第94話-1 再会
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カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿しています。今日も18時30分の投稿予定です。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝終わり。
『水晶』の前回までのあらすじは、第九回戦第四試合、瑠璃VSミランの対決は、双方が倒れて引き分けという結果になる。そして、ミランと瑠璃を狙う者が、ミランに向かって矢を放つのであった。それを防いだのがギーランだった。さあ、どうなる?
第94話は分割することになります。ベルグのセリフが増加したことによります。
【第94話 再会】
時を少し巻き戻す。
それは、ほんの数十秒前のことであった。
「ギーラン、あやつが矢を構えたぞ。」
と、ローは、ギーランに告げる。
ローは、ミランを狙っている者に対して、そいつの情報が漏れるようにする能力を使っていた。
ゆえに、すぐに通知が来るようにして、伝わったのだ。それをギーランに伝える。
「わかった。いつでも行けます。」
と、ギーランは、すでに準備完了であることをローやイルーナに伝える。
ギーランにとっても、自分の娘であるミランを殺させないし、それに、助けた人間の命が狙われているのを阻止したい気持ちもあった。
だけど、やっぱり優先順位は家族であったのだ。
「矢を放った、試合の決着がついたし、今じゃ。」
と、ローが言う。
その声を聞いたギーランは、一気に四角いリングの向かって駆けるのであった。階段を駆け下りながら―…。
そして、観客席と中央の舞台を隔てる壁の上にジャンプしてのり、さらに、そこからジャンプして、四角いリングへ向かうのであった。その壁からのジャンプで四角いリングへと突入することができるぐらいの跳躍力を発揮した。
(間に合え――――――――――――――――――――――――――――――――!!)
と、ギーランは心の中で叫ぶ。
叫ばざるにはいられないだろう。気持ちが前面にでるというものだ。今、自らの娘の命が危ないと判断したからだ。
この時、すでにファーランスは勝者を告げていたので、あっさりと四角いリングに入ったとしても、部外者として追い出されることはない。
数秒もの間の跳躍となった。
ギーランは四角いリングの囲いをこえ、その四角いリングの中に着地をする。
着地後は、すぐにミランのもとへと向かい、その途中で、自らの武器である大剣を抜き、ミランの近くへと到着すると、矢と接することができるタイミングに合わせて、剣を振り、矢を弾くのであった。
そして、すぐに、大剣をミランに当てないようにしながら、武器を持っていない方の手で、ミランを抱えるのであった。
「私の娘に手をださせない!!」
と、ギーランは宣言する。
これは、ギーランがミランを狙った相手に向かってのものであった。
リースの競技場の一番高いところ。
そこにいた彼は、ギーランのさっきの言葉を聞いた。
(チッ!! 気づかれてしまったか。ここは逃げるに限る!!)
と、心の中でミランと瑠璃を狙った者は、撤退をおこなおうとする。
だけど、それを許してくれる人など、どこにもいなかった。いるはずもない。
競技場の観客席には、魔術師ローがいるのだ。ローは、すぐに逃げることに気づき、手をうっていた。
観客席にいたローは、目的者の行動通知を逆に利用して、
「儂から逃げるとはいい度胸じゃ。だが…の~う、儂から逃れられるのは世界広しと言えども、一つだけじゃ。さあ、これで捕縛じゃ。」
と、ローは言うと、魔術を発動する。
「捕縛送致。」
と、言うと、ミランと瑠璃の命を狙っていた者は、その人物の周囲に突如として出現した黒い触手のようなもの、何本かによって捕まってしまうのであった。
(!! 急に何かの老婆っぽい声が聞こえたと思ったら、触手に捕まっただと!!! クソッ、離れろ、離しやがれ!!!! エッ!!!!!)
と、心の中で言うが、その時、ミランと瑠璃の命を狙っていた者は、そこから別の場所へと空間移動をさせられることになった。
それは、ローが指定した場所へと―…。
競技場の観客席。
ローとイルーナがいる場所。
「イルーナ、向かうとするかの~う。」
「はい。」
そして、ローは、瞬間移動でイルーナとともに四角いリングの上へと移動するのであった。
観客席の中の貴賓席。
ランシュは、四角いリングの方を怒りの形相で眺めていた。
「何が起こった!! 誰だ。俺の企画したゲームに対して、馬鹿な真似をしてくれるのは!!!」
と、ランシュの怒声が響きわたる。
ランシュとしては、ゲームである以上、何者かによって妨害されるのは許せなかった。その対象はギーランではなく、第九回戦第四試合終了後に、矢が四角いリングの中に入ってきたことだ。ミランを狙って―…。
ゲームの妨害が起これば、ランシュ自身の評価にも関わってくることと同時に、観客を狙ったものではないか。そうなってしまうと、観客の安全を脅かされることになるし、ゲームである以上、暗殺の類が実際に発生するのはよろしくない。発生すれば、観客が怯え、それがリースの住民の全員に伝わり、ランシュの評価が落ちて、リースが周辺国や領主たちによって攻められかねない状況になるのだ。
そうすれば、リースという国家も、その中に住む住民の安全を危険な状態にさせかねない。そんなのランシュとして認められるか、と思う。自分のこともであるが、そのためにも他者の安全も重要であることをしっかりしているがために、リースの住民の何かあってはいけないと気を配るのであった。
「ランシュ様、落ち着いてください。たぶんですが―…。」
と、ヒルバスが言いかけたところで、ある人物がひっそりと登場するのだった。
「ベルグ…。」
と、ランシュが言う。
そう、登場したのは、ベルグであった。
ベルグは、空間移動の道具を使って、ランシュのいる場所に出現したのである。このベルグの行動には、ヒルバス、レラグ、リークも驚くのであった。
(ベルグ…って―…。ランシュ様の上司の方ですか。なぜ、わざわざここに―…。)
と、ヒルバスは心の中でベルグがここに現れた理由を考える。
ヒルバスは、ベルグがあまり外に出ないということは知っていた。ベルグという存在が何をしているのかわからない。謎が多すぎる人物である。
「ベルグって―…。元リースの宰相じゃないか。宰相を辞めた後は、行方知れずになっていた。なんで…こんなところに―…。ランシュ様と繋がりがあるのですか?」
と、レラグはつい口にしてしまうほどである。
「君は―…、レラグ君か。初めまして―…。私のことはリースの生まれの人間ならある程度は聞いたことがあるだろう。ランシュとは、昔からの知り合いのだよ。ヒルバス君よりも古いのかな、年月で言うと―…。でも、そのことは気にしないでくれ。そして、俺がここに来たのは、今、失敗した奴のことに関して、だ。」
と、ベルグが言いかけると、ランシュが遮るように言う。
「どういうことだ。」
と、ランシュは、ベルグに睨みつけるように言う。
ベルグは、ランシュが自らを疑っていることに感づいて、
「俺は、別にこのようなミランと三人組の一人の暗殺を計画したわけじゃない。それは、本当だ。ランシュ、君が望まないことを俺は知っているから、そんなことをする気はない。安心して君のやりたいようにやってくれ。で、説明を始めよう。どういうわけか、三人組の情報を矢を放って失敗した俺の部下が聞いてしまって、勝手に討伐計画という名の暗殺を企んだみたいなんだ。そのために、彼は俺の仮説にもならないことを聞いて勝手に動いたみたいなんだ。」
と、ここで、息を整え、ベルグは続ける。
「仮説って言うのは、半年前にある研究所がローやギーランによって壊滅したんだ。その時、俺は、壊滅した研究所に何か俺の好奇心を満たすものがないかと探していたんだ。そこで、ローやギーランが見つけられなかったと思う研究記録を見つけたんだ。それは、異世界渡航の研究だ。その研究所では、異世界に関する研究以外もおこなっていたようだが―…。その異世界渡航が過去に成功していたのだよ。その記録よると、水晶を首に埋め込まれた生まれたばかり赤ちゃんをその一家の家に空間移動で侵入して、無理矢理異世界渡航の実験材料にしたみたいなんだ。それ以後は、研究所が潰れるまで、異世界に行ったのか成功したのかわからなかったために、その異世界渡航の実験は中止となったのだけど―…。」
と、ベルグが言い終えると、ヒルバスがベルグに質問する。
「で、なぜ、ベルグ様は成功したと判断したのですか?」
と。
ヒルバスは、さっきのベルグの言葉の中で、ベルグが矛盾していることを言っていることに気づく。それは、異世界渡航の実験が成功したと言うが、本当に異世界渡航に成功させたのか、ローやギーランによって潰された研究所がそれを成功したのかわからないから中止していることから、なぜ、ベルグが異世界渡航の実験が成功したと判断できるのか。
その疑問を口にしたヒルバスをベルグは、
(なかなかいい勘をしている。素晴らしい人材をランシュは部下にした。彼の実力は、リースの中央で権力を未だに握り続けている者たちよりも、高いことがわかるよ。感心している暇はなかった。質問にはちゃんと答えないと…ね。)
と、心の中で、ヒルバスという有能な部下をもったランシュに対して、ランシュの人としての実力を褒め、同時に、ヒルバスの質問に答えるということを忘れそうになる。
途中で、思い出したので、ちゃんとヒルバスの質問に答えることにする。答えなければ、ここに来ている意味がベルグにはなくなってしまうのだから―…。
「三人組の中の一人の、今、試合で引き分けた赤髪の杖を持っている子かな。その子―…、普段は人からは見えないようにされているけど、首筋の方に水晶を埋め込まれている。」
と、ベルグは言うと、全員がベルグが何を言おうとしているのか理解する。
それに気づいたベルグは、
「俺は、特別な理由から首筋にある水晶を見ることができる。これは、本当のことだよ。ローの方は、視力がある程度、低下してしまったために気づかなかったのだろう。だけど、じきに気づくよ。俺の話しを聞いて暴走した奴のせいでね。そう、瑠璃は、異世界の生まれであり、あの「人に創られし人」の一族だ。異世界渡航の実験で、現実世界にとばされた赤子ってことになる。」
と、結論を述べる。
まだ、完全には仮説の域を出るものではないが、それでも有力な考えであり、それなりに根拠があり、納得させるものであり、繋がりがあるものだ。
だけど、証拠がない。ゆえに、仮説の域はでない。
ベルグは、知らなかった。
ミランと瑠璃を同士討ちさせ、ミランに矢を放った人物はとある能力をもって生まれていたことを―…。
このローのいる世界において、能力者というのはいないわけではない。数が少なく、希少なのである。それに、能力者は理解している。この異世界において、異質な存在であり、隠しておかないと良からぬ事に使おうとする人に狙われるからだ。そう、能力者は、世間に自分の能力は言わない方がいいと、能力に目覚めたものは気づくのだ。そういうふうになっていることしかわからない。
ランシュは、
「おいおい、そうなってくると、ベルグ、お前がやっていることの中に、その技術が含まれているのか。」
と、ベルグが何をやろうとしているのか知っているために、あることを確認する。
「ああ、含まれるよ。それをベースにしている。まあ、彼らは辿り着かなかったようだが、俺はそこに至ることができたよ。だけど、多くのことがまだできるわけではないが、近いうちにできそうなんだ。やっぱり、俺の好奇心はすごいなぁ~、と思ったよ。」
と、ベルグは、ランシュの言っていることに答える。
それは、ベルグの自慢に近い事も追加されて―…。
そのことに関して、ランシュは、なかば呆れながら聞いていたのである。たぶん、ここに関しては、ヒルバス、レラグなどがそうである。自慢に近いところの部分である。
ランシュは、
「はいはい、わかったから、すごいところは―…。で、それを進めなくていいのか。」
と、言う。
ランシュの言葉を聞いたベルグは、
「アッ!! そうだった。用事は―……、うん、ないね。では、失礼するよ。ランシュ、君のことに関しては、健闘を祈っているよ。」
と、言いながら、空間移動するのであった。
その時、ランシュは、
(本当に、いつもいつも、変なところから登場するよな、ベルグは―…。まあ、どうせ、言ったところで変わるわけじゃないし―…。それに、俺の企画したゲームを妨害しようとしていたのがベルグの部下の勝手な暴走だとは―…。トホホ―…。それも、すでに、魔術師ローに捕まっているようだし―…。こっちから手をだすことはできない。帰るとするか。今日は、追加情報と衝撃が多すぎる。)
と、心の中で考え、
「第九回戦も終わった。次がラストだ。最後は、確実に俺が出る。部下であるお前らが簡単に敗れるようにするんじゃないぞ。」
と、言う。
それは、ランシュなりの激励でもあった。ランシュとしても、自らの部下が委縮してしまうことを言わないように工夫しているが、それでも、コミュケーションの面で不器用なところもあるので、厳しい言葉になってしまうのだ。
「わかっている、ランシュ。」
と、クローマが起き上がって言う。
それにヒルバス、リークが頷くのである。クローマと意見は同様であることをランシュに示すために―…。
そして、ランシュ、ヒルバス、レラグ、クローマ、リークは、観客席の中の貴賓席から出ていくのであった。
第94話-2 再会 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
なんとか第九回戦を終わらせることができました。あと、瑠璃に関する伏線を回収しつつ、いろいろと動かさないといけません。その後に最終回戦に突入します。
次回の更新は、正確の日時がわかりしだい、この「第94話-1 再会」の後書きの部分で言うと思います。まだ、「第94話-2 再会」は、完成していません。
では、次回の更新で―…。
2021年5月31日 「第94話-2 再会」が完成しました。よって、「第94話-2 再会」は、2021年6月1日に投稿する予定です。では~…。