第96話-10 自分の真実を知る時
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中です。
興味のある方は、ぜひ読んでいただけるとありがたいです。
アドレスは、以下となります。
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宣伝は以上です。
前回までの『水晶』のあらすじは、モウスによってイルーナとギーランの第二子が生まれたその日に連れ去られるのだった。それを、ギーランとローが追うのであった。
「やっと出口だ。」
と、ギーランは言いかけ、病院の外に出るのだった。
ギーランは、その光景を見る。
その光景とは、何人かの白い服で全身を覆われている人物は、倒れていたのだ。
さらに、ローが、白い服で全身が覆われている人物の倒れている以外の人物と戦っていたのだ。
(あの中に、俺とイルーナの子どもは!!)
と、ギーランは、心の中で言いながら、必死に自分の子を探そうとする。
辺りをクルッ、クルッとさせながら―…。
白い服で全身が覆われている人物たちを見る。
だけど―…、
(いない。どこに!!!)
と、ギーランの心の中に焦りが出てくる。
ギーランにとって、自分の子どもは何者にも代えがたい存在だ。ミランのことにしてもそうだ。それは、愛すべき人イルーナとの間の愛の結晶であり、幸せを運ぶ天使でしかないのだから―…。それを失くすというのは、ギーランという人間のギーランとイルーナ、ミランの家族としての何かを壊すことに等しい。
ゆえに、ギーランは、必死になる。これがギーランの家族愛というものだ。彼自身はそのことをはっきりと認識しているわけではないが、心の奥底ではそのような気持ちを抱いていた。
そして、ローがギーランの存在に気づく。
「ギーランか。ここは儂に任せて、お主は、向こうの方向へと向かったのを追ってくれ。そいつが、赤ん坊を抱えていた。」
と、ローは、ギーランに聞こえるように、さらに、声を荒げながら、指をモウスが向かったと思われる方向を指しながら言う。
ギーランもローの存在に気づき、すぐに、モウスを追っていく。ローによって指で指された方向へ向かって―…。
「じゃあ、お主らは、儂がここで足止めといかせてもらおうか。」
と、ローは言うと、白い服で全身を覆っている人物たちの戦いに移るのであった。
ローの体力が続く限りではあるが―…。そして、ローがここに呼べる味方が現時点で誰も近くにいない以上、ローだけでどうにかしないといけない。
ローはそのことを覚悟したうえで、戦闘に入るのだった。
シュッ。
逃げる、逃げる。
足を緩めることはできない。一度緩めたのだから―…。
それには、ちゃんとした理由がある。だけど、今、言えるということではない。
とにかく、逃げる。今はそれこそが一番重要なことなのだから―…。
だけど、逃げ切ることはできない。
追いつかれるのだから―…。
「白い服で覆われてる。お前か、俺の娘を連れ去ったのは!!」
と、静かであるが、その声には怒りというものが強く滲みでていた。
そりゃそうだろう。ギーランにとって、家族となった赤ちゃんが生まれたその日に連れ去られたのだから―…。この赤ちゃんを取り戻すのは、家族のためであり、特に、愛するイルーナのためでもある。
普段は、言葉にしないわけではないが、軽い口調でしか言わないけど、心の奥底では信念といっても遜色がない、いや、それ以上のものとして、イルーナに対する愛情をもっているのだから―…。
そのイルーナの幸せのために―…、絶対―…。
「取り戻す。」
と、ギーランは言いながら、手を伸ばす。
そう、イルーナとギーランとの間に生まれた赤ちゃんを連れ去ったと思われる人物に―…。
ギーランの前にいたのは、モウスであった。
ギーランは、手を伸ばし、モウスの右肩に右手が触れる。
その後、ギーランは、モウスを右回転で半分回転させる。
だが、そこには―…、
(いない!!!)
と、イルーナとギーランの間に生まれた赤ちゃんがいなかったのだ。
「どこへ―――――――――――――――、やったぁ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。」
と、ギーランは、叫び出し、モウスの右肩を掴んでいる右手とは反対の左手をグーの形にして、モウスを殴ろうとするのだった。
だけど、モウスは、すぐに掴まれている右肩をギーランの右手から素早く離し、距離をとるのだった。
ゆえに、ギーランのパンチ攻撃は、かわされる結果となる。
「ッ!!」
と、ギーランは、怒りにまみれていた。
自らの娘を連れ去られたことに対する怒りで―…。ゆえに、そこに容赦という言葉は皆無としかいいようがない。
「残念でしたね。すでに、私の手元にはあなたの娘さんはいません。」
と、モウスは言う。
モウスは、一回ほどスピードを緩めた。それは、モウスがローという人物によって気づかれて、連れ去る対象である赤ん坊と逃げている状態である。この状態のままでは、いつか追いつかれるのではないかという不安があった。
そのため、あらかじめ何かあった時のために、病院に侵入させなかった人物と合流する地点へと素早く向かい、そこで、その待たせていた人物に赤ん坊を渡し、そいつに研究所へと一直線に逃げさせて、モウス自身が囮になったのだ。そう、追ってくる可能性があるものは、モウス自身を追ってくるだろうと推測して―…。
「娘をどこにやった。」
と、ギーランは、怒りという感情が支配しているが、言葉というものは怒りがあるのに、声の大きさとしてはそれほどでもなかった。
それでも、モウスは、心の中で恐怖を感じるのであった。
だが、モウスもここで一歩も引くという選択は存在しなかった。ここで引いて、居場所を教えれば、任務が失敗してしまい、主人であるミンゼナへと辿りつかれることになってしまう。そうなることは、是非とも避けたい事態であった。
自分がこの仕事に就いている以上―…。それと、同時にもしもの時の覚悟もできている。
「教える気はない。」
と、モウスは言う。
モウスが教えるはずもない。それは当たり前のことでしかない。以上に述べたように、ミンゼナの居場所を知られることが良くないことだからだ。
一方、ギーランの方も、モウスからまともな解答が得られるとは思っていない。それぐらいはわかる。相手の動きが裏の仕事をしている者の動きだからだ。ギーランもローと若干であるが関わっているので、そういう裏の仕事の人間というものであり、どういう人種なのかということを知っている。
ゆえに、そういう奴らがなかなか情報を教えないということはわかっている。忠義が強い奴ほど特に、その傾向が強い。
そして、ギーランは、モウスを見て、その言葉を聞いて、忠義の強い奴だと判断した。
(こういう奴は厄介なんだよな。とにかく、早く決着をつけないと、娘の行方がわからなくなってしまう。それだけは避けないといけない。)
と、ギーランは、心の中で若干では焦りがでてくる。
それもそうだろう。娘を連れ去り、他の人物に渡して、自らが囮となった人物は、簡単に、連れ去られた娘の居場所を教えてくれるわけがないだろう。そんなことをしてしまえば、自らの目的を達成することができないし、捕まってしまえば、最悪の場合、自らの生の終わりだって可能性としてはあるのだから―…。デメリットしかない。連れ去るというデメリットというリスクが存在するが、それでも成功することによるメリットも存在している以上、その選択をすることができるが、今のデメリットしかないので、選択する者などいるはずもない。
それぐらいの物事の判断は、モウスという人物であれば、確実にすることが現時点で可能であろう。よっぽどのことがない限り―…。
ギーランは、すぐに、モウスへ向かって駆ける。
素早く倒さないといけないのはわかりきっている。
自らの持っている武器である大剣を引き抜き、右から左へと横にモウスを斬る。
その攻撃にギーランは、モウスが反応できなかったのだろうと思う。
(あっけないな。)
と、ギーランは、心の中で言いながら、今の状況を見るのだった。
そう、モウスは、ギーランの大剣による攻撃で、抵抗することもなく斬られたのだ。
それも斬ったところから大量の赤が舞うほどに―…。
ギーランも娘にこのようなグロテスクなものを見せなくてよかったことに対して、少しぐらいは安堵する気持ちもあるが、娘を連れ去った人たちの仲間から取り返さないといけない以上、焦りながら、走りだそうとする。
その時、
「!!!」
と、ギーランは、ある視線に気づき、すぐに防御の体勢をとる。
大剣を自らの目の前に出して―…。
キーン。
武器同士がぶつかる。
ギーランの目には、さっき斬ったはずの人物が写っていた。
モウスは、自らの武器を装着していた。その武器は、鉤爪の形をしたものであり、金属できていると思わせるほどで、色は灰色でもあるが、一部は黒色になっていた。まるで、黒の部分は、しばらく血を吸わなかったせいで、黒くなったのではないかと思わせる。ゆえに、血に飢えているのではないかという印象を武器から感じさせるほどであった。
「モウスの天成獣の属性は、幻か。」
と、ギーランは、かなり正確に推測できたので、確信をもっているようにして言う。
ギーランは、すぐにその答えに行きつくことができた。なぜなら、ギーランがモウスを斬って、後ろから攻撃を仕掛けてきた時に、ギーランが防御することができる時間が存在したのだ。
もし、モウスの持っている武器の天成獣の属性が時なのであれば、ギーランはモウスを斬った時点で斬られた可能性が存在するし、避けられる時間なんて存在するはずがなかった。さらに、他の属性でも可能な場合はあるが、それは、あくまでも条件という面が折り合わなければなすことなどできやしない。
さらに、決定打となったのは、ギーランがモウスを斬った時に、大量の赤が舞っていたが、それと同時に、その切断面が黒でしかなかったのだ。グロテスクなことであるが、臓器などが見えなくてはいけないのに、それがなかったからだ。
ゆえに、ギーランはかなり正確な推測をすることができた。モウスの持っている武器の天成獣の属性が幻であるという正解を導き出すほどに―…。
一方のモウスもギーランに自らの武器の天成獣の属性を当てられたことに対して、言われた瞬間は驚いてはいたが、それでも、そのことを正解されたぐらい完全に動揺して実力を発揮できないというわけではない。
それに、モウスは、裏の仕事をしている期間が数年というほどであり、経験もしっかりしていることから、冷静になることの重要性も、なり方もしっかりと理解していた。
(なるほど。なかなかの手練れということか。この男は―…。本当に、あの老婆といい、この者たちはいったい何者なんだろうか、つい考えてしまう。だけど、そのようなことよりも、今は、任務が一番である以上、そっちの方は優先するのは当たり前だ。)
と、モウスは、心の中でギーランとローが何者であるかを考えようとするが、今の優先順位において緊急におこなう必要はないので、後回しにして、今の任務に集中するのだった。
現状、モウスは、足止めをしないといけない。赤ん坊をともなっている人物が確実に研究所に着く頃になると予測される時間まで―…。
時間を稼ぐ以上、モウスのすべきことは決まっている。
(自らは必要以上に動くべきではない。こっちから動けば相手に隙を与えることになりかねない。そして、同時に隙というものがないと相手に思わせる。そうすれば、勝手に相手の方から焦りだし、時間を消費してくれる。)
と、モウスは、さらに、心の中で考えるのであった。
モウスは、自分から動き出すことは、かえって、ギーランに対して隙を与えることになり、その隙を突かれて戦闘不能もしくはギーランが進むための時間を与えれば、返ってギーランに追いつくのが難しくなり、連れ去った自分が仲間に預けて逃げている者にギーランが追いつくかもしれない。その人物は、モウス以上の実力もないし、天成獣の宿っている武器を所有しているわけじゃない。そうなると、ギーランに簡単に敗北してしまうかもしれない。そして、赤ん坊を奪われるかもしれない。
ゆえに、モウスは自分から動くことはしなかった。それと同時に、必要以上な動きも同時に、ギーランに隙を突かれかねない。そうなると、自分から動き出すことと同様の結果になってしまいかねない。
それと同時に、相手に隙を与えないようにしないといけない。ここでは、ギーランの動きに対して、敏感に反応ができるようにしておくことが重要である。ただし、ギーランがわざとモウスの隙を突くために、そのような動きもすることがあるので、注意しておくこともモウスは理解している。
そうして、ギーランとモウス、双方における目立って攻撃を仕掛けるということがしばらくの間なくなることになった。
その状態ゆえに、ギーランは、モウスが心の中で言ったように焦りの表情がでるようになる。もちろん、心の中であり、表情に出さないようにギーランは努めていた。表情に出せば、相手の優位になりかねないからだ。
(こいつ、かなりこういう状況での戦い方に慣れているな。さすが、裏の仕事を本職としているな。経験がかなりのものあるのだろう。それに天成獣の宿っている武器を扱っているんだ。こうなってくると、もう一人、誰か天成獣の宿っている武器を扱っている者、アンバイドがいてくれたなぁ~、と思ってしまう。)
と、ギーランは、心の中で焦り、悔しそうにする。
ギーランにとっては、時間と、空間の存在によって移動するのに時間を消費するということが敵側になっていた。そう、時間が経過すればするほど、ギーランにとって不利になるというわけだ。
ここで、もし、自分以外に一人だけ天成獣の宿っている武器を扱っている者がいれば、かなり楽なのであったが―…。
現時点で、その叶いもしないであろうことをつい、ギーランは考えてしまう。そう、イルーナの弟であるアンバイドがこの場にいてくれたら―…、と。
だけど、一年前ほどからギーランやローたちとの繋がりを経つようになっていた。あの事件によって―…。
ギーランは、アンバイドなしでこの状況を何とかしないといけない。時間がない。焦れば、動かなければ時間が黙々と過ぎていき、相手に有利になるしかない。
(なら、俺の選択肢は一つしかない。覚悟を決めろ。新たに生まれた娘のためにも、ミランのためにも、イルーナのためにも―…。)
と、ギーランは、心の中で覚悟をはっきりとさせる。
そう、ギーランに与えられた選択肢は一つ。モウスもそのことを理解している。それでも、ギーランはその選択肢を選ばないといけない。家族として過ごすことができる可能性を手に入れるために―…。
ゆえに、ギーランは、モウスに向かって、大剣を構え、モウスを倒すために、移動を開始するのであった。
第96話-11 自分の真実を知る時 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回の投稿に関しては、まだ、次回の投稿分が完成していません。なので、次回の投稿分が完成しだい、この部分で報告していくと思います。
では―…。
2021年7月21日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2021年7月22日頃を予定しています。
では―…。