第96話-6 自分の真実を知る時
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中です。
興味のある方は、読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝は以上です。
『水晶』の前回までのあらすじは、ある研究所でミンゼナが所長や副所長ムーメインを排除することに成功し、別の世界に関する研究を自分たちのものにするのだった。副所長ムーメインがトップとする研究室の一員であるアントスの協力によって―…。
朝。
リース王国がある大陸とサンバリア王国がある大陸の間にある内海。
その真ん中を一隻の船が漂っていた。
漂流といっていいだろう。その方が、表現としても最もあっているような気がする。
その船の中には、研究者の恰好をした男女が何人かいた。
彼らは意図的に遭難させられた。彼らが関与したわけではない。別の人物にとってなされたのだ。彼らの存在が邪魔でしかなかった。
そりゃそうだろう。別の世界の情報を漏らそうとしなかったのだから―…。さらに、出世するうえでも、権力を掌握するためにも邪魔でしかなかったのだから―…。
彼らが眠っている間にも彼らをあの港町へと戻そうとはしなかった。
海流を調べて、ミンゼナたちが出航させた船が、この研究者の格好をさせた船を港町へと戻ることのない方向に乗せたのだから―…。
そうこうしているうちに、一人の人物がゆっくりと目を覚まそうとする。
その人物の記憶は朧気だ。夢を見るという行為があまりにも一時的な現実と認識してしまっていた。その夢がその人物にとって幸せと主観的に感じるものか、それとは逆に不幸なものであるのかを感じるかはわからない。それでも、強烈な夢で、その中では印象に残るもののほどであった。その夢の状況しか集中ができなかったのであろう。
そして、一人の人物が目を完全に開き、ゆっくりと辺りを見回す。
(ここは―…、夢の中なのか? 周りに、所長、副所長、他にも研究員がどう…し…て―…。)
と、心の中で一人の人物は思う。
どうしてここに、所長、副所長であるムーメイン、他の自分と同じ研究室のメンバーがいることに対して不思議に思う。それと同時に、上はこれから青くなっていく空がある。研究所の天井の色は白一色だ。ゆえに、違和感に気づき、慌てて上半身を起こす。
(……………。)
と、心の中で一人の人物は、言葉にすることができなかった。
一時的にではあるが―…。
その一時的という時間が過ぎれば、まともに思考することもできるし、判断を下すこともできる。ゆえに、叫ばざるをえなかった。
「海の真ん中――――――――――――――――――――――。」
と。
その後、他の研究者と思われる人物たちも目覚めるのであった。
「ここは辺りが海で陸地が見えない。」
と、所長が言う。
所長も目覚めたばかりの時は、辺りが海であることに対して、驚きと同様に、どうしてこのような場所にいるのか理解することができなかった。
所長を含めたこの船にいる研究員たちは、記憶を思い出してあることに気づく。
(研究所で気絶させられて、その後、船に乗せられて、ここまで運ばれたのか。ということは、私たちを排除したいもしくは恨みを抱いている人物がおこなったということになろう。)
と、所長は、心の中で推測する。
それでも、いくら推測しようがその問題の根本を今の現状で解決できるわけではない。
そう、今、辺りの視界がすべて海という場所におり、陸地、具体的には山のようなものが見えない場所にいた。陸地が見えない場所へと運ばれたということになる。そうなってしまうと、どの方角に陸地があるのかわからない。
これは、思っている以上に深刻な事態だ。わかるだろ。一回方向を間違えたのなら、かえって陸地から離れていくこととなり、全員餓死する可能性すらある。釣りに使うための用具や食料などこの船にはないのだから―…。
それは、所長らを含めた研究者の恰好をしたもの全員がわかっている事実である。
(まずは、方向か。ずっとこの場所にいるわけにもいかない。いや、海流がある以上、流れてはいる。その流れに今は乗るべきか。どうせ、外せば私たちの運命は、死しか待ち受けていない。だから―…。)
と、所長は、心の中で、覚悟を決め、これからの行動を話すのであった。
そして、彼らは、二、三日後、近くで漁をおこなっていた漁船に乗っていた漁師らに発見され、陸地に戻ることができた。
しかし、彼らが二度と研究所に戻ることはできなかった。知ったのだ。研究所のことを知る研究所と敵対する組織から―…。
その後、彼らは幾千の山、川を越えて、研究者たちは、ある小さな国にたどり着き、そこの王に認められ、研究所を設立することになる。
それは、図書館を併用したものであり、科学技術における研究で、この地域における文化水準を引き上げることになった。この話は、別にここで語る必要のないことだ。
ゆえに、物語の筋に戻ろうではないか。
その後、研究所は、ミンゼナらによって、掌握されることになった。
そして、出資者たちは、別の世界への渡航のための資金を提供し、ミンゼナたちは別の世界へ行く方法について研究する。
研究内容が内容である以上、何十年、何百年、いや、二度と行く方法が見つからないようなものであった。
出資者たちの多くは、研究に長い時間をかけたいとは思わなったが、それでも、一部は、自らが一時的に赤字になったとしても長期的支援をするつもりでいた。なぜなら、別の世界に行くことができて、商売が可能であれば、すぐにでもその赤字は帳消しとなり、大黒字になるだろうという自らの根拠のない推定をして―…。
それでも、ミンゼナらは幸運というか、一生の運を使い果たしたのではないかを思われるぐらいのものだった。
そう、瑠璃たちが住んでいる世界の人々が石化して、ギーランによって異世界へ送られる時から十二年前に、完成させることができたのだ。
「やっと、完成したのか。」
と、ミンゼナは、その装置を見ながら、言う。
この装置の構造に関しては、偶然による産物が多く、理由については科学的根拠を得られていない。ゆえに、幸運という部類に入り、偶然というものが奇跡を引き連れたようなものだ。
「ええ、ですが―…。まだ、どうなるかはわからない。マウスによる実験では、観測の結果、ちゃんと異世界へと送ることに成功しており、そこで、ちゃんと生存していることが確認されました。だが―…、それを戻すことになると―…、可能かどうか―…。」
と、この研究に携わっている研究員は、不安になりながら伝えるのである。
この研究員とて、異世界から現実世界に送ってマウスを回収しない方法がないわけではない。いや、実際に、準備している。マウスには、見えない糸のようなものが巻き付けられており、そこに、生物に影響を与えないエネルギーを通して、回収することができるようにしている。それでも、実際に本当にマウスをこの異世界へと戻せるかは、やってみないことにはわからない。
それでも、理論の上では、別の世界、そう、現実世界へと行き来することが可能である。科学的根拠は、完全でないのを前で述べたことを付け加えてであるが―…。
「まあ、やっていきながらでしかないだろう。それに、人を使っての実験もしていかないといけない。だか、最初の実験は、消えてもそこまで心配されない人物がいいな。君たちだと周りも心配するだろう。だが、準備はできている。人に関しては―…。」
と、ミンゼナは言う。
ミンゼナには、人を使っての実験に使うあてが存在していた。
(ここ最近、赤子を連れ去るという事件がこの近辺で起こっていた。それも、病院の中で―…。なら、それを利用させてもらう。)
と、ミンゼナは、心の中で言う。
ミンゼナは、出資者たちや商人たちからうまく情報を仕入れることができていた。
この赤子連れ去り事件。犯人がベルグでないということは確かである。ベルグ自身、子どもに対して、実験したいという好奇心は存在しない。
しかし、人を使うとなれば、子ども、大人も関係ないと思っている。実験での安全は、ある程度保障しているのであるが―…。今は、逆恨みされるのが嫌だからだ。
では、一体犯人は誰なのか。それは、子どもができなかった一人の女性であり、その女性はその後、自首して、子どもたちはそれぞれの両親のもとへと戻っていったそうだ。ギーランの次女が連れ去れた後に―…。ギーランも後に、この女性に自らの次女の行方について尋ねるが、そもそも連れ去っていないので、何を言っているのか理解できなかった。意味のない行動と結局のところはなってしまったのであるが―…。
所長室。
この研究所では、現在、ミンゼナが所長という職に就いていた。
もちろん、これは、所長と呼ばれている人物を排除して、であるが―…。
その後、ミンゼナは、研究所の実権を素早く掌握することに成功し、自らの存在を絶対的なものにした。
そして、協力したアントスは、見事に副所長という職に出世していた。さらに、副所長を二名体制とし、さっきまでいた研究室のトップをその職にあてていた。そう、別の世界のことを楽園と言った人物が―…。
さて、話を戻して、この所長室では、二人の人物がいた。
ミンゼナとモウスだ。
「モウス。お前に動いてもらいたいことがある。」
と、ミンゼナは、モウスに向かって言う。
モウスは、ミンゼナがこれから何を言うかはわかっていない。雰囲気から察するに何かの任務もしくは仕事なのではないかということはわかる。
そして、モウスは、ミンゼナが自分の雇い主でトップの地位にある以上、任務であろうと、仕事であろうと断るという選択肢は最初から存在しない。するわけがない。
ミンゼナも、モウスに言うべきことはわかっている。少しだけ間をあけ、言葉を考えながら紡ごうとする。それは、言葉一つで、任務もしくは仕事の内容の意味がミンゼナの意図とは別の方向で動き、自分にとって最悪になる可能性が存在していたからだ。この世に完璧なものなど存在しないとミンゼナは、考えていた。
ミンゼナは、至っていなかってであろうが、この世に完璧なものが存在しないのではなく、その完璧が有限的なものには、わかっていたり、わからなかったりすることが判断できないということのように、自らの完璧に近いほどの認識できるという面には存在しないということだ。
結局、人が完璧というものは、中にどこかしら、その意図が完全にその通りに実現できないというものを含んでいるのだ。
そして、ミンゼナは、言葉を続ける。
「モウス、お前には生まれたばかりの子どもを連れ去ってほしい。ターゲットがいる場所は、この出産を専門とする病院だ。この病院は、規模が小さく、警備もされていない。ここなら、簡単に連れ去ることができる。そして、今回、狙うのは、この女の子どもだ。」
と、ミンゼナは、一枚の写真みたいなものをだす。
この写真の技術に関しては、ミンゼナはサンバリア商人から密輸入したものだ。写真や映像を残す技術に関しては、サンバリア王国の当時においては、輸出禁制の物であった。理由は、映像を残すことと、それを用いての解析技術は、サンバリア王国以外の地域で普及しているのは、サンバリア王国やリース王国がある大陸とは別の大陸の一部の地域でしかなかった。
この技術を他国に漏れてしまえば、サンバリア王国としての優位性を一つ失ってしまうのである。この時代、領土拡張をおこなわなくなったサンバリア王国とはいえ―…。
ゆえに、この写真をとるためのカメラという道具は、一部の裏の人間にしかわからないものであり、ミンゼナは、その正確にターゲットが誰かであるかをわかりやすくするために、出資者の一人から高額で購入したのだ。
そして、モウスは、一枚の写真を見る。
「で、この女の子どもを連れ去ればいいのですか。」
と、モウスは、ミンゼナに確認をする。
ミンゼナの言っている病院の名前は理解していた。場所も―…。
ミンゼナが見せられた写真に写っていたのは、イルーナであった。なぜ、イルーナの子どもを狙ったのか。その理由は、この近く入院して、出産をその病院でおこなうのが、イルーナ以外にいなかったからだ。たまたまの要因でしかなかった。
「そうだ。だが、子どもは生まれていないようだ。たぶんだが、ここ数日で生まれるだろう。最近、この近くでは、赤ん坊が連れ去られる事件が多発しているようだ。ゆえに、それに乗じて、こちらも人を実験材料にするためのねぇ~…。」
と、ミンゼナは言う。
その言葉に、倫理観というもの完全に欠けていた。もし、赤ん坊がこの地域で連れ去られる事件がなければ、どこかの都市のスラムの人間を使っていたであろう。だけど、ここは都市と呼べる所などほとんどない。人口数十万で、都市という概念が成り立ってしまうほどだ。この地域では―…。ゆえに、スラムというものは、よっぽど都市、国、領の運営が下手でなければ、かなりの小規模になり、スラムから消えた人物がすぐに周りにバレて、捜索されてしまうし、スラムの情報網は物凄いところがあったりするので、すぐにミンゼナだとわかってしまうのだ。だから、スラムを対象にするのは、あまり優先度を一番にすることができないのだ。
ミンゼナは、少しの間をあけて、言葉を続けるのであった。
「では、頼んだぞ。モウス。」
「はい。」
と、ミンゼナの言葉に、モウスは返事をするのであった。
モウスは、ただ、ここで実行するだけであった。そう、ミンゼナの命じた通りに―…。
第96話-7 自分の真実を知る時 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
第96話は長くなっているような気がします。さらに、文章が難しくなっている感じがします。うまく頭の中で纏められることができていないんだと思います。反省です。しかし、難しい文章は続きそうな気がします。
さらに、『水晶』の本当の最終話で100億のPVいきたいなぁ~と思っています。現状だと、『水晶』が何億部分も投稿しないといけなくなります。物理的に自分一人では無理だと思いますし、そこまで『水晶』は続かないと思います。予想以上に長くはなりそうですが―…。
瑠璃に関することが、ある程度片付けば、最終回戦(第十回戦)に突入すると思います。そうすれば、話数を分割する回数は減るかもしれない。そう思いたい(願望)。
次回の投稿に関しては、まだ、次回の分が完成していないので、詳しい日時をこの投稿の最初の現時点で言うことはできません。わかりしだい、この部分で報告したいと思います。
では―…。
2021年7月11日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2021年7月12日頃を予定しています。