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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第80話 それは時です

前回までのあらすじは、第九回戦第一試合が始まった。礼奈と紳士のような服を着た背の高い人の試合であった。礼奈は相手からの攻撃を受けてしまうのであった。

 【第80話 それは時です】


 礼奈は、紳士のような服を着た背の高い人に蹴られる。

 それでも、自らの武器であり、槍を四角いリングの表面に刺すことで蹴り飛ばされるスピードをゼロにする。

 そして、それが成功し、礼奈は、四角いリングの上に立つ。

 それでも、礼奈は、

 「はあ、はあ、はあ。」

と、呼吸を整えている。

 それほど、紳士のような服を着た背の高い人に蹴られたダメージが大きかったようだ。

 (防御の時間を与えないなんて―…。だけど、タイミングは何となくわかった。)

と、礼奈は心の中で紳士のような服を着た背の高い人の攻撃に対する対策を思い浮かべるのであった。

 ようは、攻撃段階に移行した場合に、防御の姿勢をとればいいということだ。さらに、攻撃のタイミングが何となくだけど感覚的に礼奈は理解できたのである。

 「さあ、次の攻撃にいきましょう。」

と、紳士のような服を着た背の高い人は言う。

 その言葉は、攻撃の合図であった。

 それは、礼奈もすぐに理解できた。だから、防御の態勢に移行する。

 でも、意味のないことでしかない。

 「!!!」

と、礼奈は気づく。

 礼奈の目の前には、黒い靴があったのだ。形としては、スニーカーではなく、革で覆われた靴が―…。足先の部分は尖っていないのだが、正方形で、足先から離れるほど、靴が大きくなっていくので、その正方形の部分は、狭くなっていた。ゆえに、この一撃を礼奈が受けてしまえば、ダメージを大きく受けることであろう。今度は腹部ではなく、顔部であり、礼奈の目の近くであった。

 だけど、何とか槍で防御するような態勢で攻撃を受ける。そのため、礼奈の顔面に紳士のような服を着た背の高い人の蹴りの攻撃は当たることはなかった。

 それでも、槍を蹴り飛ばすことのできるほどの威力であった。

 礼奈は、槍を手から離さなかったので、飛ばされていくのである。槍をすぐに四角いリングの表面につけながら、四角いリングの外に出ないようにする。

 その中で、礼奈は、対戦相手である紳士のような服を着た背の高い人を目を合わせ見るのであった。

 (どうして!!! 防御できないし、それに、攻撃のスピードが速すぎる!!! どうして、天成獣の属性が生の人でもこんなに速くはならない。目で追えないなんて!!! 何かカラクリがあるかもしれない!!!!)

と、心の中で礼奈は、紳士のような服を着る背の高い人の速いスピード攻撃の仕組みを暴こうとするのであった。

 それでも、礼奈は、気づく。

 (消えた!!!)

と、心の中で言う。

 そう、礼奈の目の前から、紳士のような服を着る背の高い人が消えたのだ。それも一瞬で―…。

 礼奈は辺りを見回して探し始めるが、すぐに理解する。背中に悪寒がはしるのだ。

 礼奈の後ろに紳士のような服を着た背の高い人がいたのだ。今度は蹴りではなく、紳士のような服を着た背の高い人は、自らの右手をグーにして、礼奈へとパンチを攻撃をするのであった。

 そのパンチ攻撃を礼奈は避けることはできなかった。できるわけもなかった。紳士のような服を着た背の高い人の攻撃は、礼奈が避ける時間を与えないほどのスピードで攻撃をするのである。一瞬という時間もないぐらいに―…。

 「ガァッ!!」

と、礼奈は、口が勝手にあき、声が漏れる。

 礼奈の背中に当たったのだ。紳士のような服を着た背の高い人のパンチ攻撃が―…。

 (グッ…ウッ!! えっ、一瞬、こんな攻撃、避けられるわけがない。なら―…、やることは決まっている。ここで青の水晶(すいしょう)の効果が役に立つとは!!)

と、礼奈は心の中で対策法を見つけるのだった。

 これからも使える方法を―…。いや、過去に使ったかもしれない方法を―…。

 一方で、紳士のような服を着た背の高い人は、興奮していた。

 それは、礼奈が攻撃を喰らって倒れなかったことに―…。そう、久々に登場したのだ。

 (ここまで、私の攻撃を喰らって倒れないとは!! 素晴らしい。久々に楽しくなってきました。だから、私をもっと楽しませてもらいましょう。)

と、心の中で、紳士のような服を着た背の高い人は、言葉にするのであった。

 礼奈と戦えることに感謝しながら―…。


 一方、ギーランの家。

 ギーランは、自らの妻であるイルーナに半年前のことを説明するのであった。

 それを聞いたイルーナは、

 「そういうことがあったのね。危険なことは、なるべく控えるようにしてください。あ・な・た。あなたがいなくなると、私~―…。」

と、心配そうに言うのであった。

 そのイルーナの言葉にギーランは、ドキドキしてしまうのである。たぶん、ギーランにとっては、イルーナはまだまだ可愛いのだ。いつの年齢になっても可愛いものは可愛いのだ。可愛いに年齢は関係ない。そう断言させるものをギーランは感じていた。

 ゆえに、

 「以後、気をつけます。」

と、ギーランは、照れながら返事をするのであった。

 その光景を見た、いや、見せられてしまった魔術師ローは、

 (何、このバカップル!! さっさと爆発してしまえばいいじゃろうに!!!)

と、若干であるが、心の中で嫉妬させるのである。

 ローの表情は、ジト目になっていた。

 ローとしては、過去に戻れるのであれば、やってみたいと思えるものだった。する相手がこの世にはいないのである。ゆえに、ギーランとイルーナを羨ましく感じる。

 「ごほん。」

と、ローは、ギーランとイルーナに対して、二人の世界から引き戻すのであった。

 「とにかく、ミランを探したほうがいいということじゃな。」

と、ローは今すべきことを言う。

 今、ギーランが長年探している自身の娘の一人の居場所を知っているミランを見つけることである。そうすれば、行方不明になっていた娘がそこにいるのだから―…。

 「でも、ミランはどこに行ったんだ。」

と、ギーランは言う。

 ギーランは、ミランの置き手紙の内容を思い出したのだ。そこには、どこへ行ったのかは書かれていなかった。探さないでくださいと書かれているのだから、どこへ行ったのかミラン自身が書くわけがない。

 ローは、

 「イルーナ、この家の戸締りをしておいてくれるかの~う。今回に関しては、イルーナも探したいという顔しておるからの~う。」

と、言う。

 ローは言いながら、イルーナの表情を見ていたのだ。自分も一緒に探したいという気持ちを―…。だけど、ギーランは、

 「いやいや、この家のことをどうするんだ。ひょっとしたら、戻ってくるかもしれないじゃないか。ミランが―…。」

と、言う。

 それは、イルーナを危険な目に会わせたくないというギーランの思いがあった。ギーランは、イルーナは大事な家族であり、妻であり、ミランを見つける、もしくは自分たちの娘一人を見つけ出す間にイルーナが何かの不幸な出来事で死んでしまえば、ギーランにとって意味がないのだ。イルーナをギーランとローとともに行動させるということは、イルーナを不幸に巻き込んでしまう可能性を高めてしまうのだ。そんなことをさせたくない。ギーランはそう思っている。イルーナを愛しているがゆえに―…。

 「それでも、私は一緒についていきますよ。それに、ミランが帰って来た時のために置き手紙をしておけばいいの。あの子も置き手紙一つで家を出ていったのですから―…。それぐらいしても、バチは当たらないのではないでしょうか。」

と、イルーナは言う。

 「それにの~う、ギーラン、この家には、しばらくの間、儂の作った防犯装置を置いておけば安全じゃ。」

と、ローは、イルーナを後押しするかのように言う。

 ギーランは、イルーナとローの意見に押されて、

 (これ以上、俺が言っても意味がないか。)

と、心の中で理解し、言うのだった。

 「わかりました。俺の方がおれます。」

と。

 こうして、戸締りをして、簡単な旅の支度をして、食糧をローの作った別空間の中に入れ込み、準備を完了させて、ロー、ギーラン、イルーナは、ログハウスの外に出るのであった。

 そして、イルーナがログハウスの玄関に鍵をかけ終える。

 その時、ロー、ギーラン、イルーナの目の前に、丸い形をした空間の歪みがでるのであった。

 人が二、三人が同時に移動することができるほどの大きさであった。

 「「!!」」

と、ローとギーランは驚くのであった。

 ローとギーランは、このように空間を歪めることができる人間は、この時代において、世界のどこを探しても、ほとんどいないであろうし、ローとギーランが知っている人物の中でこんなことができるのは、ただ一人しかいない。技術的に可能という面も含めて―…。

 そう、

 「「私」は寝てしまっているようだね。折角、ローに会えるのに!! まあ、俺にとっては興味のないことだけど―…。俺の好奇心を起こすようなものではないし、ね。」

と、声がする。

 それは、ローにとっても聞いたことのある声、ギーランにとってはローが聞いたのよりも最近に、聞いた声である。

 「俺の実験を邪魔してくれるね。だけど、まあ、いくら現実(あの)世界の時間の進行を遅らせても意味はないけどね。俺の実験は、着実に準備ができつつあるのだから―…。あー、あとは―…、ロー…、また、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? まあ、俺には関係ないとはいえないのか。それでも、代理人としての勝負は俺が受けることになるだろうけど―…。」

と、空間の歪みが登場してきた人物は言う。

 そう、空間の歪みからローたちのいる場所に空間移動したのは、ベルグであった。

 「ベルグ…。」

と、ローは歯を噛みしめながら言う。

 「ベルグ(お前)は、あの時の!!」

と、ギーランは思い出しながら言う。

 そう、ギーランは、ベルグに会ったことがあるのだ。

 それは、ギーランが、瑠璃、李章、礼奈を現実世界で石化されそうになったのを助けて、この異世界へと送って、現実世界の時間を止めた後、時間停止を解除するためにベルグが現実世界に来た時に会っているのだ。その時、現実世界の時間停止に関しては、解除されたが、同時にベルグも現実世界に行けなくされ、さらに、ギーランは現実世界での時間の進行をかなりまで遅らせるためにローからもらったもので実行したのである。

 話を戻す。

 「おいおい、警戒しないでくれよ。今回は、俺からの親切、というよりも、俺にとっても予想外のことが起きてね。」

と、ベルグは、呆れながら、そして、困った風な表情をして言う。

 ベルグとしても困ったことが起こったのだ。

 それは、

 「俺としたことが、うっかりと話してしまったのだよ。俺の部下に―…。ランシュ君じゃないよ。彼は知っていたとしても、自分のやることに関しては、双方にとって平等にするだろうし。だがね、俺の部下にも弱い癖に、相手の後ろや寝首をかいて、成果をあげるのがいるのだよ。俺としては、そのことが必要な時もあるから部下としているんだよ。だけどね、今はそうじゃないでしょって言ったんだけど―…。功を焦ったんだろうか、この家にいた娘さんと俺が定めた討伐対象の一人の首筋に水晶がある子の命を狙っているんだよ。俺としては、ランシュ君が今、世界を移動した三人の討伐を命じているんだけど―…。はあ~、困ったもんだ。だから、場所は、リースだよ。今日は、試合がある日じゃないかな。第九回戦が―…。ああ、でも、実験の内容は教えないよ。では―…。」

と、ベルグが重要なことをあまりにも下手にまとめずに言い終えると、ベルグは、空間の歪みの向こうへと消えていくのであった。

 ローは、逃がさないように攻撃の準備をするが、空間の歪みは、ベルグが空間の歪みの向こうへといくとすぐになくなり、攻撃することができなかったのだ。

 「クッ!!」

と、ローは悔しがる。

 今度こそ、「私」を倒すことができると思ったのに―…。それは、実際にベルグを倒すことができたとしても不可能であろうが―…。武力という面ではなく、心の中での恐れや、「私」を倒すことがあることを発生させてしまうために―…。

 「ベルグ…って言ったか。あいつのおかげでミランの居場所がわかった。なら、早いところリースへと向かおう。」

と、ギーランは言う。

 ギーランとしては、一刻も早くリースへと行き、ミランを見つけておく必要があるし、そこに自分の娘がいる。そして、ベルグの言っていた首筋に水晶がある子、そう、瑠璃だ。瑠璃がギーランの次女であるかもしれない。ギーランは、心配の気持ちと同時にこれで家族が全員が揃うという喜びの気持ち双方をもちながら―…。

 「そうね。ミラン(あの子)に復讐という馬鹿な真似をさせちゃいけない。」

と、イルーナもギーランの意見に同調するように言う。

 ローは、ギーランとイルーナの言葉に気づき、

 「そうじゃな、そうしよう。空間移動じゃ。」

と、ローは言うと、ロー、ギーラン、イルーナを空間移動させ、リースの近郊へと到着するのであった。


 一方、リースの競技場の中。

 四角いリングの上で、第九回戦第一試合がおこなわれていた。

 戦っているのは、礼奈と紳士のような服を着た背の高い人である。

 「はあ、はあ、はあ。」

と、礼奈は息を整える。

 礼奈は、窮地に近い状況になっていた。紳士のような服を着た背の高い人のスピードには、礼奈でも対処できずに受けてしまっていたのだ。その攻撃は、かなり礼奈にとって大きなダメージを与えるものであった。

 ゆえに、息を整えないといけないほどに追い詰められていた。

 そして、今度も、紳士のような服を着た背の高い人が、礼奈の目の前から消えるのであった。

 (消えた!! また!!!)

と、礼奈は心の中で悔しそうにする。

 すでに対処する方法がある。発動も何とかさせることができるかもしれない。だけど、まだ完璧ではなく、うまくいくかも未知数なのだ。

 (すぐに来るはずだ。)

と、礼奈は心の中で言うのであった。

 そして、

 「ガァッ!!」

と、礼奈が声を漏らす、そう、紳士のような服を着た背の高い人の攻撃が礼奈に当たったのだ。

 その衝撃で、礼奈はダメージを受けるのであるが、今度のダメージは大きいものではなかった。

 なぜか。

 紳士のような服を着た背の高い人は、気づく。

 (凍らされている。)

と、心の中で紳士のような服を着た背の高い人は言う。

 そう、紳士のような服を着た背の高い人は、靴の部分と、ズボンのすその部分が凍らされていたのだ。

 紳士のような服を着た背の高い人は、ひとまず礼奈から距離をとるのであった。

 (どういうことだ。いや、私が攻撃するのがわかっていたから仕掛けていましたか。思っていたよりも、賢い方のようです。だけど、礼奈(お嬢さん)の息は、荒れています。礼奈(お嬢さん)の体力の残りは、わずかというところでしょう。なら、私の天成獣の属性である時で―…、おしきります。)

と、心の中で紳士のような服を着た背の高い人は考えるのであった。

 紳士のような服を着た背の高い人が扱っている武器に宿っている天成獣の属性は、時である。その武器は、腕輪である。

 そう、さっきまでの礼奈への攻撃を、自分以外の時間を一時的に停止して動くことであたかも瞬間移動したように感じさせたのだ。天成獣の属性が生の者より速かったのは、そのせいである。

 そのことに関して、礼奈は、

 (!! 待てよ。天成獣の属性が時になら、生よりも速く移動することは可能だ。自分以外の時間を停止させてしまえばいい。なら、できることがある。青の水晶(すいしょう)の能力も活かせる。)

と、心の中で、紳士のような服を着た背の高い人の天成獣の属性を見破るのであった。

 そして、天成獣の属性が時の場合の戦い方を、しっかりとセルティーからもらった本で学習しているので、対処できると確信するのであった。

 一方で、紳士のような服を着た背の高い人は、

 (お嬢さんは、私の天成獣の属性がどういうものかには気づいていないようですね。この凍りなど、簡単に無力化できますよ。)

と、心の中で、余裕の笑みを浮かべるのであった。


 【第80話 Fin】


次回、策っぽくない策で制す!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では、次回の更新で―…。

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