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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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番外編 リースの章 序章 クルバト町の虐殺(2)

前回までのあらすじは、アルデルダ領の領主エルゲルダから救援要請がリース王国に届くのであった。その内容にレグニエド王は驚き、そして、アルデルダ領に反乱を起こしたクルバト町への遠征を命じるのであった。

 宰相室。

 今日も今日とて、ベルグは忙しく仕事をする。

 実験ができないということを嘆きながら―…。

 (はぁ~。さっさと仕事を終わらせますか。しばらく人を増やすことはできないし―…。トホホ…。)

と、ベルグは心の中で思うのだった。

 ベルグがいくら宰相になったからと言って、ベルグの思い通りになるわけではなかった。やろうとすれば、できないことはないが―…。そうしてしまうと、変に目立ってしまって、周りの恨みをかってしまうので嫌であった。

 ベルグとしては、実験の内容が内容なので、なるべく目立つのはよろしいことではなかった。実験の内容に関しては言わないほうがいいだろう。

 さらに、リース王国は、役人を増やすことが、今はできない状態にあった。財政収入が芳しくないのだ。まあ、リース王国全体が不景気というのが理由のようだ。原因は、東方のどこかでの戦争によってそこの交通が分断されてしまっていることらしい。ベルグにとっては、この戦争には一切関与していおらず、なるようにしかならないと思っている。

 ベルグはただでさえ忙しい身であり、問題が起こってほしいとは思っていなかった。リース王国の宰相の仕事量があまりにも多いのだから―…。これじぁ~、過労死してしまうほどに―…。

 実際、役人の仕事量も相当なものである。リース王国の城に勤めている役人の多くがそのような意見を言っていた。理由は、中枢で権力を握っている一部があまりにも使えなさすぎるし、そいつらがよく仕事でミスをして、他の優秀な者(普通に職務に励む者も含む)たちに大量のしわ寄せがきているからである。まだ、それだけならいい。さらに悪いことに、自らの仕事のミスを他者に丸投げし、そいつがのうのうと遊んだり、余計にミスを積み重ねていき、何も反省をしないのだ。そんな奴にかぎって、権力を事実上握っている者に対して、可愛がられているので、何も言うことができなくなっているのだ。さらに、中枢で権力を握っている者も同様である。ベルグは例外に属す方と周囲からみられている。実際に、そこそこ優秀であることがわかっているためである。

 ベルグは、リース王国の中枢で権力を握っている者たちや自らの仕事の失敗を反省しない奴らを見ると、心の奥底でさっさと排除してやりたいと思う。実験の中で邪魔する奴が嫌いなように、そいつらは、自分がよく考えたうえで決めた良いやり方、方法を妨害してくる。そのくせ、自らが失敗することを上の人間に対して、隠そうとするし、いい言葉を並べたてて言うのだ。特に、メタグニキアとか自分の前の宰相とか―…。

 ゆえに、ベルグは、メタグニキアのようなリース王国を牛耳っている中枢で権力を握っている奴らがミスをして、そのミスを材料にして排除しようと考えている。リース王国の宰相の位に就いている間。自らが辞職もしくはその地位を辞めてしまえば、関係のないと思っているのであるが―…。

 話を戻し、リース王国の役人の数を増やそうとすると、リース王国を牛耳っている奴らであるメタグニキアや歴代の宰相の一族やそれを支持する領主らによって反対されるのだ。理由を尋ねると、リース王国の財政は良くないからそんなお金はないと言われる。しかし、財政収支をみると、多くが、商業投資や開発投資、社会福祉などのようなリース王国の民のためではなく、王国機密費となっているのだ。それをランシュの側近の一人に調べさせると、王国機密費の多くが、リース王国を牛耳っている奴らのところに流れていたのだ。それをベルグが知った時には、溜息を吐いたものだ。

 それだけで済めばよかった。さらに、そいつらは、リース王国に内緒で勝ってに新税を設けて、それをリース王国が勅令で出したかのようにして、税を徴収しているのだった。それを聞いた時のベルグは、呆れかえってしまっていた。ここまでお金を吸い取るだけに全神経を傾けるなんて―…。いつか、リース王国の富がそいつらによって吸い尽くされて、王国は滅んでしまうのではないかと思うほどだった。

 ベルグは、リース王国に入ってから、溜息しかでない。呆れしかない。側近が潜むのが簡単だと言われて入って、牛耳ってうまく実験をしようと思ったけど、ここまで国が酷いとは思わなかった。少しだけ、側近の一人を恨むのであった。フードを被っている奴を―…。

 ベルグが、トホホと思っている時、

 「ベルグ様、ベルグ様!!」

と、宰相室の部屋をノックする音が聞こえる。

 その音と、その音をさせている人の声を聞いたベルグは、

 「はい、開いていますよ。入っても構わないですよ。」

と、入室を許可する。

 ベルグから入室の許可がでると、ノックの音をさせた者が、扉を開け、中に入ってくる。

 その人物は、伝達係の役職に就いている者である。さっき、レグニエドの部屋にいた人物と同一人物でである。

 そう、内容はすでに決まっている。

 「レグニエド王が、ベルグ様に、リース王国の騎士軍をクルバト町へ遠征させよ!!! 住民は洗脳されていて、その装置とやらを破壊した場合でも殺されてしまう以上、仕方ない。クルバト町の中にいる住民は、すべて殺してかまわない。ただし、他所から商売来たを素早く町の外へ避難させること!!! ということです。」

と、伝達係の者は言う。

 「クルバト町への遠征ねぇ~。あれか―…。アルデルダ領の領主が言っていた救援要請のことか。確か―…、クルバト町の町長がリース王国への反乱を起こしていることかな?」

と、質問するようにベルグは言う。

 ベルグとしては、質問というよりも確認のようなものだ。ベルグは、そのことに関してある程度知っているのだ。本当の理由を含めて―…。

 「そうです。町長がアルデルダ領の領主エルゲルダに逆恨みしてのことです。」

と、伝達係が言う。

 この伝達係も、ベルグからの質問に関して、少しだけ動揺してしまう。ベルグと対面するといつもこうなる。ベルグがなぜか人の奥底を見ようとしているように感じるのだ。まるで、恐怖の塊、そう、好奇心のみが先行しているような―…。

 そのため、好奇心というものを突き詰めた人物が、ここまで恐怖の存在となっており、心の奥底をすべて握られているかのようだった。今、ベルグにレグニエドの命を伝えている伝達係の知られたくない部分、知ってほしくない部分をここで知られてしまえば、不利な要求されるのではないかという感情が伝達係の恐怖を生み出していた。

 実際、ベルグにとっては、どうでもいいことでしかなかった。人は他者をしっかりと知ることができないがゆえに、他者に恐怖し、最悪の事をしてくるのではないかと想像する。それが、行き過ぎれば、自らが危険と感じた瞬間に、感じさせた対象を排除しようとする。恐怖政治の一種をつくりだすだろう。唯一の救いが、伝達係がそこまでの状態になっていないということだ。

 ベルグは、伝達係の心情なんか興味もなく、ただ、少しだけ考える。クルバト町のことをどうするかを―…。

 (たぶん、クルバト町はアルデンダ領と揉めている原因は、エルゲンダによる増税政策が原因だろう。それも、クルバト町の上位層の所得者には、優遇制度を設け、税金をタダにしようとする裏取引があるみたいだ。彼らは、増税政策に賛成しているし、エルゲンダとは近しい関係にあるようだ。たびたび、エルゲンダに賄賂を渡していたみたいだし、な―…。今のクルバト町の町長は、そのことを掴んで、怒っているようだ。増税政策をやめて、リース王国全体の開発と王国領土の管理に、雇用を創出するように言っていた。それにクルバト町も協力すると―…。妥協案としてはまともだし、俺がアルデンダ領の領主であれば、すぐにその話にのる。富は、集中させすぎるよりも、いくつかにバラバラにしておくほうが経済という面ではいいし、循環作用がでて、長期間的な目で見れば十分いい。だけど、人は、そんなことよりも感情で生きていく生き物だ。視野を広く見るのに限界のある生き物だ。時間の制約を受けて―…。)

と、心の中で考え、言葉にする。

 続けて、

 (ふう、感情的に行き過ぎたな。まあ、これを俺一人で止めることはできないか。)

と、再度心の中で言葉にし、溜息をつく。

 ベルグは、クルバト町とアルデンダ領が揉めている原因は、わかっている。アルデンダ領の領主エルゲンダが自らの利権、さらにここには、エルゲンダに近いクルバト町の有力者の一部の利権を加えたものがあろう。そう、自らに入ってくる収入を増やそうとしているのだ。別にそのこと自体が悪いわけではない。それを、自分達だけで貯め込むのではなく、成長する産業および利益となっているもの全体に対して投資と維持をしていかないといけない。そうしないと、自らの得られる利益もしだいに、減っていくことになる。

 いや、減らしたくないから、他者からより搾取しているのかもしれない。他者の収入が減ろうが、お構いなしに―…。

 ベルグは、さらに、

 (リーンウルネ(王妃)なら何が何でも止めそうだけど―…。地位と権力に関係なく―…。たぶん、あれは無鉄砲の一種だ。)

と、心の中でリーンウルネなら止めそうなことを思ってしまうのであった。

 リーンウルネが、今、セルティーの面倒を見るのでかなり忙しく、あまり外に出てくることがない。だから、リース王国で中枢にいて権力を牛耳っている奴らがやりたい放題しようとしているのだろう。それに触発されたのか、エルゲルダもやりたい放題になっているのだろう。

 頭の痛いことでしかない、ベルグにとって―…。

 そして、ベルグは、この行動を止めることができないだろうと思っていた。いくら宰相になったとしても、後ろ盾の意向には逆らえないのだ。目立つわけにもいかないという自身の立場もあり―…。

 だからこそ、

 「では、クルバト町への遠征と王の命令を伝えてください。そして、今回の遠征には私も参加しましょう。」

と、ベルグはクルバト町遠征への参加を告げるのであった。

 「はい。」

と、言って、伝達係は、騎士たちに命令へと伝えに行くために、宰相室を出ていった。

 (せめて、いい人材ぐらいは確保しないとな。それに、これが最後の仕事になるだろう。リース王国での―…。すでに、()()()()をおこなう場所はすでに見つけてある。この一年と半年ほどの宰相生活は激務で死にかけるかと思ったぁ~。二度と、こんな仕事はやらない。)

と、ベルグは心の中で思うのであった。

 溜息がまた一つであるのであった。


 クルバト町の近郊。

 そこにある森。

 棒で木をつつく一人の少年がいた。

 「クッ!! ウッ!! 籠の中に落ちてこい!!! ウッ!! アッ!!」

と、一人の少年は言う。

 ランシュである。ランシュは、今年で二桁あたりになったばかりであろう。

 今日も、栗を拾いをやっていた。

 今は、季節が秋で、栗のおいしい季節だ。

 この栗の木は、クルバト町がある周囲では当たり前のことであるが、この異世界において珍しいものであった。

 ゆえに、栗は、富裕層向けの特産品であり、地元では、少し中身に傷が付いたものが食されている。

 ランシュは、その栗をとって、今日も換金しようとしている。それは、家計を助けるためであり、鉱物の研磨の修行ができる年齢までの間、稼ぎのいい仕事であるからだ。そして、稼いだ金は貯めて、いつか鉱物の研磨の世界で有名になって、独立するための資金でもあった。

 栗をつついていると、栗が木の枝から離れて落下する。ランシュの頭上に向かって―…。

 それに気づいたランシュは、一歩、二歩、下がることで避ける。

 栗が地面に落下する。そして、ランシュは、籠にかけていたトングをとり、木の棒を下において、栗をトングで掴み、籠の中に入れるのであった。

 「よし、これでいっぱいだな。」

と、ランシュは、籠の中にいっぱいに敷き詰められている栗を見て、満足する。

 そろそろ栗の季節も終わり、しばらく仕事ができなくなるからだ。

 「これで、冬を越すことができる。」

と、ランシュは、言いながらクルバト町へと帰ろうとするのである。

 (今日は、星を見よう。)

と、心の中で思いながら―…。


 リース王国。

 リース城の中にある騎士訓練場。

 そこには、多くの騎士たちがいた。

 それは、これからクルバト町への遠征のために集められたのだ。

 そして、その光景にメタグニキアは、怖気づいていた。

 (これほどの騎士たちがいれば―…、クルバト町なんてあっという間に蹂躙される。ああ、その光景が目に浮かぶ。エルゲルダ様も残酷なことをされる。)

と、心の中で怖気づきながらも、リースの騎士が味方であることに喜びを感じていた。

 そして、

 (クルバト町は、残念だったねぇ~。まあ、自分達が蒔いた種だ。大人しくかられればいい。)

と、メタグニキアは心の中で思うのだった。

 (それに―…、私の責任にはならないだろうし…。ベルグの野郎がクルバト町(この)遠征に参加するということだ。自ら責任を被りに行って―…。これで宰相の位は私のものだ。ハハハハハハハハハ。)

と、心の中でメタグニキアは笑いをあげるのであった。

 理由は簡単なことだ。クルバト町の遠征で、何か危機に陥るようなことがあれば、責任はベルグにあることになる。そうなって、ベルグが責任をとって宰相の地位を辞職すれば、次にその宰相の位は、メタグニキアにめぐってくるのだから―…。

 宰相になれば、王や王族以外は逆らうことができなくなるのだ。それだけ、宰相の地位は大きなものである。

 その地位が絶対的に欲しいのだ、メタグニキアは―…。こうやって、宰相になる好機を狙っていた。

 実際は、ベルグも前の宰相の約定で、メタグニキアに宰相の位を渡すことになっていた。たとえ、前の宰相を殺したとしても、約定ぐらいは守ろうと思っていた。他に、宰相に相応しい人物がいなかったからだ。どいつも、こいつも欲に塗れになってしまうだろうからだ。

 そんなメタグニキアが、自らの権力欲が叶うのではないかと思っている時に、リース王国の王であるレグニエドが騎士の訓練場へと姿を現わす。

 レグニエドは、騎士を下に見渡すことができる場所であるが―…。

 「うむ、我が国の騎士たちだ。素晴らしい動きの機敏さだ。」

と、レグニエドは自らの騎士たちの集合の素早さ、遠征の準備の速さに褒めるのであった。

 レグニエドにとっても、騎士たちの動きが素早いのは、鼻が高いというものだ。これほどの騎士たちがいれば、きっと、リース王国やエルゲルダの支配するアルデンダ領に反抗しようとしているクルバト町を討伐することができると思い、歓喜に打ちひしがれていたのだ。

 「リースの騎士たちよ、すでに、諸君らは知っていることだと思う。リース王国に対する恩を忘れ、仇をなそうとしている者たちがいる。それは、クルバト町だ。彼らは、領主であるエルゲンダを逆恨みし、町長は町の者たちを無理矢理言うことを聞かせている。すでに、彼らは人ではない。ゆえに、我が命じる。クルバト町の者を殺し、クルバト町を蹂躙せよ!!! これがリース王国を守り、平和をなすために重要なことである。出撃!!!!」

と、レグニエドは命じるのであった。

 その後、細かい説明があった後、リース王国の騎士たちはクルバト町へと向かって遠征を開始するのだった。ベルグとともに―…。


次回へ続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくかもしれません。


次回に関しては、明日の午前0時の間のどこかで更新するかもしれません。見直しと修正が終わった後となるので―…。

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