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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第74話-1 二人敗れた

前回までのあらすじは、ニードの炎の斬撃を受けるも、白の水晶の能力で耐えきったクローナがニードに一撃をきめるのであった。勝利への一撃を!!!

第74話は、分割することになりました。内容が多かったのが理由です。

 ニードは飛ばされている。

 今、現在進行で起こっていることだ。

 なぜ、そうなったのか。それは、ニードがクローナの風の攻撃を受けたからだ。

 クローナが今放つことできる最大の一撃を―…。

 (クッ!! ここで負けるのか―…、くそ――――――――――――。)

と、ニードは心の中で思いながら、飛ばされていくのであった。

 そして、中央の舞台と観客席を隔てる壁にニードは、その体を衝突させるのであった。

 その様子を見ていてクローナは、

 (何とか、勝てた。強すぎ。ニード(あいつ)―…。)

と、心の中で思う。

 同時に、クローナも息があがっていた。それほどに、ニードとの試合は、壮絶なものであったことを物語っている。

 観客席にいるこのランシュが企画したゲームの審判であるファーランスは、

 「勝者!!! クローナ!!!!!」

と、勝者を宣言するのであった。


 【第74話 二人敗れた】


 観客席の中の貴賓室。

 そこには、ランシュ、ヒルバス、レラグがいた。

 「ニード、私よりも強いのに敗れてしまいましたか。前回よりも、チーム個々人が強くなったということですか。」

と、レラグは歓心して言う。

 「まあ、レラグは嬉しそうですね。レラグに勝ったチームが勝つのですから嬉しいのも当然でしょう。」

と、ヒルバスは言う。

 それは、レラグの表情がどのようなものかがわかっていたからだ。そう、レラグが嬉しそうな表情をしていたからだ。

 「まあ、本当は、イルターシャたちの方を応援しないといけないのですが―…。複雑です。」

と、レラグは正直に複雑な気持ちを抱いて言う。

 レラグにとっては、レラグに勝った瑠璃が率いるチームのメンバーが勝利してくれるのは嬉しいことである。それは、勝負して負けた者が勝った者とのいい勝負であり、その勝ったチームに対して応援したいという感情がわくからである。自分より強いのだから、一番強いはずだと思うのだ。

 同時に、レラグは自らがランシュの側であることから、イルターシャ率いるチームもまた味方なのである。ゆえに、味方であるイルターシャ率いるチームを応援する必要がある。

 そのために、ランシュの敵チームを応援してしまうのはよくないと感じているのである。

 だが、ランシュは、

 「まあ、敵のチームも応援したくなるだろう。別に気にはしないさ。むしろ、瑠璃(あの)チームは、俺が直接率いるチームで直に倒してやりたいと思っている。そうなると、俺も味方よりも敵の方を応援しているのかもしれないな。」

と、瑠璃チームを自らが率いるチームで倒したいがために、瑠璃チームの方を応援してしまっているということをあっさりと白状するように言うのであった。

 さすがのランシュの言葉には、レラグも驚くしかなかった。

 「ランシュ様。それは~…、仮にもイルターシャやニードは、味方だと思うのですが―…。」

と、レラグは恐る恐る言うのであった。

 (それでいいのか、ランシュ様。)

と、心の中でレラグは思うであるが、言うのだけはしないようにした。

 「そういうことだ。気にするな。レラグ、お前にはお前の気持ちがある。従ってもらうことでもなければ、無理に従う必要はない。」

と、ランシュは言うのである。

 一方で、ヒルバスは、

 (ランシュ様は、時々心が広いというものです。昔、私が仮に仕えたメタグニキア(バカ)とは大違いです。人を完全に支配することも、思い通りに動かすこともできるはずがない。人は意思をそれぞれに持っているのだから―…。そのことは無意識でもわかっています。)

と、心の中でランシュに対して高評価する。

 ヒルバスは、昔、一時的に仕え、最後は殺したかつてのリース王国の宰相であったメタグニキアとランシュを比較したのだ。実際、ランシュとメタグニキアを比較していいとは思っていない。ランシュとメタグニキアでは、天と地ほどの違いがありすぎるのだから―…。

 メタグニキアは、自らが最大になることしか興味がなく、そのためなら他者を犠牲にすることを厭わないし、自らのミスは自分自身が原因ではなく部下や他者のせいにし反省しないのだ。さらに、部下や他者対して、そいつの自己責任だといって、自らの間違いがあるはずがないと思い込み、かつ、考えようともしない。そんな奴には、結果として、良い人材が集まらないし、他者から人徳のある人とは思われない。

 ヒルバスとしては、メタグニキアを殺したことを間違いとは思えなかった。ランシュの命令があったとしても―…。もしも、メタグニキアが生きていれば、ランシュを妨害し、かつ、リース王国の統治の足枷になっていたのだ。

 そして、ヒルバスは思い出す。

 (最近、ムー村の領主が過剰に税金をとっていたことが判明したのがありました。いつもランシュ様には媚びていて、全然気づきませんでした。他国とのこともありましたし―…。ベークドは、領民を殺していなかったことから、殺しはせずに、勾留で禁錮の中に入れました。あれは、ランシュ様にとっての失点でしかない。解決したのが、あの瑠璃、李章、礼奈(三人組)だったってことですね。だから、ムー村は、しばらくの間、税を免除にしました。領民の生活が向上するための土台を作らせるために―…。今度の代官は、ちゃんとやっているようですし―…。)

と。

 そう、ヒルバスは、メタグニキアにおよばないが、過剰に自らの私腹のみを肥やそうとしたベーグドという人物を思い浮かべる。彼が、ムー村における税金をリース王国が定めた額以上に徴収し、王国に納める分は定められた額ちょうどであり、その残りを自らの懐にしまいこんでいたという。そう、領の発展および領の開発に使われることはなかったのだ。さらに、領主が自らの領の運営のためにとっていい税金よりも多く徴収していたのだ。

 ヒルバスとしては、嫌いな人物である。ヒルバスも田舎の出身であり、ムー村のような小さな村で生まれ育っている。だからこそ余計に、過剰な搾取が村の発展を阻害し、衰退へと繋がっていく。さらに、村の開発もしくは発展に使わないということは、それを余計に加速させるだけだった。投資していくのは、村だけでなく、国にとっても重要なことであり、どのように考えの下で、どのようにしていくのがいいかという方針をもったうえで実行されていくことを必要とする。

 そして、ヒルバスは複雑な気持ちを抱かずにはいられなかった。ベークドを倒して、領主の過剰な税徴収を暴くのに貢献したのが、瑠璃、李章、礼奈という自らの討伐対象である三人組であったのだ。結果として、ランシュの失点を暴露されることになったが、ランシュのこれ以上のマイナスを止めてしまったということだ。そうなってくると、討伐対象であることが惜しくも思えてしまうのだ。これが変わることはないし、情をかけるべきではない。恩を仇で返すことになってしまうことは申し訳ないが、仕事である以上は、討伐させてもらうと複雑な覚悟をヒルバスは抱くのだった。

 そして、今度の代官が、うまくムー村の人々に対する失ってしまった信頼を回復できるかを祈るのであった。ちゃんとやっていることを信じて―…。帳簿と密偵の報告では、ちゃんとやっているようであることはわかっているが―…。

 (後は、ゆっくりと待つしかないですか。自らの出番がくるまで―…。)

と、ヒルバスは心の中で思うのだった。


 四角いリングの上。

 勝者はすでに決まっていた。

 第八回戦第一試合の勝負は決していたようだ。

 勝者は、四角いリングの上に立っており、敗者は、観客席と中央の舞台の間に壁に衝突して、気絶している。

 そう、勝ったのはクローナであり、負けたのはニードである。

 クローナは、黒焦げになった部分を避けながら、ジャンプして回避しながら、四角いリングを下りて自らが属しているチームのところへと向かって行くのだった。

 「ニード(筋肉ムキムキ)を倒してきた~。」

と、クローナはゆる~く言う。

 さも、それがゆる~く戦われたかのように―…。実際は、そんな試合ではなかったし、間違えば命にかかわるようなものであった。

 それでも、ゆる~くしたのは、試合の中の緊張感が緩んだからであろう。その気持ちが素直に喋り方にあらわれてしまったのだ。

 「うん、勝ってよかったよ。」

と、瑠璃が言うと、

 「心配してくれてありがとう、瑠璃。」

と、クローナは、瑠璃に向かって返事するのであった。

 「うん、そうだね。」

と、礼奈が言うと、

 「ごめん、心配かけて―…。」

と、返事をするのだった。

 その一方で、セルティーは、

 (あんなに強い人を倒してしまうなんて―…。次は、私が試合にでるんだから、しっかりしないと―…。イルターシャ(あの人)は何か途轍もなく、強そうに感じます。それに、不気味な感じもします。素手でやり合ってはいけないような―…。)

と、心の中で思う。

 理由としては、イルターシャの戦いは勘ではあるが、素手などのような直接攻撃を中心とする者にとっては簡単に何もすることができずに負けてしまうような感じである。セルティーは同時に、言葉にはしなかったが、自分に似た系統なのではないかと勘ではあるが、思っている。

 アンバイドは、

 (まず第一試合をとることができたのは大きい。だが、イルターシャ(あの女)だけは注意だな。パワーだけで勝つことが不可能だな。鍛えているように見えないから強そうに見えないが、実際は、かなりの実力を兼ね備えている。感覚的なことでしかないが、注意は必要だがな。今日は、俺は戦う必要はないのだからな!!)

と、心の中で言葉にする。

 アンバイドも、セルティーと同様にイルターシャに対する警戒の念をもっていた。攻撃力や腕力だけの単純な直接攻撃で倒せる相手ではないということはわかっていた。イルターシャ自身が力ではなく、トリッキーな方法で勝ってきたのではないかと雰囲気からアンバイドは察することができた。実際にそうなのであるが、今ここで語る必要はない。時期がくればわかることなのだから―…。

 さらに、アンバイドは、自身がイルターシャと戦うことはないと確信することが、イルターシャが率いるチームのメンバーが中央の舞台に姿を現わした時から、わかりきっていたことだ。アンバイドは、第四試合に出場する予定になっているのだから―…。そう、イルターシャ率いるチームは三人であるからだ。

 そうなってくると、イルターシャと当たるのは、二人となる。セルティーかアンバイドとクローナ、瑠璃以外の誰か、である。

 アンバイドは知っている。セルティーかそのもう一人かは―…。だから、

 (セルティーの相手がイルターシャなら、トリッキー勝負になるだろうし、もう一人のほうは―…、完全に負けたな。)

と、心の中で思うのであった。

 もうここから、誰がイルターシャの対戦相手になるかのセルティーともう一人のもう一人の部分はわかってしまうであろうが、ここで語る必要はない。答えは、必ずわかるのだから―…。


 そして、観客席。

 そこから、四角いリングの上を見る。

 クローナが戦っていた周囲は、表面が黒く焦げていたのだ。

 それは、ニードが展開した炎竜によってなされたものだ。今となっては、ある程度、温度が下がったのか、湯気みたいなものは立ち上がっていなかった。

 審判であるファーランスはこの現状をみて、

 「第八回戦第二試合は、四角いリング(フィールド)の修復が完了しだい再開します。それまでは、休憩時間とする。」

と、全体に響き渡るように言う。

 それは、四角いリングにある黒く焦げた部分が修復されるのに少しだけ時間がかかるからだ。

 (ふう~、どんだけですか。あの炎の攻撃は―…。それに、あんな炎の中で生き残るなんて―…、騎士同士の戦いよりも盛り上がるな。現に、観客の数もしだいに増えているし―…、もしかしたら、新たな商売が―…。)

と、ファーランスは欲望しだいに芽生えていくのであった。

 実際に、観客は最初の試合から多くいたが、第八回戦までくると、騎士の戦いよりも迫力が強く、緊張した戦いが続いた結果、観客が増えていき、満員に近い状態になったのだ。

 それは、同時に、このようなことをすれば、商売にもなるし、現になっているのだから―…。こういう、利益になる可能性がある場所には、商人が集まって商売を始めるのである。商業で栄えているリースではそうであろう。観客に向けて、軽食や飲み物、などを売る者たちがここ二試合で増加しているのだ。結局、このようなことが、新たな名物となり、周囲からの観光客などによっておとされる金がリースの民の収入となり、一部が税となってリース王国に入り、王国はさらに、商業の整備や発展のための開発に投資することができる。同時に、新たな雇用を生むことになり、貧困者を減らすことができるという好循環を生み出す。

 ファーランスの欲望はそこまで考えられているものではなかったが、このゲームの盛り上がりを継続させるために、このゲームを商売にすることができれば、自らは審判として安定した地位を気づき、定期的な収入プラス臨時に大量の収入がはいることができるという私欲であった。

 それでも、自分も得をし、相手も得をするということが達成できるのだ。

 これ以上、ランシュの企画したゲームの継続による経済効果とファーランスの収入増加について語っても意味がない。話を戻していく。


第74話―2 二人敗れた に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第74話以内で、第八回戦第二試合は終わると思います。イルターシャとの戦いは、セリフの量が増えそうな気がします。予定ですが―…。

では、次回の更新で―…。

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