第92話 圧縮される闇
『ウィザーズ コンダクター』第29回を18時30分頃に更新します。興味のある方はぜひ読みに来てください。
アドレスは以下のようになっています。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
お知らせは以上です。
『水晶』の前回まであらすじは、瑠璃が光の砲撃を放つのであった。それは、ミランの体の全身を巻き込むほどの威力であった。しかし―…。
【第92話 圧縮される闇】
シュウウウウウウ。
音がなる。
この音は、煙のようなものが熱を帯びているからだ。
このようにしたのは、瑠璃であり、瑠璃の光の砲撃によってなされたものなのだ。
四角いリングの表面は、きっと抉れて、地面の部分がむき出しになっているのかもしれない。それを確かめるのには時間がかかることだろう。
瑠璃は、ただ、ミランがいたという方向をずっと見つめていた。
まだ、瑠璃は、この勝負が終わったとは思えなかった。それは、ミランという人の戦い方がうまいということと、これまでの瑠璃がミランとの戦いの経験から何かしているのかもしれないと勘で思ったからだ。
ゆえに、瑠璃は、警戒を一切緩めることはなかった。
中央の舞台。
瑠璃チームのメンバーがいる側。
その中で、アンバイドは、この瑠璃の光の砲撃に関しては、どうなるかの予測がついた。アンバイドは、ミランと戦ったことがあるので、何となくどうするかが予測がついたのだ。
ゆえに、
(こりゃ~、瑠璃の方は無駄な攻撃になってしまったな―…。)
と、アンバイドは、心の中で言うのであった。
四角いリングの上。
そこでは、まだ、煙のようなものが存在していた。
瑠璃の光砲の威力がそれだけ強いものであったことを証明している。
それでも、煙のようなものはしだいになくなっていき、瑠璃の目の前の視界を回復させるのである。
そして、少しずつ、影のようなものが現れ始めた。
(何!! あれ?)
と、瑠璃は、心の中で驚き、疑問に思うのだった。
ゆえに、攻撃をする準備をやめ、防御態勢をとるのであった。
そして、黒い何かが瑠璃の目の前に現れる。その黒い何かに瑠璃は、集中しすぎるのであった。
そう、黒い何かとは、四角いリングに根を下ろしている大きな繭を感じさせるものであった。
瑠璃もそれが何に使われたのか予想がついた。
(あれで、私の攻撃から守ったんだ。)
と、瑠璃は心の中で、ミランが黒い繭を思わせるようなもので守ったのだと推測する。
ゆえに、あることに考えがたどり着くのである。
(だとすると―…、今までの戦い方から考えて―……、!!!!)
と、瑠璃はすぐに真後ろへと向き変える。
だけど、すでに遅かった。そこには、ミランがすでに攻撃態勢に入っていっており、もう瑠璃の命を奪うための攻撃の準備は完了していた。
そう、今度は刀では、細長い長剣に自らに覆わせている闇の形を変えさせて―…。
「遅い!!」
と、ミランが言いながら、瑠璃を突き刺すのである。
ただし、今度は、瑠璃が本能に心臓のある方は危険と判断し、右腕でミランの武器の先端に触れるように行動し、それに触れて、突き刺される場所を腹部周辺に変更させた。
結局、突き刺されるという攻撃から瑠璃は、逃れられなかった。これが事実だ。
もし、ここで赤の水晶の能力を最初から発動させていれば、防げただろう。だけど、実際に発動ができたのは、腹部に刺さってから数センチほどの後のことであった。ゆえに、見た目には貫通したように見えるが、実際には貫通していないという現実となる。
それでも、瑠璃が血を流し続けることになることに変わりはないし、細長い剣を引き抜かれる時に、痛みを伴うことは避けられないことである。
「ガアアアアアアアアア。」
と、叫び声をあげながら―・・・。
そして、ミランは、瑠璃を突き刺した時に途中から感触がなくなったことにより、赤の水晶が使われたのだと感じたが、すぐに、細長い剣を引き抜き、瑠璃から距離を取るのであった。
(……途中で赤の水晶を使われたか。大きいダメージを与えることはできなかったが、しばらくの間、動くのが難しくなるぐらいのことはした。後は―…、あの大技で終わらせる。)
と、ミランは、次の瑠璃に対する攻撃を思いつくのであった。
一方で、瑠璃は、
(赤の水晶が発動する前に攻撃された!! だけど、途中で赤の水晶が発動して、何とか大きな傷にはなりそうにない。それでも、これで、長期戦になれば、出血大量になって死にかねない。それだけは避けないと―…。)
と、瑠璃は、心の中でこれからどうしていくのがよいかと考える。
それと同時に、ミランに刺された部分を抑えるのであった。理由としては、少しでも血が外にでるのを抑えるためにであった。気休めにすらならないことだろうが―…。
ゆえに、瑠璃は、移動して戦うのがかなり難しくなってしまったのだ。
(はぁ―…、はぁ―…、だけど、今のうちに準備しとかないと―・・・。あの一撃でミランとかいう人を倒す!!)
と、瑠璃は、心の中で覚悟を言葉にする。
ミランは、自らの武器に覆っていた闇を纏わせるのを止め、四散しないように、球状の形にする。ミランは、自らの武器を今度は指揮棒のように扱い、球状の形をした闇を上空に上げる。ただし、囲いよりも決して上の位置にならないように―・・・。あくまでも、復讐の対象は瑠璃であり、瑠璃以外の人間に対して、被害を出したいわけではない。ゆえに、このような高さになったのだ。
そして、ミランは、回収した黒い繭みたいになっていたのものを、自身の周囲の薄く纏わせ防御の準備も完了する。
球状の形は、大きくなるのではなく、しだいに小さくなっていく。
瑠璃にもそれは見えていた。だけど、瑠璃は、その球状のものに対する対策を自らの武器で実行することはできなかった。
それは、ミランとの勝負を決めるための一撃に使わないといけないのだから―・・・。
瑠璃は、何とか別の対処を考え、
(これなら、いける。)
と、ミランの今度の攻撃に対する対処の方法を思いつくのだった。
中央の舞台。
瑠璃チームのいる側。
今、第九回戦第四試合に出場している瑠璃以外の瑠璃チームのメンバー、全員がミランがこれからだそうしている攻撃になるだろう球状の形をした収縮していく闇に視線を向ける。
その中で、アンバイド以外の者たちは、言葉をなくす。言葉すら許されないほどの魅力をそれはもっていた。
だから、ここで心の中で考えることができたアンバイドは、
(あれは、かなりやべぇ~、やつじゃないか。ミランの攻撃から、瑠璃を本気で殺すのではないかという気を感じたが―・・・。これじゃあ、最悪の展開じゃないか。こっちにとって―・・・。ここは瑠璃に降参させるべきか―・・・。でも―・・・、瑠璃の目からは降参する気はなさそうだし―・・・。それに―・・・、何かしようとしていることは明らかだ。そうなってくると、判断に迷う時間はほとんどないってことか。なら、最悪の展開になるとしても瑠璃がしようとしていることに賭けるしかない。)
と、口には出さないが、こう思うのであった。
アンバイドは、ミランが瑠璃に復讐することの達成目標のために瑠璃を殺そうとしていることがわかった。これは、アンバイド自身が今、復讐対象であるベルグに対してそうしようとしているので、ミランの復讐しようとする面に関しては、すべてではないが、理解することはできる。
現に、ミランは、瑠璃に防がれたとはいえ、二度ほど、瑠璃を刺し殺そうとしていた。その証拠がある以上、アンバイド以外の李章、礼奈、クローナ、セルティーだって、ミランが瑠璃を殺そうとしていることぐらいは理解できるだろう。
それで、李章は、今すぐにでも四角いリングの中に入って、瑠璃を助けようとする気持ちが周りに伝わるぐらいの表情をしていた。それぐらいに瑠璃のことを心配している。
李章ほどに心配しているの礼奈であった。礼奈は、瑠璃がミランに突き刺されていることにより、出血も確認して、はやくこの第九回戦第四試合が終わり、瑠璃を青の水晶を使って治療しようとしていた。
クローナやセルティーも同様に、瑠璃が死なないことを祈っていた。
アンバイドのさっきの心の中での言葉に話を戻すと、ミランが瑠璃を殺す気持ちが本気であることをアンバイドは理解している。
一方で、瑠璃がまだ降参したり、逃げたりしていないことから、瑠璃がまだ何かをしようとしていることがわかった。
アンバイドは、瑠璃がしようとしていることが、ミランに勝つために瑠璃がやろうとしていることだと思った。
同時に、アンバイドは、かなり難しい判断を下さなければならないということだと理解している。それは、瑠璃の意思を無視して第九回戦第四試合を降参すべきか、瑠璃の意思を尊重して戦わせるべきか。
そして、アンバイドは、それに時間をかけられないので、直感的な判断を下す。そう、アンバイドは、後者、つまり、瑠璃の意思を尊重することを選択した。最悪の展開になるかもしれないが、それに賭けるべきだとアンバイドの自身の素直な直感に従ったのである。瑠璃の勝利を信じて―・・・。
四角いリングの上。
すでに、ミランの方は攻撃の準備が完了していた。
ゆえに、ミランが攻撃を実行する。
「解き放て。」
と、言って―・・・。
ミランがそう言うと、収縮していた闇の球状の形をしたものが、収縮をやめ、一気に衝撃波を拡散させるのである。
「闇の波動」
と、ミランは付け加えるように言う。
こうして、衝撃波は、四角いリング全体を包む。ミランは、もちろんこの攻撃に対する防御方法を知っていた。そう、闇を繭のようにして、その中で自身を閉じ込めて、自らの攻撃から守るのだ。
さらに、衝撃波の音に関しては、四角いリングを覆っている囲いをこえて、観客席や競技場の外まで、その音は響いたのだ。ゆえに、観客席にいる観客、審判、さらに中央の舞台にいる者たち全員が耳を手で塞がないといけないほどだった。塞がなければ、鼓膜が破れてしまうほどの音であった。
ゆえに、ある人物たちをここに向かわせることにできたのだ。
リースの競技場の前。
そこには、魔術師ロー、ギーラン、イルーナがいた。
「ここが露店の人が言っていた競技場ね。大きいねぇ~。」
と、イルーナは、ビックリしながら、リースにある競技場の大きさに驚くのであった。
「まあ、ここはリース王国、今は、違うのかわからないが、ここら辺りでは最も大きな国の部類に入るからな。」
と、ギーランは言う。
その言葉は、声としては抑揚のないものであったが、心の中では、自らの妻であるイルーナに自慢したい気持ちでいっぱいだった。そう、ギーランは、イルーナに自らの知識があることを自慢して、褒めてもらいたいのだ。そう、ギーランの承認欲求が全開状態になっていたのだ。
これをやると、女性に嫌がられる可能性が高いが、それでもギーランはしてしまうのだ。ギーランが男であり、褒められることが、自らの気持ちを満たすものである以上―・・・。
イルーナは、そのことを理解しているから、
「すご―――――――――――――――――い。」
と、ギーランに抱き着きながら褒めるのである。
ギーランの鼻が伸び、有頂天になるのだった。
それを見ていたローは、
(男って―・・・、馬鹿が多いの~う。時代がいくら流れてもなぁ~。いい加減に、理解したほうがいいだろうに―・・・。)
と、ギーランの態度に呆れかえるのだった。
ローとしては、ギーランがさりげなく、できる人というところを見せてほしい。そういうところを女性は、よく見ているのだと―・・・。
(今は、そんなことに気をとられている場合ではない。ミランを探さないと―・・・。そのために、この競技場に入らないと―・・・。)
と、ローが心の中で、今、行動すべきことを思い出し、行動に移そうとする。
その時、バーン、ドーン、とかいう衝撃音がリースの競技場からなる。
その音は、地震が起きたのではないかと思えるほどの間隔をその周囲にいる者たちに抱かせるのであった。
そして、ロー、ギーラン、イルーナもこの音にいやでも気づくのであった。
ゆえに、
「ギーラン、イルーナ。あの競技場の中に入るぞ。」
と、ローは慌てながら声をかけるのだった。
ローとしては、リースの競技場の中でおこなわれている第九回戦とやらが何か途轍もなく嫌な予感がしたので、中に入るのだった。ローは、地震が起きたのではないかと思わせる衝撃音で、ベルグの言っていた奴が、ミランとミランの復讐対象である自らの妹を殺しているのではないかと思ったからだ。
実際、ローの予測は、的外れなのであるが、ここにベルグの言っていたミランとミランの復讐対象である自らの妹を殺そうとしている人物は確かに存在する。
そして、ギーランもイルーナも、ローに続いて、リースの競技場の中に入るのであった。
リースの競技場。
中央の舞台の中にある四角いリング。
その中は、煙のようなもので覆われていた。
それは、ミランの放った闇の球状の形をしたものの衝撃波によって、四角いリングの表面が削られ、ミランのいる場所とそれともう一つ以外は、すでに削られてしまっていた。
足場をとるのが困難になるほどに―…。
(……………。)
と、ミランは、闇の繭からすでに出てきており、瑠璃のいると思われる方向をずっと見ている。
ミランは、闇の繭で自らの攻撃である衝撃波を防ぐことに成功している。
ミランは、瑠璃がどうなったのか、瑠璃が死んでいれば上出来、それ以外であっても、あの出血の量から考えて、瑠璃は戦闘することが不可能であり、とどめを刺せば、確実に勝利することができる。そう、勝利によって復讐を果たすことができるのだ。
しだいに、霧のようなものが晴れていく。
徐々に、霧のようなもので見えなくなっていたものがしだいに見えるようになった。
そこには、瑠璃の姿が見えた。
(……どっち。)
と、ミランは、心の中で瑠璃がどうなったのか、結果を気にする。
そして、結果は、
「次の攻撃でミランを倒すよ。」
と、瑠璃は、ミランに向かって言うのだった。
自らの勝利を信じて―…。
【第92話 Fin】
次回、瑠璃はミランに勝利できるのか? ロー、ギーラン、イルーナは、ミランの復讐を阻止できるのか? さらに、ミランと瑠璃の命を狙っている者から守ることができるのか?
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
そろそろかなり長いように感じた第九回戦が終わります。それでも、伏線回収を実施しないと―…。
次回の更新は、2021年5月23日頃を予定しています。ちゃんと予定通りにやれるのかは不安ですが―…。
では、次回の更新で―…。