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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第79話-2 どこへ

前回までのあらすじは、瑠璃チームのメンバーはリースにある競技場の中央の舞台にいた。今日は第九回戦がおこなわれる日であるから―…。そして、相手チームが登場するのである。

今回で、第79話が完成します。

 観客席の中の貴賓席。

 そこには、ランシュ、ヒルバス、レラグともう二人ほどの人物がいた。

 「おい、ランシュ。俺の試合は次だろう。お前と同じチーム。俺は眠いのだよ。」

と、一人のおじさんが言う。

 過去にぬいぐるみを持っていたおじさんが―…。そう、ネリワッセ、本名はクローマという。

 クローマは、これからおこなわれる第九回戦にはさほど興味はなかったようだ。戦いの前に相手の情報を知っておくことは大事だが、知らないことのほうが多い。なぜなら、戦いながらすぐに判断することができるほうが実践では生き残りやすいと思っているのだ。イルターシャとは、逆に近いのだろう。

 一口に戦いと言っても、正々堂々か襲撃されて襲われることによる戦いかで考えると、クローマは、後者が圧倒的に多く、その経験が事前に情報を集めるということに対して、忌避感に近いものを抱かせるのであった。それでも、事前に情報を集めることの重要性も認識している。それは、ランシュやヒルバスに任せておけばいいと思っていた。

 現在、クローマは、かなり眠いのだ。夜遅く起きていたからではなく、何時間寝ても眠いのだ。趣味、寝ることと書いていいぐらいなほどに―…。

 「いや、起きろよ。徹夜でもしたのか?」

と、ランシュは、クローマに向かって呆れながら言う。

 ランシュとしては、真面目に起きろよ、である。ランシュは、騎士として真面目な生活規範を守ってきたことが体に染みついているせいか、つい、不真面目な生活を送ってそうなものを見ると怒ってしまうのである。親しい仲ほど顕著であるが―…。

 「いや、夜も早く寝たよ~。眠い。」

と、クローマは、ランシュに眠そうにゆっくりと言う。

 そして、クローマは寝るのであった。グー、グー、と寝息をたてながら―…。(いびき)と言ったほうがいいかもしれない。

 ランシュは、そのクローマの行動を見て、

 (ダメだ、こりゃ。)

と、心の中で呆れながら、クローマを起こすのを諦めるのであった。

 実際は、第九回戦の全試合が終わった時に起こすだろうが―…。

 そして、もう一人の人物が、何これ、という感じでそのランシュとクローマのやり取りを見るのであった。

 「師匠は、相変わらずだな。」

と、もう一人の人物が言う。

 その人物は、フードを着ていた。そう、黒色のフードであり、ルーゼル=ロッヘでアンバイドに倒された人物だ。名をリークという。リークは、ルーゼル=ロッヘでアンバイドに敗れて以後、修行をつけさせられていた。その師匠がそこで眠ってしまっているクローマなのである。

 「で、今日はアンバイドが試合するのか。」

と、リークは、ランシュに尋ねる。

 ランシュは、

 「それはわからないな。運がよければ、ってところかな。」

と、答える。

 「そうか。」

と、リークは関心のなさそうに答える。

 リークにとっては、今、何が何でも倒したい相手がアンバイドなのだ。ルーゼル=ロッヘでアンバイドに敗れるまでは、無敗ではないにしても、圧倒的な実力に自惚れるほどの強さを自覚していた。

 しかし、アンバイドに敗北して以後、アンバイドよりも強くなりたいと思ったのだ。闇竜という技もしくは召喚を使うということをしたしても倒すことができなかったのだ。リークは気絶してしまうほどの失態を犯してしまうのであるが―…。

 だから、強くなりたかった。アンバイドと再度戦って、自分が強いと証明するために―…。ゆえに、アンバイドが戦わなければあまり意味のないことだと思ったのだ。アンバイドの戦い方から、どう戦っていこうかと考えていくうえで―…。

 ランシュの言い方を理解したリークは、アンバイドがこの第九回戦に出場しなければ意味がないので、他の奴しかでないのだろうと関心をなくすのであった。それでも、試合ごとに誰が出場するかぐらいは、確認する。もしも、アンバイドが出場することになった場合、それを見逃さないようにするためである。

 ランシュは、リークのさっきの一言を聞いて、

 「いや、他の人の戦い方も参考になるからな。倒したい対象ばかりに目がいっていると、足元救われてしまうからな。」

と、注意するように言う。

 それは、リークのように、倒したい相手しか注目していないと、他の強い奴に何もすることができずに倒されてしまうし、さらに、他の相手を分析することで倒したい相手を倒すためのヒントがあったりするのだ。

 リークには、その辺のことに気づいてほしかった。というか、気づけと、ランシュは言いたかったのだ。

 それでも、今のリークに言っても無駄なのではないかと思うのであった。

 その様子を見ていたヒルバスは、

 (まあ、リーク(かれ)は、ある意味で真っすぐなのでしょう。こういう子は、自分で気づくことで成長するタイプだから―…。今は、見守っていくしかないでしょう。危険な時にだけ、止めればいいのだから―…。)

と、心の中で思うのだった。

 ヒルバスにとってリークは、真面目で、真っすぐで向上心のかたまりなのだろう。だから、一度決めたことは何があっても突き進んでいくのだ。だから、今は、成長していくのを見守っていくの一番良いと思ったのだ。危険な時にリークの行動を止めればいいし、それ以上のことは、リークの成長を阻害してしまうかもしれないのだから―…。

 レラグは、

 (本当、師弟そろって、自由気ままです。まあ、彼らはそれぐらいのほういいでしょう。全員が同じ行動をするという集団よりも人の集まりらしいと思えます。)

と、心の中で言うのである。


 中央の舞台。

 瑠璃チームのいる側。

 相手の人数を見て、一人の少女が悲しくなるのであった。

 (戦いたい…、人数が四人、あと二人増やしてよ!!!)

と、心の中で一人の少女、瑠璃が思うのであった。

 第七回戦第六試合で戦ったレラグ戦以降、いっさい、試合に出場できていないのだ。理由は、チームの他のメンバーから最後の方にまわされていたり、試合に出さないようにされているからだ。瑠璃に重症の怪我を負わせないために―…。

 だけど、瑠璃はあることに気づく。

 (何か、私―…、フードを着て、被っている人に睨まれている。その人の顔はよく見えないけど―…。)

と、心の中で言う。

 そう、瑠璃は、瑠璃に似ている少女から視線を向けられているのだ。いや、睨みつけられているのだ。それが、あからさまであったことから瑠璃も気づくことができたのだ。

 続けて、

 (何かあの人は嫌だな。)

と、心の中で思うのだった。

 瑠璃は、まだ気づいていない。気づくはずもない。瑠璃に似ている少女に恨まれていることを―…。

 一方で、アンバイドは、

 (四人ってところか。まあ、久々の戦いとなるが、全員、俺が本気を出さずに倒すことができるだろう。だけど―…、あのフードの奴、どこか、知り合いにいたような雰囲気を纏っているように感じる。まあ、気のせいだろう。ギーランの娘がいたような気がしたけど―…。)

と、心の中で言う。

 アンバイドとしては、四人とも、一対一なら、本気を出すこともなく、倒すことはできる。ほぼ確実の事実でしかない。

 さらに、

 (礼奈、李章、クローナにとっては、苦戦しそうだけどな。五分五分といったところだし。相手との実力は―…。さすが、第九回戦ってところか。)

と、心の中で相手の実力を分析する。

 その結果、李章、礼奈、クローナと相手の四人のそれぞれの実力は、一対一では、拮抗することがわかった。ゆえに、少しの油断、選択の誤りが勝敗をわけることになるとアンバイドは考えていた。

 一方で、李章は、自らの武器である刀を眺める。刀は今、鞘に収められている状態である。

 (刀を使ったほうが強いのは事実です。今までの一週間で刀の扱い方と、それと蹴りを組み合わせる戦い方を何とか学習しましたが、それでも、まだ、完成の域には達していません。だから―…、どこまで通じるか確かめないといけません。たとえ、私が不利になることがあったとしてもです。)

と、李章は心の中で言う。

 それは、この一週間で李章は、刀の扱い方を学ぶのと同時に、蹴り、との組み合わてどう戦うかに関して修行をつんできたが、完璧といえるほどにはなっていないのだ。それはそうであろう。一週間でそのような戦い方を完璧にマスターするのは、天才といわれるクラスでも一握りの者でしかないだろう。だから、天才ではない李章は、当たり前の結果にしかなっていないのだ。悲観するほどもない。それが当たり前なのだから―…。

 礼奈は、

 (ふう~、強い人が多い、それでも、私は、チームの勝利のために戦う。)

と、心の中で、勝つための決意をする。

 チームの勝利に貢献するために―…。


 そして、試合開始の時刻になる。

 ファーランスもその時間になったことがわかる。

 懐中時計を見て確認する。

 異世界での懐中時計は、この時代のリース近辺においては、現実世界で昔にあったとされる婚約指輪が給料の三か月分といわれるほどの値段で、一般の庶民では、一生に一度買うか買わないといわれるほどのものであった。

 それは、技術的な問題のためでもあった。この時代のリース近辺では、職人による手作業で、その職人の数も多くはなく、手間がかかり、細かい作業の多いものであったがゆえなのだ。

 ファーランスは、たまたま司会の仕事をした時に、その報酬として今持っている懐中時計をもらったのである。この懐中時計はとても便利で、なくさないように大事にしている。宝物といっても差し支えない。

 それでも、ファーランスは、今の自分の仕事に集中する。懐中時計はなくさないように、服のポケットの中にしまい、ボタンでとめて、でないようにするのだった。

 「定刻になりました。それでは、これより、第九回戦を開始したいと思います。では、第九回戦第一試合に出場される方を両チームともそれぞれ一名、四角いリング(フィールド)へ!!」

と、ファーランスは言う。

 そして、瑠璃チームから、礼奈が四角いリングへと向かって行く。

 一方で、瑠璃チームの相手をするチームの方からは、紳士のような服を着た背の高い人が四角いリングへと歩いて行くのであった。


 四角いリングの上。

 第九回戦第一試合に出場する二名が対峙する。

 一人は礼奈である。

 (紳士のような服装をしてる。だけど、油断は禁物だね。イケメンで人を殺すことを平然と言う人もいるし。)

と、礼奈は心の中である人物を思い出す。

 その人物とは、レラグであり、礼奈は第七回戦第五試合の終了後に、レラグに瑠璃を殺すと言われたことがある。だから、礼奈は、好感をもてる人が決して善人とは限らないので、警戒をいっさい緩めなかった。

 もう一人の紳士のような服を着た背の高い人は、

 「これは、これは―…、お嬢さんが相手ですか。それでも、油断することはできませんね。私は男女平等を接するように心掛けています。だから、特別、女性だからといって、手を抜いて戦うことは一切いたしません。」

と、礼儀正しく言う。

 この人物にとっては、相手が女性だからといっても手加減をすることはないだろう。それを信条にしているといってもいい。手を抜くことは例外を除いてありえない。相手に敬意を払っているともいえる。

 「そう、男女平等というのは嫌いじゃないよ。すべてに賛成できるわけではないけど、ね。」

と、礼奈は言う。

 男女平等ということに関しては、賛成できる。ただし、何でもかんでも同じにすればいいわけではないと思っていた。男性には男性の、女性には女性、いや、それぞれ個人の価値観というものはある。自らの個人の価値観を優先して、社会を自分たちの私欲だけで独占しようとするのは、良いことになることは少ない。理想は、個人と相手の双方の価値観に関しては、互いの違いを認めたうえで、それを尊重したほうがいい。だけど、それは他者を貶めるものであってはいけないし、傷つけていいわけではない。その場合には、その個人としての価値観は、ある程度もしくは完全に否定されないといけない。このように述べたとしても、完全ではないだろう。人は完璧になることができない生き物なのだから―…。ゆえに、何事にも例外は存在する。その例外は、絶対に個人の我が儘だけで勝手に決めていいものではない。他者との相互の利益が本当の意味で拡大できる範囲でなされなければならない。

 礼奈は、どんな考えもまた、完璧ではなく、どこかに悪用される可能性を残しているとも考えている。だから、男女平等をすべての面で賛成できるとは思えないと言ったのだ。

 人は、完全にはなれないがゆえに、隙が存在し、悪用される。だけど、完全でないがゆえに、よりよりものに変えることができるということができるのだ。

 「そうですか。私もあなたの考えは嫌いにはなれません。互いに良き試合をしましょう。」

と、紳士のような服を着た背の高い人は言う。

 「ええ、そうしましょう。」

と、礼奈も言いながら、頷くのであった。

 そして、礼奈とその対戦相手である紳士のような服を着た背の高い人が四角いリングにあがったのを確認して、ファーランスは、

 「両者とも試合を開始してもよろしいでしょうか。」

と、尋ねる。

 「はい、構いません。」

 「試合を開始してもいいですよ。」

と、紳士のような服を着た背の高い人、礼奈の順に、試合を開始してもいいと答えるのだった。

 双方の賛成を得たファーランスは、自らの右手を上にあげ、

 「これより、第九回戦第一試合、開始!!!」

と、上に上げた右手を振り下ろすのだった。

 こうして、第九回戦第一試合が開始された。


 試合はすぐに動きを見せる。

 紳士のような服を着た背の高い人が、礼奈の目の前に瞬間移動するかのように移動した。

 「こうですね。」

と、紳士のような服を着た背の高い人が言うと、彼は、礼奈の腹部に蹴りを入れるのだった。

 「がはっ!!」

と、礼奈は声を漏らす。

 (今…一体…何が!!)

と、礼奈は心の中で動揺する。

 紳士のような服を着た背の高い人がどうやって攻撃したのかがわからなかったのだ。時間にして、ほんの五秒も経っていなかったのだ。

 明らかに距離とセリフがあったとしても、不可能ではないかと思うが、どこか礼奈にはわからない要素があった。

 (あの人の天成獣の属性は生のように思えるのに、何か違うような…。)

と、心の中で礼奈は、言葉にする。

 礼奈としては、何かの思考に嵌って抜け出せなくなるような感じを感じたのである。

 紳士のような服を着た背の高い人は、

 (今日は、勝利することが簡単かな。)

と、心の中で思うのだった。


 【第79話 Fin】


次回、瞬間移動のような移動が天成獣の属性が生とは限らない!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


男女平等の説明は難しいです。知識不足な面が否定できないような気がします。勉強する機会があれば、いろんなことについて勉強ができたらと思います。知識をしっかりと身につけないと―…。

では、次回の更新で―…。

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