第89話-2 一枚上手
前回までのあらすじは、クローナVSグランチェの戦いは、グランチェ優勢で進行していく。一方で、リースに向かっていたロー、ギーラン、イルーナは―…。
今回で、第89話が完成します。
リース。
ここは、リースの中の市場。
ここには、多くの露店が軒を連ねている。
それぞれの露店には、同じものを扱っている店もあるが、違ったものを扱っている店もある。
同じものを扱っている店は、同じ場所に集中せず、違うところに点々と存在する。
その中を歩いているのがロー、ギーラン、イルーナである。
三人は、ギーランの娘の一人であるミランが、ギーランとイルーナのもう一人の娘の居場所を見つけたという。
そして、ミランは、その娘に対して、復讐しようとしているのだ。だから、三人は、ミランが向かったと思われるリースへと来ていたのだ。急いで―…。
リースの入り口からは、すぐにリースに入ることが出来た。ただし、リースで問題を起こせば、どういうことになるかというきつい視線を門番たちによって、受けることになった。
まあ、門番も仕事でそうしているのであり、リースの中で問題を起こさせないという、抑止のためのものである。ゆえに、仕事が終われば、優しい表情にもなるし、彼らの家族の前では、優しい声、一人の家族の一員にもなるのだ。全員がそう、というわけではない。
一人暮らしをしている者はいる。それでも、友だちや恋人の前では、このようなきつい睨みつけるような視線をしたりせず、嬉しい表情など喜怒哀楽な感情を素直に出すことの方が多く、寡黙な人でも心の中ではそうなのだから―…。
このように、リースの中央組織の末端で働く者たちの多くが、仕事に真面目で中央で権力を握っている者たちのような権力欲や過剰な私欲に溺れているわけではない。平和な日々と安定した穏やかな日々が毎日続くことを望んでいる。
さて、語りを戻すと、ミランをどうやって探すのか、第九回戦とは何であるかを疑問に思っていたのだ。ゆえに、どうやって聞き込もうか悩んでいたのだ。
「普通に聞けばいいんじゃないか。第九回戦って何かを―…。」
と、ギーランは、悩んでいるローに問うのである。
「いやいや、第九回戦がベルグの奴が言ったのと違う第九回戦だったからと思うと―…、う~ん。一刻を争うことだし―…。」
と、ローは悩むのだ。
理由は簡単だ。ミランの居場所と第九回戦というベルグの言っていたキーワードがどのように結びつくのかがわからなかったのだ。
そして、ミランは狙われているのだ。ミランが復讐対象としているミランの実の血の繋がった妹とともに―…。ベルグの部下で、ベルグの言うことを聞かずに、勝手に動いている奴が―…。
ゆえに、時間としてもどこまであるのかわからない。だから、遅くなってはいけないということはわかっている。だけど、ローは悩むのだ。第九回戦の意味が別の意味であったら、そこへ向かって気づくという時間だけロスすることになる。それは、最悪のことでしかない。
しかし、ギーランの言っていることも正しいのだ。どうしようか悩んでいる間に、時間が刻一刻となくなっていくであろうし、タイムリミットまでわからないとなると、余計に焦ってしまう。それでも、タイムリミットが分からない以上、いつそれをむかえてしまうのか予測することができず、なるべく早くしようとする。
そんなローとギーランによる沈黙は、すぐに終わってしまうことになる。すべての悩みが無意味であるかのように―…。
「あの~、すいません。第九回戦って何でしょうか、それと家の娘ミランを知りませんか。」
と、イルーナは、近くある露天商に尋ねるのであった。
この露天商は、奇麗な顔をしているが、年齢はそれなりにあるとわかるほどであるが、笑顔が絶えず、人当たりの良さそう感じの人である。
露天商は、イルーナの言葉にどう答えようか悩む。
けど、すぐに答えを言うほうがいいだろうと判断し、
「ミランというあなたの娘のことに関しては、残念ですが私にはわかりません。だけど、第九回戦ということなら、あれのことだと思います。確か、今日がその日でした。そのせいで、市場に来ている人は少ないのですが―…。」
と、答える始める。
その言葉を聞いたイルーナは、
「あれとは、何ですか?」
と、露天商に質問する。
「第九回戦っていうのは、ランシュ様が企画されたゲームのことだと思いますよ。今日は、その回戦の日だったと思います。場所は、競技場の方です。」
と、露天商は答えるのだった。
「その競技場への行き方は―…。」
と、イルーナが、リースにある競技場の場所への行き方を尋ねるのであった。
そうして、露天商からリースにある競技場への行き方を聞いて、イルーナは、悩んでいるローと聞こうと促すギーランのもとへ向かうのだった。
そして、ローとギーランのいる場所に到達すると、イルーナは、
「ミランの居場所はわからなかったけれど、第九回戦のことならわかったよ。」
と、ローとギーランに向かって言う。
「えっ」「何ぃ――。」
と、ローとギーランは、同時に叫ぶのであった。
ローは軽く、言葉になるかならないかのような程度で叫び、ギーランはもろに叫ぶのであった、「何ぃ―――」と―…。
イルーナは、その二人を見て、
(いや、行動しようよ。)
と、心の中で思いつつ、これから言うことで、付け加えて言おうと考える。
「さっき、その露天商の人に聞いたら、教えてくれたよ。ミランのことはわからなかったけど、第九回戦が何であるかについて―…。」
と、イルーナは言うのだった。
「それは、何じゃったのだ。」
と、ローが、イルーナを問い詰めているのではないかと思えるほどに、グイグイ近づきながら言うのであった。
さすがのイルーナも驚いたが、すぐに冷静になることができた。
「それは―…、ランシュという人が企画したゲームがリースにある競技場で開かれているみたい。そして、今日が第九回戦というものになっているみたい。場所も聞いてきたから、早速向かいましょう。」
と、イルーナは、要点を簡潔に言うと、すぐにリースにある競技場に向かおうとする。
イルーナとしても、はやくしないとミランの命が奪われてしまうかもしれないからだ。そうなってしまうことを阻止したい気持ちは人一倍存在していた。ゆえに、行動しているのだ。考えたり、相手を説得している間にタイムオーバーになってしまえば、何かも意味がなくなってしまうのだ。だから、どっちで後悔するかを考えると、やるだけやって後悔したほうが、やらないときよりもいいと思っているからだ。
だから、考えて悩んでいる暇があるなら行動が第一。イルーナは、すぐにリースの競技場に向かって行くのであった。
「ローさん、ギーラン。はやくしないと置いていきますよ。」
と、言いながら、イルーナは、リースの競技場へと向かって行き始める。
そんな様子を見た、ローとギーランは、慌ててイルーナに追いつこうと走り出すのである。
そして、追いついた後、ローとギーラン、イルーナは歩きながら、リースの競技場へと向かうのであった。
その途中、
「ローさんもギーランも、行動に移すの遅すぎます。」
と、プンプンとしながら、可愛らしく怒るように言う。
とても、二児の母と思えないほどの若さが、今の表情がマッチしてしまう。時間でも止めているのではないかと疑ってしまうほどだ。
「はい」「そうあろう、儂も―…。」
と、ギーランとローは言うのである。
その表情は、まるで悪い事して叱られている子どものようにシュンとしていた。ローとギーランには、情けないという気持ちが存在した。
ローは、悩んでしまい、なかなか行動に移せなかったことであり、ギーランは、ローに行動に移すように説得していたが、自分自身も悩んでしまったということだ。
「そうです。こういう刻一刻と争う時には、ダメ元でも思いつくことに関しては、行動するに限ります。行動さえしていれば、何か重要な手掛かりを見つけられるかもしれません。動かなければ、ただ時間が過ぎていくだけで、無駄にしてしまいます。意味がないです。空ぶってもいいぐらいの気持ちでないと―…。」
と、怒りながらイルーナは言うのである。
ローとギーランには、心の中へと響くのであるが、もしも、それ以外の他人が聞いたのなら、あまりの可愛さのために、聞いてすらいないだろう。
そんなイルーナの表情を見て、ローとギーランは、コソコソと思うことを言うのであった。
「さすがは、イルーナにしてミランありじゃな。行動力に関しては、ギーランの方は遺伝しなかったみたいじゃの~う。ミランは―…。」
と、ローは言う。
ローは、イルーナの行動力がミランに遺伝したんだなと思うのであった。それほどのミランの行動力と、イルーナの行動力は似ていると感じた。行動すると決めたら、速い。
一方で、ギーランは、自身は行動に移すのに時間がかかるし、周りのことを考えてしまい、どうしても遅くなる。イルーナの行動力とギーランの行動の仕方のどちらが完全に間違っているということはない。どちらも状況によっては正しくなるし、間違っている時もある。ゆえに、状況をしっかりと理解して、どう行動するのかが良いのかを時には素早く、時には熟慮して選択しないといけないのである。
今回は、イルーナの方が正しかったようである。まだ、結果がでていないので、確定的なことは言えないが―…。
「アハハハハ。」
と、ギーランは、誤魔化すことができなかったが、冷静になると続けて、
「まあ、娘に俺の性格よりも、見た目で遺伝しなくてよかったと思うよ。」
と、言う。
「そうじゃな。」
と、ローも同意するのであった。
そのローの言葉に対して、ギーランは、心の中で怒りの気分を感じるのであった。
リースの中にある競技場。
そこの四角リングの上。
そこでは、第九回戦第三試合がおこなわれている。
試合に参加しているのは、クローナとグランチェである。
二人の戦いは、グランチェがクローナの奇襲攻撃を防ぎ、光の円盤で反撃した。
その攻撃で、クローナは、光に覆われてしまうのである。
そして、その光の円盤の攻撃は、四角いリングを覆っている透明の囲によって防がれる。
数秒の時間が経過して、その攻撃も止み、グランチェがクローナへと攻撃した方は、粉塵で覆われていたのだ。グランチェのいくつかの攻撃で四角いリングの表面が削れて発生したものによって―…。
ここで、グランチェは、光の円盤のある方へと自らの体の向くを変える。
そして、両手を前に真っすぐにして、少し横へ、そう、右手を右へ、左手を左へ、腕と共に動かし、両手に持っている武器に再度、光を纏わせる。
そう、再度、あれを出すのだった。
「光の鋏」
と、グランチェが言うと、両手に持っている武器が光りとともに鋏の切る部分になる。
そして、今度も同様に、まるで、クローナのいる場所を鋏で紙を切るかのように、左右をクロスさせる移動を開始する。
そう、クローナは、切り殺そうとしているのだ。
「さよなら。」
と、グランチェは言う。
グランチェは、残酷な一面はある。だけど、それは、あくまでもこのランシュが企画したゲームのルールの中にある勝利条件の一つに相手を殺すこととある以上、どのような勝利条件でも満たせば勝てる。それに、クローナも方も参加している以上、そのようなことは覚悟しているはずだ。覚悟のない者を殺す気になることはないし、しても意味がない。あくまでも、グランチェは、味方や自身の勝利に貪欲なだけなのだ。ゆえに、相手チームについて分析もする。
グランチェも、ここで、勝負が決着したと思った。
そう、思っても、グランチェを攻められないだろう。
光の円盤の攻撃をクローナは、防御テントを展開して防いだようには、見えなかった。グランチェからはそのように見えている。ゆえに、確信したが、グランチェはある感覚を抱く。
(何だ、これは―…ッ!!! これ以上、光の鋏が動かない…だと!!!!)
と、その感覚にグランチェは、心の中で驚く。
驚かざるにはいられなかった。
理由は、簡単だ。
次第に、粉塵が地面へと降り積もっていく。その様子見ていけば、自ずとどうして、グランチェが驚かざるをえなくなる結果がわかるだろう。
そう、クローナは、白の水晶を使って、防御テントを展開していたのだ。
そのおかげで、クローナは、グランチェの光の鋏の攻撃によって切り殺されることを回避できているのだ。
それでも、グランチェは、その防御テントを砕こうとするが、一向にそこから進む気配が感じられなかった。それは、さらに、防御テントの上に、光の鋏が当たっている場所に、シールドを展開していたからだ。
そうなってくると、グランチェの力では、いくら押しても進むことはできなかった。
ゆえに、余計な力を消費してしまう結果となった。
その間にクローナは、自らの武器に風を纏わせる。今まで纏わせた分をも加えて―…。
(クソッ!! 防御テントで自らを守っているのか、だけど、俺の光の円盤の攻撃では、そんなそぶりを見せていなかったはずだが―…。)
と、グランチェは、攻撃を続けながらも、疑問に思うことがあったのだ。
その疑問の答えとしては、光の円盤の攻撃を受けた時、白の水晶を用いて、透明の純度が高い防御壁を展開していたのだ。それも、光の円盤の攻撃を受けるほんの一瞬の間に―…。ゆえに、グランチェは、そのことに気づかなかったのである。
そして、クローナが風を纏い終えると、防御テントのグランチェ側の面を解除して、一気にグランチェに向かって攻撃を放つ。
それは、両手に持っている武器をそれぞれ構え、一気に振り下ろし、その軌道上からクロスした二つの風の攻撃を放つのである。それは、第九回戦第二試合でアルフェがおこなった二つの刀でおこなったクロス攻撃と同様のものを思わせるのであった。
そして、グランチェは、
(光の鋏は、攻撃の威力が強い分、動きがどうしても鈍くなります。光の円盤は、さっきの攻撃で、余計に使ったために形成することができません。クソッ、やられた!!!)
と、心の中で言い、何も対処することができずに、クローナの風の攻撃を受けるのであった。
【第89話 Fin】
次回、やっぱりあの人でした!!
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回あたりで、確実に、第九回戦第三試合は終わると思います。
では、次回の更新で―…。