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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
198/747

第96話-5 自分の真実を知る時

カクヨムで投稿している『ウィザーズ コンダクター』は、第2部を2021年7月1日から投稿しています。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


では、前回までの『水晶』のあらすじは、別の世界の観測成功の情報が漏れてしまう、だけど、内通者は見つからずにいた。一方で、情報を得た、漏らさせたミンゼナは―…。


 ミンゼナは準備を進める。

 自らの裏に通ずる組織を利用して、とある人物たちの排除を狙って―…。

 そう、この研究所の所長と、副所長であるムーメインたちの―…。

 「準備はほとんど整えました。資料に関しても、十分に手に入れています。」

と、ミンゼナの裏の組織の一人の人物が、ミンゼナが使っている部屋の中で言う。

 「そうか、モウス。」

と、ミンゼナは、裏の組織の一人の、今、自分に報告している人物に向かって言う。

 この人物の名は、モウスという。だけど、これは彼の本名ではない。コードネームと言った方がいいだろう。表で生きている時は、普通に本名で呼ばれたり、愛称で呼ばれたりすることもあるが、この裏という面においては、そのような名で呼ばれることはない。あってはならない。上司であるミンゼナは、モウスの本名を知っているが、それを口に出して言うことはない。本名がバレれば、おのずとその人物の行動が把握され、結局、ミンゼナ自体に行き着かれる可能性が存在するので、確実に名前を呼ばず、コードネームで呼ぶのだ。

 コードネームでも、バレる時はバレるだろうが―…、こうやって会う時は、ミンゼナ以外の男の服装は、なるべく顔が隠れるようなものにしているし、外に出れば、普通の一般人、研究に出入りする商人とその場における多数派もしくは、他の者が紛れ込んでいても怪しく見えないようにしている。そうすることで、人の中に紛れ込んで自らの正体がバレにくくなるからだ。

 だけど、特に研究所の研究員のように、人の研究所をやめるとか入ってくるとかがほとんどない場合は、別の研究員に関しては、すぐにわかってしまう。だから、出入りいている商人の一般的な恰好をしてモウスは、研究所を出入りしている。

 「ミンゼナ様の指示があれば、すぐにでも実行可能でございます。」

と、モウスは、再度、実行が可能であることを言う。

 「わかった。決行は明後日としよう。」

と、ミンゼナは指示する。

 「はぁ。」

と、モウスが返事をし、ミンゼナがいる部屋を退出して、研究所の外に出るのであった。

 ミンゼナは、

 (さあ、楽しみだな。これで、この研究所の実権は、私のものだ。どんな実権をとったとしても、しばらくの間は、謙虚でいるのが一番だな。大人しく、怒りがあっても冷静に―…。)

と、心の中で、自らが研究所の実権を握った時に、どうするかを頭の中で考えるのだった。

 多くの者かどうかわからないが、自らがその組織の中で実権を握って、部下を自由に動かす権限を得た者は、自らの力で指導して、成果をあげて、より強い信頼を獲得しようとする。ここで重要なのは、自らの力ということである。この自らの力に拘って、かえって、周りの信頼を失うことになってしまうのである。

 ミンゼナは、よくそのことを理解していた。たとえ、実権を握ったとしても、最初にすべきことは成果をあげることではあるが、周りをうまく使い、権限をしっかり与えたうえで、成功させることである。そのために、自らの力による指導は最小限にして、部下に対する態度も謙虚であることが大切だ。

 そして、相手を追い出して権力を握っている以上、謙虚であり、かつ、不満に対してもあまり気にしないか、相手の意を汲んだうえで、自らをどうすればいいかということを相手に考えさせるのだ。そう、ミンゼナに不満があるものに対して、どうすればミンゼナが上であることを受け入れてくれるかというように―…。

 ミンゼナは、駆け引きと自らの力に関して、心得というものをしっかりと持っている。ゆえに、それをミスせずに出していくしかないのだ。相手の動きによって良い方に発揮されるときもあるが、悪い方に発揮されることがあるのだから―…。


 それから、ミンゼナが実行日と定めた日。

 その日までに、ムーメインは、自らの研究室にいる情報を出資者やミンゼナらに漏らした人物を探しているが、一向にわからないのだ。

 ムーメインは、探偵であるわけがないので、そこまで相手の洞察を見抜くほどの実力があるわけではない。

 ムーメインは、切羽詰まった状態であった。

 (結局、わからずじまいか。本当に、一体、誰だ。別の世界を観測した情報を漏らしたのは―…。たぶんだけど、毎日漏れているはずだ。なのに、その漏らしている人物の尻尾が掴めないなんて―…。)

と、ムーメインは、自らの頭を掻きながら心の中で思うのだった。

 ムーメインのこのような心の中で思っている言葉は、表に出ていないが、イラつきという表情がでているので、ムーメインが研究室のトップをつとめる場所では、他の研究員がムーメインに声をかけずらそうにする日々となっていた。イラつきがどのように自身に噛みつかれるかということに対して、恐れを抱きながら―…。

 それでも、この研究室では、別の世界に対する観測は続いていた。この数日でわかったことは、その別の世界には人が存在し、自分たちの身の周りにある建物よりも高い建物があり、人々は、道と思われる場所を行き交っていることである。研究室の人々には、建物や道ということはわかるが、それがどんな名前やどのようにして建築されているのかわからなかった。別の世界の方が文明として発展しているのではないかと思わせるほどであった。

 彼らは気づくことは一生なかったが、後にベルグによって気づくことになるが、その世界は現実世界であった。

 そして、研究室の別の世界を観測に成功させることができたマルインダルが見た建物とは、現実世界の日本に存在するビル群であり、道とはアスファルトで舗装されたものである。異世界においても、ビル群は存在する。ビルと呼ばれるものが現実世界よりも前に異世界のある場所では、すでに建てられていたという―…。だけど、ここの研究者たちが知っているわけではない。リース王国のある半島とその周辺では、高い建物といえば、王族や領主が住むような城しかイメージがないのだ。

 この時代のリース王国のある半島とその周辺の人々は、ごく一部の商人が遠くへ商売に行く以外は、ほとんど、遠くへ移動するのは、生涯に一回でもあれば、すごいことでしかないのだ。ゆえに、高層ビルのような建物を知らなくてもしょうがないのだ。

 見たものがないのを、理解できなくても―…。

 そして、今日も別の世界に対する観測が続いている。行くべき手段も考えるようになっていた。だけど、理論の段階での躓きがあり、妙案というものは浮かび上がらなかった。数日で浮かび上がるようであれば、どんだけ運が良いのかということになるだろう。今は、辛抱強くやっていくしかない状況だ。可能性にあたるための―…。

 そして、扉の音がする。その扉は、この研究室と廊下を結んでいる。

 (こんな時に客か。)

と、ムーメインは、心の中で客が来たのかと思った。

 なぜなら、研究室に属しているメンバー全員、研究室の中にいるからだ。そうなってくると、お客か、研究所の中の別の研究室の人か、秘書や所長ということになる。それぐらいしか考えられないのだ。出資者の場合なら、あらかじめ秘書が研究室に来て、出資者は応接間に案内されているのだから―…。

 そして、研究室に入ってきたのは、十人ほどの人物だった。それも黒い恰好をした―…。

 「いけ、眠らせろ。」

と、黒い恰好をした一人が命令する。

 命令しているのは、モウスである。

 モウスの命令で、一気にモウスと同じ格好をした人々が、この研究室にいる研究員に向かっていく。

 「ガァ」

 「アッ」

 ゴツゥ、ゴォ、と研究員の首に向かって手刀をし、気絶させていくのである。今回の命令では、最悪の場合、殺してもいいのであるが、なるべく、研究室に血が残るような真似をしたくはなかった。証拠を消すのに、時間を消費してしまうからだ。こういうのは、素早くやって、素早く撤収するのがよいのだから―…。

 こうして、気絶させた研究員たちを、研究所の外へと出していったのである。


 所長室。

 すでに、所長は気絶させられていた。

 黒い恰好の人物が、これをやったのだ。

 そして、ムーメインをトップとする研究室でやったのと同様に、素早く外に所長を運ぶのであった。

 その様子を仕掛けた本人であるミンゼナが見ていた。

 (あっさりしすぎたな。他に、見落としがないかを考えないとな。)

と、ミンゼナは、所長室から自分の秘書室へと戻るのであった。

 それでも、ミンゼナは、あっさり行き過ぎたことに対して、懸念もしている。何事もうまく行き過ぎると、どこかにとんでもない落とし穴というものがあり、それが、後々、自分たちを不利にしてしまうのだ。

 そういうことを失敗していった他者を見て学んだことにより、ちゃんと理解できている。ミンゼナは他者の経験から学べるほどに、しっかりと物事を理解する能力に長けている。だけど、それは、自らの欲望という面にしかその能力を使っていないが―…。

 それとは、逆の方向で使ったとしても、報われるような結果になるとは限らないが―…。ゆえに、世の中なんぞ、善人が得するとは限らない。だけど、善人がいなければ、世界は成り立たない。自らの悪というものを許せない善人がいなければ―…。


 研究所の近くある港町。

 この港町は、少し大きめな町であり、いくつか港の方に大きな倉庫がある。

 その一つを、ミンゼナとその裏を担う部隊は借りていた。

 その部隊は、表向きはこの港町における荷物を管理する商売をおこなっている。この港町では、唯一といってもいいだろう。

 この商売をしていることに対するメリットはでかい。倉庫を持つことは、その管理にコストはかかるが、このように裏の仕事をしていると、自らの中にターゲットを隔離することもできる。

 今回は、隔離が一時的なものになる。そう、所長やムーメインらの研究員の隔離は―…。

 「よっと。」

と、何かを運び終える時、荷物を置くような音が聞こえる。

 それは、所長やムーメインとムーメインがトップとなる研究室のメンバーが、ミンゼナとその裏を担う部隊が借りている倉庫に運び込まれたのだ。

 ここまで、一切、目を覚ますことはなかった。気絶させた後、強力な睡眠薬を一人を除いて飲ませているのだ。

 一人の人物がここで、倉庫に入ってくる。そして、運んできた人物たちを見回す。

 「全員、ここに運ぶことができたようだな。さすが、私の裏を担う部隊だ。素晴らしい仕事です。では、船の方も準備は終えているのですか。」

と、一人の人物が言う。

 「はい。そろそろ船がここに到着します。二隻です。ミンゼナ様。」

と、一人の人物であるミンゼナに向かって、運んできた人物の一人が言う。

 「そうか。作業に取り掛かってくれ。」

と、言うと、同時に二隻の船が到着する。

 そして、数十分ほどの時間をかけて、所長やムーメインらが一隻の船に乗せられていくのであった。彼らは目を覚まさなかったが、内通者は、その途中に目を覚ますのであった。

 タン、タン、と歩いて、ミンゼナの方へ歩いて行くのだった。

 「ミンゼナさん。俺との約束はちゃんと履行してもらえますよね。」

と、内通者は言う。

 実は、この内通者は、事前にミンゼナの側の人間であった。ミンゼナに誘われたのだ。ミンゼナが研究所の秘書としてやってきたときに―…。ミンゼナとしては、内通者が研究所での上のポストを狙っていることはすぐにわかった。駆け引きが得意で、相手を観察し、分析することに長けているのだ。ゆえに、簡単に見破って、自らの側に誘うことができたのだ。これが、所長やムーメインではうまくいかなかっただろう。怪しまれて―…。

 そして、内通者とミンゼナは約束していたのだ。

 (この所長と副所長を追い出すことに協力すれば、副所長のポストに就くことができる。)

と、心の中で、内通者は思い出すのである。

 その時、内通者が出した条件を―…。

 「ちゃんと守りますよ、アントス。私は、ちゃんと協力した者たちに、報酬を出し惜しむほどのケチでズルイ人間ではないので…ね。」

と、ミンゼナは約束を守ると、内通者に向かって言う。

 別の世界の観測に成功したことをミンゼナたちに漏らしたのは、アントスであった。この人物は、表向きは善人であるし、それを演じることに苦痛を感じない。ただし、自分の出世のためならのその対象を追い落とすぐらいのことはする。自分が劣っているという自分自身が勝手に思っているために―…。

 そして、ミンゼナの誘いにもすぐに乗った。副所長のムーメインや所長たちの研究への情熱と比べると、どうしてもアントスの研究そのものへの熱というのは、劣っているように感じられる。そのように感じしまうのだ。

 その劣等感が結局は、彼をミンゼナ側へと向かわせたのである。

 「ありがとうございます。」

と、アントスは、ミンゼナに例をしながら言う。

 「準備が整いました。」

という、声がした。

 ミンゼナは、

 「では、実行しなさい。」

と、命令する。

 そうすると、二隻の船が出航する。

 それは、二隻のうちの一隻を別の一隻が引くような感じで、海へと向かっていくのだ。引かれる側の船の中に、所長や副所長、副所長がトップをつとめる研究室のメンバーでアントス以外のものが寝かされたまま乗せられていた。

 そう、ミンゼナは、この海の遠くへと船を運びそのまま、引かれる側の船を海の真ん中に放置し、漂流させようとしているのだ。海の流れで、この港町に戻ることはないし、この港町は、確実にリースに寄らないと大海を渡る場所にはつかないのだから―…。

 こうして、所長、副所長、アントス以外の副所長がトップをとつとめる研究室のメンバーが研究所から追放されるのだった。

 その時、ミンゼナは、

 (さて、次は、別の世界とやらへと行く方法か。ここから、時間がかかる。長ければ長いほど、商人は投資をしてくれなくなる確率が高くなる。結果を求めてしまうからな。ふう~、あとは私に運があるか―…、いや、その運を私が手繰り寄せる、必ずや―…。)

と、心の中で固く決意するのであった。

 ミンゼナは、現実世界という別の世界へ行くために―…。


第96話-6 自分の真実を知る時 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿に関しては、次回の投稿が完成しだいこの部分で報告すると思います。

では―…。


2021年7月7日 次回の投稿分がほとんど完成しました。2021年7月8日頃に投稿する予定です。

では―…。


2021年7月8日 「ミンゼナは、楽園(ユートピア)という名の別の世界へ行くために―…。」を「ミンゼナは、現実世界という別の世界へ行くために―…。」に変更。楽園と言ったのは、第96話-2の最後の方で、笑っていた人物です。名前に関しては、第96話-6の方で出てきます。表現上のミスがありました。申し訳ございません。気づける範囲で今後、修正していくとは思います。では―…。

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