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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
176/747

第89話-1 一枚上手

前回までのあらすじは、グランチェの光の鋏から放たれた光線にクローナは、巻き込まれるのであった。どうなる、クローナ!!?

第89話に関しては、分割します。理由は、内容の増加によるものです。

 シュウウウウウウウ。

 もしも、音に例えたら、こんな音だろう。

 今、四角いリングでは、煙のようなものが舞っている。

 そして、四角いリングは閉じ込めらているのだ。

 ゆえに、さっきのグランチェの攻撃は、四角いリングの外に漏れることがなかった。

 もしも、漏れてしまえば、観客席の一部が破壊され、観客に多数の死傷者が出てしまっていたからだ。

 そんななか、光の放射攻撃を放ったグランチェは、

 (これは、もろに喰らっただろう。それに、なんだ、この四角いリング(フィールド)を覆っているバリアみたいなものは?)

と、クローナに自らの攻撃が受けただろうと思いながら、さらに、四角いリングを覆うように形成された透明の囲いを見て、不思議に思うのだった。

 そう、これは、元々、四角いリングに備わっていた機能だ。

 今まで、発動するほどでもなかったのだ。攻撃は、中央の舞台と観客席を隔てる壁で防げると判断できるものであった。

 しかし、グランチェの攻撃は、それでは防ぐことが不可能と判断して、展開されたのだ。

 どうして、このような判断が下されたのか。

 それは―…。


 【第89話 一枚上手】


 時間を少し遡る。

 リースの競技場を移動する人が一人いた。

 その人物の名は、ヒルバス。

 ランシュに仕え、ナンバー2の男である。

 (え~と、管理室は―…、あっちですね。)

と、心の中で言いながら、管理室へと向かう。

 なぜ、ヒルバスが管理室へと向かっているのか。

 それは、第九回戦第二試合以後、味方の別のチームが試合しており、そのチームのメンバーの攻撃が観客席を壊しかねないと判断されるほどの威力になっているのだ。

 理由としては、十二の騎士の中で実力が上へと向かっており、四角いリングや中央の舞台におさまらず、さらに、中央の舞台と観客席を隔てる壁を壊すことができるほどの威力の攻撃をどんどんしてくるのだ。

 第九回戦第二試合は、何とか持ちこたえたが、第九回戦第三試合は、グランチェであり、グランチェは第二試合で李章に負けたアルフェより一段階上の実力を有している。

 それはつまり、グランチェの攻撃は、観客席へと被害を及ぼす可能性が高いということになる。そうなってしまえば、観客の中で死傷者が出してしまうことになるだろう。

 それは、ランシュにしても、ヒルバスにしても望んでいない。望むわけがない。あくまでも、これはゲームなのだ。討伐対象を討伐するための―…。

 討伐対象の三人とチームを組んでいる者たちにはしょうがないがルールで勝利の条件に相手を殺すことをいれているので、殺されようと参加することに合意した時点で、覚悟はしてもらう。

 だが、観客は違う。あくまでも、娯楽として、このゲームを観戦に来ているのだ。ゆえに、観客に死傷者を出すのは、ランシュがこれからリースを支配していくうえで、大きな障害にもなる。リースに住む人々の反感をかいかねない。そうなってしまえば、リースを円滑に支配し、リースの発展は望めないだろう。

 進む、進む。

 (そろそろ、管理室だ。)

と、心の中でヒルバスは言う。

 そして、ヒルバスは管理室と書かれている部屋にたどり着く。

 (ここか。)

 そう言って、ヒルバスは、ドアを開け部屋の中へと入るのであった。

 管理室には、三人ほどの人物がいた。

 その三人ともが、ヒルバスに気づく。

 「何者ですか。不法侵入は許されていません。はやく部屋を出て行ってください。」

と、管理室にいる一人が言う。

 その人物は、髭を剃っているが、髭が生えている場所がわかるほどに髭が濃いおじさんであった。

 「ランシュ様から許されてここに来た。別に、あなたがたの命を奪いたいわけでも、殺したいわけでもない。用件は、四角いリング(フィールド)での戦闘による攻撃が外に漏れないように囲いをしてくれ、透明なのが存在していただろう。」

と、ヒルバスは、管理室にいる人たちに用件を伝えるのであった。

 それは、ランシュから命令されたことではなく、ヒルバス自身の行動であり、ランシュから自由に行動する許可をもらってきているのだ。

 理由は、四角いリングでおこなわれている試合が、すでに、中央の舞台と観客席を隔てる壁では対応することができないと判断され、これ以上、四角いリングに囲いで覆わないと、観客に被害が出るからである。

 だけど、その理由をヒルバスは管理室にいる人たちに説明していない。ゆえに、伝わらなかったのだろうが、第九回戦第三試合の状況を見ればそうなると、想定することができる。

 だから、管理室にいる人たちは、

 「囲いをしてもいいだな。そうなると、おたくらのルールであり、四角いリング(フィールド)の外にでるという勝利条件が不可能になってしまうが―…。」

と、二人目の管理人である室長と思われる人物が言う。

 この人物は、管理室にいる三人の中で最も年上で、髪の色の白へと近づきつつあった。白髪が増えていたのだ。

 「それは、別に構わない。むしろ、観客に死傷者を出すことのほうが俺たちにとってはよくない。」

と、ヒルバスは、堂々とした声で言う。

 それは、ここで、変に口ごもらせたり、小さな声で弱弱しく言えば、相手側が疑念をもちかねないし、意見を通すことはできない。堂々としているほうが、相手にそうさせるべきだという意見を通りやすくするのである。

 「わかった。作業にとりかかれ。」

と、管理室長と思われる人物が言うと、四角いリングを覆うように囲いを展開させるに指示するのだった。

 ただし、ヒルバスにさっき言った勝利条件の中の四角いリングの外に出すことの条件を不可能させることのない、囲いを展開することができることを管理室長は知っていた。

 なのに、なぜヒルバスにその問いをした理由は、簡単だ。ヒルバスが嫌いなのではなく、その真意が本当のことであるかをあえて、管理室長自身が嘘を付くことによって、確かめたかったからである。

 そして、ヒルバスの意志が本当であることを確信した管理室長は、ヒルバスの考えを採用するのであった。

 一方で、管理室長の作業の命令に対して、

 「はい!!」

と、返事した管理室長と思われる人物以外の二人は、返事をして作業にとりかかるのであった。

 こうして、グランチェが、クローナに向かって、光の放射攻撃をする瞬間に何とか、四角いリングを覆う透明の囲いを囲うことができたのである。


 話は戻る。

 四角いリングの上。

 煙のようなものが出ていた。

 そして、それはしだいに、四角いリングの上へ灰が降り積もるようになっていく。

 そうすると、グランチェは、クローナのいると思われる場所に向かって視線を向ける。

 グランチェは、気づく。そして、驚く。

 (いない!!)

 そう、クローナがそこにいないのだ。

 つい、グランチェは、心の中で言いながら―…。

 そして、グランチェは、

 (どういうことだ。まさか、さっきの攻撃を受けて、耐え切れず消失してしまったようですね。)

と、心の中で言う。

 グランチェは、光の放射攻撃をするときのことを思い出し、さっき心の中で言った結論に達する。そう、クローナがグランチェの攻撃を受けて、体の破片を残すことなくその生を終えてしまったということを―…。

 そして、グランチェは、自らの武器である光を再度、半分になっている槍の中に小さく圧縮して纏わせるのであった。そうしないと、相手が背後から攻撃してくる場合、対応することができないのだから―…。小さくしていれば、素早い動きも可能となる。

 (消えた!!)

と、誰かの心の中の声がする。

 その人物は、自らの対戦相手の背後をとっていた。

 そして、対戦相手の武器が消えたのと同時に、背後から詰め寄り、自らの両手に持っている二つの武器に風を纏わせて攻撃しようとする。

 そう、クローナは、グランチェの背後にいたのだ。

 どうして、クローナがグランチェの背後にいたのか。それは、さっきのグランチェの光の放射攻撃の時、シールドで何とか一時的に防ぐことができたが、それでも光の放射攻撃がグランチェによって強められて、突き破られ、その後、相手に気づかれないように薄いシールドを数枚ほど展開した。そして、クローナは先に、手以外の体、四角いリングに倒れるかのように屈んで、手を武器を一気に下へ動かし、そこから、転がるかのように、ギリギリのタイミングでクローナから見て右横に避けたのである。光の放射攻撃のせいで、転がっていてもその移動スピードが速くなってしまい、四角いリングと中央の舞台の境、ギリギリまで行ってしまったのである。光の放射攻撃によって、その後、煙のようなもの、四角いリングが削れて粉塵があがったので、それを利用してクローナは、グランチェの背後にうまく移動したのである。

 クローナは、ジャンプしながら、攻撃の構えをし、右手に持っている武器で攻撃する。振り下ろすようにして―…。

 「喰らいなさい!!」

と、言いながら―…。

 ズン。

 クローナの右手に持っている武器で振り下ろされている音。

 まさに、グランチェはここで敗れるのかもしれない。クローナにとっては、倒せたと思った。

 だけど、グランチェが何もしていないわけではなかった。

 「勝利を確信するのが、早すぎましたね。クローナ(お嬢さん)。」

と、グランチェは、余裕に笑みを浮かべる。

 そうだろう。だって、グランチェは、もしも、さっきのような形の武器が解除される前に、相手が背後をとって攻撃した時のことを考えていないわけがない。そんなことは、自らのさっきの攻撃をするという時点、いや、それよりも前から、そう、さっきの攻撃方法を考えついた時から考えていたのだ。対処法を―…。

 ゆえに、すでに展開していたのだ。

 「光の円盤」

と、グランチェが言うと、クローナの目の前に丸い光のシールドが浮かぶのであった。

 「!!」

と、クローナは、驚く。

 (いつの間に!! こんな早く展開できるなんて!!! 最初から、準備していたってこと!!!! クッ!!!!!)

と、クローナは、心の中で悔しそうにするのであった。

 「そんなものは、簡単だ。自分の戦い方を知っていれば、簡単に思いつくことです。だから―…、この後のことも考えているのですよ。」

と、グランチェは、次、つまり、攻撃する方法を考えていたのだ。

 「!!」

と、クローナは、驚き、回避しようとする。

 だけど、グランチェは、

 「放射。」

と、言うと、光の円盤からクローナに向かって、光の放射攻撃が放たれるのである。

 それは、クローナを覆うのであった。そう、クローナは、グランチェが展開した光の円盤の放射攻撃を避けることができなかったのだ。避ける時間すら存在しなかったというのが正しいのだろう。

 この光の放射も、四角いリングを覆うような囲いのおかげで、四角いリングの外に出ることはない。

 ゆえに、被害は四角いリングの外に及ばないようになっていることから、観客たちに犠牲者が出ることはない。


 中央の舞台。

 瑠璃チームの側。

 「つ~か、あの透明な囲いみたいなのは何だ。さっきから、ずっとあるんだけど…。」

と、アンバイドは言う。

 アンバイドとしては、なぜ、急に囲いみたいなのが出現したのか? 疑問でしかない。

 だから、アンバイドは考える。

 (この囲いのおかげで、グランチェの攻撃が四角いリングの外を越えて被害を及ぼしていないように見える。なら、考えられるのは、戦いの攻撃が大きくなって、観客への被害を減らすためか。こりゃ、敵側のランシュの方も、ただの馬鹿な反乱者というわけではない、ということか。リースの中枢を握っている狸どもよりも武力があり、見せ方を心得ている以上、このゲームの勝利したとしてもかなり厄介なことになるだろうな、リースは―…。まあ、リースのことはどうでもいいんだが―…。)

と。

 アンバイドにとっては、ランシュという存在がリースの中枢で権力を握っている者よりも武力があり、かつ、リースに暮らす人々にどう振る舞うべきかを心得ている。ゆえに、馬鹿に自己主張する反乱者、クーデター決起者というわけではないだろう。そして、人々の支持をしっかりと得ることに腐心し、その成果は小さいながらもしっかりと出しているのだろうとアンバイドは考える。ゆえに、瑠璃たちがランシュを倒して、リースをセルティーの元へ実権を戻したとしても、かなり統治が大変になるだろう。リースの中枢で権力を握っている奴らをセルティーは、確実に追い出さないといけないのだから―…。

 アンバイドとしては、結局、リースがどうなろうと関係のないことでしかないので、これ以上考えても意味がないだろうと、考えるのをやめる。

 そうすると、アナウンスが聞こえてくるのであった。

 「こちらは、リース競技場の管理室長です。四角いリング(フィールド)に関しては、観客の皆さまに攻撃が及ばないように、透明の囲いを展開させていただきました。この囲いは、人以外のものを四角いリング(フィールド)の外へと飛ばさないように設定しました。以後、試合のルールの変更はございませんので、このまま試合をお楽しみください。」

と。

 (俺の予想通りか。)

と、アンバイドは、心の中でそう感想を言うのであった。


 リースの競技場の中の管理室。

 ヒルバスは、驚きながら言う。

 「そのような設定は可能だったのですか。さっきは、一つの勝利条件である四角いリング(フィールド)の外への条件はできなくなると言っていましたが―…。」

と。

 「私たちもそう思っていました。だけど、人だけを四角いリング(フィールド)の外に自由に出すことは可能です。あれは、私たちが忘れてしまったかもしれない技術によってはるか昔に造られたものですから―…。」

と、管理室長は、ヒルバスに向かって言うのだった。

 管理室長は、ヒルバスを試していたことに関しては、一切言わなかった。言う必要もないだろうと判断した。

 「そうか。協力に感謝します。私はこれで失礼させていただきます。」

と、ヒルバスは、管理室長に向かって言うと、管理室を出ていくのであった。

 その時、ヒルバスは、

 (差し入れでも次の試合の時には、持っていくとしましょう。意地悪い一面もありますが―…。)

と、心の中で思うのだった。


第89話-2 一枚上手 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


パソコンが2時間ほど、青い画面のままになりました。そのせいで、第90話を進められませんでした。今は、元通りに回復したのですが―…、なぜ!!?

『水晶』は、第86話の終わりで、文字数は90万を超えました。あと文字数100万まで10万を切りました。まだ、これでもリースの章が終わらないとは―…。それよりも、ネームの方も書ける時間があれば書かないといけません。第一編の最終章が途中になっています。

『ウィザーズ コンダクター』(カクヨムに投稿している)は、プロットのようなものが第4部途中なので、ゆっくりできるんですが、予想以上に第1部での部分数が増えています。なかなか『ウィザーズ コンダクター』の方のPV数はなかなか増えないな、と感じています。う~ん。

『ウィザーズ コンダクター』の方は、今、実質毎日更新のようになっています。

読んでいただけると幸いです。

では、次回の更新で―…。

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