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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
202/748

第96話-9 自分の真実を知る時

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿しています。

興味があれば、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

アドレスは、以下となっております。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』は、イルーナとギーランの間に第二子が誕生する。だけど、この子はある研究所の別の世界への渡航実現のための実験台として狙われるのであった。そして、その赤ちゃんの連れ去りを任務としたモウスらが、イルーナとギーラン、生まれたばかり赤ちゃんがいる病院の中に侵入するのだった。

 赤ちゃんはぐっすりと眠っている。

 この赤ちゃんに名前は、まだ―…、ない。

 今日、生まれてきたばかりなのだ。

 だけど、赤ちゃんは、何人かの人に喜びをもって迎えられた。

 それは、この赤ちゃんにとって、この世に生まれて、始めてと言っていいかもしれない幸福であった。

 「おお~、これが俺たちの新たな家族というわけだ。名前はどうしようか。こんな光眩いのだから―…。」

と、ギーランは、自らの新たな家族である赤ちゃんを抱っこしながら、喜んでいる。

 ギーランは、この赤ん坊にどんな名前を付けようと考え始める。だけど、今現在において、どのような名前にしようか候補が多すぎて、一つに絞ることができなかった。

 (多すぎて一つに絞れないのなら、無理に一つに絞る必要はないし、すべてをくっ付けてしまえば―…。いやいや、そんなことすれば、きっと子どもから嫌われてしまうだろう。ってか、この子は男の子なのか、それとも女の子なのか? 女の子の方がいいか、いや、男の子なら鍛えて、強い実力者にすることも―…。)

と、ギーランは、頭の中で、いろいろと考えを膨らませていく。

 ギーランの頭の中は、将来の子どもの子育て方針で満杯になっており、そこから離れることはしばらくの間できそうになかった。

 (ギーランは、妄想の世界へと旅立ったのか。しばらく放置じゃな。)

と、ローは、心の中でギーランはどうすることもできないと、半ば諦めるのであった。

 なので、ローは、今、自分が聞きたいことをイルーナに聞くのであった。

 「生まれた子どもの性別は?」

と。

 「女の子です。病気とかはなく、健康な体で生まれたって―…。」

と、イルーナは、付け加えながら答える。

 イルーナは、女の子を出産後に、産婆さんから、自らの子どもの性別をすでに教えられていたし、さらに、見た目に病気の可能性がある兆候は見られないということも聞かされていた。その時、イルーナは、子どもが無事に健康な状態で生まれたことにほっとするのだった。それゆえに、疲れ果ててしまうことになる。しょうがないことだ。自分の子どもの無事を願う人なのだから―…。

 「そうか。それは良いことじゃ。名前に関しては、後日でもいいしの~う。それに、顔もイルーナの方に寄るじゃろうし。中身の性格で、ギーランのところを受け継がなければ―…、の~う。」

と、ローは、心配しながら言う。

 それは、今日のギーランの変な行動と暴走を見てしまったせいかもしれない。ギーランのような変な行動が新たに生まれた子どもに性格として受け継がれたことが明らかになった日には、この新たに生まれた子どもの運命はかなり酷いものになってしまいかねない。そんなことは、ローもイルーナもさせたくないと思っていたし、そうなって欲しくなかった。

 ローとイルーナは、そこでがっちりと双方の意見が合うのが感覚的に理解することができた。ゆえに、双方ともに、握手をかわすのであった。何となくだけど―…。

 そうこうしているうちに、

 「赤ちゃんを専用のベッドに移したので、運ばせてもよろしいでしょうか?」

と、産婆の方がイルーナに尋ねてくる。

 「はい。」

と、イルーナは返事する。

 そうすると、産婆さんは赤ちゃんを抱え、赤ちゃん専用のベッドに運んでいくのだった。

 赤ちゃん専用のベッドは、赤ちゃんが入るぐらいの大きさのベッドで、一歳から二歳前後の平均身長より十センチメートルぐらいの余裕がある長さのベッドであった。そのベッドは、周囲を赤ちゃんが外へ落ちないようにするための透明な衝立があり、隙間は存在しない感じであった。

 そこへ、赤ちゃんを優しく、そのベッドの中で寝かせるようにするのだった。その時、赤ちゃんの頭に関しては、特に慎重を期していた。

 他者でも自分のでも赤ちゃんという命および存在は、尊いものであり、彼ら、彼女らの存在自体が自分たちの幸せそのものなのかもしれない。そんなことを産婆は今、抱いたのである。他人の出産でも、自分の出産でも、子どもが生まれると特に、そう思うのだ。仕事という側面もあろうが―…。それ以上に、子どもが好きだということには変わりない。

 そして、産婆は、運んだイルーナとギーランの子どもである赤ちゃんにおかしなところがないかを確認して、他の仕事に移るのであった。

 この時、すでに、この赤ちゃんを連れ去ろうとしていた者たちは、すでにこの病院に侵入しており、すでに病室に入っていた。その気配は、ギーランやローに気づかれないように細心の注意を払っていた。ゆえに、ギーランやローは、気づくことはなかった。


 病院の中。

 天成獣の力を使っている。

 モウスは、天成獣の力が宿った武器を扱うことができる者であった。

 このように相手に自分という存在がいないという幻の属性をもつ者が使いそうな力を使って―…。

 モウスは、このような力のおかげで、ミンゼナから与えられた任務を効率良く、うまく達成することができた。その功績が、ミンゼナの信用をかうことができた要因となっている。

 任務以外の時は、あまり修行でしか天成獣の力を使わないようにしている。それは、自らが天成獣の宿っている武器を持っていて、かつ、扱うことができることを知られるのを恐れてのことだ。任務上、それを知られていないということにこそ自らのアドバンテージというものが存在する。

 ゆえに、研究室から出る時も、なるべくバレないようにするのは、天成獣の力ではなく、自分がこれまでに培ってきた技術によるものである。

 (やっぱり、ここは小さな病院である以上、警備に関しては、ザルということだ。まあ、彼らを責めるつもりもない。だが、これは、ミンゼナ様から与えられた任務だ。君たちには申し訳ないが、悲しみに沈んでもらう。)

と、モウスは、心の中で言いながら、行動に移す。

 モウスは、イルーナとギーランとの間の今日生まれた第二子に近づいていき、赤ちゃんに幻をかけて、大人しくさせ、その赤ちゃんを抱え、素早く、病室を出ていくのであった。

 だけど、モウスは、この時、気づいていなかった。すでに、モウスが赤ん坊を連れ去ろうとしていることがバレていたことを―…。


 同様に、病室の中。

 イルーナは騒然としていた。

 彼女もまた、天成獣の宿っている武器を幼い頃から扱ってきている。

 なぜ、そうなのかと言われれば、物心付く頃に、たまたまイルーナの両親が拾ってきた武器に天成獣が宿っていて、それをイルーナが好奇心いっぱいに触れようとしたのだ。

 両親も面白がったのが、拾った武器に触れさせたのだ。イルーナはその武器に触れると、天成獣に認められたのか、その武器を扱うことができたのだ。

 その時、イルーナの両親は驚き、イルーナに対して、ローを付けて、天成獣の戦い方を指導したほどだ。それは、イルーナの命を守るためのものであったし、力を付ければ、何か良い職に就けることができるのではないかと、思いながら―…。

 結果、アンバイドが酷い目にあうということの遠因をつくってしまうのであるが―…。

 そのイルーナの武器に宿っている天成獣に宿っているのは、もちろん生であるが、同時に幻や時に対しての影響を自らの選択でしか受けないようなことができる能力も備わっていた。

 ゆえに、気づくことができた。

 だから、ローとギーランに言う。

 「白い服を着た人を追って!! 私の赤ちゃんを連れ去ったの!!!」

と。

 そして、ギーランは、イルーナの言葉に気づき、ギーラン自身も自分の第二子がどこのベッドに運ばれたのかを見ていたので、すぐにそこへ向かい確認する。

 ギーランもイルーナ同様に騒然とする。

 「イルーナ、どっちへ向かった。」

と、ギーランは、病院であり、静かにすべきであるが、そのような事態ではないため、声を荒げるかのようにだす。

 「病室から出ていった。」

と、イルーナは、はっきりと答える。

 「とにかく、俺が追っていく。ローさんは、病院の外へ移動してほしい。」

と、ギーランは指示し、続けて、

 「必ず、俺が子どもを見つけ出すから、ここにいてくれ。」

と、言うのだった。

 イルーナは、静かに首を縦に頷くのであった。

 こうして、ギーランは病室を出て、とにかく、病院の外へと向かうのだった。それは、ローが空間移動で移動すると考えて、ギーランとローで挟み撃ちにする予定だったのだ。

 一方で、ミランは、この状況に目を点にさせるが、すぐに状況を把握する。自分の母親であるイルーナが悲しんでいるのを見て―…。


 病院の中。

 複数人の人間が、病院の外へと向かっていた。

 モウスからの連絡により、赤ん坊を一人連れ去ることができたのだから―…。

 ただし、成功というものを確信できるほどではないが―…。

 それもそうだろう。実際、確実に成功といえるのは、確実にミンゼナの元へ届ける、つまり、研究所の中に入るまでは、意味がないということだ。

 (ふう、ここまでうまくいくとはな。だけど、油断は禁物だ。油断って奴が、とんんでもないことを毎回毎回起こしてくれるんだ。うまく行き過ぎるのも同様に―…。)

と、モウスは、心の中で言う。

 モウス自身も、何度も裏の任務に関わっている以上、油断というのがどれほど危険で、うまく行き過ぎることがどれだけ予想外のことを起こすのかを身をもって体験している。そうである以上、まだ油断できないし、成功を確信することもできない。

 油断のために、自らの仲間が犠牲になったこともあるし、うまく行き過ぎて、かえって同僚が任務に失敗し、別の組織によって殺されたこともある。失敗イコール自らの死ということを嫌というほど理解している。いつか、自分もそうなるかもしれないという気持ちを抱きながら―…。

 そして、病院の外で、仲間たちと合流することになっている。

 モウスは、病院の外に出るのだった。

 「!!!」

と、モウスは、驚く。

 すでに、何人かの仲間は外に出ていた。

 (なぜ、交戦状態になっている―…、それも老婆と―…?)

と、モウスは疑問に思う。

 なぜなら、そこにいる思われる老婆が、モウスと同じように全身白い服で覆っている者たちと交戦しているのだ。それもすでに、二、三人はモウスの同僚が倒されているのだから―…。

 「お主が、イルーナとギーランの子どもを連れ去っておったのか。いや、このごろ、赤ん坊を連れ去っている者たちか。」

と、老婆は言う。

 モウスは、その老婆の特徴を見て、まるで、物語にでてくる魔法使いがしているような恰好であることに気づく。そう、モウスの仲間と交戦していたの魔術師ローであった。また、さっき、病室にいたことには気づいていなかった。赤ちゃんを連れ去るの夢中になりすぎて、注意して周囲は見ていたとしても、視線で気づかれる可能性が存在している以上、必要以上に視線をおくるべきではないと考えたためだ。

 ローは、最近、少し気になっていたことがあるのだ。それは、このごろ、この地域で起こっているという子ども連れ去り事件である。ベルグが関係している可能性があると思っているからこそ調査しているのであるが、調べていく段階でベルグが関係していないという可能性が高いことは何となく、そう思えるようになっていた。

 そして、ベルグを探し出し、再度、ベルグ、いや、ベルグの後ろにいる存在に対抗できる人物を育て上げ、今度こそ、その存在を倒すのだ。そうしなければ、その存在は、ずっと暗躍をし続けて、人々に被害を被ってしまうような事件を起こしかねないからだ。

 一方で、モウスは、ローの言葉に対して、しばらくの間考える動作をする。その時に、事実を言い当てられたというような、動揺というものを表情にだしながら―…。

 そうすれば、相手の方は、勝手にモウス自身を連続赤子連れ去り事件の犯人と勘違いしてくれるのだから―…。

 「ああ、そうだ。」

と、モウスは答える。

 嘘という名の答えを―…。

 「そうか。なら、本気で行かせてもらう。赤の水晶。」

と、ローが言い出すと、赤の水晶が発動し、そして、ローが取り出した赤の水晶以外の赤黒い水晶が一瞬で消えるのだった。

 (消えた!! 一体、何がしたいんだ。あの老婆は―…。)

と、モウスが心の中で思い始めると、何か赤黒い光がするのだった。

 その場所へと視線を向けると、連れ去ろうとしている赤ん坊に何かをあるのを見つける。それは、さっきローが手に持っていて、消えたはずの赤黒い水晶であった。

 (なぜ、赤ん坊のところに―…。これは排除すべきか。いや、むしろこれ自体に触れることで何か罠が発動するかもしれない。迂闊に触るのは―…、いや、これが追跡機の可能性もある。だけど、だけど、ここで迷っていては、相手にとって都合が良いことにしかならない。なら、一番にやらなければいけないことは、この赤ん坊を研究所に運ぶことだ。)

と、モウスは、心の中で赤黒い水晶に関して、今、考えたところで意味ないと知り、とにかく、ここは同僚たちに任せて、研究所へと逃げることにする。

 「あとは、お前たちにここを任せた。」

と、モウスが言うと、

 「はい。」

と、部下たちが返事をするのであった。

 モウスは、この病院からの逃走を開始するのだった。

 ローは、

 「あやつを捕まえれば問題はないだろうが、捕まえようとすると同時に、儂の方が攻撃を受けるわけかの~う。本当に、うまくやるもんじゃい。プロってところか。」

と、言う。

 ローとしても、今、すぐにでもイルーナとギーランの今日生まれた子どもを連れ去っている人物を捕まえたいと思うのであるが、その周りにその部下と思われる人物に苦戦していた。市街であるので、ローが十分に戦ううえでは制約の多い場所でしかないし、一気にここまでの相手をすれば、ローの体力が疲れてしまうのである。若いうちにあの力を手に入れていれば、こういうことにはならなかったであろうが―…。後悔しても意味はない。

 さらに、ローは、赤黒い水晶を空間移動させたのは、最悪、取り逃した時に備えた場合のものだ。この水晶があれば、赤ちゃんが成長した時に、自分の起源を探ろうとして、そのことがローに情報としてもたらされれば、見つかる可能性もあるからだ。本当は、そうなって欲しくはないのだが―…。

 ローは、まず、部下たちとの戦いを選ぶ。

 (たぶん、ここにいるのが全員とは限らないしの~う。)

と、心の中で思うのだった。

 そして、ローがさっき言った、全員でないというのは正しいことであった。


第96話-10 自分の真実を知る時 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第96話がかなり長くなっています。重要な人物の伏線回収なので―…。この伏線回収が終われば、最終回戦まではもう少しとなります。リース以後についてもネームが十年前ほどに出来上がっており、後は、ネームに入れなかったこの伏線回収をとにかく、精一杯頑張って完成させることです。

では―…。

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