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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
142/746

第74話-2 二人敗れた

前回までのあらすじは、第八回戦第一試合クローナVSニードの試合は、クローナが勝利した。

今回で第74話は完成します。

 中央の舞台。

 イルターシャとニーゲルデンがいる側。

 その後ろの中央の舞台と観客席を隔てる壁。

 そこでは、ニードがクローナの風の攻撃によって飛ばされてきたのである。

 ニードは気絶していた。

 そして、ニードの体は、落下する。地面に向かって―…。

 地面に落ちてぶつかると、その衝撃からかニードは意識を戻す。

 「痛ァ!!」

と、その時、痛みを声にだす。

 ニードは、痛みのする、臀部をさする。さすれば痛みが治まるかもしれないと思って―…。

 「痛ぁ――――――――――――――。ここは―…。」

と、ニードは言いながら気づく。

 「四角いリング(フィールド)の外か。っということは、第八回戦第一試合(しあい)に敗北したんだな。くそ~~。」

と、ニードは、四角いリングの外に出ており、自身が敗北したのだと気づく。

 それは、悔しいことであった。

 だから、

 (今度出会ったときは、負けねぇぞ~。)

と、心の中で再戦を誓うのであった。

 ニードとしては、クローナに負けたことは悔しいことであり、自らにとって考えたくないと思うかもしれないが、ニードにとってこれは再度戦うことができる理由ができたのも当然であった。

 ニードは、強くなりたい。その気持ちは人一倍もっている。強い相手と戦って、自らを強くしたいという戦闘欲が―…。

 ゆえに、すぐにでも修行をしようとして、イルターシャにここを離れる許可をもらおうとした。

 しかし、

 「ニード、あなたがどうしようとしているのかはわかる。だけど、それは、この第八回戦が終わってからにしなさい。それまで、ここにいること、わかった。」

と、イルターシャは、ニードが中央の舞台を離れることを許さなかった。

 今は、第八回戦の中であり、この後、試合の展開がどうなるかはわからない。ゆえに、もしも第四試合以後になった場合は、ニードが必要となるので、中央の舞台にいるようにさせた。

 「そうかい。」

と、ニードは言って、大人しくなったのだ。

 (そうだった。引き分け一つと勝利一つで勝敗数が同じになるんだった。そうなると、相手は別の人間になるが、修行にはちょうどいいか。)

と、ニードは心の中で勝敗数が一緒になった時に、再度試合がおこなわれることを思い出す。

 そして、その勝負ではクローナと別の相手になるから、その人物の試合に関しては、修行で自らを強くすることにおもむきをおこうとしているのだ。強くなれば、クローナを倒す可能性があがるからだ。


 しばらくの間、ここから時間があく。

 時間にして、一時間ほどであった。

 一時間ほど経つと、四角いリングの上にある黒焦げの部分は完全にその跡が最初からなかったぐらいになっていた。

 そう、修復されていた。

 そして、次の第八回戦第二試合をおこなうことができるくらいに―…。

 ファーランスは、イルターシャ率いるチームのメンバーと、瑠璃チームのメンバーがいるのかを確認する。

 その時間に二分ほど費やした。その結果、両チームともメンバーがいることがわかった。そう、試合を再開してもいいぐらいに―…。

 ゆえに、ファーランスは、

 「第八回戦第二試合に出場される方は四角いリング(フィールド)へ!!」

と、四角いリングへと第八回戦第二試合に出場する両チームの代表一名がそれぞれ来るように促す。


 中央の舞台のイルターシャ率いるチーム。

 そこでは、

 「すまん、負けてしまった。」

と、ニードがイルターシャとニーゲルデンに謝りながら言う。

 「そうね。こっちはもう負けられなくなってしまったわ。人数を揃えるべきだったね。」

と、冷たく蔑むかのようにニードに向かってイルターシャは言う。

 それでも、ニードが負けた事実は変わらない。そのことがわかっているから、イルターシャは、

 「第八回戦第二(次の)試合は、ニーゲルデン、頼んだよ。」

と、ニーゲルデンに向かって言う。

 そう、第八回戦第二試合は、イルターシャ率いるチームからニーゲルデンが出場するのである。

 さらに、イルターシャは、ニーゲルデンに、

 「ニーゲルデン(あなた)は十二の騎士ほどの実力はない。それでも、大丈夫。ニードが倒されるぐらいだから―…。」

と、不安そうに言う。

 ニーゲルデンは、レラグやニードよりは実力としては弱いほうである。それは、イルターシャだけでなく、ニーゲルデン自身も理解していることだ。それでも、ニーゲルデンは信じている。自らがまだ成長できるということを―…。

 だから、

 「イルターシャ様。ニードが敗れるような相手がいるチームです。強いのは当たり前でしょう。だけど―…、俺は負けませんよ。勝って、俺が十二の騎士になるのだから―…。」

と、ニーゲルデンは言う。

 ニーゲルデンは、この第八回戦第二試合に勝って、ニードよりも自らが強いと証明して、ニードやレラグにかわって十二の騎士になることを望んでいる。自分が強いという証明が欲しいがために―…。

 「そう、わかった。なら、証明してみせなさい。」

と、イルターシャは言う。

 それほどの言葉を言えるのであれば、結果で証明して欲しい。それは、言葉だけで終わるだけの存在ではないということが示されてこそ、真に実力があるものであるからだ。十二の騎士に相応しい―…。

 「だけど、ニーゲルデンじゃ難しいどころか、簡単に倒されるのではないか。」

と、ニードは言う。

 ニードとしては、ニーゲルデンの実力は認めている。それでも、レラグにははるかに劣っているが、十二の騎士を除けば、ランシュの側の中でもかなりの実力を有している。

 「そうね。今の実力では難しいだろうね。だけど、成長している。ここでは、急成長するかどうかってことね。」

と、イルターシャは、ニードの言葉に答える。

 思っていたとしても、イルターシャも願望だけですべての事がなすがままになるわけではないということは、嫌というほど知っている。それでも、希望はもつもの。そこに絶望があるとしても―…。ゆえに、厳しい判断も頭によぎりながらも、思ってしまうのだ。

 「ふう、見守るとするか。」

と、ニードは言って、イルターシャもこれから始めるニーゲルデンの出場する試合を見ることにするのだった。


 一方、瑠璃チーム。

 そこでは、

 「セルティーさん、頑張ってください。」

と、瑠璃が言う。

 それは、親しみを感じるものであった。第七回戦のあった日の夜、もう、次の日になっていたかもしれないときに、セルティーの過去、二年前に起こったレグニエド暗殺事件のことを聞いた時のことがあったからであろう。

 「ええ、頑張ってきます。」

と、セルティーは、言うと、四角いリングへと向かって行った。

 その間にクローナが、

 「ガンバ~。」

と、大きな声で明るく言って、手を振る。

 それに反応して、セルティーもクローナの方を振り向き、手を振るのであった。

 その間、アンバイドは、

 (ニーゲルデン(相手)の方は、そこまで強くはないか。今のチームメンバーからみて比較すれば―…。良ければ圧勝だな、こりゃ~。)

と、心の中で第八回戦第二試合はセルティーが勝つのではないかと予想する。

 現実に客観的に見てもセルティーが勝つのは見えている。アンバイドの判断が正しいことはすぐに証明されることになる。


 四角いリングの上。

 そこには、ニーゲルデンとセルティーがいた。

 彼らは、第八回戦第二試合に出場する者たちであり、対戦相手である。

 「俺が、王女様を倒して、ニードよりも強いってことを証明するよ。」

と、ニーゲルデンは言う。

 実力としては、セルティーの方が上であり、ニーゲルデンとしても、ニーゲルデン自身の言葉で、相手の実力も計れないような馬鹿であると勘違いして、油断してくれればいいと思っていた。あくまでも、そうなってくれればいいというものであり、そこまで期待はしていない。

 あとは、実力を示せばいい、セルティー以上の実力に成長すればいいのだから、とニーゲルデンは思っていた。言葉にはしなかったが―…。

 「そうですか。こちらこそ、ニーゲルデン(あなた)よりも強いということを戦いの場で示すだけです。」

と、セルティーは冷静に言うのであった。

 ニーゲルデンが油断を誘おうとしていたのはわかっていた。それに、セルティーは、ニーゲルデンが自分より弱いこともわかっていた。

 それでも、油断する気はなかった。わずかな選択ミスが、セルティー自身の敗北に繋がってしまうのだから―…。眠そうにしている奴に負けた経験からもわかっており、その記憶がまだ薄れることがなかったからだ。まだ、その後の試合に出場していないところから見ると、第九回戦、第十回戦に登場するかもしれないために、忘れることができないのだ。

 観客席で、セルティーとニーゲルデンが四角いリングに入ったことを確認したファーランスは、

 「両者とも試合の準備はよろしいでしょうか。」

と、試合を開始してもいいかと尋ねる。

 「OKだ。」

 「試合を開始して構いません。」

と、ニーゲルデン、セルティーの順で言う。試合を開始してもいいということを―…。

 それを聞いたファーランスは、右手を上にあげ、

 「これより、第八回戦第二試合―…、開始!!!」

と、試合開始宣言と同時に、上にあげた右手を下に振り下ろすのだった。

 こうして、第八回戦第二試合が始まった。


 試合開始後。

 「俺の力を示してやるぜ。」

と、ニーゲルデンは言う。

 その後すぐに、タッと、セルティーに向かって移動する。

 その速さは、物凄く速く、ほんの数秒でセルティーへと攻撃することができる範囲へと到達する。

 セルティーは何もしていなかった。する必要もなかった。

 触れることによって相手に幻をかけなくても、発動させることができるのだから―…。

 ニーゲルデンは、

 「おいおい、動かないのかよ~。避けないと意味がないぜぇ~。」

と、勝利を確信するかのように言う。

 と、同時に、セルティーがニーゲルデンに対して、油断しているのではないかと、ニーゲルデンは思っているのだ。


 この時、中央の舞台にいるイルターシャは、

 (バカはお前だよ、ニーゲルデン。)

と、ニーゲルデンの今の行動が愚かなものであるとわかっていた。

 イルターシャは、ニーゲルデンの単純さに呆れかえっていた。

 (これは、すぐに決着がつくね。)

と、付け加えながら―…。


 四角いリングの上。

 ニーゲルデンは、セルティーへと攻撃する。

 その攻撃は当たるのだった?

 その攻撃方法は、右手による突きであった。ニーゲルデンの突きは、剣のように、人の体を貫くことができる。それは、ニーゲルデンの持っている武器である首にかけている取外し可能なリングに宿っている天成獣の属性が生であるからだ。

 そして、突きに関しては、スピードとパワー、両方において途轍もない威力を持っている。セルティーがその攻撃を受けてしまえば、体を貫かれ、出血多量で生死にかかわるような事態になるだろう。

 現実にそうなってしまえば―…、だが―…。

 セルティーをしっかりと貫いているのだ。

 だけど、だけど、セルティーの形がおかしくなっているのだ。人としてありえないような感じで、そう、風景の中にぐるぐると混ぜられているのように―…。

 そして、セルティーは消えていく。

 (消えている…どうして!!?)

と、ニーゲルデンは驚き、動揺し、疑問に思う。


 中央の舞台にいるイルターシャは、ニーゲルデンの様子を見て、

 (気づけ!! 最初からセルティー王女に幻をかけられていたことを!!!)

と、心の中で言うのだった。呆れながら―…。


 四角いリングの上。

 ニーゲルデンは、気配を感じる。

 すでにもう遅かった。対処する時間など存在しない。

 ニーゲルデンは、気づいてすぐに、背中に痛みの感触を感じた。

 「ガァッ!!!」

と、声を漏らす。

 ニーゲルデンに何が起こったのか。それは、斬られたのだ。そう、セルティーは、幻をニーゲルデンに試合を開始してすぐにかけており、そこからニーゲルデンの後ろに移動しており、ニーゲルデンが攻撃をし終えてからすぐに、剣を構え、ニーゲルデンの背中を斬ったのだ。自らの大剣で―…。

 実際は、斬ったということも幻であり、現実ではないのだから―…。

 ニーゲルデンは、倒れるとともに、気絶するのだった。

 それを、見ることができ、起き上がる気配がなかったニーゲルデンをファーランスは確認した。

 そして、

 「勝者、セルティー!!! 第八回戦の勝利チーム、瑠璃チーム!!!!!」

と、勝者の名と勝利したチームの名を言うのだった。

 第八回戦第二試合は、セルティーが圧倒的な実力で勝利したのである。

 この時、観客席の声援があがる。勝者を称えるように―…。


 貴賓席。

 ランシュは、見ていた。

 ニーゲルデンの試合は、こうなることがわかっていた。

 そう、ニーゲルデンが負けるということが、ほとんど抵抗できないであろうということを―…。

 「だが、第八回戦最後のイルターシャは、強いだろう。彼女は、腕っぷしではない方法、トリッキーな方法で勝負してくるからねぇ~。最後の最後で、楽しめるよ。ニードも強いが…。」

と、ランシュは嬉しそうにしながら言う。

 ランシュは、イルターシャの実力を知っている。腕力などの物理的攻撃力はあまりにもひ弱に該当してしまうが、ある一点において、その実力はかなりのものだ。突出するぐらいには―…。

 ランシュはそれを知っているから、嬉しそうに楽しそうにできるのだ。すでに、第十回戦という最終戦の人数はすでに満員の六人となっているので、イルターシャが勝利して加えることは不可能であるが、第九回戦ならば可能であろう。

 そう、第八回戦第三試合は、イルターシャが勝利するであろうと予測しているのだ。これは、アンバイドが対戦相手にならなければ―…、という前提であるが―…。

 「そうですね。イルターシャは、単純攻撃をするものにとっては、天敵といってもいいという存在なのですから―…。」

と、ヒルバスが言う。

 ヒルバスは、ランシュと同じ見解をもっている。そう、イルターシャの持っている武器に宿っている天成獣の属性を知っているがために―…。

 「()()()()。」

と、レラグは言う。

 そう、イルターシャの異名は、幻想女王。

 イルターシャの武器に宿っている天成獣の属性は、幻なのである。


 【第74話 Fin】


次回、幻想女王VS??

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


少し後の第76話なんですが、長くなると思ったら、以外に短くなりました。イルターシャ戦は、前回の更新で書いたような感じにはならないような感じになりそうでした。まだまだ、自分自身の見通しの甘さを思い知りました。申し訳ございません。

では、次回の更新で―…。

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