第94話-6 再会
まずは、宣伝です。
カクヨムで、『ウィザーズ コンダクター』を投稿しています。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝は、以上です。
前回までの水晶のあらすじは、瑠璃も含めて、瑠璃の母親は、瑠璃の出生について話すことになった。瑠璃は、現状拗ねていますが―…。
今回の更新で、『水晶』の文字数は、100万を超えます。やっと、ここまできました。いまだに、『水晶』は、リースの章の後半戦という長く長くのびてしまっています。大量に内容を追加しすぎたせいかもしれません。ここは反省します。
次は、どこまでいけるかわかりませんが、頑張っていきたいと思います。『水晶』を今後ともよろしくお願いいたします。
赤ん坊を発見して翌日。
一番理世の母親が、その赤ん坊に付きっきりになっていた。
もう、理世も四歳となっていたので、母乳がでるというわけではなかったので、乳児用ミルクを理世の父親が急いで近所のドラッグストアで、哺乳瓶とともに購入した。
その他にも、赤ちゃんにミルクを飲むのに必要なものおよび、紙おむつも含めて、である。
理世の父親にとっても想定外の出来事だった。引っ越した当日に、屋根裏で赤ん坊を見つけてしまうとは―…。
それは、まるで、何か不思議な出来事なのかと思う。現実主義的なことを考える理世の父親でも有り得ることのすべてを動員して、考えたとしても、説明のできないものであり、確信を抱ける根拠はなかった。
それでも、理世の父親が、あの赤ん坊がこれからどうなるのかと思うと不安でしかなかった。戸籍に関しても、捨て子に関する相談に関しても―…。やる事が増えてしまうことに憂鬱な気分にもなるが、赤ん坊の方がよっぽど訳の分からない状態に遭遇したのかもしれない、そう思うと、自分の憂鬱な気分も大したことはないと思い、頑張ろうとするのであった。
(実の子でなくても、路頭に迷わすのは良くない。頑張りすぎない程度に頑張ろう。)
と、理世の父親は、心の中で思うのだった。
理世の父親は、子育てで頑張りすぎるのは良くないと思っていた。頑張ることは大事だが、四六時中すべてのことを完璧にできるわけもないし、頑張れるはずはない。人の集中力は決して長く続けられるものではないし、緊張状態の中に居すぎれば、疲弊してしまう。育児は特に、女性の側の負担が大きく、逆の場合もかなり昔の時代において高貴な女性において存在したらしいのであるが、四六時中やることになりやすい。ゆえに、頑張るとかではなく、適度にうまくやり、適度に集中し、注意すべきところで注意するということの方が重要だ。そして、育児で一番大事なのは、母親一人にすべてを背負わないことだ。これが最も重要なことだ。
理世の父親は、子育てにほとんど加わることができなかったので、育児本などから得た知識程度のことしか知らないと言っても言い過ぎではないだろう。それでも、理世の母親が理世を育てている時の苦労を知っている以上、無理させるのは良くないと考えていた。
そして、理世の父親は、車に育児に必要なもので、理世の母親から頼まれたものを詰めていき、車を発車させ、新しい自らの家へと向かうのであった。
翌日。
久々に眠かった。
数時間おきに何度も何度も哺乳瓶に入れたミルクをあげなければならなかったからである。
さらに、夜泣きもしたので、赤ん坊をあやすのに大変だった。
理世を育てていた時もそうだったなぁ~と思った。そして、同時に、これが育児なのだと思い出すのであった。
(ふう~、今日からお母さんが入ってくれるから大丈夫だと思う。育児は、絶対に一人にならないこと、多くの人との関わりを大切にすること、そうしないと精神も体力ももたない。理世の時の経験で理解しているつもりだけど、子どもは個性的なところもあるからそういうところとそれ以外をしっかりと見ていかないと―…。)
と、理世の母親は、心の中で、どうなるかを整理するのだった。
昨日のうちに、理世の母親の方の祖母に連絡をし、明日に来てもらえるようになった。理世の母親の方の祖母は、今、理世の母親が住んでいる家から近いところに住んでおり、昨日、新しい家の屋根裏倉庫に赤ん坊がいたことを話した。
理世の母親の方の祖母は、大変不思議そうなことが起こっていたと思った。さらに、これが赤ん坊に対する育児放棄なら、その育児放棄した人物に怒りたい気持ちもあるが、そのようにする人物にも理由があるということを理解していた。それが特に社会的なことに起因している場合、育児放棄した人の責任でもあるが、同時に社会にもそのようにしてしまったという責任が発生する。その判断ができるまで、自己責任と言って、責任を押し付けても意味がない。何も救われることはなく、現状に変化があるということもなく、結局は現状改善に繋がらず、悪化しているのであれば、その悪化を促すだけにしかすぎない。
そのことをしてしまえば、自分に最悪な形でかえってくるのだから―…。それよりも、ちゃんと原因を理解したうえで、きちんと対処して、社会的にも個人的にもプラスになった方が、結果としていいのである。頭の緩そう子が言う幸せスパイラルは、ある意味で現実に存在しているのだから―…。
でも、結局、原因は現実世界にいる者の常識では解けるというものではなかった。現に、理世の両親がわからなかったのだから―…。
理世の母親は、赤ん坊を寝かしつけ、理世と理世の父親の分の朝食の準備と、昨日たまってしまった分の衣服の洗濯をおこなう。
理世の母親は、自らの母親が今日来ることがわかっているので、何とかそれまでに踏ん張ればいいと思えた。そうすることで、頑張ることができた。途轍もなく大変な中で―…。想像を絶する二度目の体験の中で―…。
そして、理世と理世の父親が朝食を終え、理世の母親も食事を終えるのであった。
理世は、日曜の朝から放映される特撮ヒーローを見ていた。
「やぁ、倒せ―――――――――――――!!」
と、まるでテレビと会話するかのように、ヒーローを応援するのであった。
子どもの頃は、善と悪がはっきりしているのがわかりやすいだろう。だけど、成長していく中で、善と悪というのだけでは考えられないような事態に直面することの方が多いのだ。いや、善と悪など主観的な問題でしかないと思わせるほどのことが多い。
善悪だけでしか判断することのできない大人になれない大人もいて、世の中が不安定の中で彼らが声を大にして、自らを善、自らとは違う主張をわずかにでもするものを悪として、攻撃して、不安定な世の中における安心を得たいと無意識にも意識的に思う人々に一時の何も本当の解決にならないものを与えている。いや、主観的なただ迷惑な正義感ってやつを―…。
いや、欲に忠実ということか。自分と友だけの利益に―…。他はすべて損失してもいい具合で、破滅型の―…。
まあ、そんなことは、子どもに理解しろと言っても意味はない。ゆえに、その時期から脱却できるきっかけというものも重要だ。特撮ヒーローものはときどき重要なことを教えてくれるかもしれない。現代問題を提起したり、と―…。
そんな理世の様子を見ながら、すぐに、理世の母親は、赤ん坊の方に行くのであった。
理世の父親は、理世の方にいて、面倒を見てくれている。たぶん、理世の母親の方の祖母が来れば、最初に対応してもらえるだろう。
そして、理世の母親は、赤ん坊の面倒を見るのであった。
特撮ヒーローのものが終わると、ピンポーンと音がなる。
その音がすると、理世の父親が、玄関の方へと向かう。
そして、玄関にある扉をガラガラと開けると、そこには、理世の母親の方の祖母がいた。
「お義母さん。」
と、理世の父親は言う。
「何か不思議なことがあったのね。で、美陽はどこ? 隆道さん?」
と、理世の母親の祖母は、理世の母親で、自らの実の娘である美陽の居場所を尋ねるのであった。
「あ、今は、寝室の方にいると思います。」
と、理世の父親である隆道が、寝室へと案内するのであった。
寝室に向かうと、美陽と赤ん坊がいた。
「お母さん。やっと来てくれた。」
と、美陽は安堵する。
その気持ちには、一人ですべてをすることによる精神的および体力的負担が減少するという気持ちが込められていた。
「また、あんたは不思議なことにあうねぇ~、ホント―…。で、その赤ん坊が、昨日の屋根裏の倉庫にいたという子かい?」
と、美陽の母親は尋ねる。
「そうです。」
と、美陽は、自らの母親に向かって正直に答える。
嘘を付く義理など存在しない。ゆえに、正直に言って、理解を得たほうがいいだろう。
「そうなると、この赤ん坊は、一応二人の子にしておくことにしよう。そうするほうが、今は具合がいい。ニュースでもなったら、理世の方に悪い影響が出ない。マスコミ全部が悪いとは言えないが、どうしても悪い輩もたかってくる。そういう奴は、事実を都合よく面白おかしく切り取り、間違いが広がりかねない。」
と、美陽の母親は言う。
美陽の母親自身、マスコミに対して恨みというものはないが、赤ん坊のことを思えば、マスコミ騒ぎになるようなことは好まなかった。それに、理世にもいい影響がでない可能性が高いと思ったのだ。
「そうですね。マスコミの中でも、変なことを仕立て上げて、権力に媚びを売る人たちはいますから―…。弱者を叩き、強者を助けるという―…。」
と、隆道も美陽の母親の言葉に言いながら、賛成するのであった。
隆道も会社の中で同期より出世しているので、上の人間の交流の情報が入ってくるのだ。その情報の中には、あまりにも欲深い者たちの情報も入ってくるのだ。仕方ないことではあるが、私欲や欲を間違った方向で実現しようとすれば、その先にあるのはただ、ただ自分と周りが滅ぶという未来だけなのだ。人類、いや、始まりの時間が存在しているものは、いつかその流れのすべてに終わりが存在する。いつかはわからないが―…。
頭が良すぎるがゆえに、至ってしまったのだろう。だけど、希望も存在する。隆道にとっては、それが家族なのだ。家族と過ごせる時間が必要じゃないことを考えさせず、自分が自分でいられるな、と感じさせる。
そして、情報というものは、完全にはコントロールすることはできないが、大きな面ではコントロール可能なのであり、事実の情報を事実じゃないと多くの人々の思わせることと、その逆もできるということに対する選択権を権力側が握ることによってなされるのである。
それでも、進行する世界の変化の前では、いつかそれ自体が機能しなくなる。ゆえに、人は常に己が正しいのかを考え、悩まないといけない。他の可能性が存在する以上―…。
そして、隆道は、瑠璃の出生に関して、瑠璃が美陽と隆道の子であるという嘘の情報を世間では事実の情報であるということにしようとした。その方が、わずかなおかしなことがあったとしても、世間というものは納得すると隆道は判断したのだ。
人は、経験して得た情報で、物事を判断することが多いのだから―…。
「美陽、それでいいか。」
と、美陽の母親が、美陽に向かって尋ねる。
「はい、そうしましょう。」
と、美陽も賛成するのであった。
こうして、赤ん坊は美陽と隆道の実の子の扱いとなった。
「後は―…、大事なことを忘れているじゃないか。」
と、ふと何かを思い出し、美陽の母親は言う。
これは、とてつもなく重要なことである。重要というのは、この世界で生きていくためにも特に重要である。これがないと―…、すべてのことが進まなくなってしまうのだ。いつぐらい昔からというのはわからないが、それでも昔から重要なことであった。人として生きていくためにも―…。
そのことに関して、美陽と隆道は、完全に見落としてしまっているのだ。
それもそうだろう。だって、昨日、屋根裏倉庫の中で発見され、今まで、赤ん坊を育てるのに必要な物を隆道は買いに行き、美陽はその間、赤ん坊の面倒と理世の面倒を見ないといけなかったために、精一杯で、気づくことができなかった。
ゆえに、第三者に近くなることができた美陽の母親は、気づくことができ、指摘することができた。
「その赤ん坊の名前、何にすんだい?」
と、美陽の母親は、赤ん坊の名前をどうするのかということを尋ねる。
「「あ…」」
と、美陽と隆道は、自分たちが失念していたことに気づく。
失念すること自体は、仕方ないことである。それでも、気づいていればよかったと思っていた。そして、慌てて考え始めようとする。
「まあ、最初に聞いた時から何となくだけど、わかっていたよ。大変だったということもあり―…。じいさんとともに案を考えてきたよ。」
と、美陽の母親は言う。
美陽の母親は、昨日、美陽から聞いたことから、名前に関して決めていればよいと思っていたが、それどころではないだろうと推測し、美陽の父親とともにいくつか赤ん坊の名前の案を考えてきたのであった。
「今の赤ん坊に合いそうなのにすると、女の子の場合は陽菜と書いて、「ような」や「ひな」という読みや、日葵と書いて「ひまり」、男の子の場合は、「れん」という読み方で漢字は連、蓮などを考えているが、性別は?」
と、美陽の母親は、赤ん坊の名前をつける前に性別を確認しておく必要がある。これは、途轍もなく大事なことだ。
その美陽の母親の言葉に美陽は答える。
「女の子。」
と。
「女の子となると、陽菜や日葵などになるが、葵もいいが、うん、赤ん坊が手に持っているのは何だ。」
と、美陽の母親は尋ねる。
「ああ、これ、水晶みたいですね。あまりこの子が離してくれないんで―…。」
と、隆道が答える。
隆道にとっても美陽にとっても、赤ん坊がずっと水晶を持ったままで、離そうとしないのである。そのことに関しては、少し困っていたのだ。
「水晶か…。なら、瑠璃で良いんじゃないか。何となくそう思う。この子の水晶とこの子を見ると―…。瑠璃色のように輝きそうで―…。」
と、美陽の母親は、瑠璃にしようと提案する。
隆道は、さすがにツッコミを入れる。
「瑠璃色って―…、紫をおびた濃い青色のように感じるのですが―…、水晶の色は赤黒い色をしていまし―…。」
と、呆れに近いような感じで―…。
「だからじゃよ。水晶は赤黒いが、瑠璃ならばその反対となり、バランスが取れそうだ。」
と、美陽の母親は言う。
それは、赤黒い色をした水晶は、なぜか、何かの試練を与えそうな感じがする。欲を求めるような感じがしたのだ。それに対して、赤ん坊が持っている赤黒い水晶の色の関係で、瑠璃とつけることによって、自らの欲を冷静に見つめ、人として高潔であらんことを欲して、双方をうまく組み合わせることで、バランスが取れるのではないかと、瞬時であるが、そう感じるようにして美陽の母親は、赤ん坊の名前を瑠璃としたのだ。両方とも暗色である以上、完全に対になっているというわけではないが―…。
隆道と美陽は、何も案が浮かぶことがなかったし、いろいろと手続きをしないと考えると、早めに名前を決めていたほうがいいと考え、
「お母さんの名前を採用するわ。この子は、今日から瑠璃。」
と、美陽の方が、自身の母親に赤ん坊の名前を瑠璃に採用したことを告げるのである。
この時、赤ん坊は、自らの名前に喜ぶのである。いや、そのようなものだったのかもしれない。
こうして、松長瑠璃は、自らの名前を両親から贈られる、いや、母方の祖母から命名されるのである。
そして、その後、美陽と隆道は、理世と瑠璃の子育てに大変であったが、何とか、瑠璃は成長していくことができたのである。
第94話-7 再会 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
今回の内容の中で、「理世の母方の祖母」と出ていましたが、ここでは、理世の祖母にあたり、美陽の母親のこととなります。表現がややこしくなってしまいました。すいません。
次回の更新に関しては、まだ製作中の状態です。2~4割ぐらいは書いている予定だと思っています。次回の更新がわかった場合は、この部分でお知らせいたします。
では―…。
2021年6月14日 「第94話-7 再会」が完成しました。第94話は、次回の更新で完成となります。投稿日に関しては、2021年6月15日頃を予定しています。では~、次回の投稿にて―…。