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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第78話-5 それぞれの動向

前回までのあらすじは、二年前のレグニエド王暗殺事件や、ランシュのことについてリーンウルネから聞く、瑠璃、礼奈、セルティーであった。そして、瑠璃とリーンウルネは、二人で話すことになる。

 リーンウルネは、すぐに別の話題へと話を変える。

 「それで、松長瑠璃、お前は、セルティーを同じチームの一員としてどう思っている。」

と、瑠璃に質問をする。

 瑠璃は考える。どうセルティーのことを表現すればいいのか、少しだけ悩むのであった。

 悩んだうえで、答えを出すのであった。

 「強いと思いますよ。だけど―…、これをセルティーさんから言わないで欲しいと言われているんですが―…。」

と、瑠璃が言いかける。

 そこで、

 「ランシュへの復讐か。儂の夫に対してランシュが復讐したように―…。」

と、リーンウルネは言う。

 その言葉は、リーンウルネの中で想像できることであった。目の前で、信じることのできた人物に自らの父親が殺されたのだから―…。生きる気力をなくすか、そいつへの復讐を抱くのかある程度選択肢を予想することができる。

 その中で、セルティーが、ランシュの企画したゲームに参加し、瑠璃と同じチームであることからも想像できる。ミネルネの言葉と、セルティーと一緒にいた時間からの経験から可能性の高い選択肢とは何かを考えれば―…。

 だから、聞きたかったのだ。セルティーのことをどう見ているのか、瑠璃とセルティー、礼奈とセルティーの関係で言えば、勘に近いものであったが、瑠璃とセルティーの関係のほうより親密に思え、何かを互いが知ったことにより、親密になっているのだと思えた。多くのことがわかるのではないか、と。

 一方で、瑠璃は驚くのであった。セルティーの母親であるリーンウルネの勘の鋭さに―…、そして、まるで何かを見通されている感を感じるのである。この人の前では、嘘を付けないと思えるぐらいに―…。

 「すごいですね。セルティーさんがランシュという人へ復讐しようとしているのに気づくなんて。」

と、瑠璃は、リーンウルネを褒めるようにして言う。

 その瑠璃の一言に、何となくであるが、一つの事実に気づく。

 「そう、松長瑠璃、お前は知っていたんだな。そして、それを止めようとしているのだな。松長瑠璃、私は少しだけ安心できた。」

と、リーンウルネは、安堵の表情で言う。

 瑠璃は驚く。瑠璃としては、ただ、リーンウルネがセルティーがランシュに対してどのようにしようかとしているのかを当てていることを褒めただけなのだ。それなのに、リーンウルネは、セルティーのランシュへの復讐を止めようとしているのに気づいているのだ。誰であっても、瑠璃の立場なら驚くことだろう。

 リーンウルネの方は、安心ができたのだ。セルティーのランシュに対する気持ちを理解したうえで、的確にセルティーが進んではいけない道を選択しているのを止めているのだから―…。

 (レグニエドの周りとは違い、セルティーは人には恵まれているようじゃ。)

と、リーンウルネは心の中で思うのだった。

 レグニエドの周りは、利権を求める人々が群がっているのがあまりにも多く、最後にはそいつらしかいなかったのに対し、セルティーの周りには、セルティーのことを想ってくれる人が今のところは多い。そのようなセルティーのことを想ってくれる人が多いうちに、利権だけを求めて、そして、自分だけが得すればいいという人物を見分けることと対抗する手段を身につけてほしい。リーンウルネは、それを自分自身ですることができない。リーンウルネという人は、自由気ままに動くことが多すぎるからだ。そこには、セルティーにいままで多くの時間をかかわってやれなかったという後悔の気持ちが強かったのである。

 だから、

 「松長瑠璃、セルティーのランシュへの復讐を止めて欲しい。もしくは、ランシュを松長瑠璃に倒して欲しい。約束してくれないか。」

と、リーンウルネは瑠璃に頼むのである。

 一人の母親として―…。身勝手なことであるが、セルティーがランシュと戦えば確実に、レグニエドがランシュに殺されたように復讐劇となり、何も生まないからだ。いや、さらなる復讐が発生するのではないかと危惧しているのだ。

 だから、瑠璃によって、倒して欲しい。ランシュを生かしたうえで―…。

 瑠璃は、その時、すごく、リーンウルネに対して、頭にきたのだ。

 「ランシュという人は私が倒します!! セルティーのお母さんのお願いを聞くからではありません!!! 私は、私のためにランシュを倒します!!!! それに、セルティーさんの復讐に関しては、セルティーのお母さんが自分で止めればいいでしょ!!!!! 何、自分の子どもに対して遠慮しているんですか!!!!!! ビシッ、て言えばいいですよ、復讐なんて馬鹿なことをするなって!!!!!!!」

と、瑠璃は怒りながら言う。

 瑠璃としては、親だからこそ遠慮して欲しくなかった。セルティーは、きっと、自らの肉親であるリーンウルネにかまって欲しかったんだと思う。母親に寄り添って欲しかったんだと思う。リーンウルネは、なぜか、自分は一歩下がって、まるで俯瞰者で、他人ですよという感じでセルティーに接しているだと瑠璃は感じたのだ。だから、傷つくことを恐れずに、セルティーさんと話し合って欲しい。そうすれば、何か解決できるかもしれないと思ったし、一歩先に踏み出せるのではないかと思ったのだ。

 瑠璃にとっては、親子で喧嘩することもあると思う。瑠璃自身にも経験はある。たとえ、それが―……、であったとしても―…。

 「ありがとう。儂も怒られるのは久々じゃ。それも、儂よりも小さな子どもに―…。儂も小さい時に、あの人に怒られた時を思い出すよ。」

と、リーンウルネは、瑠璃に感謝しながら、過去のことを思い出す。

 昔、リーンウルネの幼少の頃から、リーンウルネを外へ自由に連れまわしたあの人のことを―…。瑠璃にあの人のことが重なってしまう。

 だから、リーンウルネは嬉しかった。このように、年上の者であってもしっかり意見を言える者がいて、怒れる者がいて―…。

 この時、瑠璃は頭の中にハテナマークを浮かべるのであった。どうして、リーンウルネに感謝されたのかを理解することができなかった。それでも、瑠璃は、嫌な思いをするのものではなく、心地よいものであった。

 「では、セルティーと雑談でもしたいところだが、そろそろ、昼時じゃの~う。昼飯の準備をしないといけない。お昼、食べていくか。」

と、リーンウルネは瑠璃に問いかける。

 そう、もう、昼時になりかけていたのだ。昼食の準備をしないといけない時間になっていたのだ。この教会では、他にも昼食の準備をする者もいるが、リーンウルネ自身もちゃんとしているのだ。別に、王妃であったとしても、料理ができないわけではなかった。ちゃんと、結婚前からメイドたちからちゃんと料理の仕方を教えてもらっていた。そのため、二年前にこの教会に来てから、王妃時代にはできなかった料理ができるようになったのだ。さらに、バリエーションの増加もできたという。久々のお客などで、自分の手料理を振る舞おうとしたのだ。

 「昼食の準備はできております。リーンウルネ様。」

と、言う声が聞こえた。

 「アルミルカ、手際が良すぎ。折角、我が腕を振るおうとしたのに~。」

と、リーンウルネは、アルミルカに向かって文句を言うのだった。

 「リーンウルネ様。他にも、セルティー様と、山梨礼奈様もいるのに、今から昼食を作り始めては、昼を過ぎてしまいます。」

と、アルミルカは、冷静に淡々と述べるのである。

 瑠璃は、この光景を見ながら―…、

 (………リーンウルネさんって、何も考えずに物事に頭を突っ込むタイプの人?)

と、心の中でリーンウルネをそう評するのであった。


そして、礼奈とセルティーも含めて、教会で昼食をとる。

 内容は、質素なものであった。パン一つ、くず野菜を使ったスープ、教会で採れた新鮮な野菜のサラダであった。

 瑠璃も礼奈も、この異世界での食事に慣れたのか普通に食べていた。たぶん、野菜に関しては、野菜独特の味というものもあるが、栄養価としては、現実世界のものよりも高くなっている。健康にはよいものであった。

 そんな中、

 「セルティー。今は大変だけど、道だけは間違えるな。決して、ランシュのような復讐の道へは―…。」

と、リーンウルネが突然、そのようなことを言い出したのだ。

 リーンウルネとしては、昼食の準備が終わるまでの間、かなり悩んで考えていたのだ。セルティーにどう言おうかとして―…。その踏ん切りがつかず、結局、他者から見れば、急に何を言うのですかという印象を与えるのであった。

 結果、言ったリーンウルネ以外の人は、もう少し言い方ってものがあるでしょ、と思ったのだった。


 昼食を食べ終えた後。

 一時間ほどセルティーの恥ずかしい過去を聞き終えた後、瑠璃、礼奈、セルティーはリースの城へと帰ろうとするのであった。

 教会の出口で、

 「お話しありがとうございます。」

と、代表して礼奈が言う。

 「いえいえ、こちらこそ久々のお客であった。楽しませてもらった。では、また、会える日を―…。」

と、リーンウルネが言う。

 そして、

 「では、お母様。体調にはくれぐれも気を付けてください。あと、他人をお母様の考えなしの行動に巻き込まないように―…。」

と、セルティーは注意する。

 セルティーにとっては、リーンウルネが他人を良く巻き込むのである。とんでもない行動に―…。だから、帰りに注意するのであった。

 「リーンウルネさん。いや、セルティーのお母さんって、何事にも考えずに突っ込んで、他人を引っ掻き回す人なの。」

と、礼奈は、リーンウルネやセルティーに聞こえない声の大きさで、瑠璃にヒソヒソ言うのであった。

 瑠璃も同様に、

 「うん、何となくそうだと思う。カリスマ性はありそうなのに―…。」

と、礼奈の言葉に返事するのであった。

 そして、瑠璃、礼奈、セルティーは、教会の外に出て、馬車へと乗り込み、リースの城へと帰っていくのであった。

 一方、それからすぐの教会では、

 「希望が見つかったな。」

と、リーンウルネは言う。

 (松長瑠璃なら何とかしてくれそうだ。今の事態を―…。)

と、心の中でそう思うのであった。

 「そうですね。では、私たちにとって希望のリーンウルネ様は、草むしりをしてください。」

と、アルミルカが言う。

 そして、リーンウルネは、

 「ミネルネ―――――――――――――――――――、サボりやがったな―――――――――――――。」

と、教会中に響くぐらいの大声を出すのであった。

 リーンウルネが頼んだ、草むしりをサボったミネルネに対して―…。


 その日の夜。

 アンバイドの部屋。

 そこには、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドがいた。

 内容は、第九回戦の出場順を決めるためであった。

 「じゃあ~、九回戦の出場順を決めるぞ。」

と、アンバイドが言う。

 「第一試合に出たい人、挙手な。ただし、瑠璃は、第六試合な。」

と、アンバイドは、第一試合に出たい者と聞くが、瑠璃は第六試合に勝手に決めるのであった。

 「なんで、私出たいよ。」

と、瑠璃は、アンバイドによって第六試合に出場することに決められたのに対して、反論し、第一試合に出場したいという。

 「瑠璃、残念だが、もうお前は第六試合に出場させることに決めている。もし、はやい試合に出たいのなら、相手チームの誰かに指名してもらうのだな。それに―…、このチームの大将は、瑠璃、お前である以上、最後の出場で堂々と構えているものだ。わかったな。反論は許さん。」

と、アンバイドは言う。

 アンバイドにとっても、瑠璃は試合には勝つが、相手の実力が瑠璃自身よりも強い相手に当たることが多いので、負担軽減のために後ろの方に回したのだ。それに、第十回戦は、確実にランシュの対戦相手に瑠璃を当てることをアンバイドの中で確定させていた。それは、瑠璃がランシュに勝つ可能性があったからだ。アンバイドとしても、自分以外の保険をかけておく必要があった。この先、どうなるのかわからないのだから―…。

 それに付け加えて、第九回戦が六人未満の場合は、瑠璃を温存することで、成長した瑠璃の実力をランシュ側に気づかせないようにすることができるともアンバイドは考えていたのだ。

 そして、瑠璃は、アンバイドの部屋の隅っこで、体操座りをしていじけるのであった。左手の人差し指で地面に何かを書きながら―…。

 そんな瑠璃の様子をアンバイド以外の者が見るのであるが、アンバイドの意見には賛成してしまう。瑠璃は、第一回戦と第七回戦で戦闘不能になるぐらいのことをしている以上、第十回戦に無事に出場させるためには、第六試合にしておくがいいと思うのであった。そのため、いじけている瑠璃を無視して、進めるしかなかった。

 こうして、第九回戦での出場順が決まるのであった。礼奈、李章、クローナ、アンバイド、セルティー、瑠璃という順番になるのであった。


第78話-6 それぞれの動向 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の更新で、第78話は完成し、第九回戦に内容は入っていくと思います。

では、次回の更新で―…。

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