第96話-11 自分の真実を知る時
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿しています。
興味のある方は、読んでみてください。
アドレスは、以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、イルーナとギーランの第二子が連れ去られるのであった。それをギーランが追いかけるが―…。一方、病院前でもローが戦っていた。
ギーランは駆ける。
自らの幸せの未来のために―…。
(向かってきた。やることはわかりきっている。ここはうまく防ぐだけだ。たとえ、この身が滅びようとも―…。)
と、モウスは、心の中で、物語なんかにありそうな言葉も含めて言う。
モウスは、ギーランが攻めてくるということぐらいは予測がついていた。
そりゃそうだろう。モウスは、ギーランが自らが連れ去った赤ん坊を抱えている人物に追いつくためにとらなければならない選択肢がモウスを攻めるということになるようにしたのだから―…。
時間稼ぎを成功させるための方法の一つとして―…。迂闊にモウスが攻めて、隙をつくらないために―…。
ギーランは、自らの武器である大剣を構える。
そこに、白いものを纏わせる。白い光っているものを―…。
ギーランは、モウスへと自らの一撃を与えられる場所に到達し、大剣で相手を斬る。
だけど、これも幻だった。
斬った時に、赤が大量になるということはなく、ぐにゃっと煙が上空へと昇るような感じになり、しだいに消失していくのであった。
(幻!! 本当に、トリッキー系の属性との戦いはかなりややこしいからあまり好きじゃない。とにかく、追うしかない。どの方向へ向かった!!!)
と、ギーランは、焦る。
すでに、焦りは、ギーランの心の中に収まるほどではなくなり、表情に溢れ出していた。ギーラン自身は、連れ去られた自らの第二子を取り返そうとするために、そのことに気づきもしない。
そして、ギーランの目の前に一人の人物が姿を現わす。その人物は、すぐに町の外に向かって、逃げ出すのであった。
(あいつが俺の娘を抱えているかもしれない。捕まえてやる。)
と、ギーランは、冷静さを完全になくし、逃げ出す人物を追うのだった。
全身を白いで覆われた人物を―…。その姿勢は両手を見えないようにしていて―…。
一方、病院のすぐ外。
戦闘はすでに終わっていた。
「はあ…はあ…はあ。………本当に、歳をとるのは嫌じゃの~う。」
と、ローは言う。
この戦闘の最終的な勝利者は、魔術師ローであった。
だけど、ローも体力の衰えていてもおかしくないと考えられる見た目をしているし、身体能力は完全に老人そのものでしかない。ゆえに、すぐに疲れるし、長い間、戦いをすることはあまり得意ではない。実力では、この世界において最強ともいえるのだが―…。短時間においては確実に―…。
「折角なら、もっとこの能力を若い時に手に入れておきたかった。本当に、不都合じゃの~う。手に入れる方法も嫌じゃが、何が手に入るかは運しだいというのもの~う。」
と、独り言をついつい呟いてしまうのであった。
(では、拘束するとするかの~う。)
と、ローが心の中で言い出すと、倒した敵に魔法で、手錠をかけるのであった。
この手錠は、他の人から壊すことはよっぽどの実力者でなくては不可能なほどの強度だ。それ以外の方法で解錠することができるのは、ロー自身が解くと宣言することしか方法はない。
ローは、手錠をした白い服に全身が覆われている人物のうち一人のところへと向かっていくのであった。
なぜ、向かって行くのか? そんな理由はとても簡単だ。その一人が意識を取り戻すような動きをしているからだ。瞼をピクッ、ピクッ、とさせているのだ。まるで、目を覚ますかのように―…。
「ほ~う。では、聞くがの~う。お主らは何の目的で、赤子を連れ去ろうとした。言ってみい。」
と、ローは、冷静に威圧をかけるかのように言う。
ローとしても、全身が白い服で覆われている人物たちに対して、怒りというものが存在していた。その怒りは、本能のままに解放してしまえば、この者たちは、ここで血の一滴すら残すことなく、この世界から消え去っていることであろう。それも、比喩という表現ではなく、現実にそうなってしまうのだ。
魔術師ローという、この異世界におけるすべて生き物の頂点に君臨していると過言ではないほどの実力を有しているのだから―…。
その恐怖をまだ、意識を取り戻そうとしている人物には理解できないだろう。まだ、自らの状況がどうなっているのかを完全にわかっていないのだから―…。
そう、最後の記憶が魔術師ローが何かをして自らを意識を失わせる、いや、その人物を含めた白い服で覆われている人物たちは意識を失うということを認識していないし、彼らがわかっているのは目の前が黒になるということだけであった。理由もわからずに―…。
「誰だ―…。」
と、ローに話しかけられ、意識を取り戻しかけた人物は言う。
その人物の声は、意識を取り戻そうとしているためか、微かなものであった。
ローは、その人物の状態を理解し、
「そうか。なら、特別に教えてやろう。儂の攻撃によって、お主らは、ここから逃げた奴以外は全員、近くで気絶しておる。残念だったなぁ~。では、話してもらうぞ、お主らがなぜ、生まれたばかりの子どもを連れ去ろうとしているのか?」
と、今の状況をあえて教え、ローの要求も言うのであった。
ローとしては、あえて、相手の状況を教えることで、自らが不利な状況であり、逆転することができないようになっていることを理解させる。そうすれば、相手は大人しくイルーナとギーランの今日生まれた赤ちゃんを連れ去った理由を話してくれるであろうし、どこへ向かっているのかも―…。
だけど、ここにいる忠誠心が強い奴が多く、失敗してしまった場合、どういうことをするのか理解できるし、そのようになるように洗脳されている。これは天成獣の力によってなされたものではなく、そうであるように思いこませることによって―…。それしか彼らに与えられた選択肢なんて存在しなかったし、認識もできなかったのだ。
「ふん、たとえ、自分の命が誰かによって殺されることになったとしても、話しはしない。俺たちは、この組織に入った時点で、その覚悟はできている。この世界の光の部分しか見ていないお前らは、知る必要はない。明るくし続けて、もっと明るくしていればいい。そうすれば、俺らは、より強く存在し続けられる。じゃあ、さようならだ…な。」
と、その一人がこの作戦に失敗したことに気づく。
ゆえに、やることは決まっていた。死というものに心の中で後悔というものは存在する。存在しかしないだろう。それでも、突き進むしかない。生物の細胞が自らを殺すという方法を持っている以上、人は自らの流れに続けるということに対して主観的にないと判断しさえすれば、自らの流れを切るのだ。自ら―…。
ローは、その人物の言葉が何を意味しているのかに気づく。そして、その人物たちをも助けるために、行動を起こそうとする。だけど、ローがわかるはずもない。これはある暗号で発動することを―…。
一人の白い服で覆われた人物は、白い何かをローにバレないように地面に転がし、目一杯叫ぶように言う。
「我の生し、世界よ、さらば!!!」
と。
その周囲が爆発するのだった。
ドオーン、と。一瞬にして爆風が広がるようにして―…。
ローは、迷わずに、
「白の水晶。」
と、言い、白の水晶を展開する。
それは、白い服を覆っている人物を閉じ込めるように―…。そうすることで、白の水晶の防御テントの外に出ないように爆風が―…。
ローは、もう少し時間があれば、いや、爆発物の位置を正確にわかっていればそこだけで抑えることができた。
ゆえに、白い服に覆われた人物たち、全員を覆うようにした。そして、ロー自身もその中にいる以上、自身の死も覚悟しないといけないと思われるかもしれない。
だけど―…、ローは、決してこの爆発程度の威力では死ぬことはない。できないのだ。ローも現時点で死にたいとは思っていない。ローには、達成しなければならない目標があるのだ。それを遂げるその日まで―…。その日がローという人物のこの世界における生の終わりであろう。
ローは、何とか服を傷つけないように守る。そのために、服を白の水晶で覆い、何とか服の損傷を防ぐ。
しかし、ローの体は何カ所か傷を負い、血が流れ始めていた。いくつもの赤が―…、地面に吸われていくかのように―…。
「青の水晶。」
と、ローが唱えると、今度は青の水晶が発動する。
この青の水晶の効果で、自身の傷を治し、回復させようとする。そして、細かく操作はしていないが、自身の能力で、自分に向かって体の中に入ってきた異物を綺麗に自分のものにするかのように吸収するのだった。もう、すでに人という生物としての域を超越してしまったかのように―…。心はまだ人のものでしかないが―…。
一方、ギーランの方は―…。
景色は森となり、ギーランとモウスは村の外に出ていた。
モウスが研究所があるのとは、別の方向へとギーランを誘導したのである。
小競り合いになることはなかったが、ギーランのスピードの速さには驚きを隠せなかった。
それでも、必死にモウスは、自らのやるべきことを全うするために、冷静になり、実行している。
(本当にややこしい―…。今回の連れ去るべき赤子の周りは、どんだけの猛者なのかよ!! ミンゼナ様、今回、成功したとしても、犠牲が多すぎます。あなたの手札もかなりヤバいことになります。)
と、モウスは、心の中で言う。
続けて、
(もう、森の中でだいぶ深いところに来た。なら、ここで、時間を使っての対戦のほうがいい。やるべきことは時間稼ぎ、必要以上に動く必要はない。)
と。
再度確認したモウスは、走るの止めて、ギーランの方向に視線を向け、自らの武器である鉤爪を構える。防御のためでもあり、反撃のためでもある。
(止まった。なら、モウスを倒して―…。)
と、ギーランは、心の中で言い、駆けだす。
モウスに向かって―…。その一撃を相手に与えんがために―…。そして、自分とイルーナの間に今日、生まれた赤子を連れ去った奴が向かっている場所を聞き出すために―…。
ギーランは、自らの武器である大剣に白い光を纏わせる。
(相手の天成獣の属性は幻だ。迂闊に攻撃することは本来すべきことではないが、それでも時間がない。急がないと―…。)
と、ギーランは、焦る。
その様子は、モウスにもわかるが、研究所へと到達する時間まであと少しかかると思われる。ゆえに、時間稼ぎをしないといけない。
ギーランとモウスの天成獣の宿っている武器での戦いの実力は、ギーランの方が強く、モウスの方が弱い。天成獣の宿っている武器での戦いの場数は、圧倒的にギーランの方が上であり、強者を相手にすることもあることから、自らの実力を上げていく機会が多かった。一方で、モウスは、あくまでも裏の仕事であり、一度も失敗できないという環境にいた以上、安全策を考えて対処することがあり、限界というものを越えるのではなく、限界を理解したうえで、どう相手に勝つかということの方が優先されるからだ。
そうなってくると、実力はギーランの方が圧倒的に優位になる。
しかし、相手をどう倒すかでは、モウスの方が上だ。弱いなりの戦い方というものを知っており、時間の使い方、目的の達成の仕方に関しての経験は圧倒的にモウスが多くなる。以上で説明しような機会がモウスにそのような力を成長させることになったのだ。
ギーランは、モウスを自らの大剣で完全に攻撃することができる位置にまで、到達する。
大剣を構え、横に振るのであった。
ズン、という音をさせながら―…。
モウスは、斬られる。
そして、斬られたモウスの腹部の面から血が溢れだす。
だけど、その血は、ギーランにかかるということはなかった。
そこで、ギーランはちゃんとモウスの持っている鉤爪の形をした武器の中に宿っている天成獣の属性が幻ということを理解しているので、すぐに気づくことができた。
(これは幻か。想定はしているんだが―…、イラつく。)
と、ギーランは、心の中で言う。
そして、白い光を大剣以外にも、自らの靴の方にも覆う。
すぐに、モウスは、ギーランの目の前に姿を現そうとする。
だが、完全に現すことはできなかった。
その前に、ギーランは、モウスの場所へと向かい、それも瞬間移動と思わせるような光の速さかのように向かい、モウスを斬ったのだから―…。
「よく、わからないが、ビンゴだったようだな。」
と、ギーランは言う。
モウスの幻は、確実と言っていいほどに相手に自らの姿と位置を見せておかないといけない。そこから回避するのに残像を残して、相手にはその残像しか見えないようにするものであった。ゆえに、速い移動をしてくる者であれば、その幻に攻撃を当てる率は高くなるというわけだ。ほんのわずかでしかないが―…。ある一定の速度を越えられるのであれば、むしろ確率は確実ということになる。
モウスにも、確実に見せるのに時間の消費というものが存在する。ここでは、三秒から四秒ぐらいであろう。その間は、モウスは移動することはできないのだ。
そして、ギーランは、一秒も経過することなく移動し、同時に一秒も経過することなく、攻撃をしたのだから―…。
そう、ギーランの大剣の中に宿っている天成獣の属性は、光だ。その光の使い方をしっかりと理解し、究めれば、生の属性と変わらない、いや、それ以上の速度で移動することも可能になるのだ。
モウスは、斬られて悟るのだった。
(どんだけの速さだ。こんなのから逃げられない。俺の人生もここまでか。なら―…。)
と、モウスは、心の中で言いかけて、すぐに、手の感触で確かめる発動させるのだった。
さっき、ローが倒した白い服で全身が覆われている人物の一人がしたような―…、自爆を―…。
言葉出して言うべきことは決まっている。それ以外の言葉を出す時間は存在しない。
「我の生し、世界よ、さらば!!!」
と、モウスが言うと、モウスのポケットの中に入っている、爆弾が爆発するのだった。
ギーランは、モウスの何かするのを防ごうとするが―…、そのことに気づくことに遅れ、さらに爆弾の在りかもわからなかったので、どうすることもできず、自らの力を使って、距離をとるのだった。爆発による衝撃によってダメージを受けない場所までへと―…。
ギーランの心の中で、
(クソ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。)
と、叫ぶのだった。
その叫びは、イルーナとギーランの間に今日生まれた第二子が連れ去られ、その手がかりを失うということに対する悔しさ、その子と暮らすことができない悲しみ、親として、愛するべき者を守る存在として―…。
この日、ギーランの中に傷ができ、第二子が見つかるその日まで癒えることはないだろう。後悔というものを―…。復讐とは違うが、それと同じようなほどの気持ちの強さを―…。
こうして、一つの家族の悲しみが始まることになる。
ここで、一つだけ語っておく必要がある。
モウスのことだ。彼の後悔だけは、私の中で理解することができる。私の身勝手な推測でしかないが―…。
彼は、裏の仕事に就いたその日から覚悟はできていた。いずれ、自分で殺すもしくは相手に殺されるというその日を―…。
ゆえに、最後は潔く死ぬようなことを他者に対して印象付けることができたであろう。
だけど―…、だけど―…、心の奥底では生にしがみついていた。生きたい、と。
それも今は叶わぬことになってしまった。
もうこれ以上にしよう。語っていけば、私の方が涙で何も言えなくなるだけだ。
話を戻そう。
私が君の記憶で作った物語の中へ―…、と。
第96話-12 自分の真実を知る時 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
いろんな意味で長引いているなぁ~と感じます。どこらへんで第九回戦終了後に戻れるか、現時点でわかりません。ごめんなさい。追加内容がかなりというか、物凄く多くなっています。ここまで伸びるとは思いませんでした。
さて、次回の投稿に関しては、投稿分が完成していないので、ほぼ完成しだい、この部分で報告すると思います。
では―…。
2021年7月24日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿に関しては、2021年7月25日頃を予定しています。
では―…。