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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
194/746

第96話-1 自分の真実を知る時

前回までのあらすじは、瑠璃はイルーナに抱き着かれ、そこにギーランが瑠璃の部屋にやってくるのであった。

第96話は、内容が増加したことにより、分割することになりました。

カクヨムで更新中の『ウィザーズ コンダクター』の第1部が完成しました。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


 ギーランが瑠璃の部屋に入ってきた。

 そして、ギーランは、瑠璃と部屋の中に一人の女性を見る。

 「イルーナ。」

と、ギーランは、その女性の名を呼ぶ。

 「あなた、目が覚めたよ。瑠璃が―…。」

と、イルーナは、涙を目から零しながら言うのであった。

 涙を拭うことをせずに―…。イルーナは、自らの感情というものが溢れだし、体という名の器に収めきれないほどの量になってしまっている。

 イルーナからしてみれば、自らの娘、行方不明になっていた娘に出会ったことに、再会できたことに、嬉しさを越えるものを感じていた。それは、言葉にすることなどできるだろうかと言えば、できないと言わせるほどであった。

 「よかったな。イルーナ。」

と、ギーランは、イルーナの方へと向かい抱き着くのである。

 それを見た瑠璃は、

 (ギーランさんと、イルーナさんって恋人なのかな。いや、でも、私のことを娘と言っていたから、夫婦?)

と、心の中でそう思うのであった。

 さらに、瑠璃は続けて、

 (でも、私は、この世界に来たのは初めて感じだから、別の実の娘と私を勘違いしたのではないだろうか?)

と、心の中で思う。

 瑠璃としては、現実世界で生まれたものと思っているし、異世界にきたのに初めてという感じがしたのだ。

 ゆえに、ギーランとイルーナは、私と似たような人の娘がいて、その人と私を勘違いしているのだと思った。

 さらに、どうやって、異世界から現実世界へ来たのかという疑問が生じることになる。その問題を解決しない限り、証明のしようがないのだ。

 「瑠璃と言ったな。」

と、ギーランが瑠璃に向かって、確かめるように言う。

 「はい。」

と、瑠璃は、素っ気ないような感じの返事をする。

 これは、別にギーランを嫌ったというわけではなく、急に言われたことに対して、瑠璃が驚いたからだ。そのために、言葉は普通になっても、言い方というもの咄嗟にでるような、感情というものが遅れて出番をなくしたような感じのものとなったのだ。

 「体の方は、動かせるか。無理ならここで話すことにする。」

と、ギーランが瑠璃に体調は、大丈夫か、体を動かすことができるかを尋ねる。

 ギーランとしても、瑠璃を無理矢理動かしたいわけではない。昨日の第九回戦第四試合によって、ギーランの娘のミランとの対戦で、腹部に傷を負い、血を大量に流してしまったのだ。傷はかなりほどわからないぐらいに治ったとしても、抜けた血の量が元に戻るわけではない。

 そのせいで、貧血を起こしていないかということに関しては、心配があった。リースの城の医師であるエリシアが昨日、瑠璃とミランを診た時に瑠璃に対しての診断の時にそのようなことを言っていた。ギーランも無理させないようにした。

 「う~ん、まだ動かさない方がいいと思います。血も流しすぎましたので―…。」

と、瑠璃は言う。

 その気持ちは、動かそうとすれば、動きたいのであるが、動けば必ず礼奈に注意されて、ベッドに戻されてしまうだろうことがわかっているので、瑠璃は大人しくしておく選択肢しかない。ゆえに、ベッドから動かない方を選択するしかなかったのだ。

 「そうか。わかった。俺は、ローさんと、何人か人を呼んでくる。」

と、ギーランは言うと、部屋の外へ向かって行き、出るのであった。

 ローたちを呼び行くことと、瑠璃が目を覚ましたということを確認するために―…。

 (今、思ったのだが―…、赤の他人との二人っきりは辛いんですが――――――――――――。)

と、瑠璃は、心の中で叫ぶのだった。

 その心の中の叫びを、声に出したとすれば、リースの城の中のすべての場所に聞こえていたというほどのものだっただろう。


 【第96話 自分の真実を知る時】


 少しだけ時を戻す。

 それは、第九回戦がおこなわれた日だ。

 瑠璃、ミランの治療が終え、二人と気絶させられたアンバイドをリースの城の中へと運び、帰るのであった。

 リースの城の中の医務室。

 エリシアが瑠璃とミランを診ているのだった。アンバイドは、面倒くさいと言って、ギーランにアンバイドの部屋まで運ばせていた。李章も付き添いという形で―…、ギーランとともにいる。

 ゆえに、この医務室の中は、女性のみとなっているわけだ。

 まあ、他の同性の体の普段は見ることのできない部分を見るということに、抵抗感というものはあったが、その例外であった、エリシアは、ただ職務に忠実に怪我がないのかを見ていく。そこに、いやらしい気持ちということよりも命に関わる状態になる可能性のあるものはないかと必死に確認していった。

 そして、それを終えると、服を元に戻し、他の人間の心理がわかったのか、言葉を出し始める。

 「あくまでも医療として、患者の命に関わる可能性のあるものはないかを調べていただけだ。何、抵抗感をもって見ているんだ、お前ら、同性だろうに―…。そんなふうに見ていると、こっちの行為が医療行為に思えなくなってしまうだろうが―…。まあ、そんなことはどうでもいい。二人とも、命に関わるような傷というものはなかった。だけど、気づかないだけで、見落としているかもしれない。だから、二、三日は大人しくさせておくことだ。まあ、修行さえしなければ、軽く歩くぐらいは大丈夫だろう。それより激しめのものはさせるなよ。」

と、エリシアは、医者として、患者の状態とどうすれば良くて、どうするのが悪いのかをはっきりとした口調で言う。

 エリシアとしても、曖昧に言ってしまえば、医者である自分の言うことを聞かずに無理をする可能性が存在する。そして、老婆を見て、この人間が一番、無理なことをさせそうに感じた。

 (魔術師の格好をしているが、性格的に人を振り回すタイプの人間だ。この歳までくると、性格というものはなかなか変わらないものだ。経験が変化を恐れるのか、過去の成功という体験がそうさせるのか。悩んでも仕方ないか。)

と、エリシアは、魔術師ローを見てそう思うのだった。

 歳をめすことで、柔軟性というものを失っていることを経験的に、エリシアは知っていた。この経験則が当てはまるだろうぐらいのことは理解できた。明らかに魔術師ローは、あまり人の話を聞かないタイプであり、頑固な面がある。そして、同時に自らの弱さを受け止めきれない、いや、向き合うことから逸らしているのではないかと思ったのである。エリシアが患者とその周辺の人々と接した経験がそう告げるのである。

 「後、瑠璃とミランって言ったけ、その二人は、運ぶくらいならもう問題はない。瑠璃は瑠璃の部屋に、ミランと言う人は、ここに置いておくか。面倒くさいし―…。」

と、エリシアが指示を出すのであった。

 その後、アンバイドを運んで戻ってきたギーランに再度、瑠璃を部屋へと運ばせるのであった。その時、イルーナと礼奈、ローが同行した。


 そして、時間が一時間ほど経過する。

 夕食に関しては、人数の増加により時間の方がかかるようだ。

 セルティーが申し訳なさそうにコックや給仕係の人たちに謝り回っていた。

 瑠璃たちが最初に来た時もそうだったのであるが―…。

 場所は、ギーランとイルーナが使う予定となっている部屋であった。

 そこには、李章、礼奈、クローナ、セルティー、ロー、ギーラン、イルーナがいた。

 そして、ローが、話し始める。

 「さっき、瑠璃を部屋に運び終えた時に、瑠璃とイルーナが血縁関係にあるか調べた。」

と。

 実際に、ローがおこなったのは、現実世界における細胞の中にあるミトコンドリアのDNAを用いての検査であった。だけど、現実世界における装置を使ったり、方法ではなく、魔法によってなすものであった。

 それを、瑠璃の部屋で同行したイルーナと瑠璃からミトコンドリアを採取して―…。この魔法は、ちゃんとその者のイメージを浮かべ、顕微鏡のような視界にして探して、そこに魔法を通さないといけないのだ。繊細さが求められるし、これをできるのはローだけである。

 「その結果、イルーナと瑠璃のミトコンドリアDNAは、見事に一致し、血が繋がっていることを示した。」

と、ローは言う。

 だけど、ここにローの言っていることが理解できるものはいなかった。現実世界においても、専門的な知識であるし、瑠璃、李章、礼奈の年齢では、よっぽど生物の仕組みについてよっぽど興味があって、本を読んだり、インターネットで調べたりしないと理解できないことだろう。

 ローもこのことを知ったのは、かなり昔のことであるが、それでも、この知識に関しては、すでにその当時では別の人間によって、ある地域での何百年前からわかっていたことであった。この時代においても、まだ一部でしか普及していない知識であるが―…。

 「ようは、イルーナと瑠璃は、実の親子もしくは血縁があるということじゃ。」

と、ローは結論を述べる。

 だけど、どうしてそうなるのかを詳しく知らないが、ミトコンドリアDNAが一致していれば、親子もくしは血縁関係があるということをロー以外の全員は理解するのであった。

 本当の意味で理解できたのは、ここにはロー以外はいないであろう。

 そして、これが本当は、一番の選択肢としてよいのだろうが、あくまでも、本人の記憶に出てくる人物がちゃんと理解していないと使いずらいものなのだ。そう、第九回戦第四試合後、ミランと瑠璃の命を狙った人物を捕えた時に使った相手の記憶を自らに写し取る魔法である。

 その魔法は、相手のことを完全といっていいかもしれないほどに近いほどのレベルで理解できるが、自らの主観というものが入ってしまい、確実な証拠という面でも不安がある。相手を動揺させ、相手から言質をとるのには有効であるが、親子の証拠のようなものは、どうしても確実に誰がみてもそうだと理解できるものが必要だったのだ。

 だから、ミトコンドリアの独自のDNAが母親からしか遺伝しないという性質を利用した方法を魔法で試みたのだ。

 つまり、誰もがわかる確実な証拠で、瑠璃とイルーナは親子であることが証明されたのだ。

 そして、そこに状況証拠を当てはめる。

 「李章よ、瑠璃は今は年齢として何歳じゃ。」

と、ローは、李章に尋ねる。

 「私と同じ、12歳です。」

と、李章は答える。

 「そうすると、12年前ということになるなら、状況証拠の方も一致する。」

と、ローは言う。

 「ギーラン、お主の2番目の子どもがいなくなったのは、生まれてすぐであり、12年前じゃの~う。」

と、続けてローは、ギーランに向かって言う。

 「そうです。」

と、ギーランは、簡潔に返事をする。

 「ふ~う。これで、儂は、数日ほど魔法やら使えなくなるほどに枯渇する。だから、あまりバンバンと試すことができない魔法であるのだが、状況証拠、客観的証拠が揃った以上、確実と言っていいほどの目的の結果が得られるの~う。なら、使わせてもらおう。」

と、ローは、言い始めると、両手に光が集まり始める。

 これからローが使おうとしている魔法は、対象の記憶を除き、かつ、その記憶をこの瑠璃の部屋にいる人が共有して、瑠璃とイルーナが実の子である映像的証拠と同時に、瑠璃がどうして異世界から現実世界へと渡ったのかを調べるためのものだ。

 ローは、この魔法を使うと、数日の間、魔法を使うほどができないというリスクを負うことになる。そのため、迂闊にこの魔法を使うことはできないし、確実性をもって使わなければ、空振りに終わって、数日を無駄にするということになってしまう。

 そんなことをしてしまえば、自らの命を守ることができる環境、いや、安全なところにいなかったのだ。リースの城の中で、かつ、ギーランやアンバイドなどがいれば、数日ほど魔法が使うことができなくても、大丈夫だろう。魔法と言っても、厳密には能力に分類されるのであるが―…。魔法と能力の区別は、この異世界において曖昧なものでしかないが―…。

 そして、魔法の名前を口にし、発動させる。

 「歩んだ人生の共有。」

と。

 こうして、話は、過去のある時点へと向かっていくことになる。

 瑠璃の部屋にいる者たちは、瑠璃の視界で話を見ていくことになる。

 だけど、この魔法には大きな欠点が存在する。対象である人物が拒否をしていないとされる部分しか覗けないのだ。無意識で覚えていない記憶は覗けるが、完全に他者に知られるのが嫌なものは、覗くことができないのだ。

 ゆえに、瑠璃が李章のことが好きだというところは、いくら術で行使しようとしても覗くことはできないし、共有されることはないのだ。

 そして、瑠璃の視界で見る世界は、瑠璃の視点で語りたいところであるが、それは映像と言葉でしかない場面もあるので、第三者の視点からみていくのがいいだろう。

 では、あの日の真実へ―…。


第96話-2 自分の真実を知る時 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


今回は、ミトコンドリアDNAという言葉が出てきたので、説明するのがうまくできたか不安です。このミトコンドリアDNAで、人類の母親の系統からの先祖をたどることができ、ある一人の女性にたどりつくようです。それを参考にしています。う~ん。やっぱり難しい、文章を書くことは―…。

ちなみ、『水晶』の科学技術に関しては、時代や場所によって異なっています。このように、ミトコンドリアDNAやらのようなものが出てくることもあります。

次回の更新に関しては、完成しだい、この部分でお知らせするつもりです。

では―…。


2021年6月25日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2021年6月26日を予定しています。

では―…。

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