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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
191/748

第94話-7 再会

宣伝。

カクヨムで、『ウィザーズ コンダクター』を投稿中です。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

宣伝終了。

『水晶』の前回までのあらすじは、屋根裏倉庫にいた赤ん坊は、瑠璃という名前を付けられる。そう、松長瑠璃の最初の話である。そして、話は、その時から12年後に戻る。

今回で、第94話が完成します。

 そして、話は、12年後に戻る。

 そう、美陽が、瑠璃に対して、瑠璃の出生に関する話を終えるのである。

 「―…とまあ、そんな感じで、瑠璃は育っていったのだよ。」

と、美陽は言う。

 (最後の方は、手抜きのような気がしました。育て始めて以後の苦労話はないのですか。時間がかかりそうだから、一旦区切った方がいいと判断したのでしょうか。)

と、李章は、心の中で思うのだった。

 李章としては、瑠璃の出生に関して、名前が決まる過程があまりにも簡単なものとなってしまっており、さらに、それ以後、他の人の関係がどうだったのかがわからなかったのだ。李章の祖父とかが登場していない以上―…。

 さらに、李章は、この瑠璃の出生の話しをまだ、聞きたいと思っていた。李章は、瑠璃に惚れている以上―…、好きな人のことを知りたい、自分が知らない好きな人の姿などあってはならないという独占欲が少しだけ姿を現わしていた。それを時間の長さというものが李章に冷静な判断を取り戻させたことにより、抑圧することに成功する。

 それでも、李章は、機会があれば、瑠璃のことを知るために、瑠璃の義理の母親ということになる美陽に聞こうと考えるのであった。

 瑠璃は、なぜか李章が瑠璃のことを聞こうと考えていることには、一切、気づかなかったのである。

 瑠璃にとっては、自身の過去において恥ずかしいこともあるし、李章に聞かれたくないことの一つや二つ、いや、それ以上あることであろう。もしも、瑠璃が李章の考えを知ることができたのならば、必死に母親である美陽に、李章に話さないように口を酸っぱくして言っていただろう。

 「ふ~ん。」

と、瑠璃はそれでも拗ねていた。

 引っ込みがつかないような感じだ。瑠璃としても、血の繋がった両親だと思っていた人が、実はそうではなくて、自分がこの家で発見された誰の子か分からない子どもだと知ってショックを受けていたが、それでも、真剣に育ててくれていることに感謝の念がないわけではない。

 それでも、それを最初に言ってくれなかったことに対して、まだ腹を立てているけど―…。甘いモノやら瑠璃の好きなものでは、一切、許す気はなかった。

 そんなことは、美陽にとっても承知だった。ゆえに、悩む。

 (う~ん、瑠璃を甘いモノ、もしくは好きなものを買い与えるだけで許されることはないだろう。そもそも、それでは、本当の意味での反省にはならないだろう。元の関係とまではいかないにしても、いつもの関係にはある程度戻しておく必要があるわね。くっ、浮かばない。)

と、美陽は、心の中で悩みながら、辺りを見回す。

 何か、瑠璃を懐柔する手はないか、と。最悪の場合、素直に謝るという選択肢を持ち合わせながら―…。まずは、素直に謝るべきではないかと思うが、そうすると、美陽としては瑠璃に弱みを握られそうで嫌だった。そこの部分においては、性格が似たのではないかと美陽の勘が告げている。

 (…引っ込みがつかなくなった。それもこれも、お義母さんのせいだから―…。ちゃんと正直に最初から言ってくれればよかったのに―…。)

と、瑠璃は心の中で思う。

 瑠璃としては、ショックの大きさから少しだけ立ち直りつつあったけど、血が繋がっていないことを言わなかったことに対しての見返りをどれほどにするか、搾り取るだけ搾り取ってやると思っていた。それほどのショックを受けたのだから、元を取らないと自分だけが損したと思ってしまうからだ。

 美陽は見回している間に、李章に視線がいくのであった。そして、美陽は、思い出すのだった。

 〔李章君、瑠璃に惚れているみたいだって―…。〕

と、隆道に、李章に対して、瑠璃の出生について話すことの許可をもらおうとした時に、隆道が言っていたことを―…。

 その言葉に美陽は、ある考えが浮かぶのであった。そして、隆道は知らなかったが、美陽は知っているのだった。いや、瑠璃から教えてもらったわけではないが、女の勘というものが働いて、瑠璃が李章のことが好きだということに気づいていたのだ。前々から、そのような感覚はあったのであるが、美陽にとっての確証のあるものはなかった。それが李章が居候を開始すると、瑠璃が服装に気を使ったり、李章を気にする素振りをするようになったのだ。瑠璃が自らのだらしないところをあまり見せなくなったことを―…。

 そして、美陽は直感が働いて、瑠璃が李章のことを好きだということに確信をもつことができた。

 ゆえに、使える手なのではないか、と。ただし、出費が痛くなるのは仕方ないと思っていた。自分が今まで瑠璃の出生に関して、瑠璃に言い出せなかったことが原因なのであるから―…。

 美陽は覚悟を決める。

 美陽は、瑠璃に向かって土下座するのだった。

 「瑠璃、言わなくて申し訳ございませんでした。それでも、言い訳がましいことを言わせていただくと、言いたくても瑠璃に実は、血の繋がってないって言うと、瑠璃がショックを受けてしまうと思ってしまって、ここまでずっと言えなかったの。」

と、頭を上げることなく美陽は言う。

 それを聞いた瑠璃は、

 「ショックは受けた―…。裏切られた―…。」

と、まだ、拗ねるのを終えることができなかった。

 瑠璃としては、自らの出生のことに関して言わなかったことを許そうという気持ちは出ていた。それでも、何もなしに許すのは、瑠璃にとって嫌なことでしかなかった。

 そうしてしまうと、何かにつけて、瑠璃自身に不利益が及んだときに、「あの時も許してくれたよね、今度もお願い」とか言って、許すことを迫られそうに感じたからである。

 「お願い。許して!! 瑠璃!!! 母さんが悪かった!!!!」

と、美陽は、土下座をしながら言う。

 そして、美陽は、

 (ここまできて許してくれないのは当たり前。まずは誠意を示せたと思う。次は、あの手で一気に―…。)

と、心の中で思った美陽は、土下座を止め、瑠璃に近づいていって耳打ちをするのだった。

 ごにょごにょ。

 李章には、聞き取れるものではなかった。李章は、ただ眺めることしかできなかった。何とか、拗ねている瑠璃の機嫌が直ればいいと思っていた。

 美陽によって耳打ちされている瑠璃が、しだいに、悩み始めるのである。

 そして、瑠璃は、悩んだ末に、

 「その条件なら許す。」

と、瑠璃は返事をしたのだ。

 そう、瑠璃の出生を正直に言わず、瑠璃より先に李章に話したことに関して、瑠璃が許したのである。

 その瑠璃の言葉に対して、李章は、心の中で安心するのだった。瑠璃の少しだけ現金な性格なところがあったことで、もう二度と会えなくなるのではないかという気持ちがなくなったのを感じて―…。この李章の気持ちは、李章の中で大きなものであり、瑠璃が離れていってしまえば、李章の心の傷は物凄いことになり、二度と立ち直れなかったであろう。ゆえに、李章にとっての最悪の危機を脱し、精神的な安定を得たのだ。その安定は、気持ちを擦り減らすものであり、ここにもう一つ、良しにつけ、悪しきにつけ、衝撃が加われば、疲労で倒れてしまいそうなほどであった。

 李章は、両親から求められる期待の中で生きて、失敗すれば、痛い目に会わせられて以上、精神的に普段から擦り減らす経験が強く、ダメージも強い。さらに、瑠璃の家に居候している以上、普段から松長家に配慮しているという精神的なものもあり、精神力は普段よりも少しだけ低くなっていた。そこに、瑠璃の出生に関する話しとそれを瑠璃に聞かれ、瑠璃を捕まえた後の瑠璃の表情、瑠璃と美陽の言い争いで、完全に擦り減らされていたのだ。

 だけど、そんな李章の配慮なんかないかのように美陽は告げる。李章にとって喜ばしいことであることから―…。

 「李章君、次の週末、瑠璃とのデートお願いね。」

と、美陽は、李章に向かって言うのだった。

 李章にとっては、衝撃でしかなかったのだ。悪い方の衝撃ではなくて、嬉しい方の衝撃で―…。李章の心の中では、

 (瑠璃さんとデート、瑠璃さんとデート。)

と、何度も同じ言葉を繰り返し、倒れるのであった。

 気を張りすぎた李章は、完全に衝撃という一撃を受けてしまって、意識を失っていったのである。

 この時、瑠璃と美陽は、李章が何で倒れたのかわからずに、隆道によって、気を張りすぎたことが原因じゃないかと思うと言われ、休ませるのであった。

 隆道には何となくわかったのだろう。

 (李章君。君の人生も大変そうだけど、君には味方がいるのだから、その人たちとともに頑張りなさい。そうしないと、私のように、一つの大事なものを失うよ。弟との兄弟という関係みたいに―…。)

と、李章の将来が幸せであることを祈るのであった。


 その後、瑠璃と李章は週末にデートをしたという。

 その話はこの物語では、今のところ関係のないことだ。

 語る必要もない。

 そろそろ、目覚めようではないか。今、起こっているという時に―…。


 第九回戦がおこなわれた日から翌日。

 場所は、リースの中にある城。

 この城は、リース王国の王家が住む場所であり、政務の中心をなす場所である。

 その中に、王家の客を泊めるための部屋がいくつかある。

 そのスペースの中の一つに瑠璃の部屋があった。

 瑠璃は、自らの部屋で眠っていた。

 昨日の第九回戦第四試合で、ミランの攻撃を受けて、傷を負って、出血し、試合終了前に倒れるのであった。試合に関しては、引き分けで終わった。

 それは、瑠璃がミランに気絶するほどの雷の攻撃をしたからだ。

 そして、今の時間が、朝といってもいい時間。

 ベットに寝ていた瑠璃が目をチカチカさせるのであった。目覚めの時だ。

 (ここは―…。)

と、瑠璃は、心の中で言いながら、辺りを見回す。

 ここがどこなのかを理解するために―…。右、左と頭をクルッ、クルッ、向けながら―…。

 (私の部屋だ。ということは、私は死なずにすんだ―…。ということは、私は試合に勝利したの? いや、第九回戦第四試合(しあい)に負けたけど、お情けで救ってもらったとか―…。今、そんなことを考えても意味ないし―…。それに、久々に夢を見た。私が実は血の繋がった子ではないという夢。やっぱりミランという人から恨みを抱かれたからそのような夢を見たのかもしれない。私は一体何者だろう…。)

と、瑠璃は、心の中で考え始める。

 瑠璃は、松長家の人間とは血が繋がっていないことは知っている。第九回戦第四試合で李章の発言によって、周囲のものたち、特に、礼奈の方が物凄く驚いているが―…。それでも、瑠璃は、その後、少しだけ自分がどこの誰によって捨てられたのか、本当の両親は誰かと考えることが多くなった。でも、答えも手掛かりも見つからなかった。なぜなら、手掛かりとなる水晶は、すでに李章の体内のあるのだから―…。

 結局、瑠璃は、自分が何者であり、両親が誰なのかということはわかっていない。むしろ、瑠璃が生きているうちにわかることはないのかもしれない。それほどに、何もわからないのだ。その感情が、瑠璃に絶望に近い気持ちをわずかにでは与えるし、諦めという気持ちを自分の中に作り上げて、無理矢理納得させるのであった。

 そんななか、トントンと部屋の扉のノックがする。

 そして、部屋へと一人の女性が入ってくる。

 その女性は、瑠璃から見れば、少し大人びており、二十代と言ってもそれで通ってしまい、瑠璃の年の離れた姉と言っても、違和感を感じないほどである。と、同時に、瑠璃は、部屋に入ってきた女性の髪の色が自分と同じ赤色をしているのに気づく。

 (赤い髪の人、この世界にもいるんだ。自分と同じぐらいの赤さの―…。)

と、瑠璃は、心の中で呟く。

 瑠璃は、女性の赤色の髪が、自分の姿を鏡で見る時に移る自分の髪と同じ色の濃さの髪であることに気づく。今までは、瑠璃自身が気づいていないだけで、現実世界でも赤髪の人はいたと思う。だけど、瑠璃の常識では、髪を染めて赤くしていると思っていたし、異世界に来てからも、あまり自分の印象に残るような赤い髪の人を見かけたことはなかった。まず、現実世界の石化を阻止するために、ベルグという人物を探さないといけないと思っていたから。そこまで気がまわらなかったというのもある。

 そして、部屋に入ってきた女性は、瑠璃へと近づいてくる。

 そう、瑠璃がいるベットへと向かって―…。

 瑠璃は、部屋に入ってきて、自分に近づいている女性に心の中で驚きながら、表情は冷静であるように取り繕う。

 瑠璃は重要なことに気づく。

 (この人誰? もしかして、新たなに城のメイドさんとして雇われた人?)

と、心の中でそう考える。

 瑠璃は、心の中で思っていることを部屋に入ってきた女性に尋ねようとする。

 しかし、瑠璃は、その女性に抱き着かれるのである。

 瑠璃は驚く。

 瑠璃の表情は、驚きでしかなく、隠していた驚き表情が表にでている。それでも、女性に抱き着かれているので、その女性には見えないものとなっていた。

 さらに、女性は瑠璃を驚かすことを言い始める。

 「やっと会えたね。私の娘。」

と。

 (えっ、どういうこと?)

と、瑠璃は動揺しながら、心の中で思うのだった。


 【第94話 Fin】


次回、瑠璃に抱き着いてきた女性の正体がわかるかもしれないし、わからないかもしれない?

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第94話は分割となりましたが、第95話も分割することになると思います。内容の量なんかもあって、です。

では、次回の更新で―…。


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