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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第78話-2 それぞれの動向

前回までのあらすじは、セルティーと瑠璃は、リーンウルネに二年前の出来事に関して別の観点から聞くために、リースにある教会に向かうのだった。礼奈とともに―…。

 リースの市街の中の西の入り口の近く。

 そこには、一つの大きな教会があった。

 この教会は、リースやリース近郊、この半島で信仰されている宗教の一重要な教会である。

 建物に関しては、すでにステンドグラスが導入されているのであるが、それでも大きなステンドグラスがはめ込まれていない。それは、大きな窓枠のようなものがまだ、建築に関する技術上、この地域には確立されていないのだ。

 その風景を見ながら、瑠璃は、日本にある教会と似ていることに気づく。

 (修学旅行で行った、長崎の教会に似ているかもしれない。)

と、心の中で思うのだった。

 そう、瑠璃、李章、礼奈は、修学旅行で長崎に行ったのだ。この時の修学旅行の目標は、長崎の歴史について学ぶためであったろう。その中に、平和学習や歴史の中における外国との関係についてのことを学ぶということがあった。そして、瑠璃たちは、実際に、長崎の有名な教会に入って、その歴史について学んだのだ。ただし、窓枠のステンドグラスに関しての大きさに関しては、違いが存在しているのであるが―…。

 しかし、その学習の内容も、日々の生活の中で忘れていくものである。それでも、教会の建物は、印象に残るものであった。ゆえに、それと関連付けて、教会へ行った時のことを思い出したのだろう。ただし、教会の説明に関しては、忘れてしまっていたが―…。

 話が逸れたので、戻していくことにする。

 教会に着くと、馬車から下り、教会の入り口へと向かって行く。馬車は、リースの城から出されたものである。教会への道の途中には、リースの中枢にいる者たちにとってみられたくないものがある。ゆえに、それを見せないようにしていたのだ。それでも、セルティーに見せないようにしていたが、瑠璃が風景を見てしまうのだった。だが、瑠璃が景色を見た時は、教会のある場所に近かったので、セルティーに見られることはなかったが―…。

 教会の扉近くにいた教会の衛兵に向かって行く。

 瑠璃、礼奈、セルティーが向かって来ることに気づいた教会の衛兵は、

 「何の御用件でしょうか。」

と、用件を尋ねる。

 衛兵としても、相手がセルティーであることに気づき、用件の内容はある程度想像できた。それでも、教会の衛兵という役職である以上、用件が何かであることを知っておく必要があるし、警戒も必要であった。いつ、だれが、教会を襲ってくるのかはわからないからだ。過去に、別の宗教で、北のある島で、船からやってきた者たちに襲われたことがあるという。

 「セルティーです。お母様に会いに来ました。」

と、セルティーは、リーンウルネに会いに来たことを衛兵に伝える。

 「わかりました。では、中へ―…。」

と、教会の衛兵は言う。

 この時、最大限に衛兵は、警戒したのである。中へ入った途端、教会にいる者たちを襲うことがあるからだ。すぐに、対処できるようにして―…。

 ただし、中で何かが起こるわけではない。セルティーにしても、自らの母親であるリーンウルネに会って話をするだけなのだから―…。

 教会の中へ、瑠璃、礼奈、セルティーが入ると、そこには、一人の修道女がいた。全身を黒い服を着ていて、現実世界における修道女を思わせる。その女は、二十代前後の清楚な感じをさせる。きれいな人という感じだ。

 「リーンウルネ様のお客様です。」

と、衛兵が言う。

 そう聞こえると、一人の修道女は、教会の入り口の方へと向きを変える。

 そして、客人がだれかを理解する。

 「セルティー王女様。では、リーンウルネ様を呼んできます。」

と、一人の修道女は言い、教会の奥へと向かって行く。

 その途中で、

 「申し訳ないですが、近くにある椅子に座ってお待ちください。」

と、言うのを忘れなかった。

 「では、座って待ちましょう、瑠璃さん、礼奈さん。」

と、セルティーは言うと、近くにあった椅子に座るのであった。

 教会にある椅子は、長椅子の類である。何人かが同じ椅子に座れるようになっている。それが祭壇に向かって何列も並んでいた。そう、祭壇における教会の偉い人の言葉が聞くようにできているのである。

 座りながら瑠璃、礼奈、セルティーは、リーンウルネが来るのを待つ。

 「この教会、一体どんな宗教のものなのだろう。」

と、礼奈は言う。

 それに対して、セルティーは、

 「礼奈さん。この地域で有名な宗教なんですよ。ちなみに私も信仰しています。だけど、お母様はそこまでこの宗教を熱心に信仰されていませんでした。なぜ、教会に引退のしたのでしょうか?」

と、礼奈の疑問に対して、追加して答えるのであった。

 セルティーの疑問でもあったのだ。リーンウルネは、そこまで、リース王国が存在する半島で信仰されている宗教を熱心に信仰しているわけではない。セルティーは、物心がつく時から信仰に熱心ではない様子を見ているし、その言動からも感じることができた。なのに、なぜ、二年前のレグニエド暗殺事件の後、教会に入ってしまったのか。いまだにその謎がわからないままであった。

 礼奈は、セルティーが発した言葉はあえて、聞くことはしなかった。人には人の事情があり、今、セルティーに聞いたとしても答えがかえってくるとは思えなかったからだ。


 それからしばらくすると、さらに奥の部屋から、リーンウルネを呼びに行っていた修道女がリーンウルネを連れてきた。

 「久々じゃのう~。セルティー。……? そちら二人の可愛いお嬢さんはセルティーの新しい家臣?」

と、リーンウルネは、セルティーを見て挨拶をし、瑠璃と礼奈を見つけ、セルティーの新たな家臣だと思うのである。

 「いえ、新たな家臣ではありません、お母様。この方々は―…。」

と、セルティーが言いかける。

 そこで、一人の修道女は、

 「祭りの戦いの中で、ランシュ様が企画されたゲームでセルティー王女とともに戦っている松長瑠璃さんに、山梨礼奈さんではありませんか。」

と、言う。

 一人の修道女は、ランシュの企画されたゲームがおこなわれる日に、女友達と実際にそのゲームを見に行ったことがあるのだ。ゆえに、瑠璃と礼奈のことを知っているのだ。

 「あっ、はい。」

 「そうです。」

と、瑠璃、礼奈の順に遠慮しているのではないかと思われるような返事をするのであった。自らがそうであると言う。心の中で、自分たちのことが知られていることに驚きながら、疑問に思いながら―…。

 「そうですか。では、私と握手をしてください。」

と、言って、一人の修道女は、自らの手を瑠璃と礼奈に出すのであった。

 そして、瑠璃と礼奈の二人はそれに応じて、握手をするのだった。

 その後、握手をされた一人の修道女は、握手された手を見ながら、はわわ~ん、とうっとりした表情をするのであった。憧れと尊敬のできる人物に出会ったことに喜びを感じているのだった。

 その様子を、じと~っとリーンウルネは見る。リーンウルネとしては、別に瑠璃や礼奈に憧れというものも尊敬というものもなかった。呼ばれてきたのに、一人の修道女に自分のことを放置されることに少しだけ頭にきていたのだ。

 (儂の紹介だろ。)

と、心の中で一人の修道女にツッコミをいれるのであった。

 それでも、リーンウルネは、すぐに、今言うべきを理解して、頭にきていたのを抑える。

 「セルティー。あの二人がゲームで同じチームのものか?」

と、リーンウルネはセルティーに尋ねる。

 「ええ、そうです、お母様。」

と、セルティーは、リーンウルネの疑問に答える。

 「そうか。どこかこの世界の人間とは違う感じがするの~う。」

と、リーンウルネは瑠璃や礼奈に関して、そんな感想をもらす。

 セルティーは、返事をしなかった。セルティーは、瑠璃、礼奈が現実世界、自分達とは違う世界の人間であることを言わなかった。言う必要がなく、言ったとしても信じてもらえるとは思えなかった。

 リーンウルネとしては、セルティーが言いたくないのであろうという気持ちであったと推測したので、瑠璃、礼奈に関することを聞くのを今のところやめた。人には言いたくないことだってあり、それは身内でも一つや二つ存在するものであり、それを無理矢理聞くというのは、あまりよろしくなく、関係悪化を招きかねないからだ。それでも、聞くべき時には聞くことにするが―…。

 「まあ、セルティーが言いたくないのであれば、言う必要はない。それで、何の用件でここに来たのだ。ただ、ただ、世間話がしたいってだけではないのだろ。」

と、リーンウルネは言う。

 リーンウルネは知っている。セルティーが、母親であるリーンウルネのもとへ訪れるのは世間話をするためではなく、何か重要なことを聞きたいからなのだろう。セルティーは、ここ二年の間に教会に訪れたのは、年に一回、新年の挨拶をするためであった。すでに、新年を過ぎていて、そこから一年経過していないのだから―…。そうすれば、リーンウルネなら推測がつく。何か―…、ランシュの企画したゲームに参加していることから、それ関連で聞きたいことがあるのだと思い、ここへ来たのだろう。

 「お母様ならわかっていると思います。」

と、セルティーは言う。

 セルティーも、リーンウルネがリースの城の者たちの意見とは異なることを言うが、何となく自分がどういう状態で、どうしようとしているのかを当てられていると思ってしまうことがあるのだ。

 実際には、完全ではないが、それなりはわかっているようだ。

 リーンウルネは、セルティーを見て、その表情である程度理解し、一人の修道女の方を向いて、

 「握手したり、会話するのは後にしてくれ、ミネルネ。私との大事な用件がある。私と話している間は、外の草むしりをしていてほしい。」

と、リーンウルネは、一人の修道女、いや、ミネルネに言うのであった。

 それは、これから話されることがミネルネに知ってほしいことではない。それに、ミネルネのようなリース王国の城の内部について知らない人に、リース王国の内情の話しを聞かれるのはよくないことだと思ったのだ。知ることによって、ミネルネを命の危険に晒さないためであった。

 瑠璃や礼奈に関しては、完全にそのことの一部に足を突っ込んでしまっているので、話しておく必要がある。そうしないと、自分達が何に巻き込まれており、それがどういう理由でなされているのかを理解しておくことが、これからの目的意識をはっきりとさせるからだ。

 リーンウルネの言葉を聞いたミネルネは、

 「え――――――――――。草むしりですか。嫌なんですよ。私―…、虫とかダメなんで―…。」

と、言う。

 それは、草むしりをサボって、このまま瑠璃や礼奈と一緒にいて、彼女たちがどうやって戦っているのか、私生活のあらゆる面まで聞きたかったからだ。リーンウルネの言う通りにしたら、そのような時間が減ってしまう若しくは、タイムオーバーになってしまうのだ。リーンウルネは、話が時々長すぎることがあるからだ。たまに、ミネルネは、うざいと思うときがあるぐらいだ。

 「はいはい。行ってこい。お前のサボりは、この教会の長、フィグネントに言っておくだけだがの~う。」

と、リーンウルネは言う。

 その言葉に、ミネルネは表情を崩す。そう、清楚な表情が崩れ、醜いとまではいえないが、その表情を見てしまったものは、ショックを受けてしまうだろう。これが聖女なのか、という思うぐらいのものを感じさせて―…。

 このリースの教会の長であるフィグネントは、ミネルネにとっては怖い存在であった。実際は、彼女のサボり癖に対して、怒っているだけなのだから―…。

 普段のフィグネントの性格は、穏やかで、あまり人を怒れるような性格ではないのだ。

 「は~~~~~~~い、わかりました。では、行ってきます。」

と、不機嫌そうにミネルネは言って、教会の外へと向かって行くのであった。

 「ふう、これで邪魔ものはいなくなったか。これからの用件に関しては、ミネルネが聞くことではないからの~う。さて、セルティーよ、申して見よ。そちらの瑠璃と礼奈とやらも関係していることだろう。」

と、リーンウルネは本題に入るのであった。

 セルティーは、自らの母親であるリーンウルネの目がセルティーを見つめていることに気づく。その目は、用件で一切の嘘をつくなとでも言わんばかりのものであった。セルティーとしても、リーンウルネに対して嘘を付きたいということではない。むしろ、リーンウルネから、知っている範囲内での真実を知りたいのだから―…。

 セルティーは、

 「二年前の事件の原因と、ランシュが私のお父様の暗殺にいたったこと、そして、ランシュが何をしようとしているのか。」

と、言う。

 セルティーとしては、わからなくなったがゆえに、知りたいと思ったのだ。ランシュがどうしてレグニエドを殺そうとしたのか。そして、リースをどうして奪おうとしているのか。その理由を―…。

 「言えることがあるとすれば、ランシュが何をしているのかはわからない。ランシュ本人に聞かないとわからないことだしなぁ~。儂が知っていることは、あくまでも、魔術師ローが調べる過程で知ったことを聞いただけだ。それを、今ここで言うことしかできないであろうな。二年前の事件の原因、ランシュがレグニエドを殺した理由を―…。ただし、二年前の事件に関しては、私も見ているがゆえに、少しだけだが、自分の見たものも言える。それでいいなら、言おう。」

と、リーンウルネは言う。

 「ええ、それが今、聞きたいのです。」

と、セルティーは返事するのであった。


第78話―3 それぞれの動向 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


長崎の教会には、修学旅行で実際に入ったことはあるのですが、記憶の面であやふやです。教会のステンドグラスに関しては、建築の技術上、ヨーロッパの中世と一般的に呼ばれている時代の中で、窓枠を大きくすることができなかった時代のものとしています。もう少ししっかり調べるべきだと思いました。

リーンウルネの登場は、ネーム時の中では想定されていませんでした。だけど、この人物の登場で、ネームの時ではできなかった面ができると思っています。実際に、そこまで進んでみないとわかりませんが―…。

ふう~、一日に二部分を書くと、翌日に疲れて、疲れて、執筆スピードが落ちていきます。ネームはリースの章を数年前に書き終えているのですが―…。気合いを少し入れていかないとな。

では、次回の更新で―…。

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