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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第78話-6 それぞれの動向

前回までのあらすじは、瑠璃チームは第九回戦の出場順を決めました。結果、瑠璃は勝ってに第六試合の出場にされてしまいました。なので、瑠璃は、部屋の隅でいじけてしまったという。

今回で、第78話は完成します。

 リース郊外、ランシュのいる館の中。

 そこには、もちろんランシュがいる。

 さらに、ヒルバスもいる。

 そして、ここには、イルターシャ、ニードがいた。

 さらに、それに加えて、瑠璃に似ている少女を含む第九回戦に出場する四人がいた。

 その誰もが、十二の騎士といわれるほどの実力の持ち主である。

 イルターシャが重い口を開く。

 「ランシュ様。私の敗北に関しては―…。」

と、申し訳なさそうに聞く。

 第八回戦で負けたのだ。何かしらの制裁があるのではないかと思ったのだ。レラグにはなかったことから、

 「ああ、敗北に対する責任に関しては、ないから安心しろイルターシャ、それにニードもな。」

と、ランシュは言う。

 ランシュとしても、レラグが瑠璃に敗北して制裁を科さなかったのだ。なのに、イルターシャやニードに制裁を科すのは公平性に欠ける。それに、制裁を科す気もなかった。科したところで何かが変わるわけではない。恐怖だけじゃ人は、最大限のパフォーマンスを発揮してくれるとは限らない。促せるのは、自制心というものであろう。

 「ありがとうございます、ランシュ様。」

と、イルターシャが言うと、

 「ありがとな、ランシュ様。」

と、ニードも言うのであった。

 そして、イルターシャは言いながらも、深々と礼をするのであった。ニードは、「ガハハハハ」と笑うのであった。そのニードの笑い声に、イルターシャは呆れるぐらいしかなかったのである。

 イルターシャと瑠璃に似ている少女以外は、ニードらしいと思うのであった。瑠璃に似ている少女は、アホらしっ、とどうでもよさそうにするのだった。

 「まあ、第八回戦のことは置いといて、第九回戦は、本当に四人でいいんだな、グランチェ。」

と、ランシュは、第九回戦でのチームのリーダーであるグランチェという人物に言う。

 グランチェは、好青年を思わせる人物で、中肉中背のように見え、実力がありそうには思えないが、服からわからないほど、しっかりと鍛えられた筋肉をもっている。細マッチョの類であろう。そして、レラグとは違い、顔は若干濃ゆいものを感じさせる。

 「いくら人数を増やしたところで、瑠璃(相手)チームを倒せるほどの実力がなければ意味がない。それに、瑠璃(相手)チームには、アンバイド、十二の騎士を倒したのが三人いる。その三人と当たれば、苦戦することは必至(ひっし)でしょう。それなら、自分たちの中で、実力のある者たちでいくのがいいと思う。以上、ランシュ様。」

と、グランチェは言う。

 彼の性格は、好戦的ではなく、相手をしっかりと分析して、味方の実力がどうなのかを考えて、冷静に判断を下すのだ。イルターシャに近いタイプの人間であろう。

 「そうか。まあ、期待している。いい戦いをしろよ。」

と、ランシュは、グランチェ率いるチームに第九回戦での健闘を祈るのであった。

 グランチェは、

 「ありがたきことです。」

と、深々と礼をしながら言うのであった。

 その様子、瑠璃に似ている少女は、見ながら、

 (九回戦。やっと、やっと、恨みを晴らせる。瑠璃(あいつ)に復讐する。家族を壊された恨みを―…。)

と、心の中で瑠璃に似ている少女は、歓喜するのであった。

 この少女にとって、瑠璃が実際に被害者であったと理解していたとしても、恨まないということはないだろう。少女にとって、瑠璃が原因で家族は崩壊したようなものなのだ。父親は、家に帰って来ることも少なくなり、母親が時々泣いているのを見ていたのだ。瑠璃に似ている少女は、その様子を見て、心の中で思うのだった。

 (いつか、行方不明になった妹に復讐してやる。あなたがいなくならなければ、家族は幸せだった。)

と。

 だから、たとえ、瑠璃が被害者であったとしても、復讐するのだ。やりきれない怒り、不満をぶつけるために―…。自分の幸せを取り戻すために―…。


 第九回戦当日。

 だけど、まずは、違う場所。

 早朝、ゆっくりと道の真ん中を二人の人物が歩くのだった。

 この道は、獣道に近いものであった。

 一人は、不満を抱きながら、

 「朝一から歩くなんて、ローさん、あんなに歩くのきついとか言っていたのに、俺の家が近くなると急に早く移動しようとするなんて―…。」

と、言う。

 この人物は、ギーランである。

 ギーランは、ベルグによって現実世界が石化させるのを止めようとして、ローの能力により、異世界から現実世界へと渡航し、石化させる黒い棒にみたいな生き物を捕まえるが、それを一部逃がしてしまい、現実世界の石化阻止に失敗する。それでも、瑠璃、李章、礼奈という石化されていない現実世界にいる人物を見つけ、この異世界におくっている。

 ギーランは、その後、現実世界の時間を停止するも、ベルグによって、しばらくした後に阻まれ、ベルグを現実世界に来させないことに成功する。そして、現実世界の時間の進行をかなり遅らせる方法をとった後、異世界へと戻ってローと再会する。

 ローと合流した後、ローがリースへと戻ろうとするので、久々に自分の家へと寄り道して戻ろうとしているのである。ギーランは、自分の妻や娘の一人に会うために―…。

 一方、ギーランに不満をもたれている魔術師ローは、

 「ギーラン、お主の家が近いのだろ。なら、早く家に到着したい。ここしばらく歩くことが多すぎて、足がパンパンなのだ。」

と、自分の足が完全に疲れ切ってしまっていることを主張する。

 ローの体は、老人のそれであり、決して、長旅を歩くだけですることを得意としているわけではない。ロー自身は、体力の衰えというものは存在しておらず、その衰えが若い時に止めることができていたのであれば、ローは今も若い頃と同じ体力で移動することができ、疲れなど感じなかったであろう。まあ、もしもという現実的でないことを考えたとしても意味はないだろう。

 現に、ローの足は完全にパンパンの状態であり、ここ数日の移動で完全に疲れというものが姿を現しており、いつ歩く気力を奪われてしまうかわからないのだ。

 それでも、ギーランとの約束であるギーランの家へ向かうという約束を守るつもりであった。ロー自身の歩くという気力を完全になくす前にたどり着くのを望みながら―…。

 「そう言われても―…。世間との関わりは重要でも、私たちの存在というのは、あまり世間に必要以上には知られたくないのですよ。人に創られし人の一族であることを―…。」

と、ギーランは言う。

 そういうと、ローは悲しそうな表情をして、

 「そうか。」

と、そっけなく答えるのであった。

 ローは、人に創られし人の一族について知っている。知っていないとおかしい存在である。

 「まあ、人に創られし人の一族のことは、今はどうでもいい。それよりも、そろそろ俺の家が見えると思います。」

と、ギーランは言う。

 そう、ギーランは、自分の家が近いということがわかったのだ。近くに小さな湖が見えたのだ。そして、そこの近くに大きな木が存在していた。樹齢は千年を越えるものとされている。

 「ほう、あの木は、儂の生きてきた年数よりも長いの~う。」

と、ローは歩きながらのんびりとした声で言う。

 「そりゃ、そうですよ。」

と、ギーランは呆れながら答えるのである。

 そうこうしていると、ローとギーランは、ギーランの家へと到着するのであった。

 ローとギーランは見る。

 その家は、ログハウスのようなものである。

 たぶんだが、この地域で産出される杉の木などをふんだんに使って建てられたのだろう。それも、樹齢の長い木を使っているので、材料として使われている木の一つ一つが太いのである。そう、感じさせる。

 「ローさん到着しました。では、行きましょう。」

と、ギーランは言う。

 そして、ギーランは、ローを案内するかのように、ログハウスの玄関へと向かうのであった。玄関の近くには階段が何段かあった。それを登って、玄関にたどり着く。

 ギーランは、ノックをトントンとして、玄関のドアを開けるのであった。

 そうすると、

 「あなた。」

と、言う女性の声がする。

 女性はすでに中年に差し掛かっているのに、二十代の若い女性のようにいわれても信じてしまうほどであり、背は、百六十センチメートル前半ぐらいで、ギーランより十数センチぐらい小さかった。

 「イルーナ。」

と、ギーランは言う。

 そう、ログハウスの中にいた女性は、イルーナと言い、ギーランの妻である。すでにギーランと結婚してから二十年近くになるほどだ。

 イルーナは、ギーランへと向かい、ギーランを抱きしめ、ギーランに対して上目遣いをして、唇にキスをするのである。

 ギーランは、イルーナのその行為に驚く。

 ギーランにはわかった。しばらく自分がいなくて、イルーナは寂しがっていたのだ、と。ギーランとしても、申し訳ない気持ちではある。それでも、自分は、見つけないといけない。どこかにいる娘を―…。再度、家族として過ごすことのできなかった日々を取り戻すために―…。それをギーランは、自らの使命として―…。

 キスを終え、互いに唇を離す。

 そのキスシーンを見ていたローは、

 「お熱いですの~う、お・二・人・さ・ん。」

と、冷やかすように言う。

 ロー自身も過去に夫がいて、彼との楽しい思い出も、悲しい過去、その最後もあった。

 それでも、ギーランとイルーナのキスシーンを見ると、楽しい思い出を思い出すのである。そして、この二人のリア充と思わせるものに、何か一発冷やかしを入れないと気が済まなかった。なぜなら、ギーランとイルーナのキスシーン、むしろ愛し合えるということをローが羨ましいのであった。もう、ローには、二度とないことであるから―…。

 「はいはい。」

と、ギーランは冷めたように言う。

 これにムキになって反応すれば、ローの思うツボになるとギーランは思ったのだ。

 「ただいま。イルーナ。それで、ミランの姿が見えないのだが、どこにいるんだ。」

と、ギーランはイルーナに尋ねる。

 ミランという、ギーランとイルーナの間に生まれた娘、長女の名前を―…。

 そして、イルーナは言う。

 「そうだった。あなた、大変なの。ミランが数週間前からいなくなってしまったの!!!」

と。

 ローとギーランは、驚くのであった。

 「どういうことだよ。ミランに何かあったのか。」

と、ギーランは心配しながら言う。

 ギーランは、自ら歯噛みをさせながら―…。


 【第78話 Fin】


次回、第九回戦開始だ!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第79話からは、第九回戦が始まります。一方で、いなくなったミランは一体、どこにいるのでしょうか? たぶん、分かりやすいのかなと思っています。

では、次回の更新で―…。

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