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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
193/747

第95話-2 戻らぬ事

カクヨムで『ウィザード コンダクター』投稿中。

アドレスは、以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、クルバト町付近で頻発する地震を調査するために、リースの中央の権力を握っている側がランシュにそのことを言わずに、三人の調査員を派遣するが、一人の人物によって、その調査員の代表であった人物が殺されるのであった。一瞬のうちに―…。

今回で、第95話は完成します。

 その光景に、二人驚く。

 簡単に人が殺されたのであるから―…。

 一人の男が、モーゲルを一瞬で斬ったのだ。

 いや、一瞬という時間すらかけずに―…。

 イアンデルタルとミゴマンドは、呆気にとられ、言葉を口にすることができなかった。

 決して、言葉を忘れたのではない。処理が追い付かないのだ。

 そう、今の状況を説明するための言葉を編むための衝撃を表すことを―…。

 「後は、二人か。たぶんじゃが、お前らは、ランシュ側ではなくて、城の中で権力を古くから握っている者たちの側か?」

と、一人の男は言う。

 その言葉は、イアンデルタルに考えを浮かばせる。

 (ここで、この答えをすれば、モーゲル様のように殺されてしまう。俺たちではこいつには勝てない。それほどに実力差がありすぎる。ここは、誤魔化しても―…。)

と、心の中で考えるけれども、その中で冷や汗を感じるのであった。

 「でも、一人で考えているようだけど、意味ないよ。ランシュならこんなヘマはしないのだろう。だから、ランシュを経由せずにおこなわれているのが実際のところであろう。なら―…。」

と、一人の男は言いながら、イアンデルタルに近づく。

 (何なんだよ。どうやっても気づかれる。)

と、心の中で思うのであるが、その思考自体も意味をなさないものしかならない。

 「ランシュ側でなければ、お前らは、ここで、死んでもらうよ。残念だったね、アバ。」

と、一人の男が言うと、一つの首が体から離され宙を舞い、それが地面に達するまでに、もう一つの首が宙を舞う。

 こうして、モーゲル以下のクルバト町周辺で起こる地震の調査は全滅ということになった。

 そして、その遺体は、火で静かに燃やされ、土の中に埋められて、埋葬されたという。

 この一人の男という人物は、通信機を使って、一人の人物に報告する。

 「ベルグ様。こちらを探りに来た者たちの処分を終えました。」

と、一人の男が言う。

 その報告相手である一人の人物とは、ベルグのことである。

 「そうか、アババ君。感謝するよ。で、探り来た者たちはどんな感じ。」

と、一人の男であるアババにベルグは、探りに来た者たちがどんな人物であったのかを尋ねる。

 ベルグとしても、それをしっかり把握しておく必要があった。それが自らの敵対勢力であれば、速めに対処しておくことが重要であった。そうしないと、敵対勢力の助長を促しかねない。それは、今のベルグにとってはいいことではない。魔術師ローと関係している者以外は―…。

 魔術師ローと関係のある者たちは、すぐに対処すべきではないのだ。対処というべきことはすでにしており、そのための時間を稼ぐことしか有効な方法はないし、時間切れが一番の対処となるからだ。

 「たぶんだけど、ランシュが派遣した人間たちではないようだ。」

と、アババは言う。

 そのアババのセリフの中にあった、「ようだ」という点に関して、ベルグは不思議に思う。

 「ようだ―…、っと言っていたようだが―…。確定していないのはなぜだ。」

と、ベルグが言う。

 そのベルグの疑問に対し、アババは答える。

 「さっき殺した奴の口から確かめる前に殺したからです。」

 その言葉を聞いたベルグは、呆れかえるのであった。アババは物凄く優秀なのであるが、相手の気持ちの先をすぐに予測して、行動してしまうために、証拠というものを押さえることに失敗することが珍しい確率であるのだ。本当に優秀か、とツッコミを入れてしまいそうだが、そのマイナス面を差し引いたとしても、優秀と思えるほどなのだ。

 「そうかい。でも、アババ君の勘というのは当たるものだからねぇ~。どこから来たのか予想できているのだろ。」

と、ベルグは、アババが殺した者たちがどのような人物であるかを予想できているのではないか、と経験則から理解することができた。

 「はい。その通りです。たぶん、三人は、リースの騎士で、中央でランシュが排除することができなかった権力者たちが派遣してきたのだろう。ランシュを介さずに―…。」

と、アババは、自らの予想を正確にベルグに伝える。

 その言葉を聞いて、納得がいったのかベルグは、ゆっくりと言葉にし始める。

 「そうか。アババ君の言葉には納得してしまうよ。少しの情報だけで、相手の素性を暴くのだから―…。ホントに―…。そして、ありがとう、アババ君。戻ってきてくれ。」

と、ベルグは帰還命令をだす。

 「わかった。そちらに戻ります。」

と、アババが言うと、通信機をきり、ベルグのいる場所に戻っていくのである。

 (リースの一枚岩ではない、ということか。とにかく、ベルグ様の実験は、今、見つかるわけにはいかない。)

と、心の中で思いながら―…。


 リースの城の中。

 そこは、牢獄と言っていい場所。

 ここには、一人の人物が収監されていた。

 (なんで、俺がこんなところに捕まらないといけないんだ。なぜか、牢獄というわりには、人が一人しっかりとできるほどの生活空間となっている。)

と、一人の人物は、心の中でリースの牢獄に驚くのであった。

 この人物にとって牢獄とは、牢屋だけの粗末なものというイメージしかないのだ。そう、トイレをするための場所や、寝るための布団やベットもない、人をただ押し込めるぐらいしかない―…。そして、汚いというイメージがステレオのようにあるのだ。この世界におけるこの時代の牢獄事情は、国や領によって異なる。それは、ステレオのイメージを抱くような牢屋というものもあれば、一人がそこで生活できる空間となっているものもあるように、千差万別と言ったところであり、国や領の考え方の違いによる。

 原則的な傾向としては、人の権利というよりも見せしめ、権力者側に対する反抗および彼らが定めた法に従わない人物がどうなるかということを知らしめるのであれば、トイレをする場所や寝る場所のない、何もない部屋というだけの粗末なものという傾向になり、人の権利というものを重視する傾向にあるところでは、生活ができるほどの空間や設備を整える傾向がある。それは、何も人権を重視するという面だけでなく、捕えた相手が釈放された場合、その相手の国に丁重な扱いをされたという情報を流してもらうためでもあった。そうすれば、流された側の国の牢獄などの事情も改善せざるを得なくなるし、釈放した相手がしっかりと自分たちに情報を流してもらえる可能性があるからだ。

 結局、全ケースでそうなればいいとは思っていない。そうなれば、儲けものぐらいの気持ちであるが―…。

 (だが―…、これだと牢獄というよりも監禁もしくは軟禁と言ったほうが正しいかもしれない。待遇はいいみたいだな。)

と、一人の人物は、勘違いするのだった。

 部屋自体は、王宮にあるような大きな部屋というわけではなく、現実世界のワンルームマンションぐらいの広さと言ったほうが正しいかもしれない。その広さからしても一人の人物にして牢獄だと思わせないほどだった。

 そして、ロックがしたので、ドアノブを握り、ドアの隙間から相手を確認するかのようにして開ける。

 「!!」

と、一人の人物は驚いた。

 痺れを感じたのだ。

 「ここの牢屋は、天成獣の力の持っている者に力を行使されないような構造にしています。そして、あなたは、外に出ることができても、縛られたままの状態となります。くれぐれも脱出なんてことは考えない方がいいですよ。」

と、ドアを開いた後、先頭に立っていた女性が言う。

 恰好からすれば、どこかの国の姫が着そうパーティドレスを着ていて、色は白で覆われていた。

 さらに、女性の左右の後ろには、魔法使いの格好と思われる老婆、そして、大剣を持っている剣士で、その人物は年齢からして40代と思われるが、少しだけ若く見えた。

 その老婆の方から話し始める。

 「ベルグが言っておったミランと瑠璃の命を狙った者か。ふむふむ、実力はそこまででもないのか。で、狙った理由は、自らの昇進か。」

と。

 老婆の言葉に、自らの思っていること、狙いが見透かされていることに驚く。実際、ローは、この一人の人物の記憶を、この人物をリースの競技場で捕えた時に、そいつを中央の舞台に空間移動させる間に見ているのだ。ゆえに、完全と言っていいほどに一人の人物のことを理解することができた。

 しかし、それでも、魔術師ローとしての解釈が入るので、理解できたとしても、ローがダメなものと判断したものは、これからの判断において排除され、ローの主観が入ってしまう。ゆえに、理解することができたとしても、完全ということにはならない。一つの金属のみの物質の塊にも不純物が確実に混ざるように―…。

 (ここで、嘘を付いても、この老婆は俺の思っていることを確実に言ってくる。何なんだ。この老婆。いや、そんなことを考えたとしても意味はない。なら、俺は、ここは正直に話すしかない。)

と、一人の人物は、心の中で考え、嘘を付けないと判断し、観念して正直に話すことにした。

 「そうだ。俺はベルグ様のある情報を偶然耳にして、三人組を討伐することで、ベルグ様に評価してもらうために―…。そして、三人組の一人とランシュにいた十二の騎士の一人となっているミランが実の血の繋がった姉妹ということだってなぁ~。俺の能力を使えば、事実をメモすることができるのだからな。まあ、ミランに接触したのは、ランシュが企画したゲームの予選の前だけど…な。」

と、一人の人物は言う。

 言っていることは、事実だ。ゆえに、ローも嘘を付いているという指摘をすることができなかった。そう、能力という言葉さえも嘘ではなく、事実であるということを―…。

 ローも一人の人物の記憶を見ていくなかで理解している。ゆえに、この人物の能力名を言うことができる。

 「記憶の複写保存。」

と、ローは言う。

 「そうだ。なんで知っているんだ。俺と同じ能力者か。なら、わかるだろ。俺は、人の思いが籠もった物からその思いが籠めた人物の込めるまでの人生をすべて見ることができるのだよ。ベルグ様が持っていたある資料を見てな。そして、その資料を複写することも可能だ。ゆえに、それを再現して、ミランとかいう少女に見せたら、俺に協力してくれた。本人は、自分も殺されると知らずな。相当に恨んでいたんだろうな。そして、俺は同時に、ランシュが何かを企んでいたことを知っていた。三人組討伐関連だと確信していたから、ミランにそれに参加するように促した。予選は圧勝で勝ち抜き、第九回戦の出場となって、時間が空いてしまうことになった。そこだけが唯一の失敗だった。クソッ!!」

と、一人の人物は、最後に自らの目的が達成できなかったので、悔しそうにするのだった。

 この人物は、瑠璃、李章、礼奈が異世界へと来た早い段階で、瑠璃たちの情報、ランシュ、フェーナが話し終え退出した後に、ベルグが言っていたことを聞き、瑠璃の本当に血の繋がっている血族を探したのだ。自らの情報網をフルに活用して、そして、数日後にミランのいる場所を特定し、さらに、そこにランシュがゲームを企画をしていることを知ったので、その情報を正確に得てから、ミランに接触した、復元した文書を再現したうえで―…。そこから第九回戦第四試合までの記憶を思い出しながら、自らの完璧であったと思った計画に、失敗する要素がなかったと思っていたがうえに舌打ちをするのだった。

 ギーランは、掴みかかりたかった。自分の身内の命を弄ばれたのだから―…。ミランは生きているにせよ、そのようにしたことを許せるはずもなかった。

 それでも、ローによって、事前に約束させられたいた。相手に掴みかかって、相手を殺さないよう―…。その制約のせいで、ギーランは、掴みかかって一発殴りたい気持ちを抑えるのであった。怒りという感情がギーランという人間の中をめぐりにめぐる。外へと逃れるために―…。そう、殴るという発散によって、外へと出して、自らの体を怒りに苛まれ、暴発しないように―…。

 だけど、それができない以上、ギーランには限界というものが存在する。時間が経てば経つほど、我を失って、冷静に判断することも、抑えることもできなくなるだろう。

 「ふん、お前ごときの策なぞ、その程度の結果で終わる。むしろ、失敗して良かったではないかの~う。変な手柄を立てたとしても、今のお主の実力に見合っておらぬ。見合わせたいのなら、己の実力とやらしっかりと理解し、鍛えることじゃの~う。」

と、ローは、まるで、見下すように言う。

 ローは理解していた。その人物の記憶を見ているだから当たり前のことだ。ベルグも言っていたように実力がないくせに、卑怯なことをやって成果をあげようとする。さらに、ローはその人物の記憶を見たことにより、自分を実力以上に見せようとする癖が存在した。人は、自らの実力よりも少し上くらいにするのは、本人の成長のためになるが、過剰になってしまえば、弁えることと謙虚であることをやめ、増徴しかねない。

 この人物にとっては、自らを知り、鍛えること、成長させることすることができないと思っているのだろう。まあ、限度と言うものがあるし、成長すればするほど、次の成長への確実な手応えを感じるのはなかなか難しいことである。ゆえに、そのせいで、自らの成長をするということを止めてしまうし、ある面においては、老化という衰えのために、成長するどころか、前よりもできなくなるということもある。

 この人物は、結局、そういうことのなのだろう。ゆえに、ローは攻めることをするよりも、見下すことにして、奮起を促した方が得だろうと思うし、しばらくは外に出ることはできないだろう。

 今度は、王女のような恰好、いや、本当に王女であるセルティーが言う。

 「では、彼を牢屋の中に入れておきなさい。」

と。

 そうすると、近くにいた牢屋の見張りをおこなう人物たちが、一人の人物を牢屋の中に無理矢理入れるのであった。

 そして、ロー、ギーラン、セルティーは、犯罪者を入れる場所から出ていくのであった。ギーランはその後、ローとセルティーと別れ、瑠璃の部屋へと向かうのであった。

 昨日、聞いたことが事実だと確定したからだ。


 そして、時は戻り、リースの城の中の瑠璃が泊っている部屋の中。

 瑠璃は、まだ抱き着かれていた。

 だけど、話さないといけないことがあった。

 抱き着いてきている女性から少しだけ離れ、

 「あの~、あなたはどなた様でしょうか?」

と、瑠璃は、女性に尋ねるのであった。

 女性は、少しの間考える。う~ん、と頭の上にハテナポーズを浮かべるかような動作をし、点マークが何個も時間が経過していくごとに増えるように―…。

 そして、女性は、思い出したのだろうか、ポンと、右手をグーにして、左手をパーにして、左手を下にし、右手で軽く左手をたたく。

 「そうだったね。私と瑠璃は、初めてだったね。実は、第九回戦の瑠璃の試合を見せていただいたの。途中からだけど―…。そして、私はあなたの母親です。」

と、女性が言う。

 それは、まるで、事実のことのように、瑠璃は思えたのだ。だけど、証拠がない。瑠璃は本当なのかどうかはわからないので、そのことを言おうとする。

 その時、また一人、瑠璃の部屋に入ってくるのであった。

 その人物は、瑠璃にとって、忘れられる人物ではなかった。恋愛感情というものではなくて、自分の正体について知っているのではないかと思うぐらい人物であった。

 瑠璃はその人物の名前を知っている。その人物は、瑠璃、李章、礼奈をこの異世界に送った張本人であるのだから―…。

 「ギーラン…さん。」

と、瑠璃は、無事だったことに驚き、安心するのだった。


 【第95話 Fin】


次回、瑠璃の過去がわかるのか?

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第96話は長くなるかもしれません。第94話のように―…。これが終わって少しすれば、最終回戦に突入です。やっとの思いで、最終回戦です。長かった。寄り道しすぎだろと思うかもしれませんが、『水晶』自体が寄り道のような要素があるので―…。

次回の投稿に関しては、まだ、次の分が出来上がっていないので、出来上がった時に、この部分で報告するつもりです。

では~、次回の投稿で―…。


2021年6月23日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2021年6月24日になります。仕上げるのに時間がかかってしまい申し訳ございません。なるべく、無理しないペースとなると思いますが、疲れがくると遅くなると思います。ご容赦ください。

では―…。

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