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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第96話-12 自分の真実を知る時

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、読んでみてください。

アドレスは以下となっております。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝は以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、イルーナとギーランの第二子が連れ去られ、彼女を取り戻そうとするが、結局、自爆されて手がかりを失うのだった。

 ローは見ていた。

 白の水晶の中にある爆風を―…。

 (自害しおって―…。裏の人間の可能性が高いか。これでイルーナとギーランの娘の居場所を聞けやしない。相手にしてやられた。探っていくしかない。さっさと病院の中へ戻るか。ギーランが何か掴んでいるかもしれない。)

と、ローは心の中で言いながら、病院へと戻る。

 このような爆発だ。騒ぎならないという方が不可能に近いであろう。

 あまりこのような所で時間を取られたくないと、ローは思うのだった。

 赤黒い水晶には、追跡できる機能など存在しないのだから―…。

 もう、ローからギーランとイルーナの第二子を連れ去った人物を追う方法は存在しない。頼れるのは、今のところギーランの情報しかない。

 つまり、手詰まりということになろう。

 人の幸せなど簡単に奪われてしまうし、善人に良いことが返ってくるわけではない。世の中とはそういうものだ。悪人が得をすることもあるし、善人が損をすることもある。だけど、忘れてはならない。悪人がすべてにおいて得をするわけでもないし、善人がすべてにおいて損をすることがあるわけではない。善と悪は、人の主観的なものにすぎないのだから―…。

 ローは、そのことを知っているわけではないが、ローとしては、悔しい気持ちというものがある。確実に―…、だ。

 そして、同時に、自爆した人間が裏の仕事に就いていた可能性を理解することができる。ローも似たような状況に遭遇したことが過去に何度もある。裏の人間というのは、確実とはいえないが、多くの場合、失敗した時に、自らの存在というものからその仕事を任せた人間にたどり着かないようにするために、情報を与えないようにするのだ。

 そう、自らの命をたつことと、後を残さないようにすることだ。今のような自爆も一つの手段であろう。本当の意味で人という生き物が危険であるという証拠を見せつけるかのように―…。

 ローは、歩き始め、病院の中へと向かうのだった。

 (本当に何なのじゃ。ベルグにしては、下手すぎるし、その後ろにいる奴にして、使い方が下手だ。あいつらのところには、今の幻の属性の天成獣を扱う者よりも強い奴にやらせるだろう。それに、彼らは赤子を連れ去って何の得がある。何をしようとしているのか。)

と、ローは、心の中である人物、いや、存在を思い浮かべる。

 だけど、ローはその存在がイルーナとギーランの第二子を連れ去るということに何か意味あるのだろうか、と疑問に思う。そりゃそうだ。ローとて、その存在のことを知っているし、考え方も知っている。ゆえに、このような小さな真似をするとは思えない。もしも、狙うのなら、堂々とローを狙ってくるだろうし、ロー以外であっても、しっかりとねじ伏せてくるだろう。それに、その存在が従える部下の末端になればわからないが、側近クラスはこんなことにはならないはずだ。

 そうなってくると、別の可能性を浮かべるべきだろう。現に、これを実行したのは、ベルグとは関係のないところなのだから―…。

 ローは、この間、疑問に思いながらも、別の可能性を思い浮かばせることはできなかった。


 森の中。

 あたりには、爆煙があがっていた。

 爆発の中心点から近くにある木は完全に燃えてしまっているだろうし、葉なんて存在すらしていないだろう。

 さらに、爆発の中心点を中心として、二~三メートルほどの半径があり、数十センチメートルほどの中央に向かって深くなっていく、穴のようなものがあるだろう。

 そこに死体はない。あるわけがないだろう。爆発によって死体が残らないほどにしているのだから―…。

 死体すらも情報になるということがあるのだから―…。死体から記憶を探られてしまえば、たどり着かれる可能性が存在している以上―…。

 ギーランは、そこから百メートルほど離れた位置にいた。

 それは、爆発に巻き込まれないようにするために、自らの持っている武器に宿っている天成獣の力を借りて、光のような速さで逃げたのだから―…。

 ギーランは、眺めるのだった。爆発のあった方向を―…。

 (かなり、規模のでかい爆発だったな。町の外であったのが幸いしたな。町の中では、俺じゃどうしようもないし、被害が確実に出ていた。ここにも長くいることはできない。煙がおさまってきたから、爆発地点へと戻って確かめるか。でも、手掛かりというのはなくなっていそうだな。本当に、クソッ。)

と、ギーランは、怒りを心の中で爆発させるのだった。

 それもそうだろう。ギーランにとって、何度も言うが、イルーナとの間に生まれた子どもは天使のような存在なのだ。彼のイルーナに対する愛情と家族という名の幸せは、たとえ、世界というものが滅びようとも大切にしたいほどにかけがえのないものなのだ。

 その幸せを奪われるということが何を意味するのかは説明する必要は、今更ない。

 ギーランは、爆発のあった場所へと戻る。

 爆発によって発生して煙はすでにおさまっていた。

 (……チッ!!)

と、ギーランは、心の中で舌打ちをする。

 そりゃそうだ。爆発の後には何もなかったのだから―…。

 ギーランの感情は、溜まり溜まって溢れ出す。

 「クソ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。」

と、叫び声というものに変わって―…。

 この出来事は残酷だ。一つの家族の幸せは、一つ研究所の望みによって壊されたのだから―…。


 研究所の中。

 そして、赤ちゃんを連れ去った人物から渡された人物は、その中のミンゼナの部屋へと向かう。

 (誰にも後をつけられなかった。この任務は成功だ。モウスさんたちは大丈夫だろうか。)

と、自らの同僚について、心の中で心配するのだった。

 そして、何とか、自分の正体やら赤ちゃんを抱えていることがバレずに、ミンゼナのいる所長室に辿り着くことができた。

 ノックをして、所長室へと入る。

 「カンゼルか。どうした。」

と、所長室の中にいたミンゼナが入ってきた、カンゼルという人物に向かって言う。

 カンゼルは、モウスによって、赤ちゃんの連れ去りという行動では、もしもの時のために対処するための要因という役目を与えられていた。その中で、赤ちゃん連れ去りに向かって行ったモウス達を待つという暇な時間を過ごしていると、急にモウスがやってきて、赤ちゃんを預けてきて、カンゼルが研究所の方向へ、モウスはもう一度戻って、追ってに対処しようとした。

 結局は、モウスの時間稼ぎによって、何事もなく、モウスが連れ去った赤ちゃんを渡されたカンゼルは、研究所へと逃げられたということだ。

 「例の赤子を連れ去ることができました。」

と、カンゼルは報告する。

 ミンゼナは、何となく理解することができた。モウスに何かがあったということだろう。戻ってくる可能性はわからないということも理解する。

 「そうか。カンゼル、他の人物がどうなったか確認をお願いしたい。ただし、バレそうなのであれば、すぐに引き返してこい。」

と、ミンゼナは、カンゼルに新たな命令を下す。

 それは、モウスや他の赤ちゃん連れ去りに参加したメンバーの安否と状況を確認をしろというものであった。

 「はい、かしこまりました。」

と、カンゼルは言うと、すぐに任務に行くために、所長室を出ていくのであった。

 (モウスが帰ってこないとなると、この渡された赤子の周りは、相当の猛者ということになるか。私としたことが狙う相手を間違えたか。だが、赤子は手に入った、すぐに実験といこう。こういうのは、時間が経てば経つほど追っての方も証拠を掴んでくる可能性が高い。)

と、ミンゼナは、心の中で思う。

 ミンゼナは、モウスが赤ちゃんを連れて帰ってきていないということはかなりの強敵もしくは邪魔にあったということになる。それは、赤ちゃんの関係者は強い実力者がいるということになる。場合によって、モウス以上の実力者が―…。

 実際、モウスが戻っていない以上、そういうことであるのは確定的だ。現実は、すでにこの時間になる頃には、ギーランに追い詰められて、自爆を選択しているのであるが―…。この時の、ミンゼナが知るはずもなかろう。現場の情報を得ることができるわけではないのに―…。

 それでも、最悪の事を想定するのは当たり前のことだ。ここを、その赤ちゃんの関係者に突き止められた場合、ここをすぐに襲ってくるのは時間の問題だ。そうなってくると、装置の大きさや移動の関係上、すぐに研究を進めていくのが妥当ということだろう。

 ゆえに、ミンゼナは赤ちゃんを抱え、別の世界に関する研究をしている研究室へと向かうのだった。


 研究室。

 この研究室では、別の世界への渡航のための研究をおこなっていた。

 ミンゼナが入ってくると、研究している研究員たちは驚くのだった。

 ミンゼナが赤ちゃんを抱えていたのだから―…。

 「私が、赤子を抱えていたら、驚くのか。まあ、いい。それよりも、ローゼはいるのか。」

と、ミンゼナは、この研究室の室長であるローゼがいるのかをこの研究室にいる者たちに問う。

 「いますよ~、ミンゼナの旦那。今日は何の用ですか。」

と、ふら~と、ローゼがミンゼナの前に登場する。

 ローゼは、書類整理という苦痛の事務作業に追われていた。事務作業というものは、研究をしている者にとって、研究時間を奪っていく邪魔者なのである。だけど、このようなものがないと公的とはいえないまでも、人が暮らす世の中で、証明、証拠という部分で曖昧になり、いざ揉め事や紛争が起こった場合に負けてしまうことがあるのだ。

 そういうことは、ローゼにも理解できないことではないが、ここまで煩わしいと嫌になるというものだ。それでも、ミンゼナが呼んでいるということは何かあるのだと思い、少しだけウキウキするのだ。理由としては、事務作業というものが少しでも逃れられるということができるからだ。しかし、それは後回しにするということにしかならないのだが―…。

 「ああ、実験に使うための人を捕まえてきた。俺が抱えている赤ん坊だ。こいつを別の世界に送ればいい。そして、この研究所は捨てる。この赤子の関係者は、実力者である可能性が高く、ここを突き止める可能性がある。これは俺のミスだ。もしもの場合に備えての新たな研究場所に関しては、確保している。予定より早まるが…な。」

と、ミンゼナは、実験後に別の場所へと移ることを説明する。

 それは、ミンゼナがこの研究室へと移動しながら、赤ちゃんの関係者がどうやって動くかというものを考えていたからだ。赤ちゃんはその間、泣きはしなかった。赤ちゃんに対して、嫌いも好きという感情もないミンゼナにとっては、泣かれてもただうざいぐらいと思わないだろうし、しかし、あやす方法を知っていたりする。ミンゼナという人物は、過去に普通の人以上の苦労をしており、赤ちゃんをあやさないといけないこともあったというのであるから―…。

 まあ、こんなことを言ったとしても、ここでは全然関係ないことでしかないが―…。それでも、ミンゼナという人物の経験に関しては、かなりといっていいほどにあり、あまり動揺するということがないということだ。ゆえに、今、何をするのが一番良いかがわかるのだ。

 ここで一番自分たちにとって大切なことは、研究所の場所を赤ちゃんの関係者、つまり、ローやギーラン達に知られないことと、赤ちゃんを早め実験のために使ったほうが良いということだ。

 ミンゼナの話を聞いた、研究所員たちは、驚きながらも、ミンゼナの命に逆らうということはしない。この研究所を止めたとして、自分たちを研究所員として雇ってくれる場所は、ほとんどなく、見つからない方が当たり前と思えるほどと経験から学んでいる。

 だから、別の世界への渡航に関する人を使っての研究の準備を急ピッチで進めていくのであった。


 病院の中。

 イルーナのいる病室。

 そこには、イルーナとミランがいた。

 ローがこの病室に戻ってくる。その顔は優れたものではない。

 その表情が、イルーナにどういう結果になったんかを悟らせるには十分であった。

 (……………。)

 ゆえに、言葉にすることができなかった。感情というものの爆発が表面張力で一時的に防がれているように―…。いや、失ったものという領域に穴があき、それを感情によって埋め尽くそうとしているからであろう。

 感情というものが一切、消えかかってしまったのは―…。

 「すまぬ。」

と、ローは頭を下げながら、言う。

 ローとしても期待できるのは、ギーランの情報のみだ。そこに赤ちゃんを連れ戻すための手掛かりがなければ、どうにもならない。

 そう、希望は潰えるのだ。失ったものを取り戻すことはほとんどできないと言ってもいい。この世界に存在し続けるのであれば可能であろう。だけど、この世界からなくなってしまえば、どうすることもできない。手に入れることができるということは、失うということを背負うことなのだから―…。

 そんななか、ギーランは戻って来る。

 自らの感情を押し殺して―…。押し殺さなければ、今にも怒りによって狂ってしまいそうだと感じたから―…。だけど、溜め込んだとしても狂うことには違いない。溜まるということが実際におこっている以上、その溜めている感情を出すことがないために、溢れ出て、大きな火山噴火のごとく、周囲と軋轢が生まれてしまうほどになってしまう可能性が存在する。

 ただ、ギーランは、一言を言う。

 「ごめん。」

と。

 「うん、ギーラン(あなた)は悪くない。」

と、イルーナは、ただそれしか言うことができなかった。

 この時、ミランは、両親の気持ちを理解することができていた。両親が悲しそうにしているのを―…。さらに、家でイルーナが泣いているのを見て、確信にいたることになる。妹が連れ去られるということがなければ、家族がこんなことにはならなかった。

 だから、妹の存在を憎く思うことの原因となったのだ。この日がミランによって歪みが生じ始める日だったのである。


第96話-13 自分の真実を知る時 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


そろそろ、重要な伏線の一つを次回あたりで回収できると思います。長かったですが―…。

次回の投稿分に関しては、まだ仕上がっていないので、次回の投稿分がほぼ完成した時に、この部分で詳細に投稿日を報告すると思います。

では―…。


2021年7月26日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は2021年7月27日頃を予定しています。

では―…。

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