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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
206/747

第96話-13 自分の真実を知る時

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、読んでみてください。

アドレスは、以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、連れ去れたイルーナとギーランの第二子は、研究所の中で別の世界へ渡航のための実験にされようとするのだった。

 とある研究所。

 別の世界への渡航がおこなわれている実験室。

 その実験室は、物々しい雰囲気に包まれていた。

 これからおこなわれる実験は、別の世界へと人を送ることは可能であるかどうかということを証明するのだ。

 (やっと、ここまで来た。この研究所での最後の実験となるが、それでも―…、この実験に成功すれば、出資者からの出資も多くなるのは間違いない。)

と、ミンゼナは心の中で思うのだった。

 ミンゼナとしては、この実験で別の世界へと人を送ることができ、別の場所で、同様の実験をおこない、戻すことができるのであれば―…、確実に異世界渡航という大利益になるかもしれないことが現実にこの異世界で可能となるのだ。

 だけど、この研究所のこの設備のままでやれれば一番良いのであるが、そういうわけにもいかない。今回、実験に使用する赤ちゃんを連れ去ったその赤ちゃんの周りの人物が実力者であり、この研究所への手掛かりを掴まれる可能性がある以上、とにかく逃げておくことが重要だ。必要な情報をすべて持ち、研究所を破壊したうえで―…。

 一方で、ローゼは、

 (これで一歩、私の楽園(ユートピア)へ行くことの目標に近づく。)

と、心の中で歓喜する。

 ローゼという人物が、この異世界に対して、生きづらさというものを感じていて、別の世界が存在すると分かっている以上、そうなるのは不思議なことではない。

 そして、他の研究室の研究員たちも固唾を呑んで見守る。

 赤ちゃんを抱えたミンゼナは、その赤ちゃんを実験の装置の台の上に乗せる。その後、ミンゼナは離れ、少しだけ距離をとる。ローゼの近くへ―…、と。

 「それでは、別の世界への有人実験を開始します。みなさん装置の方から離れてください。」

と、実験装置のスイッチを押す人が言うと、研究員全員が研究室の中で、実験装置から距離をとるのである。

 その装置によって、実験に巻き込まれないようにするために―…。

 全員が実験装置から離れたのを確認すると、スイッチを押す人が、装置が起動するスイッチを押す。

 そうすると、実験装置から、光が溢れ出し、実験装置の台の上にいた赤ちゃんは、その溢れ出した光に巻き込まれ、飲み込まれるのである。

 この光景を、この実験室にいる者たちは、口に出すことなく見守る。それほどに、この光景というものは、人から言葉にするというものを一時的に奪うほどに、人を引き付けるということができるものであった。


 光は数分ほどで収まる。

 しだいに光が小さくなり、その場所に赤ちゃんはいなかった。

 そう、実験装置の台の上にいた赤ちゃんはいなくなってしまっていたのだ。

 そして、赤ちゃんの居場所を確認しようとする。

 観測装置で、別の世界の観測をおこない、赤ちゃんがどこにいるのかを確認する。そのための糸もしっかりと付けている。

 「見つかりません―…。糸が切れています。」

と、研究員の一人が言う。

 そこにあったのは、絶望でしかない。

 この糸は、命綱のようなものだ。実際に命綱が切られると死んでしまうというものではなく、実験の結果が不明ということになるものだ。

 まさに、それは、この研究室にとっての一つの死でしかない。終わりだ。

 誰もが、言葉にできなくなる。

 失ったものは、大きかった。

 ここからは、想像が付くだろう。

 ミンゼナや研究室の研究者は悲しみの中、研究所を移動せざるを得ず、偶然生み出された別の世界へ送るための装置は、もう二度と彼らの間では作ることができなかった。出資者がそのことで出資してもらえず、別の世界への渡航という夢は捨てられてしまったのだ。元々、長期的に投資をしようと思っていなかったことが、出資者たちにそのような行動をとらせたのである。

 特に、その絶望が酷かったのは、ローゼであり、彼はこの世界に絶望し、この数年後に自らの命を断つのであった。

 その後、ミンゼナは、高齢のために、研究所の運営が困難となり、引退し、一切、介入することはなくなった。

 そのため、ミンゼナの後を引き継いだのは、アントスであった。この頃になると、アントスの精神は病んでいた。人としての倫理観および道徳的観念を完全に消失していて、自分の目的および好奇心に飲み込まれてしまっていたのだ。

 理由は、彼は、自由に自分の言う通りに実験を進めたり、かつ、出資者の一部に途轍もなく、危険で、自分のことしか考えず、他者の苦しみを理解することのできない冷徹すぎる人物たちによって、意のままに操られる存在となってしまっていた。

 だから、実際に研究所を握っていたのは、ミンゼナの裏の組織ではなく、その敵対していたリース王国の外で、裏の世界で最大になっていた勢力だ。そいつらの私的な研究所とかしていたのだ。

 物語は、ここで少しだけ現実世界へと行くことにする。


 結局、実験装置によって別の世界へと送られた赤ちゃんはどうなったのか。

 その疑問は、途轍もなく簡単なことだ。

 本当に、別の世界へ、現実世界へと送られていたのだ。

 赤ちゃんが目覚めて見た景色は、黒。

 恐怖があったのかわからない。だけど、周りに自分が生まれてきたことを受け入れてくれたものは誰一人としていなかった。

 そのため、

 「オギャ――、オギャ―――。」

と、泣き始めるのだった。

 そして、階段を上る音がする。人数からして二人で、そのどちらもが大人であると考えられる。

 その足音は、赤ちゃんのいる方へと向かって来る。

 足音がしばらくすると、なくなる。そう、赤ちゃんのいる場所の近くに来たのだろう。しばらくして、何かを開ける音がした。

 そして、そこには、二人の男女が入ってくる。外の明かりがこの場所にも漏れ入ってくるからこそ、分かったのだ。

 「赤ん坊―…。」

と、男性の方が言う。

 この男性とは、松長隆道のことだ。そう、ここは、松長家が引っ越して来た日であり、その日に松長家の夫婦によって、赤ちゃんが発見された時になのである。

 つまり、この赤ちゃんは松長瑠璃のことであり、彼女は、本当はローのいる世界の生まれであり、別の世界への渡航を目論む研究所の実験に巻き込まれ、現実世界へと来たギーランとイルーナの娘であり、ミランの妹である。


 そして、時は進む。

 第九回戦が終了した日へと戻る。

 場所は、瑠璃が泊っている部屋。

 「そういうことだったのか―…。だから、いくら探しても手掛かりを掴みにくかったし、さらに、潰した研究所がそのことに関係していたなんて―…。」

と、ギーランは言う。

 ギーランとしては、今までずっと、行方不明となった第二子を探していたけど、手掛かりを掴んだとしても、その情報のすべては嘘情報でしかなく、実際に見つけることができなかった。ローともに旅をしながら―…。自分の家族と離れて―…。

 だからこそ、このような悲しみの時代が終わるということだからこそ、そう、この時の悲しみを忘れさせるほどの出来事が今、ここで起こっているのだ。

 いたのだ。そう、いたのだ。

 「俺の娘は―…、ちゃんと生きているんだ。今―…、俺の目の前にいるんだ。」

と、ギーランは、空に、いや、何もない向こうへと叫ぶかのように言う。

 ギーランの目からは、涙が溢れ、悲しい時代を洗い流し、これからの幸せの時代を迎えるのだ。さあ、存分に泣くがいい。ギーラン、お前の涙こそが祝福の雨なのだ。

 そして、ギーランは、しばらくの間、膝を床につけ、ベットの毛布に涙を落とすのであった。

 イルーナも、顔を抑え、泣くのだった。自分達のなくした大切な家族は、ちゃんと自分の前に姿を現してくれたのだ。ここに触れられるという思いを抱き―…。涙を落としながらも思う。

 (後は、ちゃんと瑠璃(あなた)とお話ができる日を―…。)

と、心の中でイルーナは、思うのだった。

 「そういうことじゃったのか。これでギーランの冒険の一つが終わったのか。良かった。」

と、ローは、ギーランとイルーナを見て、二人の悲しみが終わったことに喜びを感じ、感動するのだった。

 二人の思いが報われたのだ、と。

 李章は、

 (瑠璃さんの父親が、現実世界(せかい)が石化した時に石化から助けられて、この世界に送った人でした―…。よかったです、瑠璃さん。)

と、心の中で、嬉しく思うのだった。

 瑠璃がこの時、眠っていて、瑠璃の血の繋がった両親と再会できていたことを知らない状態であったが―…。それでも、目を覚ませばその事実はわかるだろうから―…。悲しく思わず、ただ、ただ、嬉しく思うのが良いと考えた。

 この日、ギーランとイルーナは、血の繋がった第二子と生まれた日以来の再会となるのであった。

 周囲は、ギーランとイルーナを祝福することになるのだった。本当の祝福会というものは、後日になるのであるが―…。


 そして、瑠璃がイルーナに抱きしめられる時に戻る。

 瑠璃は気まずい雰囲気であった。

 ギーランが、一回部屋に来たのであるが、話をするために呼びに行ったので、今はこの部屋にいない。

 現在、瑠璃はイルーナと同じ部屋にいるのだった。

 瑠璃にとって、血の繋がった親子であるが、それを瑠璃の方は理解していないため、他人だと思っている。だけど、なぜか、落ち着く感じはある。それでも、赤の他人だと思っているので、とにかくどうしようかと考えるのである。

 (ギーランさんの知り合いだということだから―…。でも、とにかく、離れてもらわないと―…。試合の後だったら汗臭いし、そういうの他人に嗅がれるのは―…。)

と、瑠璃は、心の中で、イルーナの抱きしめから離れたがっていた。

 自らの体臭がイルーナにとって、不快に感じさせるかもしれないと思うし、他人に嗅がれて喜んでしまうということも瑠璃の性格にはないし、他人に匂いを嗅がれて、変態的な人に付きまとわられるのも嫌だと感じていた。断固として嫌だと思いながら―…。

 そして、瑠璃は、

 「あの~、すみません。抱き着くのをやめていただけると助かります。」

と、言う。

 瑠璃としては、とにかくイルーナの抱き着きから逃れることが優先事項となっていた。とにかく、言わないと、伝えないと、イルーナが話してくれないのではないかと、瑠璃は感じていた。

 「ごめん。」

と、しょんぼりしながらイルーナは、瑠璃への抱き着くのをやめ、離れるのである。

 イルーナとしては、娘との生まれた日から再会の翌日、やっと会話することができたことに感動してもいるが、その何言(なんこと)目が、抱き着くのをやめてほしいということであった。折角、再会できた娘にそんなことを言われたので、ショックを受けるのだった。

 (抱き着くのを止めて欲しいとは言うべきじゃなかったのかな~。申し訳ないことをしたかも―…。)

と、瑠璃の方が申し訳なく思うのだった。

 瑠璃としても場所、雰囲気ぐらいはわかるけど―…。それでも、今は、とにかく重要なことを知らないといけなかった。

 「あの~。すみませ~ん。」

と、瑠璃は尋ねる。

 「抱きしめるのがダメなら、私のことは今からお母さんと呼んで―…。」

と、イルーナは言うのだった。

 イルーナとしては、実の娘に抱き着くのを拒否されたことに対して、ショックではあるが、それでも、「お母さん」と呼ばれるのだけはさせないといけないと思ったのだ。そこだけは、譲れないものがあった。

 折角、お腹を痛めて生んだ子なのだから、家族としての愛情のためにも、そう呼ばせたいと思ったのだ。

 つまり、イルーナは、瑠璃との間の距離の取り方がわかっていないのだ。生まれた日に連れ去られ、それ以後、今、この時において再会することはできていないのだ。さらに、一生会えないのではないかと心の奥底で思ってしまうほどであった。何度もそれを否定しようとした。そんなことが有り得てはならないと胸に抱きながら―…。

 だけど、今、こうして会えているのだ。まるで、これは奇跡。奇跡と言わずして何といえばいいのか。

 「いや、何であなたが私のお母さんになるのですか?」

と、瑠璃は、初めて会うイルーナに対して、真面目に聞くのである。

 そりゃそうだろう。瑠璃が物心を持って、血の繋がった実の母親と会っていないのだ。会えるわけがなかったのだ。現実世界における石化現象、いや、ベルグが現実世界に行って人を石化するということを起こさなければ―…。

 それに、赤ちゃんの時に会っていたとしても、それを完璧に言葉にできるほどに認識して覚えているわけじゃないのだから―…。瑠璃は、実の母親のことなんて、わかるわけない。どんなに、初めて会ったと思えない感覚を抱いたとしても―…。

 この時、瑠璃の部屋に入る扉が開き、ギーランがローと李章、礼奈、クローナを伴って、部屋の中に入ってくるのだった。

 「瑠璃、お主に大事な話がある。それは、お主の血の繋がった両親と姉についてだ。」

と、ローは言う。

 そして、瑠璃は、李章たちが体験したような映像を見ることで、自分の生まれたその日からの大まかな真実を知るのであった。


第96話-14 自分の真実を知る時 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


確実に…とは言えないのですが、そろそろ第96話が完成するのではないかと思っています。完成させたい。ミランを登場させて、動かせれば―…。

その後、最終回戦へと行ける可能性はあると思います。

よし、頑張っていきたいと思います。無理をしない程度に―…。

次回の投稿に関しては、まだ完成していないので、ほぼ完成し次第、この部分で報告したいと思います。

では―…。


2021年7月29日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2021年7月30日頃を予定しています。

では―…。


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