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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第79話 どこへ

前回までのあらすじは、ギーランの娘のミランがいなくなってしまったことを、イルーナから伝えられるのだった。

第79話は、分割することにします。書いていたら、長くなったからです。次の更新が第79話の後半となります。

 【第79話 どこへ】


 ギーランにとっては、衝撃でしかなかった。

 そう、自らの娘であるミランが数週間前からいなくなっていたのだ。

 ギーランは、

 「ミランが……、どうして―………。」

と、動揺しながら言う。

 イルーナは申し訳なそうに、

 「ごめんなさい。私が、買い物のために町へ行っている間に、いなくなってしまっていて―…。こんな置手紙を残して―…。」

と、イルーナは、棚の引き出しを一つ開けて、ミランが残していった置手紙をギーランに見せる。

 ギーランとローが、それを見る。

 置手紙には、こう書かれていた。


 “私の妹が見つかりました。復讐してきます。それが達成されるまで、絶対に家には帰ってきません。探さないでください。”


 「なっ!!」

と、そこに書かれていることに対して、ギーランは驚くのである。

 いや、驚く以上のことで、自分の娘、そして、ミランがその子に復讐をしようとしていること。ギーランには、理由がわからなかった。

 ローは、何となく推測がついていた。

 (たぶんじゃが、ミラン、あやつは家族思いの子じゃ。そうなると、ギーランがいなくなってイルーナが寂しい思いをしているのを知って、それを壊した妹のことを許せないと思ったのじゃろう。だけど、あれは、あの男が悪い。)

と、ローは心の中で言う。

 それは、ミランの妹が生まれた時に、何者かの干渉で、妹は行方不明になってしまったのだ。その実験をおこなった人物は、半年ほど前にローとギーランで倒すことに成功して、自白させてはいる。だけど、肝心のミランの妹の場所を聞き出すことはできなかった。その前に、自ら毒を飲んで、死んでしまったからだ。その時、ギーランは天にも届くほどの声をはりあげ、悲しみに暮れてしまっていた。同時に、その実験場にいた一人の生き残りの少女を救うことができた。クローナである。

 それでも、ずっと半年、ミランの妹は見つけられずにいたのだ。

 だけど、同時に、ローにとっては疑問が湧かざるを得なかった。

 (じゃあ、どうして、ミランは、妹を見つけることができたのじゃ。)

と、心の中でローは言う。

 この疑問をギーランに言うべきかどうか悩んでしまう。ローとしては、言うべきことであろうことはわかっている。それでも、ギーランが感情的になるのだけは避けたかった。そうしないと、冷静な判断を下すことはできないと感じたからだ。

 結局、ギーランがいつか気づくことでもあり、遅らせていったとしても意味がないので、

 「ギーラン。」

と、ローはギーランとイルーナに、

 「なぜ、ミランは、自分の妹の居場所を見つけることができたのじゃ。」

と、言うのであった。

 ギーランは、そこで、ローの言った疑問を確かにそうだと思うのだった。

 (どうやって、ミランは知ったんだ。あの子は、町に出ることはほとんどない。それでも、この世界のことはある程度知っている。一般的な常識程度には―…。俺が探している娘の居場所は、ローさんとともに十数年も探しているのにいっこうに見つかる気配すらないのに、どうして―…。もしかして、あの半年前に倒したクソ野郎以外にもいたってこと!! あの忌まわしい実験に加担していたのが!!!)

と、ギーランは心の中であることに気づく。

 それをすぐにローに言う。

 「ローさん。あの半年前に倒した実験している者たち以外にもいたってことですか。あの、実験所のことを知っている者たちが―…。」

と。

 「その可能性もあろう。だが、もう一つ、見落としている可能性がある。実験に協力していた者の中に、儂らの知らない誰かがいて、その人物がミランに妹の場所について教えたとか―…。」

と、ローは、もう一つの可能性について言う。

 イルーナは、

 (えっ、何を言っているのですか。ローさん、あなた。)

と、疑問に思うのであった。

 だから、

 「あの~、すみません。一体、何がどうやらわからないので、私にもわかるように説明していただけると~。」

と、イルーナは言う。

 それを聞いたローとギーランは、

 「あっ、そうだった。」

 「そうじゃった。」

と、言う。

 そう、イルーナは、半年前にローとギーランが、ある実験所でおこなわれた実験を阻止するために実験者を倒したことを知らない。知るはずもない。ギーランがこのログハウスに帰ってくるのは、一年ぶりなのだから―…。

 (説明するしかないな。)

と、ギーランはすぐに心の中で言うのであった。

 イルーナは、自分の娘の一人が生まれた時に行方不明になったその日からずっと悲しんでいたのだ。ミランの前では、泣くことも悲しいと思う姿を見せなかった。それは、ミランを悲しませたくなかったからだ。ミランに不便な思いをさせたくなかったからだ。それでも、人知れずに泣いていたことがあった。その寂しい思いを感じたから、ギーランは、家族として過ごすことを犠牲にしてでも、イルーナとの間に生まれた娘の一人を探すことにしたのだから―…。家族全員で過ごす日が訪れれば、きっと、家族全員笑って過ごせると思えるからである。

 こうして、ギーランは、半年前の実験所でのことをイルーナに説明するのであった。


 場所はリース。

 その城の中の城門近く。

 そこには、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドがいた。

 「準備できたな。出発するぞ。」

と、アンバイドが言う。

 そして、さらに、そこには、セルティーに仕えるメイドであるニーグとロメがいた。

 「「いってらっしゃいませ。」」

と、ニーグとロメが同時に言う。

 そして、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドは、リースの競技場へと向かって行くのである。今日、第九回戦に出場するために―…。


 瑠璃チームがリースの城を出てから、一時間ほどの時間が経過した。

 リースの競技場。

 今日も今日とて、多くの人々がランシュの企画したゲームを見に来ていた。観戦といったほうがよいだろう。

 そんななか、中央の舞台では、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドが登場するのであった。別に、審判であるファーランスやそれ以外の人物が、登場コールをしたわけではないのだ。それに関しては、ランシュ自体がそうするように伝えていないのだ。理由は、ただ単にランシュの頭の片隅になく、忘れていたからである。今だにそうなのである。

 そんなことよりも、話を戻す。

 瑠璃チーム全員が、あることに気づくのだ。中央の舞台に入ってきた時から―…。

 「観客の人が、最初の時よりも増えているんですが―…。」

と、瑠璃は何となく礼奈に言う。

 「そうね。なぜこんなに多くなっているのかはわからないけど―…。う~ん。」

と、礼奈もわからないと答える。

 瑠璃や礼奈は、試合の戦っていくことに必死でどうして観客がこんな増えているのかわからなかった。理由は、ランシュの企画したゲームが、観客にとっての娯楽になっているのだ。リースがランシュの手に渡るのか、王家にとどまるのかということに関して、関心はあるものの、純粋に騎士たちによる試合よりもレベルの高い、戦いの内容のために、白熱しているのである。すでに、どっちが勝つかで、賭けまでが非公式におこなわれるまでになっているのだから―…。

 賭けのことに関しては、アンバイドすら知らないのである。アンバイドは、ここしばらくは、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティーの修行をつけているために、そこまで把握することに時間を割くことができなかったのだ。もし、賭けの存在を知っていたのなら、少しだけ賭けていたのかもしれない。あくまで、自分の持っている手持ちの中のわずかの金だけど―…。アンバイドは珍しく、賭けに対して、のめり込むということはなかった。なぜなら、賭けというものは、大抵、大元、賭けを主催している者が儲かるようにできていることを知っているからだ。だから、賭けは、その主催に対する寄付みたいな活動だと割り切っている。賭けの主催をおこなうのは、金の匂いにかなり敏感なのであるだろうから―…。知っておくだけ損はない。

 (多いな、観客が―…。まあ、出さないといけない状況になれば、本気を出していくか。)

と、アンバイドは心の中で思う。

 アンバイドとしては、これからの第九回戦と翌週の最終回戦で自身が本気を出す可能性があるかもしれないと思うのである。それは、相手チームの実力があがってきていることもあるが、ランシュという強い相手も最後の回戦に登場してくる。その周りにいるのも、実力者となるだろう。ゆえに、アンバイド自身が戦っていくうえで、本気を出さないと勝てない状況に陥っていく可能性が存在することになるのだ。その覚悟を決めるのである。

 一方で、クローナは、

 (うわ~、いっぱいだぁ~、お客さん。頑張らないと!!)

と、やる気を(みなぎ)らせるのであった。

 セルティーは、

 (いつまでも悩んでいたって仕方ありません。今は、目の前に戦いに集中しましょう。)

と、心の中で思う。

 セルティーとしては、ランシュのことに関して悩むよりも、今は目の前の第九回戦に集中しようとするのであった。セルティーは、第五試合の出場であり、実際には、試合に出場する可能性はかなり低いのである。二勝二敗にならない限りは、試合をすることはないのだから―…。瑠璃チームが勝とうが負けようが―…。

 李章は、相変わらず目の前の試合に集中し、瑠璃を守るためにどうすればいいのかを考えていた。


 観客席。

 審判であるファーランスがいつもいる場所。

 そこには、今日もファーランスがいる。

 (今日も、お客が多いなぁ~。二年前のレグニエド王暗殺事件以後、祭りなどの娯楽は増えてきているが、こういう真剣な試合というものはないから、客が多くなるわけだ。立ち見もいるぐらいだし。後、今日借りた、この拡声器で声が競技場内の全体に行き渡ることだろう。)

と、ファーランスは心の中で言う。

 ファーランスの手には、球の形をしたものが握られている。それは、球の形をしたものを握ることによって、拡声器の役割を果たすものであり、この競技場内に自身の声を行き渡らせることのできるものだ。第八回戦では、声をはりあげることによって試合の開始と勝利宣言をおこなっていた。しかし、それだと競技場内にいる全員には伝わらないので、競技場の管理組織から球状の拡声器を借りてきたのである。その時、快く借りることができたのであるが―…。

 ファーランスは、確認する。両チームのメンバー全員が来ているのかを―…。

 (瑠璃チームはっと、一、二、三、四、五、六と全員、選手は来ていますね。後は、相手チームは―…。)

と、心の中で言いながら、瑠璃チームがいるのとは別の方向を向くのであった。

 (まだ、来ていませんね。時間までは、あと三十分ほどありますし―…。ここまで、観客が増えると、定刻通りに開催しないと文句を言われてしまうかもしれませんから―…。)

と、ファーランスは心の中で相手チームが現れるかもしれない方向を向きながら、言うのであった。


 そして、十分ほど時間が過ぎる。

 瑠璃チームとは、逆の方法から中央の舞台へ入るもう一つの入口から何人かの足音が聞こえる。

 そう、第九回戦瑠璃チームと戦うことになる対戦チームがやってきたのだ。

 その足音は、しだいに姿をともなったものの登場を予感させ、それを現実にする。

 「初めて来ました、ここが競技場ですか。趣が深いです。」

と、グランチェが言う。

 そして、瑠璃に似ている少女は、フードを被っていた。それは、アンバイドの姿を晒したくはなかったからだ。アンバイドという人物に実際に知り合いである以上、今すぐ正体を現すわけにはいかなかった。ここに来た目的はすでに決まっているのだから―…。そいつが試合に出場する時に正体を明かすことになるだろう。

 だけど、瑠璃に似ている少女は知らない。瑠璃が第六試合の出場であることを―…。そして、瑠璃に似ている少女が属しているチームの人数が四名であることを―…。そうなってしまうと、瑠璃に似ている少女は、瑠璃とは戦えなくなるのだ。復讐する機会を失ってしまうのだ。現実にそうなるのかどうかは、第九回戦が進んでいけばわかることなので、今は語ることの必要性は存在しない。

 (強い、強い。対戦相手にとって不足はないな。)

と、一人の人物は心の中で思う。

 この人物にとっては、どの相手でも倒すことができるぐらいの実力はあるだろう。自らの天成獣の属性に関係している以上は―…。さらに、対処され、相手が勝利のためのことをしてきたとしても、ある程度ならこの人物は簡単に対処してしまうだろう。それぐらいに強い実力を有しているのだから―…。

 ここにいる相手チームの全員が、ランシュによって選ばれた十二の騎士であるのだから―…。


第79話-2 どこへ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


いろいろ、動き始めています。第九回戦以後にとっても、リースの章の次の章以降にとっても―…。

では、次回の更新で―…。

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