瑠璃が血の繋がった両親と育ての親に会ってみよう。そうなると、必ず育ての親、特に母親の方、美陽が絶対に瑠璃の恥ずかしい過去を言いかねない。そのようなことが瑠璃の頭に通り過ぎるのである。

 恥ずかしい過去を知られる、特に、ギーランに知られるのは一番嫌だし、そのようなことになってしまえば、一生そのネタでいじられそうだと感じた。実際、ギーランは、瑠璃の恥ずかしい過去に関しては、笑って受け流してくれるだろうし、ネタにはしないだろう。

 だけど、李章が好きだということを言うと、絶対に、暴走してしまい、李章が大変な目に合うの事実であろう。いや、確実にそうなる。

 娘を嫁にやるのは、嫌という感じで―…。

 「イルーナ、今は、行ける時ではない。この世界の人間のせいで、大変なことになっている。」

と、ギーランは、イルーナに向かって言う。

 そして、同時に、ギーランは、これ以上は言わない方がいいという意味を含んでいた。

 そのギーランの言葉を聞いたイルーナは、ギーランの意図がわかったのだろうか、それ以上に瑠璃に言うことはなかった。

 この後、夕食の時間になるまで、いなかった時間を埋めるように、他愛のない会話していくのであった。


第96話-15 自分の真実を知る時 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


親子の関係というものに正解というものはないから、今回の文章で書いていることが完全な意味での正解だと私自身思っていません。この世界は、誰もがはっきりとした答えという軸を定めることで見渡すことができるが、人が完全にこの世界を知ることができないがゆえに、その軸は一時的なものにしかならないし、普遍的なものにはならない。完全にという意味で―…。普遍性高いか低いかは言えるかもしれないけど―…。

まあ、難しいこと書いていますが、結局は、家族関係に正解はないが、付け加えるのなら間違いは存在するということです。

私自身、家族関係というものの答えは完全にはわかりきってはいないでしょうし、一生わからないかもしれないものかもしれない。

しんみりとしたことを書いてしまいましたが、そろそろ第96話が完成しそうな気がします。ただ、次回の投稿かどうかまだ確定していません。


次回の投稿に関しては、まだ次回の投稿が完成していません。ほぼ完成した後、この部分で報告すると思います。

長くなってしまいましたが、では―…。


2021年7月31日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2021年8月1日頃を予定しています。

第96話は次回では完成しそうにありません。

では―…。

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